島根大学自然科学研究科共通科目
「MOT基礎概論」
知的財産権概論(2)
(全42枚)
2021年6月16日
大分大学 産学官連携推進機構 知的財産部門 部門長 教授
(島根大学 客員教授)
松下 幸之助
(tel:0852-60-2290/e-mail : [email protected])
本資料は個人的に楽しむにとどめ、SNSなどで拡散しないこと
1
知的財産とは
各種法律
・国内・海外
・悪意あり/なし
復習
知的財産のその他のメリット
競争的研究資金や 寄付金・共同研究の
呼び水にも
3
知的財産基本法において次のとおり定義されている。
第2条1項 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、
意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの
(
発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の 利用可能性があるものを含む。)
、商標、商号その他事業活動に用 いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業 活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。「人間の創造的活動により生み出される無形の財産」
思想(アイディア)、技術、ノウハウ、デザイン、ブランド、
音楽・映画等のコンテンツ、植物の新品種、商号 など
●「知的財産」とは
「知的財産」とは
だれもが使える状態
(魅力的な技術・商品ほど模倣される)
知的財産
研究成果、技術、ノウハウ、ア イデア、デザイン、ブランド、
植物の新品種、文芸・学術・美 術・音楽・プログラムなどの精 神的作品等の知的創作物
第三者が参入可能
(競合企業の参入 による価格競争)
知的財産と知的財産権
5
自分だけが使える状態(模倣を許さない)
知的財産と知的財産権
第三者が参入不可
(競合企業との価格 競争が起こらない)
バリア・参入障壁
(知的財産権)
知的財産
研究成果、技術、ノウハウ、ア イデア、デザイン、ブランド、
植物の新品種、文芸・学術・美 術・音楽・プログラムなどの精 神的作品等の知的創作物
知的資産
人材(人的資産) 技術 技能 組織力 経営理念 企業文化 顧客とのネットワーク 等
知的財産
発明、著作物、デザイン、ブランド、営業秘密 等
知的財産権
特許権、著作権、
実用新案権、意匠権、商標権 等
知的資産
「人間の創造 的活動により 生み出される 無形の財産」
「知的財産を保護す る法律上の権利」
無形資産
借地権 電話加入権等
目にみえない資産(物理 的形状を持たない資産)
有形資産
土地 建物 機械設備等
人 が 考 え 出 し た ・ 創 り 出 し た 価値のあるモノ
(人が考え出した・創り 出した価値のあるもの)
知的財産と知的財産権とは
7
知的財産の活用例
商標
ネーミング は商標 商標
商標
車の形態 は意匠
ホーム ページは
著作物
CMは 著作物 CM90秒
販売日 CM30秒
車の技術 は発明
(特許)
ドメイン名
スズキ株式会社 の名は商号
出所:http://www.suzuki.co.jp/car/lapin_chocolat/
顧客のターゲット層 は若い女性
デザインコンセプト は「かわいい」
エコ技術 導入 ネーミングコンセプトは
「かわいい」 ウサギ、
チョコレート 商標
意匠
発明
(特許)
CMコンセプトも
「かわいい」
著作物
商標
知的財産の活用例
●顧客層に焦点を絞った「知的財産」
9
知的財産の活用例
意匠
商標
意匠
知的財産の活用例
11
意匠 商標
知的財産の活用例
商標
意匠
知的財産の活用例
13 発明
(特許)
商標
意匠
知的財産の活用例
私たちの身のまわりの商品・サー
ビスで知的財産が活用されている
知的財産法とは何か
知的財産の保護と活用
デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り⽅に関する調査研究
(平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)
では、情報である知的財産はどのように保護されるのだろうか 盗⽤されると…
情報は誰に帰属するか分からな い。加えて、複製も容易なため、
盗⽤されても⾃分の情報だと主 張するのが難しい
返還を請求できる モノ
情報
1
知的財産法とは何か
知的財産の保護と活用
デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り⽅に関する調査研究
(平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)
アイデア
技術的アイデア
デザイン表現など 知的財産権
⾮独占・⼈類の共有財産
(パブリックドメイン) 模倣品排除
⾃⼰実施※ ライセンス譲渡
保護 活⽤
※︓製品等の製造、使⽤、輸出⼊など。
