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Journal Club 人工呼吸管理中の敗血症患者の鎮静 Dexmedetomidine vs Propofol

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(1)

Journal Club

人工呼吸管理中の敗血症患者の鎮静 Dexmedetomidine vs Propofol

2021.3.16

東京女子医科大学 麻酔科 森脇 翔太

Maximizing the Efficacy of Sedation and Reducing

Neurological Dysfunction and Mortality in Septic Patients with Acute Respiratory Failure

1

(2)

本日の論文

(3)

デクスメデトミジンの作用機序

丸⽯製薬株式会社 プレセデックス適正使⽤ガイドブックより

●大脳皮質

α

2c

:抗不安作用

●青斑核

α

2A

:鎮静

●延髄孤束核→交感神経抑制 α

2A

:心拍数低下

α

2A

:末梢血管拡張

●脊髄:

α

2A

:鎮痛

●腎臓:

α

2B

:利尿

●血管平滑筋

α

2B

:末梢血管収縮 自然な睡眠に類似

中枢性のα

2

アゴニスト

3

(4)

MIDEX JAMA 2012 目標とする鎮静レベルにある時間の長さはmidazolamに比べ非劣性 VFD短縮 PRODEX JAMA 2012 目標とする鎮静レベルにある時間の長さはpropofolに比べ非劣性

MENDS JAMA 2007 lorazepamに比べdelirium, comaの日数を短縮

SEDOCOM JAMA 2009 目標の鎮静レベルに入っている時間はmidazolamと差はない

Dexmedetomidine for prevention of delirium in elderly patients after non-cardiac surgery. Lancet. 2016 予防投与でせん妄発生率低下

DahLIA JAMA 2016 せん妄患者にDEXを追加するとVFDが増える DESIRE JAMA 2017 DEXは死亡率もVFDも改善させない

SPICE Ⅲ N Engl J Med  2019 DEXをprimaryに使用しても死亡率は改善しない

DEXに関する主要な研究

(5)

BACKGROUND

5

(6)

Recommendation:

We suggest using either propofol or dexmedetomidine over benzodiazepines for sedation in critically ill, mechanically ventilated adults

(conditional recommendation, low quality of evidence).

人工呼吸管理を受ける重症成人の鎮静には、

ベンゾジアゼピンよりも

プロポフォールやデクスメデトミジンを推奨する。

PADISガイドライン2018

(7)

デクスメデトミジン群では、術後8時間の間、IL-6が低下傾向にある。

⇛ デクスメデトミジンの抗炎症作用が示唆される。

Br J Anaesth. 2001 May;86(5):650-6. 

PMID: 11575340

Dexの抗炎症作用

7

(8)

・敗血症患者で鎮静を受ける患者

・ミダゾラム群20人

デクスメデトミジン群20人

・24時間後の

TNF-α、IL-1β、IL-6 の

血中濃度がDEX群で有意に低下。

Dexの抗炎症作用

(9)

JAMA. 2007 Dec 12;298(22):2644-53. 

PMID: 18073360

P 24時間以上の人工呼吸管理を要する成人患者

I デクスメデトミジンを用いた鎮静

C ロラゼパムを用いた鎮静

O せん妄や昏睡を起こさなかった日数

MENDS trial

9

(10)

MENDS trial

・Multicenter, double-blind, RCT

・N=106  デクスメデトミジン54人 vs ロラゼパム52人

・期間:2004年8月〜2006年4月

・解析:Intention-to-treat

・ICU入室から12日時点での、

せん妄や昏睡を起こさなかった日数 デクスメデトミジン > ロラゼパム

Dexによる鎮静はベンゾジアゼピン系 よりもせん妄、昏睡を起こしづらい。

(11)

Crit Care. 2010; 14(2): R38.  PMID: 20233428

敗血症患者では、Dexの方が有意に

・せん妄/昏睡がなかった日

・Ventilator-freeの日数

が長かった。

敗血症患者においては、Dexは ロラゼパムと比較して、

28日死亡率を70%減少させた。

※非敗血症患者ではこの差は見られなかった。

MENDS trial  sub group解析

→敗血症患者での比較

11

(12)

P 24時間以上の人工呼吸器管理を要する 敗血症患者

I デクスメデトミジンによる鎮静

C プロポフォールやミダゾラムによる鎮静 O 28日間での死亡率

Ventilator-free days

DESIRE trial

(13)

