環 境・社 会 報 告 書 2 0 1 0
ヒ ュ ー マ ン・ヘ ル ス ケ ア 企 業 を め ざ し て
Our Approach to an
Excellent Company
エ ー ザ イ の 企 業 理 念
1.
本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネ フィット向上に貢献することを企業理念と定め、この企業理念のもと ヒューマン・ヘルスケア( )企業をめざす。
2.
本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、
利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考える。
3.
本会社は、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々の活動の根幹 に据え、社会的責任の遂行に努める。
4.
本会社の主要なステークホルダーズは、患者様と生活者の皆様、株主 の皆様および社員である。本会社は、以下を旨としてステークホルダー ズの価値増大をはかるとともに良好な関係の発展・維持に努める。
① 未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製品の安定供 給、薬剤の安全性と有効性を含む有用性情報の伝達
② 経営情報の適時開示、企業価値の向上、積極的な株主還元
③ 安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事の提供、能力開発機会 の充実
定款 第1章第2条より
編集方針 編集方針
本報告書は、「 (ヒューマン・ヘルスケア)」というエーザイの企業理念に込 められた思いに基づく活動、ステークホルダーズとの関わり、環境保全活動な どについて、2009年度の実績を中心に報告しています。
各取り組み報告ページでは、 理念を具現化した代表的な事例をご紹介す るとともに、取り組みごとの基本的な考え方と個別の活動を報告しています。
また、ステークホルダーズの皆様の興味・関心が特に高い事例については、
Q&A形式でお答えし、よりわかりやすい報告となるよう心がけています。
さらに、当社の活動がどのように評価されているか、今後期待されていること は何かを検証・確認し、次なる活動へとつなげられるよう、ステークホルダー ズの皆様からご意見をいただきました(P57)。
編集にあたっては、環境省「環境報告ガイドライン(2007年版)」、GRI(Global Reporting Initiative)「サステナビリティ・リポーティング・ガイドライン 2006」などを参考に、継続的に把握できるパフォーマンスと活動事例を可能 な限り取り上げました。
■ 対象範囲
本報告書はエーザイ株式会社単体としての事業活動を中心に編集されています。
一部の報告内容には、国内および海外グループ企業の活動も含まれています。
また、環境報告に関しては、エーザイ株式会社の4つの事業所、本社ビル群、
コミュニケーションオフィス(国内営業所)および国内グループ企業から集計 したデータをもとに構成しています。
本報告書では、対象範囲を示す言葉として下記の用語を使用しています。
エーザイ : エーザイ株式会社および国内外のグループ企業49社 エーザイ株式会社 : エーザイ株式会社単体
国内グループ : エーザイ株式会社および国内グループ企業11社 国内グループ企業 : エーザイ株式会社を含まない国内グループ企業11社 海外グループ : 海外のグループ企業38社
本社ビル群 : 本社機能を担っているエーザイ株式会社のビル群 コミュニケーションオフィス(CO):エーザイ株式会社の国内営業所67カ所 4事業所 : エーザイ株式会社の4事業所
(川島工園、美里工場、鹿島事業所、筑波研究所)
■ 対象期間
データは2009年4月1日から2010年3月31日の実績です。
一部の活動については2010年6月までの状況も掲載しています。
■ 本報告書に関するお問い合わせ先 エーザイ株式会社
PR部 電話:03-3817-5120 FAX:03-3811-3077 環境安全部 電話:03-3817-5118 FAX:03-3811-9982
エーザイ株式会社 会社概要(2010年3月31日現在)
名称 エーザイ株式会社 設立年月 1941年(昭和16年)12月
本社 〒112-8088 東京都文京区小石川4-6-10 資本金 44,985百万円
従業員数 連結: 11,415人 個別: 4,367人
国内営業所 コミュニケーションオフィス 全国67カ所
(海外営業拠点、工場・研究所の詳細については、P7〜8を参照)
会社概要に関する詳細は、コーポレート・ウェブサイト
(http://www.eisai.co.jp)をご覧ください。
また、経済性に関する報告や経営戦略についてご紹介 した「アニュアル・レポート2010」も発行しています。
ご希望の方は下記までお問い合わせください。
ウェブサイト:http://www.eisai.co.jp/community/inquiry/overall.html 電話:エーザイ株式会社 IR部 03-3817-5327
エーザイの企業理念 1
トップメッセージ 3
環境・社会報告書2010の読者の皆様へ
エーザイの事業活動 5
世界のヘルスケアの多様なニーズを充足するために
研究開発
10
病気だけではなく、
患者様を見つめて 初めて薬が生まれる。
製品供給
16
患者様のもとに届くまで、
すべてのプロセスで 安全で使いやすい薬を。
情報提供
22
薬の提供だけではない。
エーザイが患者様に お伝えしたいこと。
企業統治とコンプライアンス
29
経営の透明性を高めるために。
人材育成と働きやすい職場づくり
31
やりがいのある仕事の提供と を実践する人材の育成。
社会貢献活動
35
ヒューマン・ヘルスケア企業としての社会への貢献。
エーザイの環境活動
37
知識創造と環境の調和をめざして
Topic 1
38
新しい空調システムの導入で省エネに挑戦
Topic 2
39
現場から芽吹いたオフィスの環境保全活動
資源の投入と環境への負荷
41
環境マネジメント
43
地球環境への配慮を推進する仕組み
地球温暖化防止
45
省エネや再生可能エネルギーの導入によるCO₂の削減
廃棄物削減
47
資源の有効利用と廃棄物削減への取り組み
資源投入・環境負荷データ
49
資源投入・環境負荷データ(海外)
51 社会的責任に関する指標と
付加価値の分配 53
ステークホルダーズの皆様からのご意見 57
第三者審査報告書 62
C o n t e n t s
環 境・社 会 報 告 書 2 0 1 0 の 読 者 の 皆 様 へ
近年、製薬産業を取り巻く環境は劇的に変化してい ます。欧米では医療費抑制策やヘルスケア改革が進展 し、医薬品市場の成長ドライバーとして新興国の重要 性が増してきています。また世界の疾病構造は変化し、
