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産業廃棄物税の排出抑制効果―パネルデータを用いた分析

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Academic year: 2021

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産業廃棄物税の排出抑制効果ーパネルデータを用いた分析

(正)○笹尾俊明1) 1)岩手大学 1. 研究の背景と目的 2002 年に三重県で国内初の産業廃棄物税(以下、産廃税)が実施され、本稿執筆時点では 27 道府県と1市に おいて同税が実施されている。産廃税の課税目的として多くの自治体が挙げているのは、産廃の発生(排出)抑制、 再使用、再生利用、その他適正処理に関する施策に要する費用への充当である。このように、産廃税は財源調 達のための税であるとともに、発生(排出)抑制やリサイクル促進といったインセンティブ効果を狙う税でも ある。三重県では課税後 6 年が経過し、他の自治体においても徐々に課税後の産廃排出状況が明らかにされつ つある。しかし、産廃税課税による事後的な影響を全国単位で定量的に分析した研究はまだ見られない。そこ で本研究では、産廃税に期待される効果の1つである排出抑制効果に注目し、5 年間の全国 47 都道府県のパネ ルデータを用いて分析する。 2.研究の方法と概要 本研究では各都道府県の産廃排出量を被説明変数とし、それに影響を与えると考えられる社会経済的変数と 産廃税実施の有無を説明変数とした推定式に基づいて計量経済分析を行う。都道府県単位での産廃税施行前後 の産廃排出量の変化に注目するため、2000 年度から本稿執筆時点で入手可能な最新の産廃データである 2004 年度までの全国47 都道府県のパネルデータを作成した。産廃排出量については、環境省が公表している「産業 廃棄物排出・処理状況調査」を用いた。説明変数については、海外の既存研究(Bartelings et al. 2005 等)を参考 に、まず各都道府県における、人口・面積・第1次産業の県内総生産・第2 次産業の県内総生産・第 3 次産業 の県内総生産・中間処理施設数・最終処分場数の採用を検討した。経済変数についてはより詳細に、例えば建 設業の活動水準を元請完成工事高で、製造業のそれを製造品出荷額等で代表し、説明変数に加えるということ も考えられる。しかし、「産業廃棄物排出・処理状況調査」には、こうした経済活動水準から推計された産廃排 出量が含まれているため、これらの説明変数を含めて推定する意味はあまりないと考え、上述の7 つの変数に ついて検討した。各変数間の相関係数は表1 の通りである。表 1 から明らかなように、人口・面積・第1次産 業の県内総生産・第2 次産業の県内総生産・中間処理施設数については、0.56 0.91 の高い相関が示されたた め説明変数から除外した。 表1:変数間の相関係数 人口 面積 1 次総生産 2 次総生産 3 次総生産 中間処理施設 最終処分場 面積 0.1010 1 1 次総生産 0.1492 0.8386 1 2 次総生産 0.9178 -0.0055 0.0731 1 3 次総生産 0.8941 0.0214 0.0086 0.8404 1 中 間 処 理 施設 0.5670 0.4412 0.5700 0.6261 0.3127 1 最 終 処 分 場 0.2057 0.8057 0.7865 0.2287 0.0643 0.7030 1 産廃税 -0.0940 -0.0019 -0.0510 -0.0748 -0.0711 -0.0124 -0.0280 【連絡先】〒020-8550 盛岡市上田 3 丁目 18-34 岩手大学人文社会科学部 笹尾俊明 Tel / Fax: 019-621-6751 E-mail: [email protected]

