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〈各種報告〉理工系学生を対象としたCALL教室での双方向型授業の学習効果--英語科学論文のムーブ分析を例として

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(1)理工系学生を対象とした CALL 教室での双方向型授業の学習効果 ―英語科学論文のムーブ分析を例として― 照井 雅子 1.はじめに  本稿では、工学系の学生を対象とした ESP(English for Specific Purposes)を取り入れ た授業について報告する。  私立大学理工学部 3 年生を対象とした選択必修科目である『科学技術英語 1 および 2』 は、CALL(Computer-Assisted Language Learning)教室で行っている。受講生 1 名に 1 台のコンピュータを使用し、共有フォルダを活用し、双方向型のワークショップ形式であ ることが授業の特徴のひとつである。本稿では、後期に行う『科学技術英語 2』を受講し た工学系(機械工学および情報工学)の学生それぞれが自分の専門分野の英語科学論文を 収集し、ムーブ(Move) (Swales, 1990)を分析した例を示す。まず、当該授業が依拠す る ESP(English for Specific Purposes)および ELF (English as a Lingua Franca)に ついて以下に述べる。 2.ESP および ELF 2.1 本稿における ESP の位置づけ ESP(English for Specific Purposes)は、社会のある特定の専門分野や職業集団でコ ミュニケーションの手段として実際に使用されている言語の研究・教育を行うことと定義 され、学術的な目的のための英語(EAP: English for Academic Purposes)と職業上の目 的のための英語(EOP : English for Occupational Purposes)を統合したものと捉えられ ている(Dudley-Evan & St. John, 1998) 。 平成 26 年度の学校基本調査(文部科学省, 2014)によれば、学部学生のうち、理学を専 攻する者は全体の 3.2%、工学を専攻する者が 15.2% である。大学院修士課程では理学を専 攻する者が 8.5%、工学を専攻する者が 41.6% で、博士課程では理学を専攻する者が 7.1%、 工学を専攻する者が 18.0% である。つまり、工学を専攻した学生の場合、学部卒業後また は大学院修士課程修了後に就職する例が多く、7 割以上が民間企業の技術者となっている。 こうした卒業後の進路を考えれば、大学の行う英語科目において EOP も重視したいが、 卒業後に必要となる英語は業種・勤務先・所属部署によって様々に異なり、将来必要とな る英語を個々に予想して、大学(院)時代に網羅的に習得することは困難である。. −173−.

(2) 教養・外国語教育センター紀要. こうした事情を踏まえ、日本の ESP の最新理論では、Swale(1990)が定義したジャン ル(Genre)をより具体的に定義した Bhatia(1993)を発展させた野口(2009; 2010)の理 論に依拠する。すなわち、英語学習者が所属する、あるいは将来所属するであろう社会を ディスコース・コミュニティ(Discourse community)とし、そこで繰り返し用いられる コミュニケーションのパターンをジャンル(Genre)と定義する。昨今は、そのジャンル の概念を育てるという野口(2009; 2010)の理論が日本の ESP の主流となっている(寺内 他, 2010) 。 このジャンルの例として、本稿では科学技術論文を取り上げる。ジャンルには、ムーブ が認められ、ムーブ分析によってジャンルが特徴づけられる。英語学習者はムーブ分析を 行うことで、ジャンル文書から効率的に情報を得ることができ、また、ジャンルの特徴を 活かした効果的な情報発信ができるとされる(野口, 2009; 2010) 。 2.2 本稿における ELF の位置づけ 急速なグローバル化が進む中、現在、英語母語話者より第二言語または外国語として英 語を使用する者の数が多い。グローバル社会で英語を使用することについては、World Englishes を筆頭に、異なる視点での捉え方がある。その中で、国際共通語としての ELF (English as a Lingua Franca) は、Kachru(1984) が「 三 重 の 同 心 円(Inter circle; Outer circle; Expanding circle) 」を用いて英語の使用を分類し、 「Expanding circle」にお ける外国語としての英語の研究から発展した概念である。 「三重の同心円(Inter circle; Outer circle; Expanding circle) 」とはそれぞれ、1)英語母語話者の英語、2)英語が公用 語であるか歴史的に重要あったため、第二言語として使用される英語(ESL: English as a second language) 、3) 外 国 語 と し て 使 用 さ れ る 英 語(EFL: English as a foreign language)の三分類を指す。国際共通語としての ELF は、基本的に、コミュニケーショ ン手段としての英語を政治的・社会的・文化的に中立に捉えようとする考え方で、母語話 者の英語を規範とし、それ以外の英語を「broken」だとする捉え方に与しない。 昨今、国際共通語として英語が使用されている実態が具体的に示されている。例えば、 日本のビジネスパーソンのうち、国際 業 務に携わる管 理 職 909 名を対 象とした調 査 (Araki et. al., 2015)では、英語を使用して行われる会議の参加者のうち、英語母語話者の 割合が少ないことが明らかにされた。英語母語話者の割合は、社内会議で 19%(ほかに日 本人が 57%;ESL 使用者が 9%;EFL 使用者が 16%) 、社外での会議で 25%(ほかに日 本人が 35%;ESL 使用者が 14%;EFL 使用者が 26%)に過ぎなかった。 ELF の研究は比較的新しく、今後さらなる議論が必要であることも承知しているが、本 稿では、専門分野の英語に焦点を合わせる ESP と国際共通語としての ELF との関係が深. −174−.