心疾患やがんなどの非伝染病(non-communicable disease)の脅威が発展途上国にも拡大しているという 報告もあり、製薬産業に課せられた責務はさらに大きな ものとなっています。
一方で、画期的な新薬創出、高品質な製品の安定供 給、安全性の確保など、エーザイの事業活動の基本は 不変であり、これらを着実に追求していくことこそが製 薬企業としての最大の社会的責任(Corporate Social Responsibility)であると私は考えます。エーザイはヒュー マン・ヘルスケア( )理念に則り、事業活動を着実に かつ公正に進めていくことで、より多くの世界の患者様 に貢献できる企業をめざします。
ヒューマン・ヘルスケア理念と その実践のために
エーザイの企業理念である とは、患者様とそのご 家族の喜怒哀楽を第一義に考えるということにほかなり ません。医療の一翼を担う製薬企業として医療の主役 である患者様の真実を理解し、その方々のベネフィット 向上に努めることが、エーザイの事業活動なのです。私 たちはこの 理念を定款に定めており、すべての社員 が日々の事業活動を通じてこれを実践することで私たち に課せられた責任を果たしていきたいと考えています。
しかしながら、売上や利益を目標とするのではなく、
患者様を知るという 理念の実現を企業活動の目標 とすることはたやすいことではありません。
エーザイは、患者様の真のニーズを理解するためには、
患者様とできるだけ多くの時間を過ごし、同じ体験をす ることが重要であると考えています。そのため、社内に
「知創部」と呼ばれる専門部署を設置し、医療現場や 患者様のもとに実際に赴き、患者様の声にならない思 いを体感する「現場体験研修」を実施しています。また、
各部署単位で 理念を実現するプロジェクトを推進 し、優れた貢献をした活動を表彰するなど、社員が日々 の事業活動の中で企業理念を実践できるよう支援して います。
世界のアンメット・メディカル・ニーズ充足 における新たなチャレンジ
̶ 途上国における貧困層の方々への貢献
世界で40億人と言われる貧困層の方々の支援はグロー バル社会にとっての重要な課題です。特に途上国に おいて、いかにして薬剤を必要な方々にお届けすること ができるかは、エーザイが世界のアンメット・メディカル・
ニーズを充足する上で取り組んでいかなければならな い新たなチャレンジです。
エーザイは、途上国の方々の健康レベルの向上のた めには、継続可能な支援を可能にする新たなビジネスモ デルが必要であると考えています。
2009年度、新興国を対象に各国の社会・経済・医療 環境に合わせ、患者様が購入可能な価格で製品を提供 する「アフォーダブル・プライシング」の導入を本格的に始 めました。また、国際非営利財団やアカデミアとの協力に より、途上国で深刻な問題となっている熱帯病などのネグ レクテッド・ディジーズ(顧みられない病気)に対する治療 薬の開発を推進しています。さらに、国際製薬団体連合 会(International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations)等との協働により、
To p M e s s a g e
途上国の技術者の研修受け入れを行うなど、技術移転 を通した貢献に取り組んでいます(詳しくはP9でご紹介 しています)。
かけがえのない地球環境を保全するために
エーザイでは、地球環境の保護を重視した企業活動 を行うことを基本理念とする環境行動指針に基づき、環 境管理体制を整備して、環境保全活動を展開していま す。国内主要生産拠点においてはISO14001やエコアク ション21の認証を取得し、そのほかの事業所やグルー プ企業においても質の高い独自の管理体制を構築して、
継続的な活動と管理レベルの向上をはかっています。ま た、事業活動における資源の投入と環境への負荷を定 量的に把握し、省資源と環境負荷削減を進めています。
さらに、日本経済団体連合会の「環境自主行動計画」に 参加し、数値目標を設定し地球温暖化対策および廃棄 物対策に取り組んでいます。
特に2010年度は、日本製薬工業協会の事業方針の 重要課題の一つとして、新たな環境対策を行うことが取 り上げられています。エーザイとしても、今後想定される 国の環境政策を注視した対策、中でも温室効果ガス削 減対策を率先して実行できるよう検討を進めます。
エーザイは、今後もよき企業市民として、その の企 業理念に基づき、世界の患者様のベネフィット向上に貢 献していくとともに、ステークホルダーズの皆様の信頼 の獲得に努めてまいります。皆様のご支援を賜りますよ うお願い申し上げます。
代表執行役社長 兼 最高経営責任者(CEO)
売上総額
8,032 億円
世 界 の ヘ ル ス ケ ア の 多 様 な ニ ー ズ
エ ー ザ イ の 事 業 活 動
地球上には、まだ効果的な薬が存在しない病や、必要とする患者様に 充分な薬が届いていない状況など、様々な医療ニーズがあります。
エーザイはグローバルな製薬企業として、事業活動を通じて、
患者様とそのご家族の皆様のヘルスケアに貢献していきます。
1,480億円 18 %
プロトンポンプ阻害剤の「パリエット」は「アリセ プト」とともにエーザイの二大主力製品です。
逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの 治療に用いられており、世界80カ国以上で販売 されています。また、現在、さらなる有用性の拡大 をめざし、長時間作用型製剤の承認申請なども 行っています。
パリエット(米国名/アシフェックス)
799億円 10 %
エーザイでは1986年からがん関連領域の研究 に着手し、がんを縮小させることを目的とした抗 がん剤や抗体医薬など、多くの有力な化合物の 開発を行っています。また、がん化学療法に伴う 悪心・嘔吐に対する治療薬など、がん治療を支援 する薬剤の開発も進めるなど、多面的なアプロー チを試みています。現在、米国では、がん関連製 品の売上高が全体の20%以上を占めており、
がん関連領域への参入が急速に進んでいます。
がん関連領域
2,525億円
31 %
その他の品目
3,228億円 40 %
もっとも売上比率が高いのが自社で開発した アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」です。
同疾患の分野で有用性のある医薬品として、世界 70カ国以上で患者様のQOL(Quality Of Life:
生活の質)向上に貢献しており、剤形や高用量 製剤の開発も積極的に行っています。
アリセプト
7,830億円 97 %
エーザイの売上のほとんどは医薬品分野です。医薬品 には医師により処方される「医療用医薬品」と薬局や薬 店で購入可能な「一般用医薬品」がありますが、売上の 90%以上は「医療用医薬品」となっています。