第2条2項 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育 成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令に より定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
「知的財産」は無形の財産
(情報と同じ)であるので、
・容易に模倣される
・消費されない
・同時に多数が使用できる
「知的財産を保護する法律上の権利」
・保護なしでは、創造的 活動の意欲が減退する
・誰もが使える状態から は、経済的価値が生じ ない。
産業の発達や文化の 発展に寄与するため に、有用な「知的財 産」は国家として保護 する必要がある。
著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、育成者権、
回路配置利用権、など
「知的財産権」とは
知的財産基本法において次のとおり定義されている。
●「知的財産権」とは
3
●全体像
知的財産法の全体像
産業財産権法
【特許法】
【実用新案法】
【意匠法】
【商標法】
【関税定率法】
・輸入禁制品に産業財 産権等を侵害する物品 が規定されている
【著作権法】
・プログラム・音楽
・データベース・小説
・建築物・脚本
・学術的性質の図面
・絵画・映画・写真 等々
【半導体回路保護法】
【商法・会社法】
・商号
【不正競争防止法】
・商品形態の摸倣
・著名周知商品表示摸倣
・営業秘密不正取得
【種苗法】
【地理的表示法】
【民法】
・ノウハウ
・パブリシティの権利
知的活動の成果物である知的財産権の 成立と保護を図る法律
発明(機能や性能などの工夫)を保護する特許権
① 発明(特許権)・・・・・特許法
●目的:発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて
産業の発 達に寄与することを目的とする(特許法第1条)。●定義:「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」
❶物の発明(プログラムなどを含む)、❷方法の発明、❸物を生産する方法の発明
●要件:特許権は、①特許法上の発明、②産業上利用可能性、③新規性、④進
歩性、⑤先に出願、⑥公序良俗に反しない、⑦明細書の記載が規定どおり、を全 て満たす発明に対して付与される。つまり、発明者等が特許出願を行い、出願か ら3年以内に審査請求することで審査官が実体審査に着手し、拒絶理由を発見し ない(①~⑦の要件を全て満たす)場合、特許権として設定登録される。●存続期間:登録(=設定登録)された日から特許権が発生(始期)し、
出願日 から20
年後(終期)に消滅する。保護
(独占排他権)
※一定期間、業として(事業と して)実施する権利を占有
利用
(特許情報プラットフォ ームでの技術の公開
と他者への許諾)
発明を奨 励
産業の発 達に寄与
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・特許第4357522号(登録日H21.8.14)
【発明の名称】高速走行用の編成列車
【出願日】平成18年11月10日
【分割の表示】特願2002-340459の分割
【原出願日】平成14年11月25日
【特許権者】東海旅客鉄道(株)、川崎重工業(株)
●トンネル走行時のパルス状圧力波(トンネル微気圧波)の軽減に関する特許発明注)
新幹線の先頭車両形状に関する発明の事例
【特許請求の範囲】 ※請求項2以降は省略
【請求項1】 複数の車両を連結して編成される高速走 行用の編成列車において,先頭部分の前側の断面積 増加領域の断面積増加率は,後側の断面積増加領域 の断面積増加率よりも大きく,中間の断面積増加領域 は,運転室に対応する部分であって,前側及び後側の 断面積増加領域よりも断面積増加率が小さく前半部分 の断面積増加率が後半部分の断面積増加率より大きく なっている先頭車両を備え,前記先頭車両に続く後続 車両のいずれかの車両が,それより前側に位置する車 両の後尾の横断面積とほぼ一様の横断面積を有する 前側部分と,この前側部分より車体高さ又は車体幅が 大きく後側に位置する車両の先端の横断面積とほぼ同 じ車体高さ又は車体幅で余裕がある客室空間を確保 する後側部分とを段部を介して有することを特徴とする 高速走行用の編成列車。
注)「特許発明」:特許を受けている発明
考案(小発明)を保護する実用新案権
② 考案(実用新案権)・・・・・実用新案法
●目的:考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もって産業の発
達に寄与することを目的とする(実用新案法第1条)。●定義:「考案」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作(のうち高度なもの)」
❶物品の形状・構造・組合せに係る考案 ※「方法」に係る考案はない
●要件:実用新案権は、無審査主義により、実体審査なしで出願された考案に対し
て付与される。但し、権利行使(侵害者に対する差止や損害賠償請求等)するには「技術評価書」が必要(登録された考案の有効性ついて特許庁が見解を示したもの)
●存続期間:登録(=設定登録)された日から実用新案権が発生(始期)し、
出願 日から10
年後(終期)に消滅する。※発明と考案の定義は同質
