鹿児島国際大学ミュージアム調査研究報告152018. 3
BulletinoftheMuseumStudy, thelnternationalUniversityofKagoshima,Vo1.15March2018
特集特別企画展「吹上の考古学史をたどる」
吹上歴史民俗資料館の活用と課題について 常田和彦!)
I) 899‑3301 日置市吹上町中原2568番地日置市教育委員会
門は,平成26年までは旧石器時代から近代までの史料を ほぼ均等に展示していた. しかし,狭い展示室ではそれぞ れの時代の貴重な史料の展示や,各時代の説明が十分にで きていなかったため, テーマをしぼり,現在では戦国島津 の史料がほとんどを占めている.展示スペースは常設展が ほとんどを占めている.
考古資料
吹上はもともと遺跡が豊富で,様々な考古資料が偶然発 見され,学校や役所に教育委員会に持ち込まれていた.縄 文時代の完形の台付皿弥生時代の石包丁,須恵器の蔵骨 器などである.行政による発掘調査が始まり,史料が増大 した現在でも,希少な史料である. こうしたものが歴民館 に集約されたことで,散逸が防げ,ある程度整理されたこ とで,利用しやすくなっている.時代は旧石器から近世ま で,ほぼ揃っている.今回のミュージアムの特別展示でも 使用されている.
展示スペースは狭いが,縄文時代は黒川洞穴,弥生時代 は入来遺跡,古墳時代は辻堂原遺跡と各時代を代表する遺 跡を中心に展示している.
戦国島津氏関連
戦国島津氏は戦国時代に活躍し,近世薩摩藩の基礎を 作った一族で,島津氏分家の伊作島津氏(吹上町の南部を 領有) 10代当主忠良,孫で島津本家16代当主義久,その 弟の義弘などが吹上の伊作城で生誕したとされている.そ のため,忠良が1526年に作らせた仏像, 1592年に発給さ れた義久の黒印状,伊作城跡の出土の考古史料。上井覚兼 日記の写本など関連した史料を展示している.説明パネル は16世紀初頭頃から始まり, 1600年の関ヶ原の合戦まで の戦国島津氏の歴史を解説している.戦国島津氏はゲーム 等で全国的に有名で, SNSなど知った関東などの県外か
らも見学者が訪れている.
はじめに
吹上歴史民俗資料館(以下,歴民館と略す)は, 日置市 吹上町中原2568番地にあり,様々な郷土関係の史料を所 蔵している.平成29年に,鹿児島国際大学ミュージアム(以 下ミュージアムと略す)で歴民館の史料を活用し,特別企 画展「吹上の考古学史をたどる−吹上高等学校社会研究 部の活動を中心に−」を開催していただいた.いままで,
他の施設に資料を貸し出すことはあったが,吹上をテーマ にした企画展を別の施設で行うことは初めてで,公開する 機会の無かった資料を公開していただいた. また,大きな 業績をあげながらも,語られることが少なかった吹上高等 学校社会研究部を取り上げていただいた.鐘ケ江賢二氏(鹿 児島国際大学)をはじめとする大学職員,学生の皆様には 感謝を申し上げたい.
歴民館は専属の学芸員がおらず,十分な研究,活用を行っ ているとは言い難いが,良い機会を頂いたので歴民館の紹 介と活用を簡単に紹介したい.
概要
歴民館は昭和57 (1982)年11月に「吹上町歴史民俗資 料館」の名称で開館した.延床面積329㎡,展示室187㎡,
収蔵庫59㎡の単独施設である.保管,展示の対象は歴史,
民俗資料全般である.吹上町が所有していた江戸時代から の公文書群,各学校や教育委員会に持ち込まれた表採の考 古資料,地元住民から寄贈された民具や古文書,行政が行っ た発掘調査で出土した考古資料などの,多彩な資料が所蔵 されている. これらの資料群が廃棄されることなく,現在 まで保存されたことで,歴民館を建設した意義があったと 言える. しかし,専属の学芸員がいないこともあり, なか なか整理と活用ができない状態である.
展示は,戦国島津氏に関する史料を中心とした歴史部門 と,民具を中心とした民俗部門に2分されている.歴史部
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常田和彦
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吹上歴史民俗資料館 展示室(歴史部門)
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展示室(歴史部門) 展示室(歴史民俗部門)
古文書
歴民館で特筆すべきは,伊作郷仮屋文書(県指定文化財)
である.江戸時代後半期に伊作郷(現吹上町南部)の御仮 屋(役所)で作成された公文書群で580点が保管されてい る. これほどの数の御仮屋文書が残っているのは県内でも 3カ所(伊作郷,蒲生郷, 山田郷)だけで,薩摩藩の地方 支配を知るうえで欠かせない史料である幕末・維新期の 藩本庁からの通達も多数残されており.県外の研究者も訪 れている.
外にも郷士の私家文書も130点ほどが寄贈されている.
幕末維新期の日記等の史料があり, 同時期の郷士の動向 を知る上で貴重な史料である
美術・工芸品
歴史史料との区分は難しいが伝世している美術・工芸 品も保管している江戸時代作成の妙音天像(弁財天,木 製)と水天権現像(木製),銅鏡薩摩琵琶等がある妙 音天像と水天権現像は,平成29年に,鹿児島県歴史資料 センター黎明館が.江戸時代以前の鹿児島県内の仏像を集 めた特別展「かごしまの仏たち」に出展された.歴民館で はスペースの都合などで展示できない史料も外部に貸し
出すことで,広く見ていだだけるよう努めている 民具
歴民館の展示スペースの半分は民具が占めている.高度 成長期以前の生活道具や農業林業漁業等の道具など多 岐にわたっている.民具の展示は,小学校3年生社会科の 見学に対応するために充実させている.電気や水道などの インフラが整備される以前の暮らしと道具を学ぶためで,
平成29年度には日置市内5小学校の3年生101名が見学 に来ている.実際に道具に触らせて学習を行うので.子ど も達にも喜ばれている
課題
繰り返しになるが,専属の学芸員がいないため十分な整 理と活用がなされていない展示室と収蔵庫も狭く,展示 もほぼ常設展で固定化されている状況である今回ミュー ジアムで多くの史料を公開していただいたのは, たいへん ありがたかった今後も史料の公開と整理の方法と,収蔵 史料の内容の周知を検討していきたい
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特集特別企画展「吹上の考古学史をたどる」
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展示室(民俗部門) 島津義久黒印状(1592)
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幕末郷士の日記 伊作御仮屋文書(検地帳)
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島津忠良奉納阿弥陀像(1526)
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