医薬品分野
その他の分野 201億円
3 %
(2009年度データ)
エーザイは、「事業活動の目的は患者様価値の増 大である」と考えています。この目的を達成するため の原動力として、企業理念であるヒューマン・ヘルス ケア( )を定款に定めています。 の意味する ところは、いかなる時も患者様やご家族に思いを 馳せ、医療の一翼を担う企業としての使命を果たし、
世界の人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献 することです。エーザイは、 理念をグローバルで 1万人を超える社員で共有し、一人ひとりが日常業務 の中で 理念を実現することを推進しています。
理念実現のための専門組織「知創部」
エーザイには、 理念を実現するための専任組 織である知創部があります。知創部では、 理念 を全社員に浸透させ、実現に導くための様々な活動 を行っています。その一つに、組織単位で 理念 の実現を行う「 プロジェクト」の推進があります。
このプロジェクトでは、組織ごとに日常業務の中で 理念の実現にどう貢献できるかを考え、アクショ ンプランを作成・実行します。特に患者様貢献を果 たしたプロジェクトについては、社内で表彰する制度 があります。
また、知創部主催の「現場体験研修」と呼ばれる プログラムでは、介護・医療施設を訪問し、患者様と ともに時間を過ごすことにより、患者様の喜怒哀楽 に共感し、患者様視点を体得します。このほか、
参加者が体に重りやサポーターなどを装着すること で高齢者の日常活動動作を体験する「高齢者疑似 体験」など、 マインドを醸成する様々な研修を 実施しています。
エー ザイの 原 動 力 、 ヒューマン・ヘルスケア( )
こうした活動を通じて、研究者や、生産担当者、MR
(医薬情報担当者)など様々な職種にある社員すべ てが、自己の業務の意義や患者様のニーズを知るこ とができます。それはよりよい製品の創出へのモチ ベーションとなり、患者様の満足への道標となって います。
エーザイはヒューマン・ヘルスケア( )を追求 しています。それはエーザイの原動力なのです。
3つの領域に集中して新薬の開発を加速
エーザイはアンメット・メディカル・ニーズの高い「脳・神経領域」、「がん領域」、
「血管・免疫反応領域」を3大重点領域として、研究開発資源を集中的に投入し ています。特定の領域に特化することで、先端技術や医療動向などの最新情報 を把握し、より効果的な研究開発を進めています。
さらに、創業以来エーザイは独自の自社研究開発を続けています。現在も研究 開発には積極的な投資を行い、2009年度の研究開発費は1,791億円、売上高 の22.3%を占めるに至っています。中期的には、研究開発費率を20%程度に維 持し、安定的に投資していく方針です。
■
三大重点領域神経変性疾患(アルツハイマー病など)
その他の神経疾患(てんかんなど)
精神疾患(うつ病など)
抗がん剤
(がん縮小、増殖阻止、抗体治療など)
がん治療支援
(鎮痛、貧血、嘔吐治療など)
インテグレーティブ・
ニューロサイエンス
(脳・神経領域)
インテグレーティブ・
オンコロジー
(がん領域)
(鎮痛、貧血 急性冠症候群、
アテローム血栓症、敗血症、
関節リウマチ、乾癬、クローン病
血管・
免疫反応領域
研究開発から販売まで一貫した
「シームレス・バリュー・チェーン」
エーザイの大きな特徴は、研究・開発から、製造、販売まで一貫して自社内で構 築する「シームレス・バリュー・チェーン」を基本としていることです。研究開発型 の医薬品製造企業であるエーザイにとって、シームレス・バリュー・チェーンは、
効率性や生産性を維持するだけでなく、長期的な観点でのコストパフォーマンス や品質、サービスなどの維持・向上をはかる上でも欠かせません。そして何よりも 患者様の価値を生み出す上で不可欠なものととらえています。
研究 開発 生産 物流 マーケ 患者様
ティング 市販後 医薬品の 安全監視
未だ 満たされていない 医療ニーズの充足
高品質な 製品の 安定供給
薬剤の 安全使用のための
情報提供
現場体験研修
を 充 足 す る た め に
成長著しい中国での事業活動
中国は、エーザイの日本を除くアジア地域の売上の約半分 を占めています。今後も医療用医薬品市場の成長が見込まれ、
生産拠点の蘇州工場をはじめ、営業体制の強化や販売ネット ワークの拡大をめざすなど、積極的に事業を展開しています。
今後は中国市場の疾病構造に合わせて、主力品である「ア リセプト」「パリエット」とともに、肝疾患治療剤や糖尿病治療 剤、整形外科領域では筋骨格系疾患の治療剤などの新薬を 取りそろえていく予定です。
グ ロ ー バ ル に 広 が る 事 業 活 動
エーザイは、全世界30カ国以上で1万人を超える社員が事業を展開しています。
グローバルな製薬企業として、各地域の特性に合わせた事業展開を進めるとともに、
新興国における医薬品アクセス問題の改善にも積極的に取り組んでいます。
欧州ナレッジセンター
ノースカロライナ工場 モルフォテック・インク
売上構成比
45.0 %
欧 州
売上高
507
億円社員数
1,015
人生産・研究拠点:
欧州ナレッジセンター(英国・ハートフォード州)
営業拠点所在地:
英国、ドイツ、オーストリア、フランス、オランダ、
スペイン、イタリア、スイス、スウェーデン、
ポルトガルなど
E U R O P E
6.3 %
売上構成比
北 米
売上高
3,612
億円社員数
2,701
人生産拠点:ノースカロライナ工場 研究拠点:
アンドーバー研究所(マサチューセッツ州)、 モルフォテック・インク(ペンシルベニア州)
営業拠点所在地:ニュージャージー州
N O R T H A M E R I C A
蘇州工場 アンドーバー研究所
世 界 の ヘ ル スケア の 多 様 な ニ ー ズ を 充 足 するため に
新たな戦略拠点の誕生
2009年、エーザイは新たに欧州とインドにナレッジセンター を開設。「欧州ナレッジセンター」はロンドン郊外ハートフォー ド州のハットフィールドに建ち、研究から生産、マーケティン グ、欧州事業の統括機能を集約しています。
一方、インド・アンドラプラデシュ州に建設した「エーザイ・
ナレッジセンター・インド」は、将来のグローバルへの供給を視 野に入れ、エーザイとして初めて、医薬品の原薬・製剤の生産 および原薬のプロセス研究を1カ所に集約しました。
2010年3月末日現在 蘇州工場
ボゴール工場 エーザイ・
ナレッジセンター・
インド
美里工場(埼玉)
川島工園(岐阜)
鹿島事業所(茨城)
筑波研究所(茨城)
中 国
売上高
157
億円社員数
1,114
人生産拠点:蘇州工場 営業拠点所在地:上海など
C H I N A
売上構成比
2.0 %
売上構成比
44.8 %
日 本
売上高
3,597
億円社員数
5,675
人生産・研究拠点:
川島工園(岐阜県)
生産拠点:
