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翻刻 キリシタン版『さるばとる・むんぢ』

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Academic year: 2021

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(1)

はじめに   イエズス会が、天正の遣欧使節の帰国(一五九〇年)の際に日 本に持ち込んだ活版印刷機を用いて刊行して いったキリシタン版 の う ち、 『 さ る ば と る・ む ん ぢ 』 ( 一 五 九 八 年 刊 ) ( 漢 字 平 が な 交 り の 国 字 本 ) ( 以 下「 本 書 」 と 呼 ぶ ) は、 新 た に 鋳 造 さ れ た 金 属 活字を使用した国字本 としてばかりでなく、振りがな付きの漢字 を有しているという点においても、日本における、イエズス会の 最初の出版物とされている。   本 書 」 は、 イ タ リ ア の カ サ ナ テ ン セ 図 書 館 に の み 存 す る 孤 本 である。 「本書」 の複製本には、 『 南欧 所在   吉 利 支 丹 版 集 録   サ ル バ ト ー ル・ ム ン ヂ 』 ( 一 九 七 八 年 刊・ 雄 松 堂 書 店 ) が あ り、 海 老 沢 有 道 氏の、 その付録の解説によれば、 「本書」は、 一八 ・ 三×一二 ・ 五㎝、 本 文 三 〇 丁 の 小 冊 子 で あ り、 扉 表 の 上 段 に Salvator 下 段 に Mvndi ( 世 の 救 主 ) と あ り、 題 簽 を 欠 く た め に、 通 常 こ れ が 書 名 と し て 慣用されているが、 扉裏が標題で、 Confessionarivm とあるから、 「書 名としては『 コンヘショナリウム』 (告解書)を採るべきである」 との見解が示されている。   また、 「本書」の翻刻には、長沼賢海「科除規則」 ( 『南蠻文集』 一 九 二 九 年 刊・ 春 陽 堂 ) 、 松 岡 洸 司「 慶長三年 耶蘇会版   サ ル バ ト ル・ ム ン ヂ の 本 文 と 索 引 」 ( 『 上 智 大 学 国 文 学 論 集 』 六 ・ 一 九 七 三 年 一 月 ) が ある。しかし、両者とも、必ずしも「本書」の 原文に忠実な翻刻 とはなっていない。 一例を挙げることにする。 「第五のまだめんと」 の九番目の、     ( 16ウ ) は、 「 九 刀 だ め し に 死 人 を き り た る 事 あ り や 」 と さ れ る べ き と こ ろであろうが、長沼氏、松岡氏は、それぞれ、 九力だめしに死人をきりたる事ありや。 九、力だめしに死人を きりたる事ありや と し、 い ず れ も「 刀 だ め し 」 と あ る べ き と こ ろ を、 「 力 だ め し 」 と 翻 刻 し て い る。 「 本 書 」 に は、 巻 末 に、 振 り が な 付 き の 漢 字 が 一応初出の出現順ということで置かれているが、 一六丁、一丁の 所に、 「かたな」 「ちから」がそれぞれ、

翻刻

 

キリシタン版『さるばとる・むんぢ』

 

 

 

(2)

