前回
ラグランジアンからハミルトニアンへの変換(ルジャンドル変換)
ラグランジアンL
(
q,q&)
に対して、一般化運動量 L(
q q)
p q &
& ,
∂
= ∂ とするとき、
L q p
H = &− をハミルトニアンと呼ぶ。
このとき、ハミルトニアンの変数は自動的にH =H
(
p,q)
となっている。ハミルトニアンは、正準方程式
∂ =
∂
−
∂ =
∂ p q H q p H
&
&
を満たす。
エントロピーと体積の関数になっていて扱いにくいU
(
S,V)
に対して、TS U S S
U U
F ⋅ = −
∂
−∂
= と置くと、F =F
(
T,V)
はT, S の関数になっている(但し、
(
S V)
S T U ,
∂
≡ ∂ である)
これもルジャンドル変換である。
10正準変換
10-1ラグランジアンの変数変換【復習】
座標変換
( )
( )
=
=
n n
n
n
q q Q Q
q q Q Q
L M
L , ,
1 1 1 1
についてそのままラグランジュ方程式が成立。
つまり、 =0
∂
− ∂
∂
∂
∂
− ∂
∂
∂
i i i
i Q
L dt
d Q
L q
L dt
d q
L
&
& a
例)
−
= +
= y x Y
y x
X a
&
&
&
&
&
&
a
−
= +
= y x Y
y x
X
( )
を消去 して、
に代入 y x y x
y x y x L
&
&
&
&
, , , , , ,
=
∂
− ∂
∂
∂
=
∂
− ∂
∂
∂
0 0
Y L dt
d Y L
X L dt
d X
L
&
&
a
10-2 証明
10-2-(A) 準備
Q&iの変換式をq&iで偏微分して、
i i i
i
q Q q
Q
∂
= ∂
∂
∂
&
&
を得て置く。
10-2-(B) QとQ&がどのようにLに含まれているかを調べる(ここが肝心)、
( )
(
n n) ( n n)
i i
n i
i
i L q q q q
Q q
Q Q Q Q q q
Q Q q q
Q a & &
&
&
&
&
&
&
a ~ , ~
,
~ ,
~
~
1 1
1 1
1
=
=
の両方を経由
( ) ( )
n n
n n
i i
i L q q q q
q
Q Q Q Q q
Q q a & &
&
&
&
&
&
& a ~ , ~ ~ , ~
1 1
1 1
=
のみを経由
(量子力学を学ぶための解析力学入門/高橋, p25)
Qはqとq&を経由してLに入るのに対し、Q&はq&のみを経由しています。
これさえ把握できれば、以下2), 3) の偏微分を計算するだけです。
10-2-(C) 第一項は、
∑
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂
j i
j j i j j
i Q
q q
L Q q q
L Q
L &
&
10-2-(D) 第二項は、
∑
∑
∑
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂
j i
j j
i j
j i j
j
j i j
j j
i Q
q dt
d q
L Q q q
L dt
d Q
q q
L dt d Q q q
L dt
d Q
L dt
d
&
&
&
&
&
&
&
ですから、両辺等しいと置いてみると、
0
∑
∂ + ∂
∂
∂
∂
− ∂
∂
= ∂
j i
j i j j
j Q
q Q q q
L dt
d q
L &
& となり、元のラグランジュ方程式が成り立て
ば、新しい変数についても必ず同じ形の方程式が成り立つことがわかります。
(証明終)
10-3ハミルトニアンと正準方程式における変数変換
もう少し広い変換が許されます。
(
q,p)
→(
Q,P)
という変換について、運動量と 座標の入り混じった新変数を定義しても正準方程式は不変です。( )
( )
−
=
=
=
=
Q P n
n i
i
n n
i i
H P
H Q p
p q q P P
p p q q Q Q
&
&
L a
L
L L
1 1
1 1
,
,
たとえば、x+ pなどという変数を平気で定義してしまうのです。
注)qとq&を混ぜる変換ではラグランジュ方程式は成り立ちません
