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試行駆動による有機 E L 素子劣化特性の改善

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Academic year: 2021

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近畿大学工学部研究報告 NO.432009pp75‑78 Research Reports of the Faculty of Engineering, 

Kinki University No.43 2009, pp.75‑78 

試行駆動による有機 E L 素子劣化特性の改善

野 村 佳 史 、 宮 城 法 祐 、 同 田 和 之

Improvement i n  D e g r a d a t i o n  o f  O r g a n i c  E l e c t r o l u m i n e s c e n t   D e v i c e s   by  P r e ‑ O p e r a t i o n  

Yoshifumi NOMUR   A , N o r i s u k e  MIYAGI and Kazuyuki OKADA 

Abstract 

The organic light'emitting diodes (OLEDs) with multi‑layers structure were operated at the constant driving  voltage in pre‑operation mode.  The lifetimeof the OLED in pre‑operation driving mode was seven times  longer  than that  in  standard operation  mode.  The  degradation  characteristics  of  OLEDs were less  dependent on the reduction of the emission area by the generation of dark spot.  The improvemntin the  degradation would be relation to the changes of the carrier injection andJor transportation in the organic  layers, which were caused by the heat'generation under the pre‑operation driving 

Key words : EL device, Degradation, Display, Organic thin film 

1.はじめに 本研究では、積層型素子の駆動条件が劣化特性に及

有機EL素子は、構造上、積層型と単層型に大別でき ぽす影響を測定・評価した。 EL素子を一定電圧で駆 る。積層型素子は、低電圧駆動、高効率などが特徴と 動した後、電圧を上昇して駆動する試行駆動方式を採 して挙げられる。単層型素子は、作製が容易であり、 用した。この方式での駆動において EL素子の劣化特 大型化が可能である。デイスプレイや照明への応用に 性の改善が観られたので、その結果について報告する。

関する研究が盛んな現在では、素子効率の観点から積

層型の研究が主流となっている。 16)EL素子の実用化 2.有機EL素子の作製手順

に向けでは、素子の高効率と共に長寿命化が課題であ Poly(3.4叫hylenedioxythiophene)・poly(styrenesulfonate) る。素子材料にドープを行うことにより長寿命化でき (PEDOT' PSS)を無水エタノールに溶解して ITO膜付 ることが報告されている。 7) ガラス基板上にスピンコートした。続いて、その上に しかし、材料・素子構成が複雑になるほど製作工程 Bis [N '(l'naphthyl). N'phenyllbenzidine (a' NPD)、 が増え、生産に技術が必要になり、大量生産は難しく Tris(S'hydroxyquinolinato)  aluminum(III) (Alq3)、 なる。そこで、比較的簡単な構造の素子で、駆動条件 29'Dimethyl'47・diphenyl'll O'p henanthroline  (BCP)を を工夫することで長寿命化を試みた。 順次、真空蒸着して有機層を形成した。最後にMgAg

近畿大学工学部電子情報工学科 Department  of  Electronic  Engineering  and  Computer  Science, Faculty of Engineering, Kinki University 

75 

(2)

76  近畿大学工学部研究報告 No.43 

電極を真空蒸着した。作製した素子のエネルギー準位 図を図2一1に示す。 ITO電極からホールが、 MgAg電 極から電子が注入される。 BCP層・α‑NPD層にてキ ャリアの移動がブロックされる。したがって、今回作 製した素子では、Alq3層にてキャリアの蓄積・発光が 起こると考えられる。

.‑2. 6  r3.4 4 . 6  IPEDOTI  一二三ニ三三.J at ‑ N P D  

I T O  L 5 . 01 

'‑ 5.7 

3 . 2   Alq3 

5 . 8   3 . 2   B C P  

6 . 7  

3 . 7   M g A g  

図2‑1 積層型EL素子のエネルギー準位図

3.測定方法・手順

3.  1 大気中での測定方法

作製した素子とフォトセンサー(浜松ホトニクス株 式会社、 H678001)を 9[cm]離して配置した。作製 した EL素子に大気中で直流電圧を印加した。発光領 域全体が発光することを確認した後、発光面に対して 垂直方向に放射する光の強度と駆動電流の時間変化を 測定した。発光強度が減少した後、初期発光強度とな るまで駆動電圧を上昇させて発光強度と駆動電流の時 間変化を測定した。測定中に分光器(分光計器株式会 社、

K 1 0 1 3 )

による発光スベクトル測定も行った。

3.  2 真空中での測定方法

大気中で素子を動作させると、駆動時間の経過とと もにダークスポットが発生し、発光面積が減少する。3)