・日本の8施設のICUで行われた多施設 Open-label RCT

・期間:2013年2月〜2016年1月

・人工呼吸を必要とする敗血症患者201例

・デクスメデトミジン(0.1~0.7mcg/kg/hr)vs 

デクスメデトミジンを用いない鎮静(プロポフォールまたはミダ ゾラムの投与、またはその両方)

・目標:RASS: 0(日中)、-2(夜間)

・無作為に最大7日間割り付け。

DESIRE trial

JAMA. 2017 Apr 4;317(13):1321-1328. PMID: 2832241413

(14)

● Primary outcome

DESIRE trial

Dex群はコントロール群と比較して、

・28日死亡率

28日時点での累積死亡率も Dex群 vs Control群

差はなし

(15)

N Engl J Med. 2019 Jun 27;380(26):2506-2517. PMID: 31112380

P 人工呼吸器管理を要する重症患者

I デクスメデトミジン単剤、あるいは主とした鎮静

C プロポフォールやミダゾラムによる従来の鎮静

O 90日死亡率

SPICEⅢ trial

15

(16)

・多国籍多施設共同研究で行われた Open-label RCT

・挿管・人工呼吸管理が翌日以降まで見込まれ、鎮静管理を要する 4000人を抽出。

Dex群 2001例 vs Usual care群 1999例

・デクスメデトミジン(~1.5mcg/kg/hr)

vs 

通常のケア(プロポフォールまたはミダゾラムの投与、またはその両方)

SPICEⅢ trial

(17)

SPICEⅢ trial

N Engl J Med. 2019 Jun 27;380(26):2506-2517.

PMID: 31112380

● Primary outcome

90日死亡率は

Dex群(29.1%) vs Usual Care群(29.1%)

有意差なし 17

(18)

Clinical Question

人工呼吸中の敗血症成人患者の鎮静において、

抗炎症作用をもつデクスメデトミジンは、

プロポフォールと比較して、

Outcomeを改善させるか?

(19)

PICO

P 敗血症患者、人工呼吸管理を行う成人で、

浅鎮静を行う患者

I デクスメデトミジン(0.2~1.5mcg/kg/hr)による鎮静

C プロポフォール(5~50mcg/kg/min)による鎮静

O 14日間の介入期間で、せん妄または昏睡を 認めなかった日数

19

(20)

METHODS

(21)

Study design

・ 米国の13の医療センター

・ 二重盲検無作為化比較試験

21

(22)

Patient: Inclusion

・ 成人患者(18歳以上)

・ 内科または外科ICUへの入床

・ 感染症が疑われる、

もしくは既知の感染症がある

・ 人工呼吸のために継続的な鎮静を受ける

(23)

Patient: Exclusion

・重度の認知障害を認める。

・妊娠中、授乳中。

・視覚、聴覚障害、または公認言語が理解できない。

・2度、もしくは3度房室ブロックを認める。

・介入を必要とする徐脈(HR<50/min)がある。

・デクスメデトミジン、プロポフォールにアレルギーがある。

・ベンゾジアゼピン使用の指示がある(ベンゾジアゼピン依存症患者など)。

・人工呼吸の即時中止が予想される。

・48時間以上の筋弛緩薬投与が予想される。

・衰弱した状態にある。

・すべてのInclusion criteriaを満たす前に96時間以上の人工呼吸管理を受けている。

23

(24)

Patient Randomization

・パーミュテーションブロックを用い、ブロックランダム化。

・施設と年齢(65歳未満 vs. 65歳以上)で層別化。

・デクスメデトミジン群、プロポフォール群を1:1になるように 無作為に割り付け。

・研究者、臨床医(ベッドサイドナースを除く)、患者、家族は

グループ分けがわからない状態。

(25)

Trial Interventions 

・治験薬剤師がデクスメデトミジンとプロポフォールを、不透明なプラスチック袋 で覆われた点滴静注液バッグに入れて、mL/hrで投与できるように調製。

・ベッドサイドの看護師が、患者の静脈ラインを不透明なカバーで覆った。

25

(26)

Trial Interventions 

・最初は、無作為化の直前に患者が受けていた鎮静剤の 投与量に対応する用量で投与開始。

・ベッドサイドの看護師が10分ごとに試験薬を調整、

その根拠を文書化。

・薬剤の調整(ともに実体重)

