Vo1. 28 (1991) 近畿大学原子力研究所年報
判 ‑
l 資
小 枝 美 昌 代 典 彦 永
垣 本
放 射 線 管 理
子,久 隆,稲 宏,坂 司 妙
康 宏 賀 木 井 崎 古 青 二 岡 禰 重 , 良 太 , 千鶴子,
嶋 木 口 森 三 瀧
Radiaton Hazard Control Report
Hiroshige MORISHIMA, Taeko KOGA, Saemi HISANAGA,
Ryota MIKI, Yutaka AOKI, Masayo INAGAKI,
Chizuko T AKIGUCHI
,
Yasuhiro HUT AI,
Norihiko SAKAMOTO and Koji OKAZAKI(Received October 30, 1991)
近畿大学原子力研究所における平成2年4月より平 成3年3月までの1年間の放射線管理の結果を報告す る。平成2年4月における放射線業務従事者は原子力 研究所および理工学部,薬学部,農学部など教員40名, X線業務従事者等13名,卒業研究のため原子炉施設利 用の理工学部20名,障害防止法に係る放射線業務従事 者として理工学部学生など72名〈京大原子炉実験所な どへの外部派遣学生を含む〉計145名が放射線管理の 対象となった。
平成2年度1年間の原子炉の運転状況は,最高熱出 力1ワット,積算熱出力量444.1W'hr,延運転時間 592.9時間で, 中性子発生装置の運転は今年度実施さ れなかった。科学技術庁による平成 2年度に実施され た原子炉施設定期検査は平成2年3月22‑24日および 保安規定道守状況調査は平成2年9月19日に行われ,
無事合格した。本報では平成2年度に定期的に実施し た環境放射能調査等の結果について報告する。
個 人 管 理
2.1 健康診断
原子力研究所原子炉施設保安規定および放射線障害 予防規定に基づく放射線業務従事者に対する健康診断 のうち,血液検査は放射線業務に従事する前および従 事してからは年 1回実施した。
検査は当大学医学部付附病院に測定を依頼して行っ た。その結果を第1‑4表に示した。これによると白 血球数において 3,OOO‑4,000jmm3の範囲の者が5 名,赤血球数において 350‑400万/mm3の者が3名
第1表 白 血 球 数
2 . ま え が き
1.
検 査 年 月 平成2年4月 教職員 学 生 白 9,000以上 7 3 血 5,000‑9,000 50 86 球
数 4,000‑5,00
。
11 22 C/m m3) 4,000未満 1 4計 69人 115人
L..
‑ 47ー
第3表 血 色 素 量 検 査 年 月 平 成2年4月
教職員 学 生 血 16.0以 上 18 41 色 14.0‑16.
。
42 59 素量 12.0‑14.
。
8 14 (g/dlD 12.0未 満 1計 69人 115人 第2表 赤 血 球 数
平 成2年4月 検 査 年 月
教職員 学 生 赤 550以 上 2 10 血 450‑550 54 90 球
数 400‑450 11 14 (万/mm3) 400未 満 2
計 69人 115人
第4表 白 血 球 百 分 率 平 成2年4月 検 査 年 月
教 職 員 学 生 梓 状 核 0.5‑9.0% 0.5‑10.0% 好中球
分 葉 核 32 ‑70 28 ‑73 好 酸 球 1.0‑‑22.5 0.5‑14.5 好 塩 基 球 0.5‑5.0 0.5‑5.5 リ ン パ 球 20 ‑‑52 9 ‑53 単 球 1 ‑‑14 1 ‑14
L一一
および血色素量 12g/df未満が2名いたが,再検査お よび問診等lとより,生理学的変動および低血色素性貧 血で,放射線被ばくによると思われる異常は認められ なかった。その他皮膚,爪の異常および水晶体の混濁 などについても放射線被ばくによると思われる異常は なかった。
2.2 個人被ばく線量当量の管理
個人被ばく線量当量の測定は昨年度までと同様にフ イノレムバッジを主に,必要に応じて熱鐙光線量計(以 下 TLDとする〉またはポケット線量計を補助線量計 として行った。フイノレムバッジは広範囲用
C X
,r
, β線), 中性子線用あるいはT線用が用いられ,作業 者の利用頻度により1カ月間あるいは3カ月間毎に実 効線量当量の測定を業者に依頼している。フイノレムバ ッジなどによる1年間の実効線量当量を第5表に示し た。乙れによると年間の実効線量当量は最高 O.lmSv で実効線量当量限度および組織線量当量限度に達した 者はなく,中性子線用フイJレムバッジによる測定では 検出限界以上のものは皆無であった。平成2年1年 間 の1人平均実効線量当量は放射線業務従事者について は,いずれもフイノレムバッジの測定結果で検出限界以 下は0として集積したのでOとなった。作業時の実効 線量当量の管理目標値,調査レベルをこえた場合は皆 無で,原子炉施設およびトレーサー・加速器棟におけ る作業において内部被ぱくの予想される事例はなかっ 7こ。3 . 研究室管理
3.1場所におげる線量当量率の測定
原子炉施設およびトレーサー・加速器棟における線
第5表 放 射 線 業 務 従 事 者 の 実 効 線 量 当 量
mSv 線 量 当 量 分 布
区分 <5 5‑15 15‑25 25‑50 50く 教 員 * 60
。 。 。 。
学 生 92
。 。 。 。
計 152
。 。 。 。
0.1mSv以 下 " (検出限界以下)は0として集積した。
