Journal Club
人工呼吸管理中の敗血症患者の鎮静 Dexmedetomidine vs Propofol
2021.3.16
東京女子医科大学 麻酔科 森脇 翔太
Maximizing the Efficacy of Sedation and Reducing
Neurological Dysfunction and Mortality in Septic Patients with Acute Respiratory Failure
1
本日の論文
デクスメデトミジンの作用機序
丸⽯製薬株式会社 プレセデックス適正使⽤ガイドブックより
●大脳皮質
α
2c:抗不安作用
●青斑核
α
2A:鎮静
●延髄孤束核→交感神経抑制 α
2A:心拍数低下
α
2A:末梢血管拡張
●脊髄:
α
2A:鎮痛
●腎臓:
α
2B:利尿
●血管平滑筋
α
2B:末梢血管収縮 自然な睡眠に類似
中枢性のα
2アゴニスト
3
MIDEX JAMA 2012 目標とする鎮静レベルにある時間の長さはmidazolamに比べ非劣性 VFD短縮 PRODEX JAMA 2012 目標とする鎮静レベルにある時間の長さはpropofolに比べ非劣性
MENDS JAMA 2007 lorazepamに比べdelirium, comaの日数を短縮
SEDOCOM JAMA 2009 目標の鎮静レベルに入っている時間はmidazolamと差はない
Dexmedetomidine for prevention of delirium in elderly patients after non-cardiac surgery. Lancet. 2016 予防投与でせん妄発生率低下
DahLIA JAMA 2016 せん妄患者にDEXを追加するとVFDが増える DESIRE JAMA 2017 DEXは死亡率もVFDも改善させない
SPICE Ⅲ N Engl J Med 2019 DEXをprimaryに使用しても死亡率は改善しない
DEXに関する主要な研究
BACKGROUND
5
Recommendation:
We suggest using either propofol or dexmedetomidine over benzodiazepines for sedation in critically ill, mechanically ventilated adults
(conditional recommendation, low quality of evidence).
人工呼吸管理を受ける重症成人の鎮静には、
ベンゾジアゼピンよりも
プロポフォールやデクスメデトミジンを推奨する。
PADISガイドライン2018
デクスメデトミジン群では、術後8時間の間、IL-6が低下傾向にある。
⇛ デクスメデトミジンの抗炎症作用が示唆される。
Br J Anaesth. 2001 May;86(5):650-6.
PMID: 11575340
Dexの抗炎症作用
7
・敗血症患者で鎮静を受ける患者
・ミダゾラム群20人
デクスメデトミジン群20人
・24時間後の
TNF-α、IL-1β、IL-6 の
血中濃度がDEX群で有意に低下。
Dexの抗炎症作用
JAMA. 2007 Dec 12;298(22):2644-53.
PMID: 18073360
P 24時間以上の人工呼吸管理を要する成人患者
I デクスメデトミジンを用いた鎮静
C ロラゼパムを用いた鎮静
O せん妄や昏睡を起こさなかった日数
MENDS trial
9
MENDS trial
・Multicenter, double-blind, RCT
・N=106 デクスメデトミジン54人 vs ロラゼパム52人
・期間:2004年8月〜2006年4月
・解析:Intention-to-treat
・ICU入室から12日時点での、
せん妄や昏睡を起こさなかった日数 デクスメデトミジン > ロラゼパム
⇛
Dexによる鎮静はベンゾジアゼピン系 よりもせん妄、昏睡を起こしづらい。
Crit Care. 2010; 14(2): R38. PMID: 20233428
敗血症患者では、Dexの方が有意に
・せん妄/昏睡がなかった日
・Ventilator-freeの日数
が長かった。
敗血症患者においては、Dexは ロラゼパムと比較して、
28日死亡率を70%減少させた。
※非敗血症患者ではこの差は見られなかった。
MENDS trial sub group解析
→敗血症患者での比較
11
P 24時間以上の人工呼吸器管理を要する 敗血症患者