◆実用新案の必要性:
①小発明が大発明を生む。
②特許法の技術レベルが低くなる。
③ライフサイクルの短いものの保護
④中小企業の育成
⑤沿革的理由(諸外国との技術格差が過去にあった)
7
ペーパースコップに関する考案の事例
●実用新案登録第3052744号
(登録日:1998年7月22日)【出願番号】 実願平10-715 (出願日:1998年1月13日)
【実用新案権者】 丸野 勇 【考案者】 丸野 遥香
【考案の名称】 ペットの糞採り用スコップ
【課題】 手指を汚すことなくペットの糞を簡便に始末 することができる使い 捨てタイプのペットの糞取り用 スコップを提供する。
【解決手段】ペットの糞を掬い採る糞掬い板1と、糞掬 い板1の後端に設けた 握手2とを備え、糞掬い板1と 握手2を手指で折り曲げ可能な厚さの一枚の 紙を打抜 き加工して一体的に形成する。
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ペットの糞を掬い採る糞掬い板と、該糞掬 い板の後端に設けた握手とを備え、前記糞掬い板と前記 握手を一枚の紙から一体的に形成されてなることを特徴 とするペットの糞採り用スコップ。
【請求項2】 糞掬い板の先端を凹状に形成したことを特 徴とする請求項1記載のペットの糞採り用スコップ。
【請求項3】 裏面にペットの絵が描出されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記 載のペットの糞採り用スコップ。
☞
※製品情報
※当時4年生(10歳)
意匠(物品のデザイン)を保護する意匠権
③意匠(意匠権)・・・・・意匠法
●目的:意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて
産業 の発達に寄与することを目的とする(意匠法第1条)。●定義: 「意匠」とは、「物品の形状等、建築物の形状等又は画像であって、視覚を
通じて美感をおこさせるもの」と定義している。●要件:意匠権は、①意匠法上の意匠、②工業上利用、③新規性、④創作非容易
性、⑤先に出願、⑥不登録事由(公序良俗に反しない、他人の物品と混同を生じな い等)、⑦明細書の記載が規定どおり、を全て満たす意匠に対して付与される。審 査請求制度はとっていないので、出願された意匠は全て審査官が実体審査を行い、拒絶理由を発見しない(①~⑦の要件を全て満たす)場合、意匠権として設定登録。
●存続期間:登録(=設定登録)された日から意匠権が発生(始期)し、
出願日か ら25
年後(終期)に消滅する。1.物品、建築物又は画像(以下、「物品等」という。)と認められるものであること 2.物品等自体の形状等であること
3.視覚に訴えるものであること
4.視覚を通じて美感をおこさせるものであること
b)「形状等」・・・形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合 c)建築物の部分を含む。
d)機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮 した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。
a) b) c) d)
a)物品の部分を含む。
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意匠権による保護事例
●意匠権で保護された製品
ファミリーコンピューター(1986年)
シルバニアファミリー(2012)
カップヌードル(1972年)
iPhone 包装箱(2008年)
iPhone(2008年) 500系新幹線(1997年)
ヴィッツ(1998年)
メタルファイト ベイブレード
(2009年)
パンdeショコラ
(2008年)
☞
瞬足 靴底(2010年)
伊右衛門(2004年)
カップ焼そば
(2000年)
著作物(人の精神的創作の表現)を保護する著作権
④著作物(著作権)・・・・・著作権法
●目的:著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及び
これに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著 作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。●定義: 「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、
学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」。
●要件:無方式主義。著作物を創作した時点で著作権②が発生する。但し、訴訟な
どの争いにならない限り、その著作権について客観的な判断はなされない。●存続期間:著作物を創作した時(始期)から
著作者の死後70
年後(終期)まで。著作者人格権 ・・・氏名表示権、同一性保持権等(人格権)
著作(財産)権③ ・・・複製権、譲渡権、翻案権等(財産権)
著作権② 著作権①
著作隣接権 実演家の権利 (人格権+財産権)
レコード製作者の権利 (財産権)