*外来の放射線業務従事者を含む。
‑ 48ー
総 線 量 平均線量 最大線量
当 量 当 量 当 量
合 計 (人・mSv) (mSv) (mSv) 60 0.2 0.0 0.1 92
。
0.0。
152 0.2 0.0 0.1
Vol. 28 (1991) 近畿大学原子力研究所年報 第6表各施設における月間集積線量当量
単位:mSv
測 定 位 置 平成2年 平成3年 年 問
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 集積線量当量 原子炉遮蔽タンク上部 く0.1く0.1く0.1<0.1 く0.1 0.3 0.3 く0.1 0.4 0.4 0.2 く0.1 1.6+7X 原 原 子 炉 室 入 口 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X 子 中 性 子 源 照 射 室 入 口 く0.1く
o .
く0.1く0.1く0.1 0.6 く0.1<0.1 く0.1く0.1く0.1く0.1 0.6+UX 炉施 核 燃 料 物 質 取 扱 場 所 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X 設 核 燃 料 物 質 保 管 場 所 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1<0.1 く0.1く0.1く0.1く0.1 12X コ シ ト ロ ー ル 室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X 加 速 器 操 作 室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X RI H‑l室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 0.1 0.2 0.2 0.1 0.1 く0.1く0.1 0.7+7X ト 実 H‑2室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X レ 験 L‑l室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X サ 室 L‑2室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X R 1貯 蔵 室 前 廊 下 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X
.
力
日 排 気 機 械 室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X 速 排 水 ポ ン プ 室 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X 器
棟 L ー 1 室 外 壁 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X 周辺監視区域境界(4カ所〉 く0.1<0.1 く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1く0.1 12X 原子炉運転延熱出力 (w.h) 0.83 22.33 51.58 36.63 41.72 48.14 44.10 65.61 39.59 38.88 46.71 7.98 444.1
く0.1:検出限界以下(x)
N t
r 十
原子炉室6
・
機 械 室
モニター室 1
・
i 原子炉 1
、 " T ' " ・
7(上) 実験 室
8 (下)
2 2
‑ 測 定 点 第1図原子炉施設における
r
線線量当量率測定点量当量率の測定は電離箱式エリアモニタによる連続測 定および記録の他,電離箱式サーベイメータ (Aloka 製 ICS‑311およびICS‑151など), G M管式サーベ イメータ (Aloka製TGS‑123など〉を用いて行った。
また平均
r
線線量当量率は個人被ばく線量測定用のフ イノレムバッジおよび TLD(松下電器産業側製, UD‑200S, CaS04 (Tm) )を用いて1カ月間の積算線量当量 から計算により求めた。
‑ 49ー
原子炉施設内における月間平均γ線線量当量率の変動
No. リ調 定 場 所 変 動 範 困 平 均 値
( X1O‑2μSv/h) (X1O‑2μSv/h)
モ ーー タ 室 7.68‑‑11.64 9.19::1: 1.15
*
2 コ ン ト ロ ー Jレ 室 8.12‑‑17.66 10.90::1: 2.41 3 原 子 炉 室 入 口 10.14‑‑17.97 13.18::1: 2.69 4 核 燃 料 物 質 保 管 場 所 10.38‑‑20.79 13.89土 3.03 5 核 燃 料 物 質 使 用 場 所 11.34‑‑23.16 15.86::!: 3.48 6 核 燃 料 物 質 取 扱 場 所 9.27‑‑17.19 13.72土 2.97 7 原 子 炉 遮 蔽 タ ン ク 上 部 10.41‑‑57.19 33.59::1:13.19 8 原 子 炉 遮 蔽 タ ン ク 南 下 部 13.72‑‑102.50 58.25::1:23.96
第7表
*
標準偏差Ahマ@︑︑/〆
/ 〆
・ い
L a A
ー し
AZ
LR
札 ︑ ︑ 守
︑ . ・ . .