発光面積の減少が劣化特性に与える影響を調べるため、

ダークスポットの発生しにくい真空中にて EL素子を 駆動した。作製した素子をガラス容器に入れ、真空ポ ンプで排気して

1 0[ P a ]

程度の真空環境にし、大気中 と同じ測定を行った。

4.測定結果及び検討

4.  1 大気中でのEL素子駆動

駆動電圧 10[V]一定での発光強度・駆動電流の時間 変化を図4一1fこ示す。測定開始時には2.7[a. u]の発光 強度があったが、 2時間後には1.35 [a. u]に半減した。

以後、発光強度の半減時間を素子寿命として定義する。

電圧8[V]にて 1時間、素子を駆動した後、駆動電圧 を10[V]に上昇したときの発光強度・駆動電流の時間 変化を図4‑2に示す。駆動電圧上昇後、発光強度は 15 時間で2.7[a. u]から1.35 [a. u]に半減しており、10[V]  定で駆動した場合と比べて素子寿命が7.5倍長くな っている。また、駆動電圧を上昇させる前の素子寿命 と比べても7倍長くなっている。

図4‑2に示した劣化特性では、駆動電圧上昇後に発 光強度が指数関数的に低下していない。測定開始から 12時間後に観測された急激な劣化は、駆動電圧 10[V]  一定での測定開始後40分間の拡大図である図4‑3、試 行駆動した場合での測定開始後 40分間の拡大図であ る図4‑4においても観測される。試行駆動を行った場 合(図 4‑4)の急激な劣化が観測された時刻が、試行 駆動を行っていない場合(図 4‑3)と比べて早いが、

定性的には同じ特性である。したがって、素子の劣化 特性に大きな違いはないと考える。この急激な劣化が 発生したとき、駆動電流に大きな変化は見られない。

したがって、キャリア注入量の減少が劣化の原因では ない。発光強度が急激に低下するまでの時間を寿命と 定義しでも、 10[V]一定で駆動した場合と比べて、素子 寿命が 16倍長くなっている。また、駆動電圧を上昇さ せる前の素子寿命と比べても48倍長くなっている。

EL素子駆動すると駆動電流により素子中に熱が発 生する。有機膜が加熱されると酸化もしくは結晶化す ることが報告されている。8)この有機膜の変質により、

各有機層のエネルギー準位が変化したと推測する。

分光器により発光スベクトルを測定したが、駆動初 期と駆動電圧上昇後では違いはなかった。したがって、

(3)

77  試行駆動による有機EL素子劣化特性の改善

3.0  2.5  2.0 " 

.2. 

1.5

;g 

1.0 

hzN 

0.3  発光層である Alq3層のエネルギー準位が変化したと

は考えにくい。

ヨ0.2

~"

~JIi1 0.1  図4‑2から分かるように、駆動電圧を上昇した後の

駆動電流は、駆動電圧を上昇させる前より減少が時間 的に緩やかである。

PEDOT‑PSS.a‑NPD. BCP

層の

0.5  0.0  40  0.0 

O  エネルギー準位が変化してキャリアの注入・輸送状態

30 

駆動電圧 10[v]での劣化特性 20 

時 間[rnin] 10 

図4‑3 が変わり、素子寿命が長くなった可能性が高い。

3.0 

3.0  2.5 

U R J vnu

qL

咽' 咽'

0.5 

一 一 : 

(測定開始後40分間)

0.2 2.5 

2.0 

1.5冨

1.0

kdnuk

1 1 0   0 0 0  

[4 E] 0.5  j発 光 強 度 ;

駆動電流トーよごとと」

0.3 

0.

E]

燃側議慰

0.1 

00  15  20 

10  時間[h]

0.0  O 

駆動電圧10

[ v J

での劣化特性(大気中) 図4‑1

0. 40  30 

20  時 間[rnin] 10 

0.00  3.0  O 

試行駆動素子の劣化特性 (測定開始後40分間)

で駆動したため EL素子を構成する材料の酸化が抑え 0.3 

図4‑4

2.5  2.0 

1.5

1.0

0.5  0.2 

F

~JIi1

0.1

られたためと考える。急激に発光強度が減少する要因 0.0 

20  0.

10  15  は内部電界の発生であるとする報告がある。9)今回の

時間[h]

駆動では、大気中及び真空中どちらも常に電流を流し ているため、内部電界の発生が急激な劣化に影響して 試行駆動素子の劣化特性(大気中)

図4‑2

いる可能性は考えられる。参考文献では、素子を封止 真空中でのEL素子駆動

2  4. 