省略)理由は、証明の10-2-(D)のところで、
∑
∂∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂
j i
j i j
j
i j Q
q q
L Q
q q
L Q
L
&
&
&
&
& 余分な項 のように、
余分な項が出てくるからです
この点では、ハミルトニアンの方が圧倒的に便利
10-4 正準方程式が不変に保たれる変換=正準変換
出発点である、『ラグランジアンと最小作用の原理』に再び立ち戻ります。
ハミルトニアンを一旦ラグランジアンに戻して、それが「同等(=最小作用の原 理を満たす)」であれば、同じ運動なのですから、変数変換した新変数で同じ正
準方程式が成立、といってよいでしょう。
つまり、変換後のL′=
∑
PiQ&i −H′(
Qi,Pi)
が、L =∑
piq&i −H(
qi,pi)
と『同等』であれば良いということです。
ここで、「同等」と言ったのは、完全に同じでなくとも、
dt L dW
L = ′+ というふ
うに付加項が付いてもOKということでした。すなわち、
(
i i)
i
iQ H Q P
P
L′=
∑
& − ′ ,( )
dt p dW q H q
pi i − i i +
=
∑
& ,でもOKということです。
注)時間微分が付いても、積分すると定数になるので、最小作用の原理
に影響しないのでした。
( )
1(
4( ) ( )
4444)
244( ( ) ( )
4443)
&
)には寄らない定数 途中の値(=関数の形
1 1 2
2 , ,
2 ,
1
t Q t q W t Q t q W dt Q q W
t
t = −
∫
注)厳密には、この「ラグランジアンもどき」の最小作用の原理は、
証明が必要で、かつ、この場合はδp&も始点終点でゼロが必要。
10-5 Wの意味
Wが与えられた正準変換がどんな変換か、一番よく特徴を表す指標になってい ます。云いかえれば、Wが決まれば正準変換がひとつ決まると云ってもよいの です。このWと正準変換の関係を調べて見ましょう。
変換
(
p,q)
→(
P,Q)
、すなわち、(
n n)
i
i q Q Q P P
q = 1L , 1L
(
n n)
i
i p Q Q P P
p = 1L , 1L , i=1 ~ n
が正準変換であるとします。すると、変換前後で、ラグランジアンもどきが同
じ(=dW/dtが付く)ということですから、
(
i i)
i
iq H q p
p
L =
∑
& − ,( )
dt P dW Q H Q
Pi i − ′ i i +
=
∑
& , となります。ここでWが、W =W
(
q1Lqn,Q1LQn)
と与えられているとします。どの変数の関 数であるか重要です。今は、qiとQiの関数、としたわけです。すると、
∑
∂ +∂
∂
= ∂
i
i i i i
Q Q q W q W dt
dW & & となります。
注意──変数は必ず二種類で、最小作用の原理から正準変換を 直接導くには必ずqiとQiを変数にする必要があります。
時間微分するので、Lに含まれる時間微分変数q&iとQ&iが必要なわけです。
これをラグランジアンの変換の式L =
∑
piq&i−H(
qi,pi)
=Lに入れますと、右辺
∑ ( ) ∑
∂ + ∂
∂ + ∂
− ′
= i
i i i i
i i
i Q
Q q W q P W
Q H Q
P & , & &
(左辺はL =
∑
piq&i −H(
qi,pi)
)となりますから、両辺をq&とQ&について整理してみると、
( ) ( )
∑
∑
∑
= − ′
∂
−∂
−
∂
−∂ i i i i i
i i i
i
i Q H q p H Q P
Q P W q q
p W & & , ,
です。
10-6 恒等式から変換式を導く 両辺が恒等的に等しくなるためには、
[1] まず、左辺のq&とQ&の係数(括弧の中身)がゼロになる必要があります。
∵ 右辺には、q&とQ&は全く入っていないからです。
[2] すると、0=右辺となりますから、HとH′も等しくなくてはならないこと がわかります。以上から、
( )
i
n n
i q
Q Q q q p W
∂
= ∂ 1L , 1L
,
( )
i
n n
