耳管開放症治療に関する全国アンケート調査
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(2) 168. を施行した.診断基準案の使用率は 76.5% であり,約半数. 表 1 耳管開放症診断基準案 2016. の施設が JK05-A の機種を使用していた.保存的治療は生活. 耳管開放症診断基準案 2016 確実例;1 + 2 + 3 疑い例;1 + (2 or 3) 1.自覚症状がある 自声強聴,耳閉感,呼吸音聴取の 1 つ以上 2.耳管閉塞処置(A または B)で症状が明らかに改善する A.臥位・前屈位などへの体位変化 B.耳管咽頭口閉塞処置(綿棒,ジェルなど) 3.開放耳管の他覚的所見がある(以下の 1 つ以上) A.鼓膜の呼吸性動揺 B.鼻咽腔圧に同期した外耳道圧変動 C.音響法にて①負荷音圧 100 dB 未満または②開放プ ラトー型. 指導,漢方薬投与,生理食塩水点鼻療法が多くの施設で採用 されていた.保存的治療で改善しえない難治例は年間 581.7 人存在した.手術治療としては,経鼓膜換気チューブ留置, 耳管ピン留置術が多く施行されていた.今回のアンケート結 果を踏まえ,今後の耳管機能検査の普及並びに手術的治療の 普及が望まれる.. はじめに 耳管開放症は,来院時に症状があり,鼓膜の呼吸性動 揺が認められるような典型例では診断は容易であるが, 来院時に症状を呈さない例も多く,診断が困難なことも 少なくない.また,症状はあっても,他覚的所見に乏し. 使用していた.耳管機能検査装置の使用状況は 81 施設. いために確定診断に至らないこともある.世界的にも明. より回答があり,リオン JK05AD:32 施設(39.5%),. 確な診断基準は存在しなかったが,最近,日本耳科学会. JK05AS:13 施 設(16.0%) ,JK04:15 施 設(18.5%),. から耳管開放症診断基準案 2016 が提唱された .. 永 島 医 科 器 械 ET1000:5 施 設(6.2%), 機 種 不 明:1. 1). また,多くの症例では生活指導や保存的治療にて症状. 施設(1.2%),使用していない 15 施設(18.5%)であっ. がコントロールできるが,これらにてコントロール不能. た( 図 1) . 保 存 的 治 療 の 内 訳 は, 生 活 指 導 73 施 設. な難治例では,手術治療が考慮される.その中でも,耳. (85.9%) ,漢方薬投与 65 施設(76.5%) ,ATP 製剤投与. 管ピン挿入術について,医師主導治験が行われ ,現在. 28 施設(32.9%),生理食塩水点鼻療法 63 施設(74.1%),. 薬事承認申請中である.. 耳管処置 30 施設(35.3%) ,サージカルテープ貼布 49. 2). このように耳管開放症は,診断・治療共に新しい展開. 施設(57.6%) ,その他(キチン膜鼓膜貼布,補聴器,. が見られており,これらの実態把握が喫緊の課題となっ. 蒸留水点耳,自律神経作動薬,各 1 施設)であった(図. ている.そこで,今回は,全国医育機関並びに日本耳科. 2).保存的治療法で改善しえない症例は 581.7 例 / 年(平. 学会代議員を対象にアンケート調査を施行したので結果. 均 6.8 例 / 施設)であった.手術治療を行っている施設. につき報告する.. は 30 施設(35.3%)であり,手術治療の内訳は,経鼓 対 象. 医育機関ならびに日本耳科学会の代議員所属施設(91 施設)に以下の項目について質問を行った.1.耳管開 放症症例数(疑い例,確実例 / 月) ,2.耳管開放症診断 基準案 2016 の使用の有無,3.耳管機能検査装置使用 の有無,機種,4.保存的治療の内訳(複数回答可),5. 保存的治療で改善しえない症例数(症例数 / 年) ,6.手 術治療の内訳(症例数 / 年) (表 1) . 結 果 85(93.4%)施設より回答があった.耳管開放症患者 数は 615 例 / 月(平均 7.2 例 / 施設)であった.耳管開 放症診断基準案 2016(表 1)は 65 施設(76.5%)にて. 図 1 耳管機能検査装置使用の有無,機種.