I デクスメデトミジンによる鎮静
C プロポフォールやミダゾラムによる鎮静 O 28日間での死亡率
Ventilator-free days
DESIRE trial
・日本の8施設のICUで行われた多施設 Open-label RCT
・期間:2013年2月〜2016年1月
・人工呼吸を必要とする敗血症患者201例
・デクスメデトミジン(0.1~0.7mcg/kg/hr)vs
デクスメデトミジンを用いない鎮静(プロポフォールまたはミダ ゾラムの投与、またはその両方)
・目標:RASS: 0(日中)、-2(夜間)
・無作為に最大7日間割り付け。
DESIRE trial
JAMA. 2017 Apr 4;317(13):1321-1328. PMID: 2832241413
● Primary outcome
DESIRE trial
Dex群はコントロール群と比較して、
・28日死亡率
28日時点での累積死亡率も Dex群 vs Control群
差はなし
N Engl J Med. 2019 Jun 27;380(26):2506-2517. PMID: 31112380
P 人工呼吸器管理を要する重症患者
I デクスメデトミジン単剤、あるいは主とした鎮静
C プロポフォールやミダゾラムによる従来の鎮静
O 90日死亡率
SPICEⅢ trial
15
・多国籍多施設共同研究で行われた Open-label RCT
・挿管・人工呼吸管理が翌日以降まで見込まれ、鎮静管理を要する 4000人を抽出。
Dex群 2001例 vs Usual care群 1999例
・デクスメデトミジン(~1.5mcg/kg/hr)
vs
通常のケア(プロポフォールまたはミダゾラムの投与、またはその両方)
SPICEⅢ trial
SPICEⅢ trial
N Engl J Med. 2019 Jun 27;380(26):2506-2517.
PMID: 31112380
● Primary outcome
90日死亡率は
Dex群(29.1%) vs Usual Care群(29.1%)
有意差なし 17
Clinical Question
人工呼吸中の敗血症成人患者の鎮静において、
抗炎症作用をもつデクスメデトミジンは、
プロポフォールと比較して、
Outcomeを改善させるか?
PICO
P 敗血症患者、人工呼吸管理を行う成人で、
浅鎮静を行う患者
I デクスメデトミジン(0.2~1.5mcg/kg/hr)による鎮静
C プロポフォール(5~50mcg/kg/min)による鎮静
O 14日間の介入期間で、せん妄または昏睡を 認めなかった日数
19
METHODS
Study design
・ 米国の13の医療センター
・ 二重盲検無作為化比較試験
21
Patient: Inclusion
・ 成人患者(18歳以上)
・ 内科または外科ICUへの入床
・ 感染症が疑われる、
もしくは既知の感染症がある
・ 人工呼吸のために継続的な鎮静を受ける
Patient: Exclusion
・重度の認知障害を認める。
・妊娠中、授乳中。
・視覚、聴覚障害、または公認言語が理解できない。
・2度、もしくは3度房室ブロックを認める。
・介入を必要とする徐脈(HR<50/min)がある。
・デクスメデトミジン、プロポフォールにアレルギーがある。
・ベンゾジアゼピン使用の指示がある(ベンゾジアゼピン依存症患者など)。
・人工呼吸の即時中止が予想される。
・48時間以上の筋弛緩薬投与が予想される。
・衰弱した状態にある。
・すべてのInclusion criteriaを満たす前に96時間以上の人工呼吸管理を受けている。
23
Patient Randomization
・パーミュテーションブロックを用い、ブロックランダム化。
・施設と年齢(65歳未満 vs. 65歳以上)で層別化。
・デクスメデトミジン群、プロポフォール群を1:1になるように 無作為に割り付け。
・研究者、臨床医(ベッドサイドナースを除く)、患者、家族は
グループ分けがわからない状態。
Trial Interventions
・治験薬剤師がデクスメデトミジンとプロポフォールを、不透明なプラスチック袋 で覆われた点滴静注液バッグに入れて、mL/hrで投与できるように調製。
・ベッドサイドの看護師が、患者の静脈ラインを不透明なカバーで覆った。
25
Trial Interventions
・最初は、無作為化の直前に患者が受けていた鎮静剤の 投与量に対応する用量で投与開始。
・ベッドサイドの看護師が10分ごとに試験薬を調整、