i Q
Q Q q q P W
∂
−∂
= 1L , 1L
, H
(
pi,qi)
=H′(
Pi,Qi)
が変換式ということになります。
注意)単純に、P=L, Q =Lという式ではないことです。つまり、
(
q Q)
f
pi = , , Pi =g
(
q,Q)
という連立方程式であり、これを解いて初めて、
(
pi,qi)
→(
Pi,Qi)
の変換が直接得られる、と考えるのです。もう一つ、H′= Hの意味は、関数形が同じということではなく、新変数で変数 変換したH′をそのままハミルトニアンとせよ、ということです。念のため。
このように、あるWを与えれば、正準変換がひとつ決まります。このWを、
正準変換(canonical transformation)の母関数(generator)
と言います。とにかく、いろいろな、W を与えて、正準変換を網羅しよう、と いうのは一番シンプルな考え方です。
実は、与えられた変換
(
pi,qi)
→(
Pi,Qi)
が正準変換かどうかを直接チェックする のは結構、面倒なのです。その便法が「ポワソンの括弧式」と呼ばれるもので後半で説明します。
10-7 母関数の例1
( )
=−∑
i i i i
i Q qQ
q
W , としましょう(他の変数は後で)。すると、直ちに
i i
i Q
q p W =−
∂
= ∂ , i
i
i q
Q
P W =
∂
−∂
= が得られます。
たとえば、質点の自由落下のハミルトニアンは、
m mgq H = p +
2
2
ですから、変換後は、 mgP m
H′= Q + 2
2
であり、変数名が入れ代わ っただけです。(ただ入れ替えただけでは正準変換にならないことに注意!!!!)。
10-8 具体例2─ポワンカレ変換
もう少し自明でなくて面白い変換を考えましょう。W q cotQ 2
1 2
= という奇妙な 形のものです。変換は、
Q q q
p W = cot
∂
= ∂
q Q Q
P W 2 2
sin 1 2
= 1
∂
−∂
=
ですから、qを消去するために、上式の自乗を下式で除して、
Q Q
P Q
p2 2 2 2
cos 2 sin
cot
2 =
= となりますから、
Q P
p= 2 cos が得られ、これを q Q q
p W = cot
∂
= ∂ に代入して、
Q Q P
q p 2 sin
cot =
=
という変換であることがわかります。
これをm=1,ω0 =1の調和振動子に適用すると、
2 2
2
2 q
H = p + は、 P Q P Q P
H′= + =
2 sin 2 2
cos
2 2 2
となってしまいます。
正準方程式は、
=1
∂
∂ ′
= P Q& H
=0
∂
∂ ′
−
= Q
P& H です。
=1
Q& ということは、Q
( )
t =t+Q0であり、まるで直線運動です。一体全体何が起こったのでしょうか。これを理解するには、運動を、
(
p,q)
の間の関係として捉えるとよいでしょう。
もともとのハミルトニアンは、
2 2
2
2 q
H = p + でしたから、エネルギー保存則を思
い出せば、
(
p( ) ( )
t ,q t)
を二次元平面にプロットしてみると円運動です。座標と速 度が増減を繰り返しながらぐるぐる廻っているのです(この二次元平面を「位相 空間」と言います。統計力学でも出てくる、重要な概念で、次回説明します)。 これに対し、与えられた変換p= 2PcosQ、q= 2PsinQは、明らかにPが半 径で、Qが角度です。つまり、円運動を極座標で表すという変換だったわけで す。この変換をポワンカレ変換と言います。一般の調和振動子のハミルトニアン
2 2
2 2 0
2 m q
m
H p ω
+
= に対するポワンカレ変換
は、p= 2mω0PcosQ, Q m
P Q
q p 2 sin
cot = ω0
= です。これに対する母関数や正
準方程式を求めてみます。
(
q Q)
q p W ,
∂
=∂ ,
(
q Q)
Q
P W ,
∂
−∂
= ですから、
変換式からPを消去すれば、母関数の第一の式
(
q Q)
q p W ,
∂
=∂ が使えます。
すなわち、 m Q q
p = ω0cot より、
(
q Q)
m q Qq
p W , = ω0 cot