11
.
t︑
︑︑
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︑︑
企 晶 ︑ ︒
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管 炉
・
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/ h
a r m h
(μSv/h) 0.20
0.15
0.10
0.07 平 成2年
4月 究月
平 成3年 1月 2月 原子炉施設内における空間
r
線線量当量率の変動12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 第2‑1図
(μSv/h)
'‑‑A¥F22/ 企 ¥
, = . : お 卦 L ム ー エ :
1.00
0.50
0 平成 2年
4月 3月
平 成3年 1月 2月 原子炉施設内における空間T線線量当量率の変動
‑ 50‑
12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月
第2‑2図
5月
Vol. 28 (1991)
汚染 検査室
近畿大学原子力研究所年報
N
千十
第 3図 トレーサー・加速器棟における
r
線線量当量率測定点 第8表 トレーサー・加速器棟内における月間平均γ線線量当量率の変動 No. 測 定 場 所 変1 R I 実 験 室
2 H 2 室
3 H
一
1 室4 L 2 室
5 L 1 室
6 加 速 器 操 作 室 7 排 水 ポ ン プ 室 8 排 気 機 械 室
9 リ調 定 室
10 貯 蔵 室 前
11 暗 室
12 廊 下 (H 室 前 ) 13 廊 下 ( L 室 前 ) 14 放 射 線 管 理 室 15 汚 染 検 査 室
*
標準偏差3.1.1 フィルムバッジによる測定
第6表にフイノレムバッジによる月間積算線量当量の 測定結果を示した。これによると原子炉施設内におい て測定を行なった点の内,中性子照射室入口において 平成2年9月に月間 0.6mSvと最高値を,また年間 におけるT線の集積線量当量は,原子炉遮蔽タンク上 部が最高で 1.6mSvとなった。 乙れは検出限界以下 (X)を0として集積した。 トレーサー・加速器棟に おいては月間T線線量当量は RI実験室 (H‑l)で,
平成2年10,11月にそれぞれ O.2mSv,年間でのT線
動 範 囲 平 均 値
( XlQ‑2μSv/h) (XlO‑2μ Sv/h) 8.06‑‑18.67 10.48:1:2.88
*
8.71‑‑12.3 10.5 :1:1.17 9.86‑‑27.1 18.3 :1:6.15 9.89‑‑14.9 12.6 :1:1.44 8.37‑‑13.0 10.0 :1:1.28 7.45‑‑14.7 9.17:1:1.81 7.58‑‑17.2 9.64:1:2.50 7.87‑‑14.9 9.86:1:1.81 9.33‑‑13.8 11.5 :1:1.42 31.1 ‑‑44.2 38.3土14.3
9.56‑‑13.7 11.5 :1:1.33 7.93‑‑16.4 10.4 :1:2.24 11.9 ‑‑18.4 13.6 :1:1.73 7.93‑‑16.4 10.4 :1:2.24 8.45‑‑12.5 10.4土1.31
線量当量は O.7mSvとなった。その他の場所におい ては O.lmSv以下, すなわち明検出限界以下"であ った。中性子線量は中性子線用フィルムバッジによる 測定でいずれの場所も喫検出限界以下"であった。
3.1.2 TLDによる測定
TLD による月間平均T線線量当量率(μSvjh)は1 カ月間の積算線量 (μSv)を設置時間で割り,計算し た。原子炉施設内8点(第1図)の月平均y線線量当 量率の1年間の経時変動を第7表,第2図に示した。
fμSv/h)
0.20
0.10
平成2年 平 成3年
4月 5月 6月 7月 a月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 第4四 1図 トレーサー・加速器棟内における月間平均のT線線量当量率の変動
fμSv/h)
0.15
0.07
平成2年 平成3年
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
第4‑2図 トレーサー・加速器棟内における月間平均
r
線線量当量率の変動 (μSv/h)0.30
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
平成2年 平 成3年
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
第4四 3図 トレーサー・加速器棟内における月間平均
r
線線量当量率の変動‑ 52‑