(3) 双方向型授業の学習効果. いことを指摘しておきたい。 2.3 ELF 環境における ESP 教育の目標 前述の日本における状況下、ESP および ELF の考えに基づけば、重視されるべきは、 自分たちの学問的背景や職業等によって形成された集団(2.1 で述べたディスコース・コ ミュニティ)で、コミュニケーションの手段として、英語を国際共通語として使用すると いう点である。 例えば、工学系の大学卒業生の主な進路であるエンジニアは、機械工学という専門知識 を活かした職業に就く専門家たちがディスコース・コミュニティを形成している。彼らは グローバルなネットワークと、論文・製品仕様書・特許出願書等の様々なコミュニケー ション手段(ジャンル)を共有し、専門領域の知識や技術を蓄積している。こうしたコ ミュニケーション手段には明確なパターンがあり、そのパターンは、英語母語話者や英米 の言語的・文化的枠組みを超え、機械工学系エンジニアに特有の文化や規範に基づくもの だと言える。ESP では、こうした特有のコミュニティと、そこでやりとりされるコミュニ ケーション手段の明確なパターンを特に重視していることは、2.1 で指摘したとおりである。 また、個々の単語の意味や発音、文法が重要だということは言うまでもないが、ESP で は、それに留まるだけでなく、自分が所属する集団の様々なコミュニケーションで「何を 目的として」 「誰を情報の受け手として」 「どのような内容を」効率的・効果的に発信して いるのか、その大きな枠組みに目を向けさせることを重視している。このコミュニケー ションの大きな枠組みに注目させることを「Systemic literacy」と呼び、この能力を獲得 できる方法を学生に示しておくことが ESP 教育の目標とされる(Noguchi, 2010) 。 3.授業報告 3.1 授業の目的 筆者の研究目的は、理工系学生にジャンルの概念を育てさせ、その結果、自分が所属す る集団の様々なコミュニケーションの大きな枠組みに注目させ、 「Systemic literacy」を獲 得できる方法とその効果を具体的に示すことである。本稿では、その取り組みの一例とし て、学術的な目的のための英語である EAP を用い、受講生がそれぞれの専門分野の英語 科学技術論文をジャンルの一例として用い、ムーブ分析を行うことで得られた授業につい て報告する。 3.2 授業の対象 2013 年度の後期授業の金曜日 1 限および 2 限の受講生計 56 名を対象とした授業につい. −175−.