∂
=∂ となって、W
(
qQ)
= m q cotQ+ f( )
Q2
, 1 ω0 2
が得られます。 f
( )
Q は任意関数ですがゼロとします。10-9母関数のルジャンドル変換
(
q Q)
W
W = , ではなく、pやPを変数には出来ないのでしょうか。
「変数を変える」といったら、前にやったルジャンドル変換です。
( )
=−∑
+ ′( )
i
i i i
i i
i Q PQ W q P
q
W , , とおいて
( )
dt Q q L dW
L ,
′+
= に代入すれば、
( ) ( )
4 4 4 4 4 4
4 3
4 4 4 4 4 4
4 2
1
&
&
&
&
4 4
4 3
4 4
4 2
1 &
4 4
4 3
4 4
4 2
1 &
dt dW
i i i i i i i
i L
i i i
i L
i i i
i P
P q W q Q W P Q
P P
Q H Q P p
q H q
p ∂
∂ ′
∂ +
∂ ′ +
−
′ −
−
=
−
∑ ∑ ∑
∑
′
, ,
P P Q W P q q q W p H
H & & & &
∂
∂ ′ +
∂ −
∂ ′ +
−
=
′−
∴
∑
となり、前と同じ議論(左辺にはq&, P&は含まれていないので、右辺のq&, P&の係数はゼロ) により、
変換
( )
i
i q
P q p W
∂
∂ ′
= ,
,
( )
i
i P
P q Q W
∂
∂ ′
= ,
, H = H′が得られます。
例えばW′=qPは恒等変換。
∵)
( )
q P qP q
p W =
∂
= ∂
∂
∂ ′
= 、及び
( )
P q qP P
Q W =
∂
= ∂
∂
∂ ′
=
注) ここでW′ , L′などは微分ではなく、別の関数ということです。
10-10 Poissonの括弧式
母関数から変換を generate するのではなく、与えられた変換が正準変換である かどうかをチェックするPoissonの括弧式と呼ばれるものがあります。
これは二つの変数A,Bに対する「Poissonの括弧式」というものを、
[ ] ∑
∂
∂
∂
− ∂
∂
∂
∂
= ∂
i i i i qi
A p B p B q B A
A,
と定義します。
(
p,q)
は、正準変換を行う前に使っていた変数です。書き方はい ろいろで、[
A,B]
、{
A,B}
とか、「ポワッソン」であることを[
A,B]
Pと書いて示したりしているようです。このポワッソンの括弧式の性質として、定義から明 らかに、
[
A,B]
=−[
B,A]
および[
A,A]
=0です。それから、もう一つ、重要なこととして、どの正準変数
(
p,q)
で偏微分しているのかを、はっきり明記しておく必要があります。
変数変換
(
p,q)
→(
P,Q)
において、このポワッソンの括弧式の値が不変に保たれ ている場合、その変換は正準変換になります。すなわち、] , [ ] ,
[pi qj = Pi Qj 、[pi,pj]=[Pi,Pj]、[qi,qj]=[Qi,Qj]
の三式が成り立てばOKというわけです。微分はすべて元の変数です。
注)一番目はδij,二番三番はゼロです。
10-11 証明
10-11-(A) 元の変数における括弧式
[
pi,qj]
[ ] ∑
∂
∂
∂
−∂
∂
∂
∂
= ∂
k k
j k i k
j k i j
i p
q q p p p q p q
q ,
ですから、 ik
k i k i
q q p
p =δ
∂
= ∂
∂
∂ 、及び、 =0
∂
= ∂
∂
∂
k i k i
p q q
p 等に注意すると、
[ ]
ijk
jk ik j
i q
p , =
∑
δ ⋅δ −0⋅0=δが得られます。もちろん、
[
,]
= 0⋅ −0⋅ =0∂
∂
∂
−∂
∂
∂
∂
=
∑
∂∑
k
ik jk
k k
i k
j k
j k i j
i p
p q p p p q p p
p δ δ
なども簡単に得られます。
次に、変換後の変数の括弧式は、
[ ] ∑
∂
∂
∂
−∂
∂
∂
∂
= ∂
k k
i k
j k j k
i j
i p
Q q P p P q P Q
Q, です。
10-11-(B) 母関数の準備
まず
( )
