インターネットトラフィックが年々大幅に増大する中, 伝送特性に大きな影響を与える伝送用ファイバーにも革新 が求められてきている.ファイバー断面内に複数のコアを 有するマルチコアファイバーは,空間多重伝送によるさら なる超大容量伝送を実現する新たな光ファイバーとして注 目を集めている.構造としては,従来のソリッド型ファイ バーだけでなく,空孔構造(ホーリーファイバー / フォト ニック結晶ファイバー)型も提案されている1,2).マルチ コアファイバーの設計では,分散,有効コア断面積(Aeff), 曲げ損失,カットオフ波長(lc)等の従来の要素に加え, コア間の干渉(クロストーク)を考慮しなければならな い.本稿ではまず,ソリッド型とホーリー型のマルチコア ファイバーを,Aeff拡大とコア密度拡大の観点から比較す る3).その後,両者に関する最近の研究結果を報告する. 1. ソリッド型とホーリー型のマルチコアファイバー の特性比較 マルチコアファイバーの特性としては,曲げ損失や一定 lc での Aeff 拡大,単位面積のコア数(空間多重度)など が考えられる(Aeffを拡大すると,コアのパワー密度が低 減され,結果として非線形現象による波形歪みを抑制する ことが可能となる).これらについて,100 km 伝送後のク ロストークが− 30 dB となる計算値を図 1 に示す3).同じ lc では,ホーリー型のほうが大 Aeffと小コアピッチ(すな わち高密度なコア配置)を実現できることがわかる.一 方,ソリッド型は,VAD や MCVD 法などの成熟した従来 製法が適用可能というメリットがある.さらに,ソリッド 型では,lc によらずコアピッチが一定という特性が得ら れている.そこで,ソリッド型マルチコアファイバーに関 して,Aeffと曲げ損失およびクロストークを 100 km で− 30 dB の一定値に保つのに必要なコアピッチの関係を詳細 に計算した.その結果,曲げ損失の値を一定とすれば, Aeffを拡大してもコアピッチはほぼ一定というユニークな 特性を有していることがわかった. 2. ソリッド型マルチコアファイバーの研究開発 続いて,ソリッド型マルチコアファイバーの最近の研究 動向を述べる. 2. 1 SMF型ソリッドファイバーの開発 SMF は,80 mm2程度の A effを有するコアを直径 125 mm の光ファイバー断面中に 1 つ配置した,現在最も広く用い られている光ファイバーである.この SMF 型のコアを 1 つ 287(31) 40 巻 6 号(2011)
最近の技術から
エクサビット伝送に向けた光ファイバー技術
空間多重用マルチコア光ファイバーの開発
武笠 和則・今村 勝徳・杉崎 隆一
Developments of Multi-Core Fibers for Space Division Multiplexing Transmission
Kazunori MUKASA, Katsunori IMAMURA and Ryuichi SUGIZAKI
Multi-core fibers are transmission fibers, which have a large potential to become a breakthrough for next-generation high-capacity transmissions. Two types of multi-core fibers, namely holey multi-core fibers and solid multi-core fibers, have been proposed. We compared the performances of them, and found out the holey types have better performances in terms of low non-linearity and higher density space division multiplexing (SDM). Solid multi-core fibers, on the other hand, have an advantage for the aspect of matured fabrication technologies. In addition, solid types have an interesting property worth to note: A cross-talk is not degraded by enlarging e›ective core area (Aeff), if we keep macro-bending losses
constant. We will introduce recent R&D results on multi-core fibers, including SMF type and other types of solid multi-core fibers, and holey multi-core fibers for ultra wide-band transmissions.
Key words: multi-core fibers, space division multiplexing, holey fibers, solid fibers
のファイバー断面中に 7 つ配置しようとするとファイバー 径が大きくなってしまうが,わずかに実効屈折率の異なる コアを隣同士に配置するとクロストークが劇的に抑制でき ることが報告されており1),実際に試作も行われている4). 異種コアを用いることで高密度なコア配置が可能となる が,実際のファイバー開発では,伝送損失やマイクロ曲げ 損失などの特性を考慮に入れる必要がある.われわれは, これらの特性を考慮した SMF 型 7 コアファイバーの最小 ファイバー径に関して検討を行っている4).さらに,実用 においては,プロファイルの長手変動やケーブルでの曲げ / ひねりなども加えられるため,これらも考慮に入れて最 適化設計を行うべきとの報告もあり5),最小コアピッチや 最小ファイバー径の設定には,さらなる研究が必要と思わ れる. 2. 2 その他のソリッド型マルチコアファイバー マルチコアファイバーとしては,ファイバー径が 125 mm より大きくなることを前提に信頼性の議論等が進めら れているが4),125 mm 径で実現できれば,現状のシステ ムへの適用が容易であることは間違いない.そこで,Aeff は通常 SMF より小さくなってしまうものの,ファイバー 径 125 mm の 7 コアファイバーが提案されている6).一方, われわれは,SMF 型より Aeffを拡大したマルチコアファイ バーの開発を行っている3,7).