(4) 教養・外国語教育センター紀要. て報告する。受講生は全員が男子学生で、機械工学科の学生が 33 名、情報学科の学生が 23 名であった。3 名は 4 年生(すべて機械工学科) 、53 名が 3 年生である。 3.3 授業の概要 2013 年度後期の『科学技術英語 2』は、CALL 教室でのワークショップ形式の双方向型 授業で、90 分授業を 15 回行った。毎回授業で取り組んだ課題を 50 点満点、ポートフォリ オ形式で提出させた最終課題を 50 点満点とし、計 100 点満点で評価した。毎回の授業は デジタルデータとして共有フォルダに提出させた。最終課題は印刷してハードコピーで提 出させた。 15 回の授業の 4 回目に中央図書館から図書館司書の方にオンデマンドで出講いただき、 学内のデータベースや各種英文ジャーナルの効果的・効率的な検索方法について学んだ。 各学生の専門分野に関するキーワードを使って、実際に OPAC や学内データベースを検索 し、論文情報やインパクトファクターの見方等の理解も深めた。その後、学生各自の専門 分野の英語科学論文を探させ、電子データとして収集させた。その際、各自で卒業研究を 担当する専門分野の教員に英文ジャーナルや専門分野の語彙等について相談するようにも 指導した。その結果、全体で約 600 本の論文を含む「コーパス」ができ、そのデータと専 用の分析ソフトを用いて、論文内の単語や表現を各自で分析した。 受講生は、自らが選んだ英語科学論文のタイトルと論文要旨を中心に、英語使用の観点 から分析を行った。 4.考察 4.1 ジャンルの概念の深化 (1)2 つのジャンル文書の比較 『科学技術英語 2』の第 1 回目に、ESP における 2 つのジャンル文書の比較をさせること で、同じ内容を扱っていながら、文書の目的と読み手が異なることで、英語の違いが明確 に比較できることを示した。 2 つのジャンル文書は、科学雑誌に掲載された「研究論文の要旨」と、その研究結果を 一般の読者向けに発信した「新聞記事」である。 新聞記事は全体のほぼ 7 割は Base words リスト(Nation, 1997)の基本 1,000 語で書か れていた。一方、論文要旨は、基本 1,000 語は半分にも満たない。 「論文には難しい単語が 頻出し、自分には読めない」という学生の先入観を裏付けるような数字だが、基本語でカ バーしていない単語の多くは、専門用語と、著者名およびその所属情報である。しかし、 「自分の研究に関する専門用語は、自分には身近な単語、簡単な単語ではないか」と問う. −176−.

(5) 双方向型授業の学習効果. ことで、学生が難しいと感じる単語とは何かを考えさせた。 つまり、運用できる語彙が少ない学生にとっては、たとえ基本語で書かれていた平易な 文章であったとしても、その内容を容易に理解できるとは限らないのに対し、自分の専門 分野であれば、論文要旨の読解には専門知識を活かすことができ、英語で情報収集を行う ことがそのまま自分たちの専門知識を増やすことにつながる。 2 つの文書を比較して気づいたことを 200 字程度で記述するよう求めたところ、2 つの 文書の違いと言語特徴についておおよそすべての学生が理解できたことがわかった。学生 の記述によれば、論文要旨は「専門的内容の単語や一定の知識が必要とされ」 、 「読む人に ある程度の知識があることを前提として書かれて」いるもの、つまり自分たちの専門分野 においては、自分たちこそが読者として想定されていること、しかもルールに則って書か れ、情報がコンパクトにまとまっているため、情報収集の時間対効果が高いことがわかっ たという。 (2) 『科学技術英語 1』との関連と授業効果 『科学技術英語 2』は、先学期に『科学技術英語 1』として、筆者の共著『Essential Genres in SciTech English』を教科書として使用している。当該教科書では、例えば 1) Safety Rules、2) Recipe、3) Experimental Procedures、4) Product Specifications、5) Operation Manual、6) Meeting Announcement、7) Registration、8) Company Website 等の Authentic なジャンル文書を扱い、目的や対象によって異なる英語を体系的 に学んだ。いずれの文書についても、 「何を目的として」 「誰を情報の受け手として」 「ど のような内容を」発信しているのか、そのために「どのような言語的特徴を用いている か」 、文書の大きな枠組みに繰り返し注目させた。 受講生は先学期にすでにジャンル文書を扱った上で、 『科学技術英語 2』で、ジャンルの 一例としての英語科学論文の分析を行っているため、上記 4.1 の(1)で 2 つのジャンル文 書を比較したことによる受講生の気づきは、 『科学技術英語 1』でジャンルの概念を育てて きたことの効果の現れと言え、ジャンルの概念をさらに深化させたと言える。 4.2 コーパス分析による語感の深化 『科学技術英語 2』では、各学生が最低 10 本の英語科学論文を収集し、全体で「コーパ ス」を作成した。そのデータを専用の分析ソフト AntConc を用いて、論文内の単語や表 現を各自で分析した。AntConc とは、早稲田大学の教授が開発した無料コンコーダンス・ ソフトウェアで、語のふるまいをキーワードを中心に前後に文脈を表示する方式で一覧す るものである。. −177−.