i
n n
i q
Q Q q q p W
∂
= ∂ 1L , 1L
,
( )
i
n n
i Q
Q Q q q P W
∂
−∂
= 1L , 1L
より、
一つ目の式を使って、
j k k
j j
k k
j
Q p q
W Q Q
W q
q P
∂
−∂
=
∂
∂
∂
− ∂
=
∂
− ∂
∂
= ∂
∂
∂ ─( I )
を得ます。
次にさっきやった母関数のルジャンドル変換 ′′
( )
=( )
−∑
i i ip q Q
q W Q p
W , , から、
さらに、
( )
dt Q q L dW
L ,
′+
= を使って、
( )
i
i p
Q p q W
∂
∂ ′′
−
= ,
,
( )
i
i Q
Q p P W
∂
∂ ′′
−
= ,
が得られるので、このうち、
二つ目の式を使って、
( ) ( )
j k k
j j
k k
j
Q q p
Q p W Q
Q Q p W p
p P
∂
= ∂
∂
∂ ′′
∂ −
= ∂
∂
∂ ′′
∂ −
= ∂
∂
∂ , ,
─( II )
となります。以上I、IIを括弧式に戻してやると、
[ ]
{ {
{ } { }
( )
ij j i k
p q Q Q
k i j k j k k
i
k k
j
W k i
W k
j k
i j
i dQ
dQ p
Q Q
p Q q q Q p
Q q
P p P q P Q
Q = =δ
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
=
∑
∂∑
′′ 1444= 24443
,
,
より より
となって確かに一致します。ほかのものも同様にして証明できます。
10-12 ハイゼンベルグの運動方程式
ポワッソンの括弧式の他の性質を見てみます。任意の関数F
(
q,p)
を時間微分してみると、
∑
∂+ ∂
∂
= ∂
i
i i i i
p p q F q F dt
dF & &
です。正準方程式を思い出すと、
i
i p
q H
∂
= ∂
& 、
i
i q
p H
∂
−∂
& = ですから、代入すれば、
∑
∂∂
∂
− ∂
∂
∂
∂
= ∂
i i i i qi
H p F p H q F dt
dF
となり、これはポワッソンの括弧式の定義そのものです。よって、
[
F H]
dt dF = ,
が得られます。
これは、量子力学では「ハイゼンベルグの運動方程式」と呼ばれるものです。
どんな量でも、時間微分を知りたければ、ハミルトニアンとのポワッソンの括 弧式を計算すれば「機械的」に求まる、というわけです。
10-13 例)ハイゼンベルグの運動方程式と正準方程式
たとえば、F =qあるいはpとすれば、q&=
[
q,H]
とp& =[
p,H]
となります。括弧式の中身を計算してやれば、正準方程式が導かれます。こちらの括弧式の方を 正準方程式と呼ぶこともあります。対称的で覚えやすいかもしれませんが、ポ ワッソンの括弧式そのものの定義が複雑ですね。
また、F = Hでは、H& =
[
H,H]
=0と、エネルギー保存則が出ます。10-14 調和振動子のハイゼンベルグの運動方程式 調和振動子のハミルトニアン
2 2
2 2 0
2 m q
m
H p ω
+
= に適用すると、
m p q H p q p H q
q q =
∂
⋅∂
∂
−∂
∂
⋅∂
∂
= ∂
& 、 m q
q H p p p H q
p p =0− ω02
∂
⋅∂
∂
−∂
∂
⋅∂
∂
= ∂
& です。
10-15Bogoliubov変換
このPoisson括弧式を使って変換
+
=
−
=
p q P
p q Q
α β
β
α が正準変換かどうか見てみましょ
う。
[ ] ( ) ( ) ( ) ( )
p p q q
p q p
p q q
p q p
Q q P p P q P Q
Q ∂
−
∂
∂ +
−∂
∂ +
∂
∂
−
= ∂
∂
∂
∂
−∂
∂
∂
∂
= ∂ α β β α β α α β
,
( )
α β(
β)
α2 β2α − − −= +
=
で、これが元の変数での値
[
q,p]
=1に一致するためには、α2 +β2 =1という条件が必要になります。この条件は、α =cosθ,β =sinθ となります。