その根拠を文書化。
・薬剤の調整(ともに実体重)
デクスメデトミジン:0.15〜1.5mcg/kg/hr プロポフォール:5〜50mcg/kg/min
※参考 60kgの患者 10γ=3.6ml/hr
Trial Interventions 薬剤換算表
Dex:
5μg/ml Prop:
10mg/ml
27
Trial Interventions
・低血圧 ・徐脈 ・目標レベルより深い鎮静、
・自発的覚醒試行(SAT) ・手術
⇛ 試験薬の投与を一時的に中断。
・持続的な症候性徐脈
・新規発症の第2度または第3度房室ブロック
・重篤なアレルギー反応
・プロポフォール注入症候群(PRIS)が疑われる場合
・介入に関連した重篤な有害事象が発生した場合
⇛ 試験薬は永久に中止。
Trial Interventions
・14日間の介入期間終了
・抜管
・ICUからの退室
いずれかの一番早いタイミングで試験薬中止。
14日間の介入期間内に抜管、再抜管した患者は、
鎮静が必要な場合には試験薬を再開。
29
Rescue Protocol
Pain
・オピオイドの間欠投与
・フェンタニルの持続静注 Sedation
試験薬の最大量を使用しても鎮静が不十分
⇛ 最初にフェンタニルを増量
⇛ ミダゾラム投与
Rescue Protocol
Chemical Paralysis
・処置などに対して筋弛緩が必要な時、
試験薬を最低量とし、ミダゾラムを使用 Hyperactive Delirium
・ABCDEバンドルにより可能なら早期離床
⇛ ハロペリドールやクエチアピンを使用
Supplementary appendix S431
Trial Interventions
・すべての施設でABCDEバンドルを実施、
研究者が毎日そのアドヒアランスを記録。
A: Awakening:1日1度の覚醒
B: Breathing:自発呼吸の維持、SBT
C: Coordination, Choice:適切な鎮静薬の調整、選択 D: Delirium monitoring and management:
せん妄の評価と対処
E: Early mobility and exercise:
Trial Measurements
訓練を受けた研究者が、
・覚醒度:RASS
・せん妄:
Confusion Assessment Method for ICU
(CAM-ICU)
・疼痛:Critical Care Pain Observation Tool (CPOT)
を用いて患者を評価。
33
Trial Measurements
評価は、
・ICU内で1日2回、
・ICU退室後は1日1回
14日間まで、または退院、死亡するまで行った。
※患者が最大限に覚醒しているときにせん妄評価を行うように 努めた。
RASSスコアが-4 or -5の場合は昏睡、
CAM-ICUスコアが陽性の場合はせん妄とした。
Trial Measurements
無作為化から6ヵ月後に評価
●認知状態(cognitive status)の評価として
・Telephone Interview for Cognitive Status
(TICS)質問票
●機能状態(functional status)の評価として
・Katz Activities of Daily Living(Katz ADL)scale
・Functional Activities Questionnaire(FAQ)
●生活の質(quality of life)の評価として
・European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)
35
1988年、MMSEを元にして Brandtらによって開発
・全11問
・合計41点
TICSはMMSEとよく相関。
再現性に優れ、認知障害を 感知する感度特異度も十分で あるとされる。
※本研究では年齢調整を行い、
0-100点満点、35点以下で
名前
年月日、季節
場所
数字の逆唱
10単語の
Trial End Points
● Primary outcome
・14日間の介入期間で、
せん妄または昏睡を認めなかった日数
● Secondary outcome
・28日時点でのventilator-freeの日数
・90日時点の死亡
・6ヵ月目のTICS-Tスコア
37
Statistical Analysis
・登録数が予想よりも遅かったため、
登録目標を530人→420人に引き下げた。
⇛ グループ間で