(6) 教養・外国語教育センター紀要. AntConc を用いれば、例えば「However」という語が理系の論文では文頭に用いられる ことが多いことが示される。さらに、調べたい語の左や右の語をアルファベット順に並べ 替えることもでき、共起を調べることができる。ほかに「not only」といった 2 語以上の 分析もできる。 学生は専門用語が難しいと捉えがちだが、自分の専門分野の用語には頻繁に接し、しか もその専門英単語と日本語訳はほぼ 1 対 1 で対応しているため、慣れれば 1 つの単語の意 味を覚えることが難しくないことに気づく。むしろ、例えば 1) research という単語は単 数形で使うのか複数形で使うのか、2) 一緒に使う動詞は何か、3) 動詞と共に使う場合 に冠詞は何かといった用法がわからないことが難しい。しかし、自分の専門分野の論文を 用いてコーパスを作り、そのコーパスを分析すれば、上記の疑問、すなわち「コロケー ション(語と語のつながり、語の配列、連語) 」に関する疑問は瞬時に解消される。これ らの分析と気づきは語感の深化を示す結果として、課題提出させている。 4.3 ムーブ分析 Swales(1990)の唱える「ジャンル」を読み解く鍵となる言語的特徴がムーブと呼ばれ、 文語・口語といったコミュニケーションの形を問わず、コミュニケーションの機能と目的 を明確にさせる「structural segment」と定義されている。さらに Bhatia(1993)は、そ れぞれのジャンル特有のムーブがあり、そのため、それぞれのムーブの役割を知ること と、テキスト全体の構造のパターンを認識することで、ジャンルが理解できるようになる 例を示している。本稿では、 「4.1 ジャンルの概念の深化」において、 『科学技術英語 1』 でジャンルの概念を育て、 『科学技術英語 2』では、ジャンルの一例として、学生の専門分 野の論文をジャンルの例として扱った。ムーブ分析(Swells, 1990)を行うことによる学習 効果を確認することが本稿の目的だが、学部 3 年生の後期では、卒業研究のためのゼミに 配属されたばかりで、母語である日本語でもまだ論文に触れる機会がほとんどない段階で あるため、研究論文の Abstract の分析に焦点を絞った。 論文要旨には 1)  研究の目的、2) 研究の背景や範囲、3) 研究方法や実験の材料・手 順・方法、4) 研究結果、5) 結論といったムーブがある(野口他, 2007) 。ただし、論文 要旨は字数の制約もあり、これら 5 つのムーブが必ずしもすべて含まれているとは限らな い。しかし、 「結論」が含まれない論文要旨はない。これらのことは、授業中に学生に自 分たちの専門分野で収集した論文が掲載されているジャーナルの投稿規定を調べさせ、論 文 の 構 成 要 素 を 確 認 さ せ ること で、 理 解 さ せ ること が で き た と 思 わ れ た。 例 え ば、 Elsevier 社が発行する『Computers & Structures』の投稿規定では、Abstract について 以下の規定がある。. −178−.