(3) 日本耳科学会保険医療委員会:耳管開放症アンケート調査. 169. 図 2 保存治療の内訳. 図 3 手術治療の内訳. 膜換気チューブ留置:82 件,耳管ピン留置術 67 件,脂. 呼吸音聴取などの症状,②耳管閉鎖による症状の軽減,. 肪注入 2 件,軟骨挿入 5 件であった(図 3) .. ③開放耳管の他覚的所見,の 3 つがあれば, 「耳管開放 症確実例」となる.また,問診で,耳症状と,仰臥位や. ま と め. 前屈位での症状軽減が確認され(①+②),③が確認で きないと,「耳管開放症疑い例」となる.この診断基準. 今回のアンケート調査は,医育機関並びに,日本耳科. 案の使用率は 76.5% であった.. 学会評議員所属施設にアンケート対象を絞ったため,正. 診断基準案の③開放耳管の他覚的所見は,鼓膜の呼吸. 確な実態ではないが,おおよその実態把握が出来たもの. 性動揺の観察,音響法での提示音圧の低下や TTAG 法で. と思われる.. の呼吸に同期した外耳道圧の変動のいずれかが認められ. 耳管開放症診断基準案 2016 は,①自声強聴,耳閉感,. れば陽性所見となる.このうち,後 2 者は,耳管機能.
(4) 170. 検査装置を用いて検査されるものである.耳管機能検査 の使用率は 81.5% であった.本邦では,現在はリオン 社の JK05-A のみが販売されており,音響法とインピー. ない難治例はさらに多いと考えられる. 今回のアンケート結果を踏まえ,今後の耳管機能検査 の普及並びに手術的治療の普及が望まれる.. ダンス法の検査のみの S タイプと,これに加えて TTAG 参考文献. 法,inflation deflation 法(加圧減圧法)の 4 種類の検 査ができる D タイプがある.S タイプは 13 施設 (16.0%) , D タイプは 32 施設(39.5%)であり,約半数の施設が. 1) Kobayashi T, Morita M, Yoshioka S, et al.: Diagnostic cri-. JK05-A の機種を使用していることが分かった.しかし,. teria for Patulous Eustachian Tube: A proposal by the. 本アンケートの対象の多くが,医育機関であることを考. Japan Otological Society. Auris Nasus Larynx 45: 1–5,. えると,耳管機能検査装置の普及率はまだ十分でないと 推察される. 治療については,保存的治療としてこれまで様々な報 告があるが, 今回の調査では, 生活指導 73 施設(85.9%) , 漢方薬投与 65 施設(76.5%) ,生理食塩水点鼻療法 63 施設(74.1%)3) が多くの施設で採用されていた.耳管 開放症に保険適応のある漢方薬は存在しないため,背景 疾患に対して投与されたものと思われる.また保存的治 療で改善しえない難治例は年平均 581.7 人存在した.手 術治療としては,鼓膜換気チューブ留置,耳管ピン留置 術が多く施行されていた.経鼓膜換気チューブは特に鼻 すすり型耳管開放症に有効との報告がある 4),5).耳管ピ ン留置術は,252 耳の検討では,有効率は 83% との報. 2018. 2) Ikeda R, Oshima T, Mizuta K, et al.: Efficacy of a silicone plug for patulous eustachian tube: A prospective, multicenter case series. Laryngoscope 130: 1304–1309, 2019. 3) Oshima T, Kikuchi T, Kawase T, et al.: Nasal instillation of physiological saline for patulous eustachian tube. Acta Otolaryngol 130: 550–553, 2010. 4) Endo S, Mizuta K, Takahashi G, et al.: The effect of ventilation tube insertion or trans-tympanic silicone plug insertion on a patulous Eustachian tube. Acta Otolaryngol 136: 1–5, 2016. 5) Ikeda R, Oshima T, Oshima H, et al.: Management of patulous eustachian tube with habitual sniffing. Otol Neurotol 32: 790–793, 2011.. 告がある .また,前述のように,本邦において医師主. 6) Kikuchi T, Ikeda R, Oshima H, et al.: Effectiveness of. 導治験が行われ,有効性は 82.6% であった.今回のア. Kobayashi plug for 252 ears with chronic patulous Eusta-. ンケート外の施設も含めると,保存的治療にて改善しえ. chian tube. Acta Otolaryngol 137: 253–258, 2017.. 6).
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