デクスメデトミジン:0.15〜1.5mcg/kg/hr プロポフォール:5〜50mcg/kg/min

※参考 60kgの患者 10γ=3.6ml/hr

(27)

Trial Interventions  薬剤換算表

Dex: 

5μg/ml Prop: 

10mg/ml

27

(28)

Trial Interventions 

・低血圧 ・徐脈 ・目標レベルより深い鎮静、

・自発的覚醒試行(SAT) ・手術

⇛ 試験薬の投与を一時的に中断。

・持続的な症候性徐脈

・新規発症の第2度または第3度房室ブロック

・重篤なアレルギー反応

・プロポフォール注入症候群(PRIS)が疑われる場合

・介入に関連した重篤な有害事象が発生した場合

⇛ 試験薬は永久に中止。

(29)

Trial Interventions 

・14日間の介入期間終了

・抜管

・ICUからの退室

いずれかの一番早いタイミングで試験薬中止。

14日間の介入期間内に抜管、再抜管した患者は、

鎮静が必要な場合には試験薬を再開。

29

(30)

Rescue Protocol

Pain

・オピオイドの間欠投与

・フェンタニルの持続静注 Sedation

試験薬の最大量を使用しても鎮静が不十分

⇛ 最初にフェンタニルを増量

⇛ ミダゾラム投与

(31)

Rescue Protocol

Chemical Paralysis

・処置などに対して筋弛緩が必要な時、

試験薬を最低量とし、ミダゾラムを使用 Hyperactive Delirium

・ABCDEバンドルにより可能なら早期離床

⇛ ハロペリドールやクエチアピンを使用

Supplementary appendix S431

(32)

Trial Interventions 

・すべての施設でABCDEバンドルを実施、

研究者が毎日そのアドヒアランスを記録。

A: Awakening:1日1度の覚醒

B: Breathing:自発呼吸の維持、SBT

C: Coordination, Choice:適切な鎮静薬の調整、選択 D: Delirium monitoring and management:

せん妄の評価と対処

E: Early mobility and exercise:

(33)

Trial Measurements

訓練を受けた研究者が、

・覚醒度:RASS

・せん妄:

Confusion Assessment Method for ICU

(CAM-ICU)

・疼痛:Critical Care Pain Observation Tool (CPOT)

を用いて患者を評価。

33

(34)

Trial Measurements

評価は、

・ICU内で1日2回、

・ICU退室後は1日1回

14日間まで、または退院、死亡するまで行った。

※患者が最大限に覚醒しているときにせん妄評価を行うように 努めた。

RASSスコアが-4 or -5の場合は昏睡、

CAM-ICUスコアが陽性の場合はせん妄とした。

(35)

Trial Measurements

無作為化から6ヵ月後に評価

●認知状態(cognitive status)の評価として

・Telephone Interview for Cognitive Status

(TICS)質問票

●機能状態(functional status)の評価として

・Katz Activities of Daily Living(Katz ADL)scale

・Functional Activities Questionnaire(FAQ)

●生活の質(quality of life)の評価として

・European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)

35

(36)

1988年、MMSEを元にして Brandtらによって開発

・全11問

・合計41点

TICSはMMSEとよく相関。

再現性に優れ、認知障害を 感知する感度特異度も十分で あるとされる。

※本研究では年齢調整を行い、

0-100点満点、35点以下で

名前

年月日、季節

場所

数字の逆唱

10単語の

(37)

Trial End Points

● Primary outcome

・14日間の介入期間で、

せん妄または昏睡を認めなかった日数

● Secondary outcome

・28日時点でのventilator-freeの日数

・90日時点の死亡

・6ヵ月目のTICS-Tスコア

37

(38)

Statistical Analysis

・登録数が予想よりも遅かったため、

登録目標を530人→420人に引き下げた。

⇛ グループ間で

・せん妄や昏睡のない日数の1.5日差を検出するpower→85%

・プロポフォール群の予想死亡率を30%と仮定した場合、90日目の 死亡率に12%ポイントの絶対差を検出するpower→80%

・TICS-Tスコアの差を3.9ポイント検出するために少なくとも80%の

(39)

