過疎地における博物館教育 : 自然系野外博物館の活用例
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(2) No.51. 1997.3. 過疎地域における博物館教育 一自然系野外博物館の活用例−. 鈴木明彦(北海道教育大学岩見沢校). Museum educationin ruralareas. CasestudyoflocalFieldMuseum SideMuseum)と戸外博物館(Open−airMuseum). 1.はじめに. に注目し,それらをまとめて野外博物館とよぶべきだと. 博物館および相当施設は,博物館資料を基準にして,. 提唱した。また,野外博物館とは,自然および考古・歴. 建物博物館と野外博物館に二分される(新井,1956)。. 史的遺跡そのものが野外における展示として説明可能で. このうち,野外博物館は,「屋根」のない開かれた自由. あることを強調した。. な博物館として,地域の再生・活性化あるいは生涯学習 事業との関連から,近年多くの人々の関心を集めるよう. 自然系野外博物館に関しては,特に地学分野からの素 材を検討した新井竜三による一連の研究がある(新井,. になった(新井,1989,1995)。. 1964など)。彼は18年間にわたり秩父自然科学博物館(埼. −→方,ここ数年,北海道の過疎地域ではまち起こし政. 玉県)に勤務する中で,自然観察路を逐次整備し,博物. 策のひとつとして,博物館・美術館等の文化施設の建設. 館自体を路傍博物館として位置づけ,現地保存型の自然. がおこってきた。こうした状況は全国的なもので,95年. 系野外博物館として完成させた(新井,1989)。新井 (1989)によると,フィールドミュージアム(自然系野. の一年間に国内で新たに建設された博物館・美術館だけ. でも60件以上にものぼっており,その多くは自治体が主. 外博物館)は,自然を構成する地質(岩石・化石等)・. 体のものである。博物館・美術館はリゾート施設とは異. 地形・動植物などを野外で展示・公開するものと定義さ. なり,事業性・地域産業活性化・若年者の新規雇用等の 面では過大な期待はできないものの,自治体が単独で地. れている。. 元に縁のあるもの,地域の誇りとなるものを収集・展示. は,総合野外博物館(GeneralField Museum),野. また,フィールドミュージアム(自然系野外博物館). する施設を整備し広く公開することで,地域独自性の確. 生生物保護センター(WildLifeRefugeCenter)およ. 立と地域の新しい観光の目玉を創造する点では有意義な. び天然記念物博物館(NaturalMonument Museum). 事業である。さらに,学校や社会における教育活動がこ. に細分される(新井,1989)。この区分に従えば,総合. れまでの「見る」,「 ̄学ぶ」に加えて,「体験する_」こ とを重視するようになってきたことも社会の特徴的な動. 野外博物館には国立公園,路傍博物館,自然観察路等が, 野生生物保護センターには野生生物サンクチュアリー,. きとして指摘できるであろう。. バードサンクチュアリー,森林保護センター,海中自然. 公園等が,天然記念物博物館には,化石の森ビジターセ. そこで,北海道の過疎地域を対象にして,地域の貴重 な野外自然資料を,博物館教育や生涯学習の観点から再 活用を試みたい。小論では,筆者が関係したものを中心. それぞれ含まれることになる。その後,糸魚川(1993). に,北海道の過疎地域(人目5,000人程度の自治体)に おいて,特に博物館教育の観点からフィールドミュージ. では野外学習地(瑞浪市化石博物館)が,千地(1994) では白山自然保護センターが,それぞれ野外博物館の事. アム(自然系野外博物館)を活用した普及活動の例を予. 例として紹介されている。. ンター,恐竜公園ビジターセンター,鍾乳洞博物館等が,. 北海道は面積も広大で,自然に恵まれているため,様々. 察的に紹介する。. なフィールドミュージアム(自然系野外博物館)が存在. 2.フィールドミュージアム. する。今回の検討では,筆者の専門である地質系の野外 博物館を対象とした。なお,北海道の代表的なフィール. 野外博物館は,日本においては1949年に木場一一一夫に よってはじめて定義されたという(新井,1989)。木場. ドミュージアムに関しては鈴木(1996)を参照されたい。. は,特にアメリカの国立公園にある路傍博物館(Trail. 1ll01.