そのため、今回 した状態で、定電流駆動を行っている。

大気中でEL素子を駆動する場合に比べ、真空中での

観測した急激な劣化現象には、内部電界の発生に加え 駆動ではダークスポッ トの発生が抑えられたことを目

て他の要因も関係している可能性もある。 視にて確認した。

駆動電圧8

[ v J

にて70時間、素子を駆動した後、駆 駆動電圧 lO

[ v J

一定での発光強度・駆動電流の時間

動電圧を 10

[ v J

に上昇した場合の発光強度・駆動電流 変化を図4‑5に示す。測定開始時には2.7[a.uJの発光

の時間変化を図4‑6に示す。駆動電圧上昇後、発光強 強度があったが、50時間後に 1.35 [a. uJに半減してい

度は、 180時間で2.7 [a. uJから 1.35 [a. uJに半減して おり、 10[V]一定で駆動した場合(図4‑5)と比べて素 る。発光強度がほぼ一定である時聞が大気中での駆動

と比べて長くなった要因は、真空中 の場合 (図4‑3)

(4)

78  近畿大学工学部研究報告 NO.43

子寿命が3倍長くなっている。また、 駆動電圧を上 昇 させる前の素子寿命と比べても3倍長くなっている。

発光強度が急激に低下するまでの時間を寿命として も、 10[V]一定で駆動した場合と比べて素子寿命が5 倍長くなっている。また、駆動電圧を上昇させる前の 素子寿命と比べても3倍長くなっている。

大気中での駆動では、素子を構成する材料の酸化が 長寿命化に関係していると考えた。 し かし、 真空中で 測定を行っても劣化特性の改善(長寿命化)が見られ

たことから、材料の酸化による影響は小さい。

分光器により発光スベクトルを測定したが、大気中 で測定した場合と同様に、駆動電圧上昇前・後で違い はなかった。また、図4‑6から分かるように、駆動電 圧上昇した前 ・後の駆動電流の時間変化も大気中での 駆動の場合と同様の傾向を示している。

0.20 

0.15 

E0.10

0.05

0.00  O 

3.0  2.5  一 度

一 強一光 一 発

2.0

1.5

1.0 

0.5  0.0  20  40 

時間[h]

図4一5 駆動電圧10[V]で の 劣 化 特 性 (真 空中) 60 

0.5  0.4  34 O 3 

E

S O 2 

0.1  0.0  O 

3.0  2.5  2.0

1 . 5 富

1.0

0.5  00  50  100  150  200  250 

時間 [h]

図4‑6 試 行 駆 動 の 劣 化 特 性 (真 空中)

大気中 ・真空中での劣化特性を比較すると、寿命に 差はあるが、いずれの場合も駆動電圧上昇後では劣化 特性の改善が観られた。大気中・真空中での劣化特性 の傾向ならびに発光スベクトルは類似している。した がって、ダークスポットの発生による発光面積の減少 は、試行駆動による劣化特性改善の有無に影響を与え ていないと判断できる。

5.まとめ

試行駆動を行うことにより素子の長寿命化を実現で きた。大気中で、試行駆動を行ったEL素子の寿命は、

試行駆動を行わなかった素子に比べて7倍長くなった。

真空中の駆動条件下においても試行駆動による劣化 特性の改善が見られた。ダークスポットの発生による 発光面積の減少は、試行駆動による劣化特性改善の有 無には影響しないと判断できる。

長寿命化の要因は、試行駆動時に発生した熱で有機 膜のエネルギー準位が変化して、キャリアの注入・輸 送状態に影響を及ぼしたと考える。

参考文献

1)筒井哲夫;電子情報通信学会技術研究報告, Vol.92,  No.l23 (OME92, 9‑15), p.p.1‑6 (1992). 

2)日野有一;電子情報通信学会技術研究報告,Vol.I03,  NO.317 (0加1E2003,72‑79), p.p.31‑36 (2003) 

4 )

大石教博,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.l05,  NO.576 (OME2005, 101‑111), p.p.15‑19 (2006) 

5)山本隆裕;電子情報通信学会技術研究報告,Vol.I05,  NO.642 (OME2005, 112‑119), p.p.23‑26 (2006).  6)藤田克彦 ,未来材料,Vo.I9,No.6, p.p.34‑38 (2009)  7)浜田祐次,テレビジョン学会技術報告,Vo1.20, NO.18 

(IDY96, 77‑81), p.p.13‑18 (1996.). 

8)有機EL材料技術:佐藤佳晴監修, (株式会社シー エムシー出版,2004年)p.p.14‑21. 

9)  Masahiko  Ishii ; R&D  Review of Toyota CRDL,  Vo1.38, No.2, p.p.55‑60. 

参照

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