Statistical Analysis

・Intention-to-treat分析

・一変量法(univariate methods)の他に多変量回帰モデル (multivariable regression models)を用いて背景因子を 調整してオッズを算出し、評価した。

・せん妄および昏睡のない生存日数、ventilator-freeの日数、

6ヵ月後のTICS-Tスコアを比例オッズロジスティック回帰

(proportional-odds logistic regression)を用いて解析。

・90日後の死亡をCox比例ハザード回帰

(Cox proportional-hazards regression)を用いて解析。

39

(40)

Statistical Analysis

・中間解析の結果、症例数の調整により、

Primary endpointの統計的有意水準はP<0.044とした。

・他のすべてのエンドポイントの統計的有意水準は、P<0.05とした。

・欠測データによるバイアスを避けるために、欠測した院内変数

(in-hospital variables)には単一代入法(single imputation)を、

部分的に利用できる長期エンドポイントには多重代入法(multiple imputation) を使用した。

・二次エンドポイントの分析では、多重比較の調整は行っていない。

・データ管理:Research Electronic Data Captureソフトウェア

(REDCap、Vanderbilt大学)

(41)

RESULTS

41

(42)

Patients

・期間:2013年5月〜2018年12月

・4840人をスクリーニング

(4402人=91%が除外)

⇛ 432人が無作為化 デクスメデトミジン:214人

プロポフォール:208人

4840人をスクリーニング

438人がエントリー Exclusion criteriaにより

4402人を除外

(43)

Patients

・対象:2013年5月〜2018年12月

・4840人をスクリーニング

432人が無作為化

デクスメデトミジン:214人 プロポフォール:208人

432人が無作為化

DEX: 214人 Prop: 208人

すぐに人工呼吸器を離脱し試験薬を 投与されなかった症例を除外

DEX: 108人 Prop: 101人

6ヶ月後までfollowできた人数 退院し、フォローアップ

DEX: 140人 Prop: 147人

43

(44)

Patients

・年齢

59 vs 60 歳

・性別

女性 43 vs 42 %

・BMI

30 vs 29

・Surgical ICU の割合

36 vs 35%

・ICU入室時の APACHEⅡ score

(45)

Patients

・ICU入室から

エントリーまでの 日数

1.21 vs 1.17 日

・エントリー前の 人工呼吸日数

0.98 vs 0.97 日

・SOFA score

10 vs 10 点

・血管作動薬を 投与されていた shock患者の割合

56 vs 49 %

・感染部位

Dexmedetomidine     Propofol

45

(46)

Patients

Dexmedetomidine    Propofol

・登録前の

デクスメデトミジン プロポフォール

ベンゾジアゼピン オピオイド

抗精神病薬

の使用率

・登録時の

せん妄率、鎮静レベル

(47)

Trial Interventions

・試験薬の投与期間:3-4日

・基準を満たしてから投与開始まで の日数:1日

・試験薬の合計調整回数:10回程度 (浅鎮静、過鎮静、低血圧など)

・試験薬のアンマスキング:14%

・投与中のRASS:-2

・目標鎮静レベルの達成時間:60%

・全患者の25%程度に試験薬の 一時停止あり。

・投与量の中央値

Dex: 0.27mcg/kg/hr

Propofol: 10.2 mcg/kg/min        47

(48)

Trial Interventions

・ABCDE bundleの遵守率:

90%台で高い。

・fentanyl使用量/day:

68 vs 56 μg/hr

・ミダゾラムの使用:54 vs 43 %

(手技中の鎮静 or 筋弛緩投与時) (1日の使用量は4mg/day)

・抗精神病薬の使用: 42 vs 42 %

・オープンラベルの薬剤使用

プロポフォール:10%前後 デクスメデトミジン:4%

使用頻度、用量も少なく、

Dexmedetomidine Propofol

(49)

Efficacy End Points ●Primary outcome

14日間の介入期間で、

せん妄または昏睡を認めなかった日数 10.7 vs 10.8 日

●Secondary outcome

・28日間のventilator-freeの日数

23.7 vs 24.0 日

・90日時点の死亡率

38 vs 39 %

・6ヵ月目のTICS-Tスコア

40.9 vs 41.4 pts 両群間で有意差なし

49

(50)

Efficacy End Points

90日時点の死亡率

(Kaplan-Meier method)

両群間で有意差なし

(51)