(3) 鈴木 明彦. 図1黒松内町イラストマップ(黒松内町教育委鼻会). 地質を例に取ると,賀老川火山岩の見学(500万年前の. 3.フィールドミュージアムの活用例. 海底火山活動),黒松内層の見学(200万年前の深海底 堆積物),瀬棚層の員化石採集(100万年前の寒流系動. (1)黒松内町:自然ガイド養成講座. 物群),朱太川沿いの川岸段丘の観察(氷河時代の古環. 黒松内町は,西南北海道後志管内南部に位置し,酪農 や伐採などを主産業とする農業と林業の町である。近年. 境)を行なった。いずれも毎回20名近くの参加者があり,. は,ブナ林散策路,黒松内温泉,ナイター設備の野球場. 室内だけでは十分に理解しがたい知識を深めるのに役. などの観光施設や乳製品工場の完成など新たな産業も加. だった。. その後∴普及教育活動の基幹施設として,1993年に黒. わっている。しかし,人口減少には歯止めがかからず,. 松内町ブナセンター(図2)が開館した。このセンター. 現在町の人口は3,700人はどに減少している。. の設立にあたっては,1990年度から行なわれてきた自然. 黒松内町は「ブナ林北限の里」として古くから知られ ていたが,その意義が当時から認識されていたと言いが. ガイド養成講座(地質・考古・植物)の時の基礎資料が. たい。黒松内町には,ブナ林のはかにも地質や動植物等. 常設展示の部分にいかされている(図3)。現在,ブナ. の豊かな自然(黒松内自然ガイドブック編集委員会,. センターはセンター長以下5人体制となり,教育普及,. 1990)が残されているため,1980年代後半からその活用. 調査研究,文化交流の各分野にわたり,様々なニーズに. が望まれていた。たとえば,西南北海道の第三系の標準. 答えている。たとえば,教育普及活動では,ブナ林観察. 地質層序のひとつ「黒松内層」の模式地は,黒松内市街. 会,自然学習会,自然観察入門講座等の多様な活動を試. 東方の朱太川沿いにある(図1)。. みている(高橋,1995)。. 町内に存在するこのような貴重な自然資料を見直す. きっかけとして,1990年からスタートしたのが自然ガイ. (2)沼田町:フロンティア・アドベンチャー. 沼田町は,中央北海道空知管内北部に位置し,かつて. ド養成講座(北海道教育委員会,1991)である。この講 座は,地質・考古・植物各分野の専門家を講師として,. は鉱業(炭鉱)と農業などを主産業とする町であった。. 約半年にわたり連続講義をおこなうユニークなもので. 炭鉱の閉山後は,他の産炭地域と同様に過疎化が進んで. あった。この講座では,室内での講義に加えて野外での. きた。近年は,ほろしん温泉や夜高あんどんなどの観光. フィールド実習をもつことが特徴であった。たとえば,. や山菜加工工場の完成などの新たな産業も加わっている。. −102 一.
(4) No.51. 過疎地域における博物館教育. 図2 黒松内町ブナセンター. 図3 ブナセンターの常設展示. −−−103. 1997.3.