美里工場(埼玉県)、鹿島事業所(茨城県)、 サンノーバ株式会社(群馬県)など
研究拠点:
筑波研究所(茨城県)、 株式会社カン研究所(兵庫県)
営業拠点所在地:
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡など、
全国67カ所
J A P A N
アジア 他
(日本・中国を除く)
売上高
159
億円社員数
910
人生産拠点:
ボゴール工場(インドネシア)、台南工場(台湾)、 エーザイ・ナレッジセンター・インド(インド・アンドラ プラデシュ州)
研究開発拠点:シンガポール 営業拠点所在地:
インドネシア、シンガポール、
マレーシア、タイ、フィリピン、
韓国、台湾、インドなど
A S I A
売上構成比
2.0 %
欧州ナレッジセンター エーザイ・ナレッジセンター・インド 台南工場
カン研究所
医 薬 品 ア ク セ ス 問 題 の 改 善 に 向 け て
今日、世界では、必要としている人々に必要な医薬品が届かないという現状があり、
その要因も社会インフラや医療システム上の問題、貧困と様々です。
エーザイは 理念に基づき、この医薬品アクセス問題の改善に向け、
持続可能な取り組みを続けています。
新興国における
アフォーダブル・プライスへの挑戦
エーザイでは、新興国各国の社会・経済・
医療環境に合わせ、患者様が購入可能な 価格で製品を提供する「アフォーダブル・プラ イシング」の実現に取り組んでいます。
すでにフィリピンでは「アフォーダブル・
プライシング」の第1号製品として、慢性B型 肝炎治療薬「REVOVIR」を既存品の約半額 で販売を開始しました。
また、新興国の疾患構造や医療ニーズの 実態を把握し、それらに対応した製品の取り そろえに取り組んでいます。
米国での医薬品アクセス問題 改善に向けて
米国では無保険者が4,700万人とも言 われ、医薬品アクセスが深刻な社会問題と なっています。エーザイは米国にて、経済的 な理由などから保険がない方や保険でのカ バーが不充分な方々を対象に、エーザイの 医療用医薬品を無償で提供する「ペーシェ ント・アシスタンス・プログラム」を展開して います。2009年には、約500万ドル(約4億 5千万円)相当の医薬品が対象となる患者 様に提供されました。
ネグレクテッド・ディジーズ への取り組み
病気の存在は知られているのに、有効な 治療薬が開発されていない病気を、ネグレ クテッド・ディジーズ(顧みられない病気)と 呼びます。シャーガス病はその一つであり、
ラテンアメリカおよびカリブ諸国で約1億人 が感染の危険にさらされています。
エーザイはシャーガス病の病原体への 有効性が確認されている抗真菌剤につい て、2009年9月に国際的な独立非営利財 団であるDND(Drugs for Neglected Diseases initiative)と提携およびライセ ンス契約を結びました。今後はシャーガス病 に対する新しい治療薬の臨床開発に向け、
DND に協力していきます。
また、今なおアフリカ、南アメリカ、東南 アジアなどを中心に流行を続けるマラリアに ついても、自社の研究によりマラリア脳炎へ の効果が期待できる化合物を開発しており、
現在、臨床試験段階にあります。また、大阪 大学と共同で新薬の創出をめざすプロジェ クトを開始しました。
発展途上国での
キャパシティビルディング
エーザイは医薬品アクセス問題の改善 には、医薬品の提供と同時に製薬企業が培 った知識や技術の発展途上国への浸透も
重要と考えています。エーザイでは、発展途 上国の医療における根本的な基盤強化(キ ャパシティビルディング)を目的に、製薬業 界団体を通じて各国から研修者の受け入れ を行い、発展途上国への技術移転に貢献し ています。
2007年にはカンボジアの政府保健省職 員を対象に、品質管理研修や偽造医薬品対 策などについて研修を行いました。
また、2010年度は、ナイジェリアからの 研修生を米国の研究開発部門に受け入れ、
12カ月にわたり医薬品の開発プロセスや臨 床研究に関する国際基準など、臨床研究の マネジメントに関する研修を実施中です。
日本におけるドラッグラグの 解消に向けて
世界で開発される医薬品が患者様に届け られるまでには、各国による治験(P13参照)
や承認審査などの要件をクリアする必要が あります。一方、近年、抗がん剤や小児疾患 の治療薬を対象に、欧米で認可されている 医薬品を日本でも使えるようにしてほしいと いう要望が増えており、現在、厚生労働省の
「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬 検討会議」で対応が検討されています。エー ザイはこうした日本におけるドラッグラグの 解消に向けた製品の開発と承認取得に取り 組んでいます。2010年5月には、希少疾患で ある、レノックス・ガストー症候群の日本にお ける開発に着手したほか、頻脈性不整脈治 療剤の小児の適応追加に関する承認を取得 しました。
病 気 だ け で は な く 、 患 者 様 を 見 つ め て 初 め て 薬 が 生 ま れ る 。
研 究 開 発
「アリセプト」のゼリー剤
アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」
のゼリー剤は、研究者自らが介護現場の声を 聞き、患者様の飲みやすさを考慮して生まれ た剤形。ゼリーは舌で簡単につぶせる硬さに 設計。さらに薬剤の苦味を海藻の成分で抑 えつつ、少し甘めのはちみつレモン風味とし ている。容器のカップは、高齢の方にも開け やすいように安定感がある薄型にし、スプー ンで一口の量を患者様に合わせ調整できる よう広口にしている。
Research and Development
h h c S t o r y
患 者 様 の 声 に 耳 を 傾 け
す べ て の 人 に や さ し い 薬 を 提 供 す る 。
2009年12月、エーザイは日本でアルツ ハイマー型認知症治療剤「アリセプト内服ゼ リー」を発売しました。
ゼリー剤の開発を開始した2002年当時、
「アリセプト」には錠剤と細粒剤しかなく、よ り認知症患者様にやさしい製剤が求められ ていました。開発当初、担当研究者がグルー プホームや老人保健施設を訪問し、介護の 実態を見学。高齢でえん下機能(食物を飲み 込む力)が低い方は、水などの液体はうまく 飲み込めずに肺に入ってしまう恐れがある こと、また、様々な理由で服薬を拒む方が多 くいらっしゃることがわかりました。一方、
施設ではゼリーを作り置きし、水分補給や 服薬補助に使っていることを知り、薬そのも のをゼリーにすることを思いついたのです。
また、ゼリー剤はその形状から、錠剤などに 比べて、服薬を拒まれたことのある方にも受 け入れられやすいのではないかという考え もありました。
ゼリー剤の開発には困難な問題もありま した。高温で製造するゼリー剤では、薬の成 分が分解しやすくなってしまいます。また、