Safety End Points ・調査期間(14日間)中に

臓器機能障害を起こした割合 Cardiovascular 

(Vasopressorが必要)

67 vs 64%

Coagulation 

(PLT < 10万/mm3)

39 vs 42%

Hepatic 

(t-Bil > 2 mg/dL)

22 vs 21%

Renal 

(Cre > 2 mg/dL)

49 vs 42%

Respiratory 

(PaO2/FiO2 < 300 SaO2/FiO2<315)

99 vs 100 %

51

(52)

・低血圧(sBP<80 mmHg) (56 vs 55%)

・重度の乳酸アシドーシス(Lac>5 mmol/L) (14 vs 14%)

・徐脈(HR<60 bpm) (30 vs 19%)

DEX群で多い印象だが、症候性徐脈による 試験薬投与中止は両群間で差はなし

・DEX群でARDS率(52 vs 65%) と離脱症状率(HR>100  冷汗) (10 vs 17%)が少ない傾向

・プロポフォール群で自己抜管率が 少ない傾向 (6 vs 2%)

・TGはプロポフォール群で高い傾向。

Safety End Points

(53)

結果のまとめ

● Primary outcome

・14日間の介入期間で、

せん妄または昏睡を認めなかった日数

● Secondary outcome

・28日時点でのventilator-freeの日数

・90日時点の死亡

・6ヵ月目のTICS-Tスコア

Outcomeは2群間で

すべて差はなし

53

(54)

DISCUSSION

(55)

Discussion

●MENDS2 trial

・人工呼吸中、浅鎮静下で管理された敗血症成人患者

・多施設、二重盲検、ランダム化比較試験

⇛ デクスメデトミジンによる鎮静がプロポフォールによる鎮静よりも 急性脳機能障害(acute brain dysfunction)を伴わない日数を 増加させるというエビデンスは得られなかった。

・最近では、人工呼吸管理の重症成人の多くは鎮静剤を必要としない ことが示唆されているが、本試験では、特に重症度、ARDSのリスク が高く、継続的な鎮静の必要性が高い敗血症の成人が登録された。

Lancet. 2010 Feb 6;375(9713):475-80.

PMID: 20116842 55

(56)

Discussion

・デクスメデトミジンが優れた抗炎症効果を発揮する可能性が あることを考慮すると、感染症患者において、

デクスメデトミジンとGABA受容体作動性鎮静剤(プロポフォール) との間に有意な違いがあることが推測されたが、

患者の転帰に実質的な影響を与えていないようだ。

⇛ 本研究は、敗血症の有無にかかわらず、人工呼吸を必要とする 成人で継続的な鎮静が必要な場合には、軽い鎮静に

デクスメデトミジンまたはプロポフォールを使用することを

推奨するPADISガイドライン(2018)を強く補強するものである。

(57)

Discussion

本研究はデクスメデトミジンとプロポフォールを比較した他の試験 に基づいている。

・より厳密な試験鎮静薬の盲検化

・より厳密な鎮静剤グループ間の分離

・浅鎮静の厳格な遵守

・ABCDEバンドルへの高い遵守

の利点があり、先行研究よりも信頼性が高い。

57

(58)

P 人工呼吸器管理を要する敗血症患者

I デクスメデトミジンによる鎮静

C プロポフォールやミダゾラムによる鎮静

O 28日間での死亡率

DESIRE trial

(59)

●KawazoeらのDESIRE trial

・著者らは、デクスメデトミジンを使用しても、

せん妄や昏睡がなかった日数、ventilator-freeの日数、

28日目の死亡率に有意差は認められなかったことを報告した。

1日以上の試験日で、

・デクスメデトミジン群の29%がプロポフォールを投与された。

(今回のstudyのクロスオーバー率のほぼ3倍)

・最大21%の患者でミダゾラムが投与された。

⇛ 死亡率の差を言及するには力不足であったと考えられる。

Discussion

59

JAMA. 2017 Apr 4;317(13):1321-1328. PMID: 28322414

(60)

P 人工呼吸器管理を要する重症患者

I デクスメデトミジン単剤、あるいは主とした鎮静

C プロポフォールやミダゾラムによる従来の鎮静

O 90日死亡率

SPICEⅢ trial

(61)