(7) 双方向型授業の学習効果.   A concise and factual abstract is required. The abstract should state briefly the purpose of the research, the principal results and major conclusions. An abstract is often presented separately from the article, so it must be able to stand alone. For this reason, References should be avoided, but if essential, then cite the author (s)and year (s) . Also, non-standard or uncommon abbreviations should be avoided, but if essential they must be defined at their first mention in the abstract itself. 当該授業では英語を和訳することはほとんど行っていないが、Abstract の投稿規定につ いては、全文を和訳させ、その内容を提出させた。 学生には論文要旨のムーブごとに Word ファイル上で 5 つのムーブ別に色分けをさせる ことで、論理展開を可視化させた。その際、各ムーブの目印となるような表現に下線を引 かせ、コーパスを使って用法を分析・確認させている。本稿では紙幅の都合によりコーパ スを用いた分析の具体例は割愛するが、当該授業では、まず受講生に論文要旨を示し、内 容によって色分けし、内容を表す単語や語句に下線を引くように指示する課題を与えるこ とから始めた。教材用にムーブをわかりやすく整理したものを与えたが、受講のまとめと して、別の論文要旨を示し、 「以下の Abstract は 3 つのパートに分けられ、順番を変えら れています。正しい順番に並べ替え、Abstract としての体裁を整えてください。その上で、 内容によって色分けしてください。 」と指示する課題を 3 つ与えた。このため、計 224 ファイル(56 名× 4 本)のデータが収集できた。実際の課題の一例と、その解答例を以下 に示す。 【A】与えた課題( 『Active English for Science』pp.175-176 による。Abstract を 3 つの パートに分け、順番を変えて提示したもの) Bioavailability of catechins from tea: The effect of milk 【A-1】We found that consumption of green tea(0.9 g total catechins)or black tea(0.3 g total catechins)resulted in a rapid increase of catechin levels in blood with an average maximum change from baseline(CVM)of 0.46 micromol/l(13%)after ingestion of green tea and 0.10 micromol/l(13%)in case of black tea. These maximum changes were reached after(mean(s.e.m.) )t=2.3 h(0.2)and t=2.2 h(0.2)for green and black tea respectively. Blood levels rapidly declined with an elimination rate(CVM)of. −179−.

(8) 教養・外国語教育センター紀要. t1/2=4.8 h(5%)for green tea and t1/2=6.9 h(8%)for black tea. Addition of milk to black tea(100 ml in 600 ml)did not significantly affect the blood catechin levels(areas under the curves(mean(CVM)of 0.53 h. micromole/l(11%)vs 60 h. micromole/l(9%) for black tea with milk respectively.) 【A-2】These results suggest that catechins from green tea and black tea are rapidly absorbed and milk does not impair the bioavailability of tea catechins. 【A-3】This study was conducted to assess the blood concentration of catechins following green and black tea ingestion and the effect additional of milk to black tea. Twelve volunteers received a single dose of green tea, black tea, and black tea with milk in a randomized cross-over design with one-week intervals. Blood samples were drawn before and up to eight hours after tea consumption. 【B】ある学生(情報工学を専攻する 3 年生)が提出した課題( 【A-1】から【A-3】の順 番を並べ替え、1 つのパラグラフとしてまとめ、実際には 4 色に色分けしている) (研究の目的)This study was conducted to assess the blood concentration of catechins following green and black tea ingestion and the effect additional of milk to black tea. / (実験の材料・手順・方法) Twelve volunteers received a single dose of green tea, black tea, and black tea with milk in a randomized cross-over design with one-week intervals. Blood samples were drawn before and up to eight hours after tea consumption. / (結果) We found that consumption of green tea(0.9 g total catechins)or black tea(0.3. total. catechins)resulted in a rapid increase of catechin levels in blood with an average maximum change from baseline(CVM)of 0.46 micromol/ (13%)after ingestion of green tea and 0.10 micromol/ (13%)in case of black tea. These maximum changes were reached after(mean(s.e.m.) ) =2.3 (0.2)and =2.2 (0.2)for green and black tea respectively. Blood levels rapidly declined with an elimination rate(CVM)of (5%)for green tea and in 600. =4.8. 1/2. =6.9 (8%)for black tea. Addition of milk to black tea(100. 1/2. )did not significantly affect the blood catechin levels(areas under the. curves(mean(CVM)of 0.53 . micromole/ (11%)vs 60 . micromole/ (9%)for black tea with milk respectively.)/ (結論) These results suggest that catechins from green tea and black tea are rapidly absorbed and milk does not impair the bioavailability of. −180−.