薬として製品化するには、室温で3年間保存 できなければなりません。食品よりはるかに 長い期間です。さらに、ゼリーの硬さは硬す ぎるとのどに詰まる危険性があり、軟らか
すぎると全量をカップから取り出しにくくな るため、適切な硬さにする必要があり、非常 に高い技術が求められました。
しかし、500回を超える実験と、医療施設や 介護施設の協力により、開発に成功しました。
7年に及ぶ開発は、 の観点から「患者様の 飲みやすさ」を追求しつづけた結果でした。
現在、エーザイでは、患者様や医療現場の 真のニーズを理解し、研究開発に生かすた め、社員が医療・介護施設に赴き、患者様と ともに時間を過ごす活動を支援しています。
また、患者会の懇談会に参加したり、代表 の方々を招いた講演会を実施するなど、患 者様の声を聞く活動を推進しています。
本当のイノベーションとは、患者様と一緒に 過ごすことでのみ得られる気づきなくしては 生まれません。患者様のベネフィット向上に 貢献する薬の開発を行うために、エーザイの 社員は今日も患者様のもとを訪れています。
介護施設で入所者の方々と触れ合う社員
CJ部 企画推進室
原田 努
h h c S t o r y
研 究 開 発
エ ー ザ イの 研 究 開 発
エーザイでは特にアンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ)
が多く存在する、「脳・神経」、「がん」および「血管・免疫反応」の3領域において、有効 性、安全性、経済性に優れた医薬品の開発に積極的に取り組んでいます。
2009年度は、中でも新規抗がん剤「エリブリン」、真のライフセービングドラッグを めざす重症敗血症治療剤「エリトラン」の2つの新薬候補化合物に加え、すでに二大 主力製品となっているアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」の高用量製剤、
およびプロトンポンプ阻害剤「パリエット/アシフェックス」の長時間作用型製剤の 4テーマをフラッグシップ品目とし、重点的に研究開発・承認申請を進めてきました。
さらに、新しい組織体制として「エーザイプロダクトクリエーションシステムズ(EPCS)」
を構築。この体制下では、研究領域や機能別に組織された「プロダクトクリエーション ユニット(PCU)」が新薬候補の発明・発見から承認申請、承認取得に至るまでの一連 のプロセスにすべての責任を負います。この新たなシステムによって、開発期間の短 縮を実現し、未だ充分な治療法が確立されていない疾病の克服や患者様のQOL向 上に資する革新的な新薬の創出をめざします。
抗がん剤「エリブリン」
日米欧で承認申請
2010年3月、エーザイは自社で創製した 抗がん剤「エリブリン」について、乳がんの適 応で、日本、米国、欧州で同時に承認申請を 行いました。また、スイス、シンガポールでも すでに承認申請を行っています。
乳がんの治療法は年々進歩していますが、
進行性や転移性の乳がんでは治療の選択肢 も決して充分とはいえません。「エリブリン」
は新規の作用機序を有する抗がん剤で、
乳がんをはじめとして、非小細胞肺がん、
前立腺がん、肉腫などの固形がんに対する 効果が期待されています。
重症敗血症治療における 革新的新薬の開発
重症敗血症は、外傷、手術、火傷、がん などが引き金となり発症する全身性の炎症 反応を呈する重篤な疾患です。重症例では
敗血症性ショックや臓器不全などを引き起こ すこともあり、死亡率が大変高い病気です。
米国では、毎年20万人以上の方々が重症敗 血症で命を落としていると言われています。
エーザイはこの病気の治療薬として「エリ トラン」を開発しています。本剤は新規の 作用機序を持つエンドトキシン拮抗剤で、
現在、重症敗血症治療における真のライフ セービングドラッグをめざして第Ⅲ相臨床試 験が進行中です。
活 動 報 告
く す り が 生 ま れ る ま で
新薬が誕生するまでには、長くて厳しい道のりがあります。
新薬になりそうな候補物質の探索から、臨床試験や承認申請、審査など、
安全で、有効な薬を創るために、様々な過程を経ています。
主力品の価値向上に向けて
世界70カ国以上で販売されている主力 品アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプ ト」と、プロトンポンプ阻害剤「パリエット(米 国名:アシフェックス)」について、さらなる患 者様価値向上に向けた取り組みを進めてい ます。
2009年度は、「アリセプト」について、
錠剤を飲み込むことが困難な患者様のため に日本において内服ゼリー剤を開発し、発売 を開始しました。(P10〜11参照)
また、米国では中等度〜高度アルツハイ マー型認知症治療の選択肢を広げるため に、高用量製剤「アリセプト錠23mg」の承 認申請を行いました。
本剤は、体内で薬剤が徐々に放出される
よう設計された製剤で、安全性を維持しつ つ血中濃度を高めることで、有用性の向上 をめざすものです。
「パリエット/アシフェックス」については、
既存治療法では効果が不充分な逆流性食 道炎患者様のニーズ充足のため、長時間作 用型製剤の承認申請を米国と欧州で行う など、さらなる有用性の拡大に向けて開発を 行っています。
日本におけるドラッグラグ 解消に向けた取り組み
エーザイでは、厚生労働省「医療上の 必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会 議」で要望のあった製品など、日本国内のド ラッグラグ*1の解消に向けた薬剤の開発に
取り組んでいます。
2010年5月には、頻脈性不整脈治療剤
「タンボコール錠」の小児に関する適応追 加の承認を取得しました。
小児の不整脈は日常生活に影響を及ぼ す症状のみならず、小児期の突然死の主な 原因の一つと言われています。しかし、日本 では小児に対する不整脈治療剤として承認 されている薬剤が少なく、「タンボコール錠」
の承認をきっかけに小児医療の治療の選択 肢が広がることが期待されます。
また、重篤なてんかん症候群の一つであ るレノックス・ガストー症候群(LGS)*2に対 して、てんかん治療剤「ルフィナマイド」の臨 床試験を開始しました。「ルフィナマイド」は 欧米で4歳以上の小児と成人のLGSに伴う
基礎研究
(2〜3年)
薬となる可能性のある新しい物質(候補化 合物)や成分を発見したり、化学的に創出 する研究です。植物・動物・微生物などの天 然素材から抽出するほか、合成、バイオテク ノロジーなどの多様な科学技術を駆使した 手法が用いられます。
非臨床試験
(3〜5年)
培養細胞や動物で、候補化合物の有効性 や安全性などを研究します。
また、その物質の動態(吸収・分布・代謝・
排泄の過程)や、品質、安定性に関する試 験も行います。
臨床試験/治験
(3〜7年)