放送・有線放送事業者の権利 (財産権)
(著作者の権利)
(著作物を伝達する者の権利)
※「財布」を守る
※「心」を守る
※広義
※狭義
出版権
(出版者の権利)
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著作権で保護される著作物の種類
●著作物の種類の例
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形 の著作物
七 映画の著作物 八 写真の著作物 九 プログラムの著作
⑤半導体集積回路の回路配置(回路配置利用権)・・・・半導体集積回路の回 路配置に関する法律
●目的:半導体集積回路の回路配置の適正な利用の確保を図るための制度を創
設することにより、半導体集積回路の開発を促進し、もつて国民経済の健全な発展 に寄与することを目的とする(半導体集積回路の回路配置に関する法律第1条)。※半導体集積回路は、多くの機器の部品として用いられて、その集積度の向上はこ
れら機器の高性能化、製造コストの低減等をもたらしている。半導体集積回路の開 発には多大な投資が必要であるが、その模倣は極めて容易であり、これを放置して いたのでは、開発意欲を減殺してしまう。そこで、
1985年に本法が制定された。
●定義:「半導体集積回路」とは、「半導体材料若しくは絶縁材料の表面又は半導体
材料の内部に、トランジスターその他の回路素子を生成させ、かつ、不可分の状態 にした製品であって、電子回路の機能を有するように設計したもの」●要件:方式審査のみ(①創作者又はその承継人であるか、②創作者等は2人以
上いる場合共同申請しているか、③申請のあった日から2年以上遡った日前に業と して譲渡等していないか、④申請書が方式に適合しているか)で設定登録される。●存続期間:登録された日から権利が発生(始期)し登録日から10年(終期)で消滅。
半導体集積回路の回路配置を保護する回路配置利用権
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回路配置利用権の申請状況
●設定登録等の申請件数推移(年度別)⇒年々減少(H16に100件を切る、H21以降は一桁)
●平成26年3月の登録(3件)⇒これ以降の設定登録の公示なし(新規の申請・登録なし)
一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)のHP(http://www.softic.or.jp/ic/ic-layout/index.html)より
⑥植物の新品種(育成者権)・・・・・種苗法
●目的:新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する
規制等について定めることにより、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする(種苗法第1条)。
●定義: 「品種」とは、「重要な形質に係る特性(以下単に「特性」という。)の全部又
は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を 保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう」。●要件:育成者権は、①区別性、②均一性、③安定性、④未譲渡性、⑤品種名称の
適切性、等を満たす植物の新品種に対して付与される。●存続期間:登録された日から育成者権が発生(始期)し、登録日から25年後(終
期)に消滅する。但し、「樹木」の場合の終期は、登録日から30年後。①区別性 すでに知られた品種と特性(形状や品質)により明確に区別できること
②均一性 同室世代で特性が十分に類似しているもの(まいた種子から同じものができる)
③安定性 繁殖後も特性の全部が変化しないこと
④未譲渡性 出願日から1年遡った日より前に出願品種の種苗や収穫物を譲渡していないこ と。外国での譲渡は、日本での出願日から4年(木本植物は6年)遡った日
⑤名称の適切性 品種の名称が既存の品種や登録商標等と紛らわしいものでないこと
植物の新品種を保護する育成者権
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【登録番号】品種登録第3755号
【育成者権者】 西田朝美
【品種の概要】
「アイベリー」に「とよのか」を交配して 育成されたものであり、乱形果が少な く、輸送牲の高い促成栽培向き品種。
【品種の名称】レッドパール
品種登録ホームページより
(http://www.hinsyu.maff.go.jp)
育成者権による保護事例
【登録番号】品種登録第11721号
【育成者権者】 山口県
【品種の概要】
「清見」に「吉浦ポンカン」を交配して育 成されたものであり、果形が扁球、果 実の重さがやや重、果皮色が濃橙。
【品種の名称】せとみ
品種登録ホームページより(http://www.hinsyu.maff.go.jp)
※2008/11/26で権利期間満了
●レッドパール事件 イチゴの新品種である レッドパールが韓国に 流出。育成者の西田氏 は、1件の韓国農家と 契約しただけだったが、
一時、韓国市場の1/3 がこの品種に?!