(9) 双方向型授業の学習効果. tea catechins. この学生のように、ジャンルのムーブを理解できた学生たちは、研究概要が 3 つのパー トに分けられ、順番を変えて提示された論文要旨を正しい順番に並べ替えることができ た。また、論文要旨の構造を理解し、すべての改行キーを削除し、一つのパラグラフとし て示せた。さらに、ムーブに従って論文要旨を色分けし、ムーブの目印となる表現に下線 を引くこともできた。 4.4 学生の授業評価 当該授業は英語力によるクラス分けをしていない選択必修科目である。学内で同一の内 容で実施している授業評価アンケートの自由回答欄には「日本語の論文もまだほとんど読 んだことがなかった」 「論文を読み理解できるほど知識を深めていないので、英語だとか なり厳しい」 「役に立つとは思うが、正直かなり疲れる」といった記載も見受けられるこ とから、英語力が十分でない学生も受講していると言える。 授業効果の検証に客観テストといった直接評価の指標があれば良いことについては論を 待たないが、大学生の学習成果の指標として、日本の調査研究では、 「学生調査の結果が 学習成果の指標として用いられることが多い(岡田他, 2011) 」 。岡田他(2011)は、学生 調査は学生による間接的な評価ではあるが、学習成果の指標として利用できると主張して いる。山田(2009)も、客観テストの結果を示す方が学習成果を適切に測定しているとい う印象を持たれやすいものの、客観テストの結果と学生調査の結果が整合的であると指摘 している。さらに、岡田他(2011)は、学生の内的な態度や姿勢を客観テストの結果のみ で捉えることは難しいとも指摘しており、以上のことから、岡田他(2011)では、学生の 自己評価による成長感から学習成果を捉えている。本稿では、学内共通の授業評価アン ケートの自由回答欄を学生調査と捉えることとする。 実施した授業評価アンケートより、英語科学論文のムーブ分析を例として、ある一定の 学習効果を得られたと思われる学生の自由記述回答の一部を以下に示す。 (学生の記述の まま) • 初めは難しいと思ったが、決まった形や流れがあることを知ればすべての内容を理 解できなくても論文を読めるため興味深いと思った。 • 専門分野の論文ということで、初めは難しそうに感じた。しかし、読み進めていくう ちに論文の形式に気付いた。そして、この形式に沿って読み進めていきさえすれば、 どこに何が書いてあるか予測しながら読むことができるので、専門単語さえわかれ ば内容を理解するのは比較的容易だと思った。. −181−.

(10) 教養・外国語教育センター紀要. • 今後、我々理系の学生にとって英語の論文は必ずぶつかる壁であると思います。な ので、大学の授業として、読み方の学習ができて有難かったです。また、自分の専 門分野の論文を選択して分析したことによって、自分の研究の理解も深められたし、 研究のテーマ選びにおいて非常に参考になりました。 • この授業を受けていなければ英語の論文を読むことはなかったと思う。最初はとても とっつきにくかった英語の論文だったが、今では日本語で書かれた論文と同様に読 めるようになったとは言いすぎだが、論文の簡単な内容ぐらいはわかるようなったと 思う。 5.おわりに グローバル化が進む中、大学を卒業後、英語を用いてビジネスを行う可能性が極めて高 くなっている。英語力の向上を期待する声は高まる一方だが、18 歳人口の半数以上が大学 進学をする状況では、英語力と学習意欲に大きな差が認められることも事実である。 本稿では、こうした社会状況を念頭におき、理工系学生が必要とする英語力に到達する ために、英語の学習にどのように取り組み、学習効果を高められるのかの一例を、私立大 学理工学部の工学系学生を対象とした授業での ESP のムーブ分析を手がかりに示した。 ワークショップ形式の双方向型の授業を行うことで、ある一定の授業効果が得られたこ とが示唆される一方で、当該授業は、CALL 教室でインターネットや学内中央図書館にア クセスして情報を収集でき、ファイルやフォルダを共有し、必要に応じて、センターモニ ターで全員で情報を共有できなければ成立しない授業だとも言える。 本稿では、日本の ESP の最新理論に基づき、英語学習者が所属する、あるいは、将来 所属するであろう社会(Discourse community)で繰り返し用いられるコミュニケーショ ンのパターン(Genre)に焦点を合わせ、ジャンルの概念を深めたこと、具体的には、学 部 3 年生で、ゼミに配属されたばかりの時期に、受講生各自の専門分野の英語論文を自ら 探すことから始め、ムーブ分析を繰り返すことで、英語科学論文を効率的に読めるように なったことを学習効果と捉えた。学生の専門分野の英語の論文をジャンルに特有のムーブ に着目させて分析させることで、学習者の満足と、授業効果が示唆された。. −182−.