なお、θ =0で恒等変換、
2
π で変数入替となります。この変換は、量子力学で超
伝導現象を解明するのに使われたボゴリューボフ変換と呼ばれるものです。但 し、xとpではなく、生成消滅演算子の間の変換ですが。
10-16 角運動量
次の例として、角運動量をやってみましょう。lr rr pr
×
= ですから、
デカルト座標で書けば、lr=
(
ypz −zpy zpx−xpz xpy−ypx)
となります。
これらの成分間の括弧式はα = x,y,zとして、
[ ] ∑ ∑ ( ) ( ) ( ) ( )
∂
−
∂
∂
−
−∂
∂
−
∂
∂
−
= ∂
∂
∂
∂
− ∂
∂
∂
∂
= ∂
α α α α α
α α α α α p
zp yp x
xp zp p
xp zp x
zp yp p
l x
l p
l x l l
lx, y x y y x z y x z x x z y
( )
(
pz⋅ − py⋅ −x)
−(
px⋅ y− px⋅)
= xpy −ypx =lz= 0 0
となります。これと、
[
p,q]
=1の関係式は量子力学でもよく使われるものです。(以下、旧ノート)
注1) ラグランジアンは先週やったように、ハミルトニアンから簡単に逆算でき
てL=
∑
piq&i −H(
qi,pi)
となります。ただし、変数はqとq&ではなく、qとpです。ですから、ラグランジアンもどきということで、Lではなく、L=L
(
p,q)
と 書いておいた方が良いでしょう。このLの作用積分に対して最小作用の原理を適 用するとどうなるでしょうか。なお、Lの独立変数はpとqですから、δq
( )
t1 =δq( )
t2 =0、δp( )
t1 =δp( )
t2 =0とい う条件をつけます。すると、(
p q)
L dt S t
t2 ,
∫
1= =
∫ ∑
t1t2 −(
,)
i
i i i
iq H q p
p
dt &
の変分をとるわけですから、
∫ ∑
+ −∂∂ −∂∂= 2
1
t
t i
i i i i i i i
i p
p q H q q H p q p dt
S δ δ δ δ
δ & &
∫ ∑
∂
−∂
+
∂
−∂
= 2
1
t
t i
i i i i i i
i q
q q H p p p
q H
dt & δ δ& δ
となるので、第三項を部分積分すれば、
∫
∫
= − 21 2 1 2
2
t
t i i
t i t i t
t dtpiδq&i pδq dtpδq =−
∫
21
t
t dtp&iδqi
となり(始点と終点は固定して変分しますからδq
( )
t1 =δq( )
t2 =0)、結局、∫ ∑
∂ +∂
−
∂
−∂
= 2
1
t
t i
i i i i i
i q
q p H p p
q H dt
S δ δ
δ & &
が得られ、任意の微小関数δpi,δqiに対して、δS が極小になるためには、括弧の 中身がゼロにならねばなりません。これで「最小作用の原理 ≡ 正準方程式」
が直接証明されましたことになります。
注2)
な ぜ
( )
dt p q dW ,
が 付 い て も よ い か と い う と 、 そ も そ も 最 小 作 用 の 原 理 は 、
( ) ( )
( )
∫
= 2
1
t ,
t dtL p t q t
S が、運動の始点・終点での独立変数の値を定数として固定す る、という条件下で極小値を取るようにというものでした。
つまり、左図のように、経路を変えて極小値を探すわけです。そうして、極小
値を与える運動p0
( ) ( )
t ,q0 t が定まったとしましょう。作用積分は運動をいろいろ 変えたときにp0( ) ( )
t ,q0 t のところで極小になります。ここで、ラグランジアンも どきに、pとqの勝手な変数の時間微分( )
dt q p dW ,
を足し加えたとしましょう。何
が起こるでしょうか。新しいラグランジアンもどき
dt
L +dW に対応する作用積分
は運動をいろいろ変えたときに、やはり p
( )
t = p0( ) ( )
t ,q t =q0( )
t のところで極小と なってくれるのでしょうか。答えはもちろん、イエスです。 2
1 2
2 2
2
t t t
t t
t dt Ldt W