・せん妄や昏睡のない日数の1.5日差を検出するpower→85%
・プロポフォール群の予想死亡率を30%と仮定した場合、90日目の 死亡率に12%ポイントの絶対差を検出するpower→80%
・TICS-Tスコアの差を3.9ポイント検出するために少なくとも80%の
Statistical Analysis
・Intention-to-treat分析
・一変量法(univariate methods)の他に多変量回帰モデル (multivariable regression models)を用いて背景因子を 調整してオッズを算出し、評価した。
・せん妄および昏睡のない生存日数、ventilator-freeの日数、
6ヵ月後のTICS-Tスコアを比例オッズロジスティック回帰
(proportional-odds logistic regression)を用いて解析。
・90日後の死亡をCox比例ハザード回帰
(Cox proportional-hazards regression)を用いて解析。
39Statistical Analysis
・中間解析の結果、症例数の調整により、
Primary endpointの統計的有意水準はP<0.044とした。
・他のすべてのエンドポイントの統計的有意水準は、P<0.05とした。
・欠測データによるバイアスを避けるために、欠測した院内変数
(in-hospital variables)には単一代入法(single imputation)を、
部分的に利用できる長期エンドポイントには多重代入法(multiple imputation) を使用した。
・二次エンドポイントの分析では、多重比較の調整は行っていない。
・データ管理:Research Electronic Data Captureソフトウェア
(REDCap、Vanderbilt大学)
RESULTS
41
Patients
・期間:2013年5月〜2018年12月
・4840人をスクリーニング
(4402人=91%が除外)
⇛ 432人が無作為化 デクスメデトミジン:214人
プロポフォール:208人
4840人をスクリーニング
438人がエントリー Exclusion criteriaにより
4402人を除外
Patients
・対象:2013年5月〜2018年12月
・4840人をスクリーニング
⇛
432人が無作為化デクスメデトミジン:214人 プロポフォール:208人
432人が無作為化
DEX: 214人 Prop: 208人
すぐに人工呼吸器を離脱し試験薬を 投与されなかった症例を除外
DEX: 108人 Prop: 101人
6ヶ月後までfollowできた人数 退院し、フォローアップ
DEX: 140人 Prop: 147人
43
Patients
・年齢
59 vs 60 歳
・性別
女性 43 vs 42 %
・BMI
30 vs 29
・Surgical ICU の割合
36 vs 35%
・ICU入室時の APACHEⅡ score
Patients
・ICU入室から
エントリーまでの 日数
1.21 vs 1.17 日
・エントリー前の 人工呼吸日数
0.98 vs 0.97 日
・SOFA score
10 vs 10 点
・血管作動薬を 投与されていた shock患者の割合
56 vs 49 %
・感染部位
Dexmedetomidine Propofol
45
Patients
Dexmedetomidine Propofol
・登録前の
デクスメデトミジン プロポフォール
ベンゾジアゼピン オピオイド
抗精神病薬
の使用率
・登録時の
せん妄率、鎮静レベル
Trial Interventions
・試験薬の投与期間:3-4日
・基準を満たしてから投与開始まで の日数:1日
・試験薬の合計調整回数:10回程度 (浅鎮静、過鎮静、低血圧など)
・試験薬のアンマスキング:14%
・投与中のRASS:-2
・目標鎮静レベルの達成時間:60%
・全患者の25%程度に試験薬の 一時停止あり。
・投与量の中央値
Dex: 0.27mcg/kg/hr
Propofol: 10.2 mcg/kg/min 47
Trial Interventions
・ABCDE bundleの遵守率:⇛
90%台で高い。・fentanyl使用量/day:
68 vs 56 μg/hr
・ミダゾラムの使用:54 vs 43 %
(手技中の鎮静 or 筋弛緩投与時) (1日の使用量は4mg/day)
・抗精神病薬の使用: 42 vs 42 %
・オープンラベルの薬剤使用