非臨床試験を通過した候補化合物の有効 性や安全性を、ヒトを対象に確認する段階で す。これは治験とも言われ、病院などの医療 機関で同意を得た方を対象に行われます。
※治験は大きく3つのステージに分かれています。
第 Ⅰ 相試験 : 通常、少数の健康な成人または患者様を対象として、治験薬の安全性や、治験 薬がどのように体内に吸収され排泄されるかを調べます。
第 Ⅱ 相試験 : 比較的少数の患者様に対して、第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲 で薬剤が使用され、薬の安全性、効き目、適切な投与量などを調べます。
第 Ⅲ 相試験 : 多数の患者様に対して薬剤を使用し、第Ⅱ相試験よりも詳細な情報を集め、実 際の治療に近い形での薬の効き目と安全性を確認します。
てんかん発作の併用療法として承認を得て おり、日本でも臨床試験を進め、新たな治療 手段の提供をめざしています。
ヘルスケア製品も ラインナップを充実
一方、患者様や生活者の皆様が薬局など で購入できる一般用医薬品(OTC)について も、新製品を続々と発売しています。
水なしで服用できるドロップタイプの乗り 物酔い薬「トラベルミン チュロップ」は、小学 校高学年以上のお子様向けに、さわやかな レモン味を追加しました。
女性の方々に人気のブランド「チョコラ BB」では、疲れケアの新製品「チョコラBB ローヤルT」を発売しました。疲れの原因の
一つであるエネルギー不足に対して、脂肪の 代謝を助けてエネルギーをつくり、バランス よい栄養を補給することで、栄養補給や疲労 回復の効果を発揮します。
また、2009年10月には、鼻の外側に塗る だけで、花粉やハウスダストの鼻腔内への侵 入を防ぐジェル「クリスタルヴェール」を発売 しました。マスクなどと異なり、息苦しさや化 粧落ちがなく、人体にも作用しないので、お 子様から妊娠・授乳中の方など、幅広い方に ご使用いただいて
います。
て
「トラベルミン チュロップ レモン味」
研 究 開 発
承認申請と審査
(1〜2年)
有効性や安全性、品質を確認した後、各国 の規制当局に承認の申請を行い、審査を 受けます。
日本の場合、厚生労働省に申請を行い、学 識経験者などで構成される薬事・食品衛生 審議会などの審査を受けます。
承認と販売
審査ののち、製造販売の承認を得ます。薬 の価格「薬価」の決め方は国によって様々 ですが、政府によって価格が定められる国 が多数あります。日本では、医療保険の対 象となる医療用医薬品の品目と薬価は薬 価基準制度に基づいて厚生労働省により 決められています。
製造販売後調査・試験
実際に医療機関で多くの患者様に使われ ることで初めて発見できる副作用や適切な 使い方に関する情報を継続的に収集しま す。その後の改良や次の新薬開発のヒント になることもあります。
*1 【ドラッグラグ】
欧米と日本との新薬上市の時間 差。現在、欧米で発売された新薬 が日本で発売されるまでには約4 年の差があると言われる。問題解 決に向けて、厚生労働省が対策を 検討しており、特に医療ニーズの 高い薬剤について製薬企業に開 発・承認申請を求めている。
*2 【レノックス・ガストー症候群】
Lennox Gastaut Syndrome : LGS 重篤なてんかん症候群の一つ。通 常、就学前の小児で発症し、複数 のてんかん症状型を示してコントロ ールが非常に困難である。発作が 頻回に発生することに加え、知的 発達の遅れやパーソナリティ障害 を伴うことが特徴。
(参考:日本製薬工業協会ウェブサイトなど)
* 行動指針はこちらでご覧になれます。
http://www.eisai.co.jp/company/compliance.html
研究開発での安全性や倫理はどのように確保されていますか ?
国際的なルールや c理念に基づくポリシーに則り、
研究開発活動を実施しています。
C o l u m n
公正で正確な研究活動は、エーザイの企業活動における 基本です。
医薬品の研究開発には、研究開発を実施する国の様々な 規制のほか、GLP(Good Laboratory Practice:医薬品の 安全性に関する非臨床試験の実施の基準)やGCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準)と呼ば れる、安全で倫理的な研究開発を行うために国際的に定めら れたルールがあります。
エーザイは、関連するすべての規制やルールを遵守し、
理念に基づく高い倫理観を持って医薬品の研究活動を行っ ています。
患者様の立場に立った臨床試験
エーザイは、臨床試験では、参加される患者様の人権や安 全の確保、福祉に対する配慮が何よりも優先されなければな らないと考えています。医薬品の臨床試験では、GCPという 国際的に定められたルールがあります。GCPでは患者様の安 全や人権を守るため、「インフォームド・コンセント」(被験者 に試験の目的や内容、リスクなどを説明し、自由意思による同 意を得ること)の実施や、被験者の自由参加を確認する審査 委員会の設置などを行うことを義務づけています。
エーザイは実施するすべての臨床試験において、GCPや 薬事法などの規制を遵守し、 理念に基づく高い倫理観を 持って医薬品の研究活動を行うことを、行動指針(後項参照)
として定めています。また、臨床試験の実施の際には、あらか じめ、臨床試験の倫理性や科学的な妥当性を委員会で検討す ることをグローバルな標準作業手順書に定め、倫理性の確保 に努めています。なお、臨床試験の透明性を高めるために、一 定の条件を満たす試験については適切なタイミングで正確に 情報開示を行い、医療関係者、患者様などが試験の情報に アクセスできるよう努めています。
動物福祉に配慮した動物実験
動物実験は、新薬開発において安全性および有効性を立 証するために必要不可欠であるとエーザイは考えています。
エーザイは、動物実験に関するルール・規制を遵守した研究 開発を推進しています。また、すべての動物実験は、厚生労働 省の「動物実験等に関する基本指針」に準拠し、外部専門家 を含む動物実験委員会により監督・管理されており、動物生 命の尊厳や動物実験の3R原則*を充分に配慮しています。
2009年度も、動物実験の実施状況を自己点検・評価し、適 正な実施を確認しました。
これらの動物実験への取り組みは、厚生労働省の定める基 本指針に基づき動物実験を適正に実施しているとして評価 され、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の動物実験実 施施設認証センターより認証を取得しています。今後とも引 き続き3Rの原則を踏まえた適正な動物実験の実施に努めて いきます。
適正な研究活動を行うための行動指針
エーザイは、適正な研究活動を推進するための取り組みの 一つとして、研究開発において必ず守られるべき事項を全世 界の社員を対象とした行動指針に規定しています。規定内容 の中には、臨床試験や動物福祉に配慮した動物実験に関す る項目のほか、新薬創出の過程で必要となる法規制対象の 化合物の取り扱い、環境負荷の低い研究開発、自社および他者 の知的財産の保護などに関するポリシーが記載されており、