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結果的に本研究で採用した社会経済的変数は、第3 次産業の県内総生産(2000 暦年連鎖価格に基づく実質値 (総務省))と最終処分場数(「産業廃棄物処理施設の設置・産業廃棄物処理業の許認可に関する状況調査」(環 境省))であり、これらに加え、産廃税実施の有無を示すダミー変数(産廃税実施の場合1、実施なしの場合 0) と各年度を示すダミー変数を説明変数として採用した。本研究の調査対象期間における産廃税の導入状況は表2 の通りである。なお、1 月から産廃税を施行している自治体については翌年度実施としてカウントした。 表2:2004 年度までの産廃税導入状況 導入年度 都道府県 2002 年度 (4 月導入)三重県 2003 年度 (4 月導入)岡山県、広島県、鳥取県、(1 月導入)青森県、秋田県、岩手県、滋賀県 2004 年度 (4 月導入)新潟県、奈良県、山口県 ダミー変数以外の変数については自然対数を用いて、各変数の弾力性が明らかになるよう推定した。産廃税 の効果を詳細に分析するため、本研究では以下の3 つの推定式について推定した。 推定式1:ln(排出量)=a1*ln(第 3 次産業の県内総生産)+ a2*ln(最終処分場数)+ a3*産廃税実施ダミー変数 + a4*2001 年ダミー変数+ a5*2002 年ダミー変数+ a6*2003 年ダミー変数+ a7*2004 年ダミー変数+誤差項 推定式2:推定式 1 における「産廃税実施ダミー変数」を「産廃税導入初年度ダミー変数」に置き換えた式 推定式3:推定式 2 に「a8*産廃税導入 2 年目以降ダミー変数」を加えた式 推定式1 では産廃税実施の継続的な影響に注目し、推定式 2 では産廃税導入初年度の影響のみに注目してい る。推定式3 はそれら両方の効果を確認するための式である。 3.推定結果と考察 本研究では、パネルデータ分析で一般に行われているように、すべてのデータをプールして推定するOLS モ デル、都道府県ごとの年度を通じた平均をとり推定するOLS モデル、年度を通じて一定の各都道府県固有の効 果を前提に推定する固定効果モデル、各都道府県固有の効果を確率変数として推定するランダム効果モデルの4 つのモデルを推定した(北村 2005)。推定には計量経済分析ソフトである TSP Ver.5.0 を用いた。F 検定と Hausman 検定の結果、3 つの推定式すべてについて、固定効果モデルが最も統計的信頼性が高いと判断された。 したがって、本報告では固定効果モデルの推定結果に基づいて考察を行う。固定効果モデルによる推定結果は 表3 の通りである。 社会経済的変数については、いずれの推定式による推定結果からも、第 3 次産業の県内総生産と最終処分場 数が排出量に負の影響をもたらすことがわかる。一般に第3 次産業は第1次産業や第 2 次産業に比べ、生産額 1単位あたりの産廃排出量が小さく、ここでの推定結果もそれを反映したものと考えられる。最終処分場数に ついては、今後詳細な検討が必要であるが、排出量と最終処分場の数がトレード・オフの関係にあることを意 味しており、排出量の多い都市圏から排出量の少ない地方圏に最終処分のために産廃が流入する実態を示して いるとも考えられる。 産廃税については、推定式1 の産廃税実施を示すダミー変数は有意な影響を示さなかったが、推定式 2 の産 廃税実施初年度を示すダミー変数は負に有意な影響を示した。一方、推定式 3 では産廃税導入初年度は排出量 に対し負の効果をもたらすが、導入2年目以降は正に転じており、その大きさは導入初年度の負の効果を打ち 消すものである。これらの結果から、産廃税導入初年度は排出削減に一定の効果をもたらすが、持続的な排出 削減効果は見られないことがわかる。産廃税を実施している自治体の多くでは税導入に合わせ、税財源を用い たリサイクル補助事業など他の関連政策を同時実施する自治体も多く、導入初年度はアナウンス効果も含め一 定の効果があるように推測される。本研究の産廃税実施に関するダミー変数には、このような産廃税と他の関 連政策とのポリシー・ミックスの効果が含まれている可能性があるが、本研究の結果はそれらを含めたとして

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も、持続的な排出削減効果は少なくとも現時点では見られないことを示している。 表3:固定効果モデルによる推定結果 推定式 推定式1 推定式2 推定式3 変数 係数 t 値 係数 t 値 係数 t 値 ln(第 3 次産業総生産) -2.1418** -3.09 -2.1531** -3.19 -1.9490** -2.89 ln(最終処分場数) -0.1228** -2.07 -0.1463** -2.49 -0.1581** -2.70

税実施年度ダミー -0.0348 -1.21 N.A. N.A. N.A. N.A.

税導入年度ダミー N.A. N.A. -0.0892** -3.07 -0.0727* -2.43

税導入2 年目以降ダミー N.A. N.A. N.A. N.A. 0.0952* 2.05

2001 年ダミー 0.0135 0.71 0.0135 0.73 0.0110 0.60 2002 年ダミー 0.0223 0.87 0.0227 0.91 0.0163 0.65 2003 年ダミー 0.0929** 2.81 0.0943** 2.96 0.0824* 2.56 2004 年ダミー 0.1369** 3.41 0.1404** 3.68 0.1187** 3.02 サンプル数 自由度修正済み決定係数 235 0.988 235 0.989 235 0.989 F 検定 Hausman 検定 F(46,181)=83.615 P 値 0.000 χ2(3)=41.374 P 値 0.000 F(46,181)=87.156 P 値 0.000 χ2(3)=46.210 P 値 0.000 F(46,180)=88.777 P 値 0.000 χ2(4)=45.625 P 値 0.000 **1%水準で有意、*5%水準で有意であることを示す。 4.課題 本研究では、産廃税の排出抑制効果に注目し、5 年間の全国 47 都道府県のパネルデータを用いて分析した。 その結果、産廃税導入初年度は排出削減に一定の効果をもたらすが、持続的な排出削減効果は見られないこと が明らかにされた。 一方、本研究には主に2つの課題が挙げられる。一つは、分析対象期間の拡大である。データの制約上、本 研究の分析対象は2004 年度までであったが、半数以上の道府県で産廃税が実施されている現状と、産廃税財源 を用いた各種補助事業等の効果がすぐには発揮されないものもあること等を踏まえると、分析対象期間を拡大 することが必要であろう。もう一つの課題は、産廃税の最終処分抑制効果とリサイクル促進効果に関する分析 である。本研究では、産廃税の排出抑制効果に注目したが、産廃税実施によって期待される効果としては最終 処分抑制効果やリサイクル促進効果も重要である。現時点では、都道府県別の最終処分量やリサイクル量を分 析対象とするにはデータの制約も大きいが、産廃税実施の効果を分析するためには、排出抑制以外も含む総合 的な影響を分析することが重要である。 ※ 本研究は文部科学省科学研究費補助金による助成研究(特定領域研究:持続可能な発展の重層的環境ガバナ ンス)「環境政策のポリシー・ミックス(課題番号18078005,研究代表者:諸富徹(京都大学大学院))」の 成果の一部である。 <参考文献> ・ 北村行伸(2005),パネルデータ分析,岩波書店.

・ Bartelings, H., van Beukering, P., Kuik, O., Linderhof, V. and Oosterhuis, F. (2005). Effectiveness of landfill taxation. IVM report (R-05/05). Institute for Environmental Studies, Vrije Universiteit Amsterdam.

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