プロポフォール:10%前後 デクスメデトミジン:4%
⇛
使用頻度、用量も少なく、Dexmedetomidine Propofol
Efficacy End Points ●Primary outcome
14日間の介入期間で、
せん妄または昏睡を認めなかった日数 10.7 vs 10.8 日
●Secondary outcome
・28日間のventilator-freeの日数
23.7 vs 24.0 日
・90日時点の死亡率
38 vs 39 %
・6ヵ月目のTICS-Tスコア
40.9 vs 41.4 pts 両群間で有意差なし
49
Efficacy End Points
90日時点の死亡率
(Kaplan-Meier method)
両群間で有意差なし
Safety End Points ・調査期間(14日間)中に
臓器機能障害を起こした割合 Cardiovascular
(Vasopressorが必要)67 vs 64%
Coagulation
(PLT < 10万/mm3)39 vs 42%
Hepatic
(t-Bil > 2 mg/dL)22 vs 21%
Renal
(Cre > 2 mg/dL)49 vs 42%
Respiratory
(PaO2/FiO2 < 300 SaO2/FiO2<315)
99 vs 100 %
51
・低血圧(sBP<80 mmHg) (56 vs 55%)
・重度の乳酸アシドーシス(Lac>5 mmol/L) (14 vs 14%)
・徐脈(HR<60 bpm) (30 vs 19%)
DEX群で多い印象だが、症候性徐脈による 試験薬投与中止は両群間で差はなし
・DEX群でARDS率(52 vs 65%) と離脱症状率(HR>100 冷汗) (10 vs 17%)が少ない傾向
・プロポフォール群で自己抜管率が 少ない傾向 (6 vs 2%)
・TGはプロポフォール群で高い傾向。
Safety End Points
結果のまとめ
● Primary outcome
・14日間の介入期間で、
せん妄または昏睡を認めなかった日数
● Secondary outcome
・28日時点でのventilator-freeの日数
・90日時点の死亡
・6ヵ月目のTICS-Tスコア
Outcomeは2群間で
すべて差はなし
53DISCUSSION
Discussion
●MENDS2 trial
・人工呼吸中、浅鎮静下で管理された敗血症成人患者
・多施設、二重盲検、ランダム化比較試験
⇛ デクスメデトミジンによる鎮静がプロポフォールによる鎮静よりも 急性脳機能障害(acute brain dysfunction)を伴わない日数を 増加させるというエビデンスは得られなかった。
・最近では、人工呼吸管理の重症成人の多くは鎮静剤を必要としない ことが示唆されているが、本試験では、特に重症度、ARDSのリスク が高く、継続的な鎮静の必要性が高い敗血症の成人が登録された。
Lancet. 2010 Feb 6;375(9713):475-80.
PMID: 20116842 55
Discussion
・デクスメデトミジンが優れた抗炎症効果を発揮する可能性が あることを考慮すると、感染症患者において、
デクスメデトミジンとGABA受容体作動性鎮静剤(プロポフォール) との間に有意な違いがあることが推測されたが、
患者の転帰に実質的な影響を与えていないようだ。
⇛ 本研究は、敗血症の有無にかかわらず、人工呼吸を必要とする 成人で継続的な鎮静が必要な場合には、軽い鎮静に
デクスメデトミジンまたはプロポフォールを使用することを
推奨するPADISガイドライン(2018)を強く補強するものである。
Discussion
本研究はデクスメデトミジンとプロポフォールを比較した他の試験 に基づいている。
・より厳密な試験鎮静薬の盲検化
・より厳密な鎮静剤グループ間の分離
・浅鎮静の厳格な遵守
・ABCDEバンドルへの高い遵守
の利点があり、先行研究よりも信頼性が高い。
57
P 人工呼吸器管理を要する敗血症患者
I デクスメデトミジンによる鎮静
C プロポフォールやミダゾラムによる鎮静
O 28日間での死亡率
DESIRE trial
●KawazoeらのDESIRE trial
・著者らは、デクスメデトミジンを使用しても、
せん妄や昏睡がなかった日数、ventilator-freeの日数、
28日目の死亡率に有意差は認められなかったことを報告した。
1日以上の試験日で、
・デクスメデトミジン群の29%がプロポフォールを投与された。