すべてのエーザイ社員がこれを守ることを義務づけています。
行動指針はエーザイウェブサイト*でも公開しています。
* 3R : 使用する動物数の削減(Reduction)、動物を用いない実験の可能性の追求
(Replacement)、動物の苦痛軽減(Refi nement)
患 者 様 の も と に 届 くま で 、 す べ て の プ ロ セ ス で 安 全 で 使 い や す い 薬 を 。
製 品 供 給
「コアテック」の改良ラベル
急性心不全治療剤「コアテック」。発売当初 のラベルは白地に青字のラベルだったが、
医療機関から「他社製品と似ていて、取り違 えの原因になる」との意見があり、ラベルの 変更・改良を検討。現場の声を受け、品質 管理・生産部門などの調整を行い、ラベルを 改良。改良後のラベルは青地にオレンジ色 を使い、識別性を向上させた。
Stable supply of products
h h c S t o r y
医 療 現 場 か ら の ご 意 見 を い ち 早 く 生 産 現 場 に 伝 達 。
2006年、エーザイはアンプルのラベルを 一斉に識別性の高いデザインへと変更しま した。きっかけは、急性心不全治療剤「コア テック」の白地に青字のラベルが「他社製品 と混同しやすい」という医療機関からの声で した。エーザイでは、こうしたご意見がお客 様ホットラインやMR(医薬情報担当者)を 通じて、パッケージのデザイン作成・変更 推進などを行う生産技術部門へ伝えられ、
速やかに関係部署間で協議されます。特に
「コアテック」は心疾患に用いられる薬であ り、万が一取り違えが発生した場合の影響 を考え、品質管理部門や生産部門を交えて、
早急なラベル変更を検討しました。
医薬品の包装やラベルの文字の色・大き さは法律で指定され、情報の提示など、多く の制限の中でデザインされる特殊な環境に あります。多くの制限の中では、どうしても各 社の製品のデザインが類似してきてしまい ます。
そこで、生産技術部門ではアンプルが格 納されている個装箱と連動したラベルデザ インを採用し、識別性を高めました。
こうして生まれたのが、青地にオレンジ色 をポイントにした「コアテック」の改良ラベル です。
ところが、改良ラベルの生産には障壁があ りました。アンプルはきちんとラベルが貼付
されているか、工場の検査機で検査されて いますが、当時の検査機では、白地など淡い 色のラベルでないとラベルの有無を検知で きなかったのです。そのため地色の濃淡や検 査機の調整が必要になり、検知困難な地色 については見本を使って、工場でのテストを 何度も繰り返しました。
各部門や生産現場がともに取り組んだラ ベルの改良は、ご意見をいただいてから約半 年で実現に至りました。その後さらに検討が 行われ、その結果アンプル剤のうち、ラベル 変更の必要がある15製品17包種すべてに ついて改良を実施することとなりました。
現在、医療現場では、医療過誤を防ぐた めにも、医薬品のパッケージまでわかりやす さ、使いやすさが求められています。
エーザイは製品に対するご意見に真摯に 耳を傾け、より安全で使いやすい製品に向け て改良を続けていきたいと考えています。
美里工場の包装工程
エーザイデマンドチェーンシステムズ テクノロジー戦略
虎澤 吉紀
h h c S t o r y
製 品 供 給
エ ー ザ イの 製 品 供 給
「我々の造る一錠、一カプセル、一管が患者様の命とつながっている」。
エーザイはこのエーザイグループ品質方針に基づき、高品質な医薬品をグローバル に供給するために世界各地域に適合した品質保証体制の構築や、社外の有識者から の評価を定期的に受ける仕組みづくりなどを進めています。エーザイの品質保証は、
製造工程だけではなく流通段階での製品の適切な保管・取り扱いも含まれ、国際基準 であるGMP(医薬品の製造管理および品質管理の基準)や各国の法令に則った適正 な生産供給活動を推進しています。
また、2010年6月には製品の安定供給視点から、お客様の需要(デマンド)へ目を向 け、組織名もエーザイデマンドチェーンシステムズへと変更。基本方針を「すべては 患者様とそのご家族、そして生活者のために」と定めました。各地の生産拠点で患者会 の方々を工場見学会に招へいするなど、患者様との共同化を強化し、顧客歓喜(P24 参照)への活動をグローバルに展開しています。
海外では、英国とインドに生産拠点が竣工し、グローバルな生産体制、アフォーダブ ル・プライシングによる製品供給を一層進めていきます。さらに、患者様の安全を脅か すグローバルな問題である「偽造医薬品」への対策についても、継続的に取り組んで います。
医療過誤防止への試み
エーザイでは、医療現場での製品の取り 違えなどの防止に向け、様々な活動を行って います。
2009年度は、錠剤やソフトカプセルの生 産時に、その表面にレーザーで印字できる 技術を開発。一部の製品について製品名を カタカナで表示し、読み取りやすくする取り 組みを行いました。これは、医療現場で薬が 正しく処方され、患者様にも安心してご使用 いただけることにつながっています。
また、IT化の進展に伴い、バーコードに加 え、ICタグの活用にも注目しています。医薬 品には、その製品を特定するためのバーコー ドが表示され、また、生物由来製品などには、
流通経路を追跡できるよう、製造ロットや有 効期限もバーコードで表示されています。
さらに、ICタグは情報の読み取りや書き込 みでバーコードにない利点を持ち、緊急使 用時の記録や病室でお休み中の患者様の確 認など、今後の医療現場での幅広い活用が 期待されます。
エーザイでは、すでに一部の国内医療用 医薬品の梱包箱でICタグラベルを貼付し、流 通でのトラッキング強化を進めているほか、
昨年は、調剤単位としても造影剤の「イオメ ロン注シリンジ」に貼付しました。今後も、医 療過誤防止の観点から、バイアル等の個別 の容器や包装への導入をめざしていきます。
破損しにくい薬の包装へ
錠剤やカプセル剤が入ったPTP包装*の シートの角が、箱の落下によって割れる「シー ト破損」は、製品クレームの中でも発生件数 が比較的多く、早急な対応が求められていま した。
そこで、破損の比較的多い製品について、
シートの角の丸みを破損しにくい大きな 丸み形状に変更するとともに、一部の製品で は、シートの材質を衝撃に強いタイプのポリ プロピレンに変更しました。
これら改良された製品は、2009年12月 から順次、出荷を開始しています。
活 動 報 告
く す り が 届 く ま で
高品質で安全な薬が患者様のもとに届くまでには、
いくつもの生産工程と品質・安全性のチェックが行われています。
ここでは、錠剤やカプセル剤の製造工程をご紹介します。