日本名:レッドパール 韓国名:陸宝
【登録番号】品種登録第3680号
【育成者権者】 石塚昭吾 他
【品種の概要】
「佐藤錦」に「天香錦」を交配して得られた実生から選抜・育成されたもの。
【品種の名称】紅秀峰 (よみ:ベニシュウホウ)
※2009/11/20で権利期間満了
●紅秀峰事件
サクランボの新品種である 紅秀峰(品種登録済)がオー ストラリアに流出。日本に輸 出しないことを条件に和解。
品種登録ホ ームページよ り (http ://www.hinsy u.maff.go.jp)
有名かに料理屋の名物「
動くかに看板」と類似した
「かに看板」を使用した同 業者に対し、看板の使用 禁止及び損害賠償命令
鶏 肉 や 豚 肉 を 混 ぜ て製造したミンチ肉 に「牛100%」と虚偽 表示し出荷した会社 社長に実刑判決
秘密に管理していた顧 客 名 簿を 従 業 員 が 退 職する際に無断でコピ ーし、独立開業後に顧 客獲得に使用した業者 に対して損害賠償と名 簿の廃棄命令
営業秘密であるプラント の設計図面等を、その 従業員を通じて不正に 取得し、さらに海外企業
に不正開示した競合企 業に対して、図面の廃
求及び損害賠償命令 こんなニュース、聞いたことありませんか?
?
?
●
このような行為を禁止しているのが不正競争防止法
STOP
⑦営業秘密
⑪著名な商品表示、
原産地・品質等の表示
1
●目的: 不正競争防止制度の目的は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約 束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する 措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする(不1条)。
不正競争防止法は、不正競争行為に対する請求権として不正競争行為を規定するもので ある。企業の社会的責任が問われている現在、不正競争行為を規定する不正競争防止法 の役割は高まっている。
事業間の公正な競争の促進
・事業者の営業上の利益の保護(私益)
・公正な市場の競争秩序の維持(公益)
国際的約束の実施
・パリ条約、マドリット協定、TRIPS協定等
不正競争行為に対する 具体的措置
・不正競争に係る差止請求
・損害賠償請求 等
国民経済の健全な発展
・ベネッセ顧客情報漏洩事事件(2014)
・東芝フラッシュメモリ秘密漏洩事件(2014)etc.
●話題となった不正競争行為
⇒ 刑事罰が重くなった(2016~)
営業秘密や著名な商品表示等を保護する不正競争防止法 ●
不正競争防止法での規制行為及び国際約束に基づく禁止行為
4 営業秘密の侵害(不2条1項4~10号)
●秘密として管理されている企業の研 究開発・営業活動の過程で生み出され る非公知性の様々な有用な情報(=営 業秘密)
(例) ・顧客名簿、新規事業計画、価 格情報、対応マニュアル(営業情報)
・製造方法・ノウハウ、新規物質情報、
設計図面(技術情報)
⇒ 秘密であることに価値がある!