dt L dW
S =
∫
+ =∫
+ ですから、二項目 t1t2
S=
∫
2( )
1
,
t
t L p q
運動の種類
( ) ( )
t q t p0 , 0( )
t L q0( )
t q( )
tq0 +δ ′
( )
t q( )
tq0 +δ dt
L+ dW
はたとえば終点ではW
( )
t2 =W(
q0( )
t2 +δq( )
t2 ,p0( )
t2 +δp0( )
t2)
となり、( )
t2 = q( )
t2 =0p δ
δ なのですから、どんな運動p
( ) ( )
t ,q t に対しても定数です。よっ て、結局、作用積分は、p( )
t = p0( ) ( )
t, q t =q0( )
t で極小となることは全く変わらな いのです。注3) 具体例3
前の二つの例は、W
(
q,Q)
としましたが、そうでない場合はどうなるでしょうか。( )
=−∑
+ ′( )
i
i i i
i i
i Q PQ W q P
q
W , , で、新しい母関数W′
(
q,P)
を定義してみます。左辺と右辺で変数が異なるように見えますが、Pは、
( )
i
i Q
Q q P W
∂
−∂
= ,
として消し
てしまってW
(
q,Q)
に持って行くわけです。このW
(
q,Q)
の表式を先ほどの変換に代入してみます。( ) ( ) ( )
t Q q P W
Q H Q P p
q H q
pi i i i
∂ +∂
− ′
=
−
∑
∑
& , & , ,( ) [ PQ W (
q P) ]
dt P d Q H Q
Pi i − ′ , + − i i + ′ ,
=
∑
&∑
( ) ∑
∑
∂∂ ′
∂ +
∂ ′ +
−
−
′ +
−
= i
i i i i i i i i
i P
P q W q Q W P Q P P
Q H Q
P & , & & & &
整理すると、Q&の項が消えて、
( )
ii i
i P
P Q W P
Q H q q
W &
∑
&∑
∂
∂ ′
−
−
′
∂ −
∂ ′
= ,
となるので、q,P(そして、その時間微分)の関数だと思うと、
( )
i
i q
P q p W
∂
∂ ′
= ,
、
( )
i
i P
P q Q W
∂
∂ ′
= ,
、H
(
q,p)
= H′(
Q,P)
という関係式が得られます。先ほどのものと符号が微妙に違うので注意が必要です。
この場合、例えば、W′
(
q,P)
=qPとしてみると、q P p W =
∂
∂ ′
= 、 q
P Q W =
∂
∂ ′
= ですから、恒等変換(何もしない)であることがわかり ます。
具体例4
Wの変数をどういう風にとるかという問題ですが、
( )
=−∑
+ ′( )
i
i i i
i i
i Q PQ W q Q
q
W , , 、
( )
i
i q
P q p W
∂
∂ ′
= ,
、
( )
i
i P
P q Q W
∂
∂ ′
= ,
と同様にして、いろいろ変えることが出来ます。
(
q Q)
qp W(
p Q)
W , =
∑
+ ′′ , 、( )
i
i p
Q p q W
∂
∂ ′′
−
= ,
、
( )
i
i Q
Q p Q W
∂
∂ ′′
−
= ,
(
q Q)
qp QP W(
p P)
W , =
∑
− + ′′′ , 、( )
i
i p
P p q W
∂
′′
∂ ′
−
= ,
、
( )
i
i P
P p P W
∂
′′
∂ ′
−
= ,
を証明するのも良い練習問題です。
(
( ) ( ) ( )
t Q q P W
Q H Q P p
q H q
pi i i i
∂ +∂
− ′
=
−
∑
∑
& , & , , に代入するだけですが)。この形からあきらかなように、これら一群の母関数の変数の置き換えは、先週 やったのと同様に、ルジャンドル変換になっています。
注5)
前回、ルジャンドル変換でわかりにくかったようなので、再度説明します。
(
q p)
pq H(
q p)
L , = &− , に対して、変数変換
(
q,p)
→(
Q,P)
を行った時、(注意、繰り返しますが、ラグランジアンにバーが付いているのは、qとpの関 数と見ているからです。右辺のq&は正準方程式
p q H
∂