シミュレーションの結果を もとに, lc をシフトさせることで,曲げ損失を一定のま ま Aeffを拡大し,かつコア径の異なる 3 種類の異種コア (A, B, C)を用いることで,クロストークの増大を抑え た1).さらに,A eff拡大に伴うマイクロ曲げ損失の増大を 抑えるため,外側コアに対するクラッド厚を従来の SMF と同程度とした.図 2 の計算結果をもとにコアピッチを 46 mm とし,実際に試作を行った(図 3,表 1).信頼性の 議論は必要だが,クラッド厚の最適化により,マイクロベ ンドの影響が低減され,比較的低損失な特性が得られてい る.また,3.5 km 伝搬後のクロストーク特性は−38 dB で あり(図 4),100 km 伝送後では約−33 dB と予測される. これは長距離伝送が十分可能なクロストーク特性である. 3. マルチコアホーリーファイバーの開発 マルチコアホーリーファイバーに関しても開発が進んで いる2).7 コアホーリーファイバーの構造を図 5 に示す.わ れわれはこの構造をもとに,超広帯域用マルチコアファイ 288(32) 光 学 表 1 マルチコアファイバーの光学特性(1550 nm). 各コアの特性 C B A Core No. 0.237 0.237 0.213 dB/km 損失 19.0 19.4 19.6 ps/nm/km 分散 0.061 0.062 0.062 ps/nm2/km 分散 Slope 99 107 110 mm2 Aeff 1408 1470 1491 nm l c 8.1 3.9 3.0 dB/m 曲げ損失* *曲げ損失は直径 20 mm での値. 図 4 クロストークの測定結果. 図 1 ソリッド型とホーリー型のマルチコア ファイバー特性比較. 図 2 マルチコアファイバーのシミュレーション 特性. 図 3 マルチコアファイバーの試作断面図.
バーの開発を行った.まずコア間干渉を見積もるため, モード結合理論により,結合長(コア内のパワーが隣のコ アに 100%移る条長)を計算した.そして,空孔径(d)と 空孔間隔(L)の比(d/L)を endlessly single mode(ESM) 特性が得られる 0.43 に固定し,伝搬距離は結合長の 1/100 としてプロットした(図 6).これより,コア間隔(コア間 の空孔層数)を 9 層以上にすることで,伝送距離が 100 km 以上となることがわかった.また,外側コアの閉じ込め損 失を 0.01 dB/km 以下にするために,外側コアの外層に 5 層の空孔層を設け,それぞれのコアが 500 nm∼1700 nm にわたる伝送を実現できるよう,各コアの曲げ損失等を最 適化した.設計結果を検証するために,マルチコアホー リーファイバーの試作を行った.所望の構造が作製でき (図 7),中心コア(コア A)と外側コアの 1 つ(コア B)の 光学特性は,計算結果と一致した結果が得られている(表 2).設計どおりに,コア A,B ともに閉じ込め損失の影響 はなく,曲げ損失も 500 nm まで低い値であった(図 8). ESM 特性と広帯域低曲げ損失特性により,超広帯域伝送 が可能と考えられる.サンプル 1 km でのクロストークは −60 dB 以下であり,100 km では−35 dB 以下が期待でき る.この特性は計算と一致しており,十分に低い値である. 文 献
1) M. Koshiba, K. Saitoh and Y. Kokubun: “Heterogeneous multi-core fibers: Proposal and design principle,” IEICE Electron. Exp., 6, No.2 (2009) 98―103.
2) K. Imamura, K. Mukasa, Y. Mimura and T. Yagi: “Multi-core holey fibers for the long-distance (>100km) ultra large capacity transmission,” The Optical Fiber Communion Conference and Exposition, OTuC3 (San Diego, 2009).
3) K. Imamura, K. Mukasa and T. Yagi: “Investigation on multi-core fibers with large Ae› and low micro bending loss,” The Optical Fiber Communion Conference and Exposition, OWK6 (San Diego, 2010).
4) K. Imamura, K. Mukasa and T. Yagi: “E›ective space division multiplexing by multi-core fibers,” ECOC 2010, P1.09 (Torino, 2010).
5) M. Koshiba: “Recent progress in multi-core fibers for ultralarge-capacity transmission,” OECC 2010, 6B1-3 (Sapporo, 2010). 6) K. Takenaga, S. Tanigawa, N. Guan, S. Matsuo, K. Saitoh, M.
Koshiba and K. Takenaga: “Reduction of crosstalk by quasi-homogeneous solid multi-core fiber,” The Optical Fiber Communion Conference and Exposition, OWK7 (San Diego, 2010).
7) K. Imamura, K. Mukasa and T. Yagi: “Design optimization of large Aeff multi-core fibers,” OECC 2010, 7C2-2 (Sapporo,
2010). (2011 年 1 月 11 日受理) 289(33) 40 巻 6 号(2011) 表 2 試作ファイバーの光学特性(1550 nm). Aeff 分散スロープ 分散 コア mm2 ps/nm2/km ps/nm/km 35.5 0.071 40.0 計算結果 38.7 0.072 41.2 コア A 41.8 0.071 40.2 コア B 図 6 マルチコアホーリーファイバーのコア間隔と伝 送距離の関係. 図 8 コアごとのマクロベンド損失. 図 5 マルチコアホーリーファイバーの構造. 図 7 試作ファイバーの断面構造.