(11) 双方向型授業の学習効果. 参考文献 Araki, T., Terui, M., Fujita, R., Ando, M., Miki, K., & Naito, H.(2015) . Questionnaire survey on business meetings: English proficiency and difficulty. JACET Selected Papers. 56-77. http://www.jacet.org/SelectedPapers/JACET53_2013_SP_1.pdf Bhatia, V. K.(1993) . Analysing genre: Language use in professional settings. London: Longman. Computers & Structures http://www.journals.elsevier.com/computers-and-structures 2015 年 5 月 30 日アクセス Dudley-Evans, T., & St. John, M. J.(1998) . Developments in English for Specific Purposes: A Multi-Disciplinary Approach. Cambridge: Cambridge University Press. Kachru, B. B.(ed.) (1984) . The Other Tongue: English across Cultures. In , Volume 8, Issue 2, 199-212. DOI: 10.1075/lplp.8.2. Laurence Anthony.(2015) . AntConc http://www.antlab.sci.waseda.ac.jp/software.html  2015 年 4 月 27 日アクセス Nation, P.(1997) . Vocabulary size, text coverage, and word lists. In . 6‒19. Cambridge: Cambridge University Press. Noguchi, J.(2010) . Exploiting ESP Frontiers: Systemic Literacy, Life-Long Learning, ESP Bilingualism. Annual Report of. , 12, 3-13.. Swales, J. M.(1990) .. .. Cambridge: Cambridge University Press. 岡田有司,鳥居朋子,宮浦崇,青山佳世,松村初,中野正也,吉岡路. (2011) . 「大学生 における学習スタイルの違いと学習成果」 . 『立命館高等教育研究』第 11 号. 167-182. 京都:立命館大学. 文部科学省. (2014) . 「学校基本調査−平成 26 年度 (速報)結果の概要−調査結果の概要 (高等教育機関) 」  http://www.mext.go.jp/component/b_menu/houdou/__icsFiles/afi eldfile/2014/08/07/1350732_03.pdf 2015 年 5 月 30 日アクセス 野口ジュディー. (2009) . 「ESP のススメ―応用言語学からみた ESP の概念と必要性―」 . In 福井希一他(編著) . (2009) . 『ESP 的バイリンガルを目指して』2‒17.大阪:大阪 大学出版会. 野口ジュディー(編著) ,深山晶子,岡本真由美(著) (2007) . 『理系たまごシリーズ 理 系英語のライティング』 .東京:アルク. 寺内一,山内ひさ子,野口ジュディー,笹島茂 (編著) . (2010) . 『ESP の理論と実践.21. −183−.

(12) 教養・外国語教育センター紀要. 世紀の ESP −新しい ESP 理論の構築と実践−』 .東京:大修館書店.26-36,114-123, 158-160,208-211,233-239. 照井雅子,野口ジュディー(2010) . 『Essential Genres in SciTech English』 .東京:金星 堂. 東京大学教養学部 ALESS プログラム(編) (2007) . 『Active English for Science 英語で科 学する―レポート,論文,プレゼンテーション』 .東京:東京大学出版会 山田礼子. (2009) . 「学生の情緒的側面の充実と教育成果― CSS と JCSS 結果分析から」 . 『大学論集(広島大学高等教育研究開発センター) 』 .第 40 集.181-198.. −184−.

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