(公開が前提の特許制度では守りにくい)
不正取得 不正使用
不正開示 ぐへへへ
・企業努力が報われない
・インセンティブが減退
⇒ 正常な競争秩序が 保たれない、強いては 国全体のイノベーション に悪影響を及ぼす
もし、このような行為 が許されてしまうと
(知財高裁平24.7.4)
投資用マンションの販売業を営む会 社の従業員が、退職し独立起業す る際に、営業秘密である顧客情報 を持ち出し、その情報に記載された 顧客に対して、転職元企業の信用 を毀損する虚偽の情報を連絡した 事案。損害賠償請求が認められた。
(知財高裁平23.9.27)
石油精製業等を営む会社の営業秘 密であるポリカーボネート樹脂プラ ントの設計図面等を、その従業員を 通じて競合企業が不正に取得し、さ らに中国企業に不正開示した事案。
その図面の廃棄請求、損害賠償請 求等が認められた。
窃盗等の不正の手段で営業秘密を 取得し、自ら使用、若しくは第三者 に開示する行為等
3
商標(識別能を有するマーク等)を保護する商標権
⑧商標(商標権)・・・・・商標法
●目的:商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を 図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目
的とする(商標法第1条)。
●定義: 「商標」とは、「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、
図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるも の(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの 二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの
●要件:商標権は、①自他商品等識別能がある(×普通名称…車に「車」、×慣用 名称…自転車に「チャリンコ」、×産地・品質・効能だけ…りんごに「青森」等)、②他 人の登録商標と同一又は類似の標章を同一又は類似の商品又は役務に使用する ものでない、③その他 (国旗や国際機関の標章と同一・類似等)、を満たす商標に 対して付与される。審査請求制度はとっていないので、出願された商標は審査官が 実体審査を行い、拒絶理由を発見しない場合、商標権として設定登録される。
●存続期間:登録(=設定登録)された日から商標権が発生(始期)し、設定登録 の日から
10
年後(終期)に消滅。但し更新可能(永年使用可)商標 =標章(マーク等) + 商品や役務(サービス)
出典:http://www.jpo.go.jp/quick/index_sh.htm
文字商標
図形商標
記号商標
立体商標 結合商標
(文字、図形、記号、立体的形状 の二つ以上が結合した商標)
商標権による保護事例
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⑨地理的表示
地域産品の名称を保護する地理的表示法
・・・・ 特定農林水産物等の名 称の保護に関する法律
(地理的表示法)
●但馬牛
(兵庫県内)
●下関ふく
(山口県下関市及び福 岡県北九州市門司区)
<登録されている地理的表示の例>
●夕張メロン
(北海道夕張市)
地理的表示のマ ーク:GIマーク
⇒ 産地と、品質等の特性が特定できる
●くまもと県産い草
(熊本県八代市等)
●鹿児島の壺造り黒酢
(鹿児島県霧島市福山町 及び隼人町)
※農林水産省HPより
地域産品の名称を保護する地理的表示法
⑨地理的表示・・・・特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)
●目的:特定農林水産物等の名称の保護に関する制度を確立することにより、特定農林水 産物等の生産業者の利益の保護を図り、もって農林水産業及びその関連産業の発展に寄与 し、併せて需要者の利益を保護することを目的とする(地理的表示法第1条)。
●定義: 「地理的表示」とは、「地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物食品のうち、
品質等の特性が産地と結び付いており、その結び付きを特定できるような名称」のこと。
●存続期間:登録日から半永続(更新手続きは不要。失効や取消し等がない限り登録存続)
●制度の枠組み
①「地理的表示」を生産地や品質等の基準と共に 登録
②基準を満たすものに「地理的表示」の使用を認 め、GIマークを付す
③不正な地理的表示の使用は行政が取り締り
④生産者は登録された団体への加入等により、
「地理的表示」を使用可
・産品の品質について国が「お墨付き」を与 える
・品質を守るもののみが市場に流通。
・GIマークにより、他の産品との差別化が図 られる。
・訴訟等の負担がなく、自分達のブランドを 守ることができる。
・地域共有の財産として、地域の生産者全 体が使用可能。
<枠組みの概要> <効果>
7
商号(企業名等)を保護する商法・会社法
⑩ 商号・・・・・商法・会社法
●会社法
(趣旨)
第一条 会社の設立、組織、運営及び管 理については、他の法律に特別の定めが ある場合を除くほか、この法律の定めると ころによる。
(商号)
第六条 会社は、その名称を商号とする。
2 会社は、株式会社、合名会社、合資 会社又は合同会社の種類に従い、それ ぞれその商号中に株式会社、合名会社、
合資会社又は合同会社という文字を用い なければならない。
3 会社は、その商号中に、他の種類の 会社であると誤認されるおそれのある文 字を用いてはならない。
●商法
(趣旨等)