(今回のstudyのクロスオーバー率のほぼ3倍)
・最大21%の患者でミダゾラムが投与された。
⇛ 死亡率の差を言及するには力不足であったと考えられる。
Discussion
59
JAMA. 2017 Apr 4;317(13):1321-1328. PMID: 28322414
P 人工呼吸器管理を要する重症患者
I デクスメデトミジン単剤、あるいは主とした鎮静
C プロポフォールやミダゾラムによる従来の鎮静
O 90日死亡率
SPICEⅢ trial
●ShehabiらのSPICEⅢ
・28日目のせん妄や昏睡がなかった日数、
28日目のventilator-freeの日数、90日目の死亡、
180日目の死亡について、
群間で有意差は認めなかった。
・デクスメデトミジン群のほとんどの患者(86%)が
プロポフォールを中央値で2.0日、23%がミダゾラムを 中央値で0.5日投与された。
⇛ 群間の分離がないため、結果の解釈に限界がある。
Discussion
N Engl J Med. 2019 Jun 27;380(26):2506-2517. PMID: 3111238061
Discussion
・本研究では、14%の患者でunmaskingが発生し、
10%の患者でクロスオーバーが発生したが、先行研究と比較して低い。
⇛ より厳密に、デクスメデトミジンとプロポフォールを 比較できており、より明確な結論を得ることができた。
・敗血症患者には、デクスメデトミジンの抗炎症作用により、
デクスメデトミジンの方がより有益である可能性が高い。
⇛ 敗血症ではない患者に対するデクスメデトミジンの治療成績が
Discussion
重症患者のケアで関心が高まっている、退院後の
・認知機能障害(cognitive impairment)
・機能障害(functional impairment)
・生活の質の低下(decline in quality of life)
の予防について。
●先行研究である、SPICEⅢ:
180日後の認知機能とQOLのスコアが、
デクスメデトミジン群と対照群(プロポフォール、ミダゾラム)で同等であった。
⇛ 本研究の追跡率の高さを考慮すると、現在推奨されている鎮静法を 使用した場合、鎮静法の選択は生存者の転帰に影響を与えない
ことを、より支持する結果となった。
63
Limitations
・低用量の鎮静薬とオピオイドを併用して浅鎮静を行っている。
⇛ 鎮静方法の変更や、鎮静法の必要性に影響を 及ぼしている可能性がある。
・同様の鎮静研究に比べれば少ないが、鎮静剤使用の
クロスコンタミネーションがあり、また低用量の抗精神病薬の 使用を含むレスキュープロトコールを有していた。
・試験薬は、患者がエントリーしてから中央値で22時間後に
開始されたため、転帰に影響を与える力が限られていた可能性がある。
Limitations
・予想よりも登録数のペースが遅く、サンプルサイズの調整が
必要となったが、関心のある質問を研究するのに十分なPowerを 持っていた。
・いくらかの登録除外理由の中で、主治医が登録を拒否する理由が 曖昧であったり、患者(またはその代理人)が試験への登録に 同意しなかったことに起因するものがあり、
結果に影響を与える可能性がある。
※pfizer社が治験薬を提供。ただし、studyの設計や実施、データ分析、現行の執筆 などには関与せず。
65
Conclusion
浅鎮静人工呼吸管理下の重症敗血症成人において、
「急性脳機能障害のない日数」、
「ventilator-freeの日数」、「90日死亡率」、
「6ヵ月時点での認知機能」について、
デクスメデトミジンは、プロポフォールよりも
優れた転帰をもたらさなかった。
私見
67
本研究の評価
●内的妥当性
・ランダム割付されている 群間の差はほぼなし
・Intention-to-treat解析。
・盲検化:研究者、臨床医(ベッドサイドナースを除く)、患者、
家族はグループ分けがわからない状態。
14%でunmaskingあり。
・登録数は引き下げられたが、Primary outcomeのpower:80%
●外的妥当性
私見
・国内ではICUにおいて、一般的に持続投与で用いられる鎮静薬は 特殊な状況を除いて、
プロポフォール、デクスメデトミジン、ミダゾラムの 3種類のみである。
・PADISのガイドライン通り、当施設においても、ミダゾラムを
避けてデクスメデトミジン、もしくはプロポフォールを使用している。
しかし、実際は併用することも多い。
・フェンタニルの使用量は日本より多い印象。
69