生産拠点における 新型インフルエンザ対策
2009年度、エーザイでは、新型インフル エンザ(H1N1)への対応について、グロー バルな基本方針をまとめました。この方針で は、社員の安全の確保や感染拡大の防止に ついて規定しているほか、有事の際の製品 供給を含む事業継続性についてもその考え 方をまとめています。
新型インフルエンザの感染が認められた 日本では、すべての生産拠点で出社前検温、
製造エリア入室時検温を実施したり、工場 内への入門規制を強化しました。
現在は流行の沈静化を受け、徐々に対応 を緩和していますが、今後もパンデミック対 策として感染予防策を継続します。
患者会を対象とした 工場見学会を実施
国内の生産工場では、患者様とご家族の 方々の声を直接伺い、社員一人ひとりが患 者様の真実を理解することを目的に、患者様
をお招きし、工場見学会を実施しています。
2009年8月、川島工園では、地元の患者 家族会14組を招へいし、工場見学会を開催 しました。工場では包装工程の見学に加え て、化学実験の体験会やくすり博物館の見 学などを楽しんでいただきました。また、患 者様が製薬企業に期待されることやエーザ イの をテーマとした意見交換会も開催 しました。
一方、美里工場でも、2009年8月に患者 家族会の方々を招へいしました。「ご家族の
厳密な計量で1粒1粒に効き目を いくつもの検査を経て薬の姿に
原料入庫〜計量 造粒・整粒 充填・打錠
製造工程では、人為的ミスをなくすため、材料を 無人搬送車で運びます
1カプセル毎に適量の薬を注入し、ロックをして いきます
長い研究開発を経て創られた薬は、工 場で製品化されます。薬の主成分とな る原薬は正しい効き目を発揮するため に、必要な量が正確に計量されます。
その後、固まりやすくするために添加物 などとともに混合し、均一に主成分が 入った顆粒にします。
顆粒は、その後の工程を経て錠剤やカプ セル剤になります。錠剤の場合は、顆粒 に圧力をかけて錠剤の形にし、さらに必 要に応じて薬の苦味などを覆うために砂 糖の入った液などで錠剤をコーティングし ます。一方、カプセル剤は、顆粒を直接カ プセルに充填します。また、各製造工程 においても品質のチェックを行います。
混合
思い出に残る夏休み体験」をテーマに製造 工程見学や実験教室などを開催しました。
生産活動の中では、製薬企業の社員が直 接患者様と日常的に接する機会は少なく、
今回のような試みは非常に貴重な体験とな りました。このような体験を通して、新たな 気づきや患者様の思いを知り、生産活動に 生かしていく取り組みを今後も継続的に続
けていきます。 美里工場での患者様との交流
* 【PTP包装】
Press Through Package 錠剤やカプセル剤に一般的に使 用されている、押して取り出す包装 のこと。
製 品 供 給
患者様が使いやすい薬として
印刷・包装 流通、そして患者様へ
PTP包装からダンボールの箱詰めまで、一つの ラインで製造しています
錠剤やカプセル剤になった薬は、何の薬か見分けがつくように、一つひと つに数字や記号を印刷し、さらに大きさがそろっているか、印刷がきちんと されているかなどをチェックする外観検査を行います。こうして作られた薬 は包装工程に送られ、一般に多く使用されているPTP包装などが行われ ます。包装時にも、決められた数量の錠剤やカプセル剤がボトルやPTPシ ートに入っているかどうかの検査が行われ、不良品は取り除かれます。包 装された薬は必ず添付文書とともに箱詰めされていきます。
我々の 造る一 錠 、一カプ セル 、一 管 が 患 者 様 の 命とつながっている
エ ー ザ イ グ ル ー プ の 品 質 方 針
製品となった薬は、いくつもの品 質検査を経て、出荷され、ようやく 患者様の手元に届きます。エーザ イでは、患者様のために高品質で 安全な薬を、早く届けるための生 産物流体制を築いています。
外装 PTP包装
出荷
品質保証体制はどうなっていますか ?
偽造医薬品対策の新しい取り組みは?
グローバルな品質保証体制を築いています。
プロダクト・セキュリティ体制を構築しました。
C o l u m n
グローバルな品質保証体制
高品質な医薬品の安定的な供給を通じて患者様に貢献 するため、製剤技術研究(品質設計)から生産(製造品質)
そして流通(流通品質)を経て、患者様の服用(顧客品質)ま での品質確保に努めています。
医 薬 品 はGMP(Good Manufacturing Practice)と 呼ばれる「医薬品の製造管理および品質管理に関する基準」
に則って製造することが求められます。
エーザイのグローバルな品質保証体制の基本的な枠組み は、コーポレートQA(Quality Assurance : 品質保証)
機能を軸として、日米欧アジアの各地域QA機能および、実 際の製造を担当する工場のQA機能の3レベルの品質保証 責任者で構成されています。
グローバルに違法行為を防止
偽造医薬品とは、意図的または詐欺目的で医薬品名や 製造・販売元が偽表示されている医薬品のことです。包装が 偽造であるもの、有効成分が含まれていない、あるいは量が正 しくないものなどがあり、見分けるのは困難なのが現状です。
日本国内での広がりはまだ一般的ではありませんが、イン ターネットでの医薬品販売の普及などもあり、グローバルな 問題として懸念が広がっています。
エーザイは2009年4月、偽造医薬品や不法な製品流 通、異物混入など、製品に関わる違法行為にグローバル に対応するため、グローバル・プロダクト・セキュリティ体 制を構築しました。この体制下では、ガイドラインの作成
安全性情報の共有
エーザイはグローバルに展開している製品(臨床開発中の 化合物を含む)について、その安全性情報を世界中で収集・
評価し、適切な対策を講じるために「医薬品安全性監視に関 するコーポレートSOP(標準作業手順書)」を定めています。
各拠点がこのコーポレートSOPを遵守することで、各国・地 域の関連する法令に従い、必要な安全性情報が患者様・医療 機関に迅速に伝達される体制を整えています。
さらに、各地域の安全性専門医師などでエーザイGlobal Safety Boardを組織し、臨床開発中の化合物を含む製品の 医薬品安全性問題を議論し、添付文書改訂の提案などの意 思決定をしています。
に加え、製造から販売における違法行為を防止する環境づく りや、違法行為のデータの分析とデータベース化、行政など との関係構築を行います。
包装への工夫で偽造医薬品対策
エーザイの国内工場では2007年から偽造医薬品に対し て、ホログラム技術を利用した偽造防止ラベル、カラーシフト などを包装に取り入れて対策を行っています。
海外の拠点においてもノースカロライナ工場、蘇州工場、
台南工場、ボゴール工場などで対応をしています。また、日本 からアジアや中東諸国などへ輸出している医薬品も2008年 8月の生産からホログラムの対応を開始しています。