(5) 鈴木 明彦. 図4 沼田町化石探検マップ(沼田町教育委員会). る化石クリーニング作業や化石レプリカ作成など,数々. 現在,町の人口は4,700人ほどである。 町内を流れる幌新太刀別川一帯は,タカハシホタテや. のユニークな活動をしている。. また,1985年には幌新太刀別川でのクジラ化石の発見. エゾキリガイダマシなどの滝川・本別動物群(約500万 年前)に属する保存の良い海生動物化石を多産すること. が機会となって,沼田化石研究会が発足している。フロ. で有名であった。一部の産地は文化財に指定されたりし. ンティア・アドベンチャーに関しては,沼田化石研究会. たが,化石の保護や調査・研究は十分とはいえなかった。. の支援が大きいといえる。この会の活動では,ボランティ. 沼田町は多くの化石を産する地域であり,自然の歴史 を学ぶにはまたとない資源を有している(図4)。そこ. アによる定期的な解説や指導などあり,サポートもしっ. かりしており,学校教育や生涯学習などを様々な面から. で,沼田町の環境教育では,この自然の歴史を様々な視. 支援している。なお,発足以降の活動状況については,. 点,様々な手法,様々な機会を通じて,理解してゆくこ. 10周年記念誌(沼田化石研究会,1995)に詳しい。. とを基本的方針とし,この方針に従って具体的な教育プ ログラムを設定していくことになった。そのためには,. (3)乙部町:化石探検教室. 長期的かつ継続的な教育活動が必要となったが,それと. 乙部町は,西南北海道桧山管内南部に位置し,スケト. 深くかかわりをもってきたのが,1993年度から連続的に. ウ漁やアスパラ・いちご栽培などを主産業とする漁業と. 開講されてきたフロンティア・アドベンチャーである. 農業の町である。近年は,元和台地区の海水プールや海. (沼田町,1995)。この講座では,主に小学生高学年∼. 中探勝船の運行等の観光や化粧品工場の完成等新たな進. 中学生を対象として,町内の自然を野外活動において理. 展もみられる。しかし,過疎化に伴う人口現象は続いて. 解することを目的としている。具体的にはキャンプ生活. おり,現在町の人口は5,400人ほどである。. をおくる中で,化石の採集(図5)やネイチャーゲーム. 乙部町には公民館の複合施設として,1985年に郷土資. を通じて自然に親しむプログラムが組まれている。なお,. 料室が完成した。この施設では,町内の自然・考古・漁. 教育委員会内に開設した自然史研究室は,貴重な化石試. 業・生活・学校教育等を展示している。自然関係の普及. 料(大型脊椎動物)の展示に加えて,ボランティアによ. 活動としては,地引き綱体験教室,植物観察会,昆虫採. 【104 一.
(6) No.51. 過疎地域における博物館教育. 1997.3. l.... …. 仰. 巾¶. 嬰 樽状. 1.生鋤の残したものか−YES. 柑●・肋●・a腰す・■●(アシカ■). 乙人の事が加わっていないか−NO 3.■近のものじやないか−−NO. t●(クジラ・カイギュ′引. 抜状. 材・葉・坪果. ■甲●・下■●・モー(アシカ1) ■●(クジラ・カイギュウ). ≠ll♂. 柱状. 花粉聯. 塊状. 書Il・肋●・四技●. 瓜せ●(クジラ・カイギュウ〉. (■l■で1入ない). 上■●・尺●. 豆状 羊欄■・見積●(アシカま). 挿●・t州 複雑?■. すt曽など (クジラ、カイギュウ、 アシカ、セイウチ…). 無脊椎勤物. rT. 見化石 耽需のポイント ◎ニ檎員?鴨Å丁. ◎全体の滞多と大書さ ◎ポ鷹の横欄. ィt””.川.′万■. ††††、l. 票監L_____⊥ご=__=二________ごニ_」. 図5 化石発掘マニュアル(沼田町教育委鼻会). 図6 乙部町具子沢遊歩道計画図. 【【105 】. 一.