第一条 商人の営業、商行為その他商事につ いては、他の法律に特別の定めがあるものを除 くほか、この法律の定めるところによる。※2項略
(商号の選定)
第十一条 商人(会社及び外国会社を除く。以 下この編において同じ。)は、その氏、氏名その 他の名称をもってその商号とすることができる。
2 商人は、その商号の登記をすることができる
(他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止)
第十二条 何人も、不正の目的をもって、他の 商人であると誤認されるおそれのある名称又は 商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使 用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害 されるおそれがある商人は、その営業上の利益 を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対 し、その侵害の停止又は予防を請求することが できる。
※「商号」とは、「商人が営業上自己を表 示するために用いる名称」
※「商人」が「会社」の場合、商号の登記が必要。
一方、「商人」が「自然人」の場合は登記は任意。
「商標」と「商号」
【商号】 商人が営業上自己を表示するために用いる名称
●商号と商標の違いの例
商号 商標
保護法 商法・会社法 商標法
構成 文字(漢字、カタカナ、ひらがな、
ローマ字等)
標章(マーク等)+
商品又は役務(サービス)
保護期間 無期限 登録から10年(更新可)
機能 商人(会社等)の識別 商品・役務(サービス)の識別
(出所表示、品質保証、広告)
【商号】
本田技研工業株式会社 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
ソニー株式会社 トヨタ自動車株式会社 パナソニック株式会社
味の素株式会社
【商標】
HONDA NTT DoCoMo
SONY TOYOTA Panasonic
味の素
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知的財産法とは何か
デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り⽅に関する調査研究
(平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)
特許権
リチウムイオン電池に関する発明
画⾯操作インターフェイス(ズー ム・回転等)に関する発明
ゲームプログラムの発明
実⽤新案権
電話機の構造に関する考案
ボタンの配置や構造に関する考案
意匠権
美しく握りやすい曲⾯が施された 携帯電話機のデザイン
携帯電話機の操作に⽤いる画⾯デ ザイン
商標権
電話機メーカーやキャリア各社が
⾃社製品の信⽤保持のために製品 や包装に表⽰するマーク
著作権
キャラクター、ゲーム、⾳楽など の創作(表現)
10:00
JPO
知的財産法とは何か
法律と権利の
名称 保護対象 保護の趣旨 目的 権利取得の
ための審査 権利期間 権利の性格
産業財産権法
特許法
(特許権) 発明
創作の奨励
産業の発達
有り 出願から 最長20年
絶対的独占権
(客観的内容を同じくす るものに対して排他的に
支配できる)
実用新案法
(実用新案権)
物品の構造・
形状の考案 無し 出願から
最長10年 意匠法
(意匠権)
物品の
デザイン 有り 出願から
最長25年
商標法
(商標権)
商品やサービ スに使用する
マーク
業務上の
信用の維持 有り
登録から 最長10年
(更新可)
著作権法
(著作権)
思想・感情の
創作的な表現 創作の奨励 文化の発展
無し
(自動的に 発生)
創作から 創作者の 死後70年
相対的独占権
(他人が独自に創作した ものには自分の権利は
及ばない)
主な知的財産権法
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デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り⽅に関する調査研究
(平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)
知的財産法とは何か
創作意欲を喚起 信用の維持
デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り⽅に関する調査研究
(平成28年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究)
知的創造物についての権利等 営業上の標識についての権利等
(特許法)特許権 実⽤新案権
(実⽤新案法)
(意匠法)意匠権
(著作権法)著作権
営業秘密の保護
(不正競争防⽌法)
(商標法)商標権 商品等表⽰の保護
(不正競争防⽌法)
その他関係する法令
製造物責任法 景品表⽰法
○ 「発明」を保護
○ 出願から20年
(⼀部最⼤5年まで延⻑)
○ 物品の形状等の考案を保護
○ 出願から10年
知的財産権制度説明会(初⼼者向け)テキスト「知的財産権制度⼊⾨」を基に作成
○ 物品のデザインを保護
○ 登録から20年
○ ⽂芸、学術、美術、⾳楽、プ ログラム等の精神的作品を保
○ 死後50年(法⼈は公表後50護 年、映画は公表後70年)
○ ノウハウや顧客リストの盗⽤
など不正競争⾏為を規制
○ 商品・サービスに使⽤する マークを保護
○ 登録から10年(更新あり)
○ 周知・著名な商標等の不正使
⽤を規制
○ 製品に⽋陥があった場合の製 造業者等に対する賠償を定め る
○ 不当表⽰や過⼤な景品類から
⼀般消費者の利益を保護
… …