= ∂
& で消してしまいます)。
変換式を代入した新しいL′が、
( ) (
q Q)
dt P dW Q H Q P
L′= &− ′ , + , という形になれば、
最小作用の原理がそのまま成立するので同じ運動になります(同じ運動に対して
作用積分が極小となる、ということです)。そのためには、
( )
QQ q W q P W Q H Q P
L & & &
∂ +∂
∂ +∂
− ′
′= ,
ですから、両辺のq&とQ&の係数を比較すると、
Q P W
∂
−∂
= 、
q p W
∂
=∂ 、H
(
q,p)
=H′(
Q,P)
が必要な条件です。このW
(
q,Q)
を先に与えると、正準変換の形が決まってしまいます。ですから、W を母関数と呼ぶわけです。問題はこの次です。QではなくPを独立変数にしたい場合どうすれば良いでし
ょうか。ただ単に変数変換するだけであれば、Pは、
(
q Q)
Q
P W ,
∂
−∂
=
で与えられていますからこれをQについて解いてそのまま代入し、W
(
q,Q(
q,P) )
とすればよいと思われるのですが、なぜ、そうしないのでしょうか。
実はもう一つ条件が付いていて、新しい関数W′
(
q,P)
に対して、新変数で微分す ると、対称的に旧変数になるようにしたいのです。つまり、P Q W =
∂
∂ ′ となるようにしたいというのです。この条件を付けると、新しい変数
でも正準変換を母関数から求める式が「同じ格好」になってくれます(熱力学で 云えば、F
(
T,V)
=U(
S,V)
−TSと変数変換するだけでなく、 ST T F S
U =−
∂
⇒ ∂
∂ =
∂ と
なるようにしたかった、というわけです)。
二つ変数があるとわかりにくいので1変数で説明すると、
( )
xf と云う関数に対して、その微分
dx
y= df 自身を変数にした関数g
( )
y を作りた い、というわけです。ただし、それだけなら、( )
dx x
y= df を逆に解いて、x= x
( )
yにして、f
( )
x に代入すれば、f(
x( )
y)
となります。しかし、先ほど云ったように、もう一つ、
( )
ydy
x= dg となるようにしたいと言うわけです。もちろん、f
(
x( )
y)
では、そうはなっていません。
どうでもいいことですが、
( )
dy = y
dg
( ( ) )
12
2 −
=
= dx
f d dx df dy dx dx df dy
y x
df となってしまい
ます。
実は、条件を満たす方法うまい方法が、ルジャンドル変換でして、
( )
y xy f( )
xg = − と置け、ということなのです。
ともかく、こう置くと、不思議と思えるほどうまい具合に
( ) ( )
dy x ydx dy x
ydx dy dx dx df dy
xy d dy
y
dg = − = + − =
になります。ここで、変換式の符号は微分の符号で決まります。つまり、
( )
x dxy =±df の符号が、相対的な符号をxym f
( )
x と決めます。( )
ydy
x =±′dg の符号が、全体の符号を±′
(
xym f( )
x)
と決めます。これをハミルトニアンの導出に当てはめると、変数の変換としてはq&→ pでし
たから、qはちょっと隠しておくと、L=L
( )
q& に対して新しい変数( )
qq
p L &
&
∂
= ∂ を独立変数にとって、
( )
pp q H
∂
= ∂
& となるようにしたい、ということになります。どちらも微分の符号は
正ですから、変換式はH
( )
p = pq&−L( )
q& となります。母関数の変換ではどうでしょうか。最初の母関数はW
(
q,Q)
で、変数の変換は、P
Q → でした。元の微分の符号は
Q P W
∂
−∂
= とマイナスですから、新しい変数に対して、
P Q W
∂
∂ ′
±
= のどちらを希望するかによって、
(
q P) [
PQ W(
q Q) ]
W′ , =± + , となります。前回の講義ではプラス
P Q W
∂
∂ ′
= を取った
ため、W′=PQ+Wでした。
もう一つの方の変数をq→ pと置きかえる場合は、元の微分が
q p W
∂
= ∂ とプラスの符号ですから、新変数に対して、