(7) 鈴木 明彦. 図7 化石標本展示パネル原案. ような対象となるものは枚挙にいとわないが,前述の員. 集教室が継続して行なわれてきた(森,1996)。 また,1996年春に館浦地区に「第四紀化石露頭 員子. 子沢化石公園(乙部町),野外博物館(三笠市),中頓. 沢化石公園」が完成した。これは員化石露頭の現地保存. 別鍾乳洞(中頓別町)のように総合的に整備されたもの. のため,員子沢遊歩道を整備して,野外博物館としたも. は少ない。植物・動物・地形・地質を総合的に見て初め. のである(鈴木,1996)。このきっかけとなったのは,. てその地域の環境(含古環境)が理解できるといえる。. 乙部町字館浦付近における鶉層(約100万年前)からの. これからの地球環境科学理解には時間軸を考慮した環境. 員化石露頭の発見である(鈴木・能條,1991)。この後, 乙部町関係者にこの員化石の科学的意義が認識され,現. 変遷に基づく視点が必要であろう(新井はか,1986)。. 地保存の重要性が議論された。やがて,この試みは平成. る。これらは各種の開発によって跡形もなく消えてしま. 7年度の新山村振興農林漁業対策事業の対象となり,山 村広場整備工事として行なわれた。日本海に面したこの. なため再現性がない。また,そのスケールから収集型野. 次には地形・地質・化石などの現地保存の重要性であ. うものが多く,動物や植物のように繁殖や栽培が不可能. た(図6)。この露頭の脇には説明板とともに実際の化. 外博物館(新井,1964)として整備するにも限界がある ことは否めない。やはり,これらは現地において観察す. 石を埋め込んだ大型プレートが設置されている(図7)(. ることでその意義が生きてくるものである。このような. 地域は上述の員化石露頭を含めた遊歩道として整備され. 今後,乙部町郷土資料室ではこの野外施設を利用した. 素材は道内に多数あるが,保存・展示がしっかりしてい. 化石探検教室を開催する予定で,フィールドミュージア ムを活用した新たな自然関係の普及活動として,注目さ. るものは以外と少ない。また,沼田町のところで触れた 生活・環境博物館(Eco檜Museum)も今後期待され. れている。. る新たなタイプの野外博物館といえよう(Rivi6re, 1985;新井,1995)。. 4.終わりに. 終りに,小論をまとめるにあたり,野外調査において. 以上,北海道の過疎地域におけるフィールドミュージ. 多大な便宜をはかっていただき,また貴重な資料を提供. アムの活用例を紹介してきたが,さらに今後の発展や改. して下さった黒松内町教育委員会,沼田町教育委員会な. 革が望まれるところである。. らびに乙部町教育委員会の方々に厚く御礼申し上げる。. まず,はじめに野外博物館の設立と整備である。この. 106 一一−一.
(8) Nα51. 過疎地域における博物館教育. 引用文献. 新井重三(1956)第8章 野外博物館。博物館学入門, 理想社。 新井重三(1964)学校岩石園(地学園)の計画と設置の. 研究。博物館研究37巻6・7号。 新井垂三はか4名(1986)博物館と環境教育。博物館学 雑誌11巻2号。. 新井竜三(1989)野外博物館総論。博物館学雑誌14巻1 ・2号。 新井重三(1995)実践エコミュージアム入門。牧野出版。 千地方造(1994)博物館の楽しみ方。講談社現代新書。 北海道教育委員会(1991)生涯学習のまちづくり 100遠。北海道教育庁企画管理部企画室。 黒松内自然ガイドブック編集委員会(1990). 黒松内自然ガイドブック。黒松内町教育委員会。 糸魚川淳二(1993)日本の自然史博物館。東京大学出版 会。 森 広樹(1996)博物館だより一乙部町郷土資料室。 オシマノグラフイー,第3号。. 沼田町(1995)地域環境博物館構想。沼田町。 沼田町化石研究会(1995)軌跡:沼田町化石研究会 10周年記念誌。. Rivi6re,G.H.(1985)The Ecomuseum−an evolutivedefinition.MUSEUM,nO.148。 鈴木明彦(1996)北海道における野外博物館一特にフィー. ルドミュージアムについて。年報いわみぎわ17号。 鈴木明彦・能候 歩(1991)西南北海道日本海側鶉層か ら産出したAr氾dαrααm£c乙↓Jαを伴う前期更新世貝類群集。. 地質学雑誌97巻7号。. 高橋興世(1995)博物館だより−黒松内町ブナセンター. オシマノグラフイー,第2号.. ー107 山. 1997.3.
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(2001) Elemental distribution: Overview.. In, Encyclopedia of Ocean
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【こだわり】 ある わからない ない 留意点 道順にこだわる.
ここでは 2016 年(平成 28 年)3
山階鳥類研究所 研究員 山崎 剛史 立教大学 教授 上田 恵介 東京大学総合研究博物館 助教 松原 始 動物研究部脊椎動物研究グループ 研究主幹 篠原