●ShehabiらのSPICEⅢ

・28日目のせん妄や昏睡がなかった日数、

28日目のventilator-freeの日数、90日目の死亡、

180日目の死亡について、

群間で有意差は認めなかった。

・デクスメデトミジン群のほとんどの患者(86%)が

プロポフォールを中央値で2.0日、23%がミダゾラムを 中央値で0.5日投与された。

⇛ 群間の分離がないため、結果の解釈に限界がある。

Discussion

N Engl J Med. 2019 Jun 27;380(26):2506-2517. PMID: 3111238061

(62)

Discussion

・本研究では、14%の患者でunmaskingが発生し、

10%の患者でクロスオーバーが発生したが、先行研究と比較して低い。

⇛ より厳密に、デクスメデトミジンとプロポフォールを 比較できており、より明確な結論を得ることができた。

・敗血症患者には、デクスメデトミジンの抗炎症作用により、

デクスメデトミジンの方がより有益である可能性が高い。

⇛ 敗血症ではない患者に対するデクスメデトミジンの治療成績が

(63)

Discussion

重症患者のケアで関心が高まっている、退院後の

・認知機能障害(cognitive impairment)

・機能障害(functional impairment)

・生活の質の低下(decline in quality of life)

の予防について。

●先行研究である、SPICEⅢ:

180日後の認知機能とQOLのスコアが、

デクスメデトミジン群と対照群(プロポフォール、ミダゾラム)で同等であった。

⇛ 本研究の追跡率の高さを考慮すると、現在推奨されている鎮静法を 使用した場合、鎮静法の選択は生存者の転帰に影響を与えない

ことを、より支持する結果となった。

63

(64)

Limitations

・低用量の鎮静薬とオピオイドを併用して浅鎮静を行っている。

⇛ 鎮静方法の変更や、鎮静法の必要性に影響を 及ぼしている可能性がある。

・同様の鎮静研究に比べれば少ないが、鎮静剤使用の

クロスコンタミネーションがあり、また低用量の抗精神病薬の 使用を含むレスキュープロトコールを有していた。

・試験薬は、患者がエントリーしてから中央値で22時間後に

開始されたため、転帰に影響を与える力が限られていた可能性がある。

(65)

Limitations

・予想よりも登録数のペースが遅く、サンプルサイズの調整が

必要となったが、関心のある質問を研究するのに十分なPowerを 持っていた。

・いくらかの登録除外理由の中で、主治医が登録を拒否する理由が 曖昧であったり、患者(またはその代理人)が試験への登録に 同意しなかったことに起因するものがあり、

結果に影響を与える可能性がある。

※pfizer社が治験薬を提供。ただし、studyの設計や実施、データ分析、現行の執筆 などには関与せず。

65

(66)

Conclusion

浅鎮静人工呼吸管理下の重症敗血症成人において、

「急性脳機能障害のない日数」、

「ventilator-freeの日数」、「90日死亡率」、

「6ヵ月時点での認知機能」について、

デクスメデトミジンは、プロポフォールよりも

優れた転帰をもたらさなかった。

(67)

私見

67

(68)

本研究の評価

●内的妥当性

・ランダム割付されている 群間の差はほぼなし

・Intention-to-treat解析。

・盲検化:研究者、臨床医(ベッドサイドナースを除く)、患者、

家族はグループ分けがわからない状態。

14%でunmaskingあり。

・登録数は引き下げられたが、Primary outcomeのpower:80%

●外的妥当性

(69)

私見

・国内ではICUにおいて、一般的に持続投与で用いられる鎮静薬は 特殊な状況を除いて、

プロポフォール、デクスメデトミジン、ミダゾラムの 3種類のみである。

・PADISのガイドライン通り、当施設においても、ミダゾラムを

避けてデクスメデトミジン、もしくはプロポフォールを使用している。

しかし、実際は併用することも多い。

・フェンタニルの使用量は日本より多い印象。

69

(70)

私見

・日常臨床としてはこれまで通り、現在までの様々な報告を基に、

患者のバイタルサイン(血圧、脈拍など)、せん妄の有無、

疼痛の有無、アレルギー、薬剤の作用発現時間、

などを総合的に考慮して、選択していくことになる。

現在のプラクティスに変更はない。

・本研究は、浅鎮静(RASS-2~0)での比較なので、 DexとPropの 使用量は多くない。投与量が少なく、差が出ない可能性が

あるのではないか。

参照

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