      〝 ○ 刀 か かた な 〟 、〝 ○ 力 か ち か ら 〟 と い う よ う に 別 置 さ れ、 漢 字 の 字 形 も 明 ら か に 異 なっており、当該箇所が 〝 刀だめし 〟 であることは疑いないので ある。   ところで、 「ちからだめし」 、 「かたなだめし」は、 『日本国語大 辞典(第二版) 』 (二〇〇〇〜二年刊・小学館)に、それぞれ、次 のように掲載されている。 ちから -だめし【 力試】 〘 名 〙 力がどの程度のものかをため すこと。力量をためすこと。*文明本節用集 (室町中) 「力 様   チカラタメシ」*狂歌・後撰夷曲集( 1672 )一〇「罪 をもき我をばすくひ取給へあみだ仏の力だめしに」*浄瑠 璃・ 博 多 小 女 郎 波 枕( 1718 ) 上「 鉢 巻・ 襷・ 尻 褰 げ、 腕 骨 試 し・ 力 だ め し 」 * 何 処 へ( 1908 ) 〈 正 宗 白 鳥 〉 二「 力 試 し だ と い っ て 二 人 の 妹 を 笊 に 入 れ て 担 ひ 」 発音 〈 標 ア 〉 ダ 辞書 文明 表記 力様(文) かたな -だめし【刀 試】 〘 名 〙 刀の切れ味を試すこと。*浮 世 草 子・ 男 色 大 鑑( 1687 ) 三 ・ 五「 何 に て も 三 十 日 願 ひ の ままに暮させ、其次後刀(カタナ)ためしになりなば、跡 吊(あととふら)ひての御事と」*さるばとるむんぢ(校 正再刻とがのぞき規則 ( 1869 )三・第五「刀様(カタナダ メ)しに非人を殺したるや」 発音 〈標ア〉 ダ 「 ち か ら だ め し 」 が、 室 町 中 期 に は 用 例 が 存 し、 し か も、 当 該 箇 所を「ちからだめし」と解しても文脈的には、それほど不自然で は な い こ と が、 か か る 誤 認 の 誘 因 に な っ て い よ う。 一 方、 「 か た なだめし」は、 「本書」の用字用語に手を加えた再版とされる『校 正 再 刻 と が の ぞ き 規 則 』 ( 一 八 六 九 年 刊 ) に は、 存 し て い る わ け で あ る か ら、 「 本 書 」 の 翻 刻 の 際 に、 こ れ ら 両 版 を 突 き 合 わ せ る こ と で、 誤 認 を 防 ぐ こ と が で き た か も し れ な い。 『 日 本 国 語 大 辞 典(第二版) 』の出典一覧には、 『校正再刻とがのぞき規則』があ るばかりでなく、松岡氏の翻刻本を使用テキストとするところの キリシタン版『さるばとる・むんぢ』があがっており、松岡氏が 誤認しなければ、 『日本国語大辞典(第二版) 』の「かたなだめし」 の 項 目 の 初 出 例 と し て は、 「 本 書 」 の 当 該 例 が 掲 載 さ れ て い た 可 能性が高い。翻刻の誤りの及ぼす影響は決して小さくないのであ る。

(3)

  そ こ で、 「 本 書 」 は 先 学 に よ っ て 既 に 二 度 の 翻 刻 が な さ れ て は いるけれども、敢えて本稿において、翻刻を試みることにしたの である。     翻刻の方針 一   使 用 す る テ キ ス ト は、 キ リ シ タ ン 版『 さ る ば と る・ む ん ぢ 』 の 複 製 本『 南欧 所在   吉 利 支 丹 版 集 録   サ ル バ ト ー ル・ ム ン ヂ 』 (一九七八年刊・雄松堂書店)である。 一   翻 刻 に あ た っ て は、 原 文 に 忠 実 で あ る こ と を 第 一 と す る が、 かなの字体は、通行の字体による。 一   丁付けは、葉の終りに、 (1オ)等 で示す。     ○こんひさんをよく申やうと又善作に日を送る      べき儀ををしゆる事 ひいですの理を真実 に信ずるきりしたん後生の あんらくを得る為にいま一ッの儀かんようなり是即かう せきをたしかにおさむる事也されば此儀をよくわき まへんとおもはゞ一ッの喩へをきけくすしのわづらふ 人をれうぢする時は其病の根をなをして其後は かのやまひ二度をこらざるやうにやうじやうの道を教 ゆる者也其ごとく一切の悪人のあにまにも科の病あれは くはいきを得ん為には二ッの事専也一ッにはこんひさんを 以て悪にけがれたる所をきよむる事二ッには其すて たる科を二度をかすまじき為にふたん光陰を送る (1オ) べき事是 なり此二ッを一々左にあらはすべし     ○弟一こんひさんの徳儀の事 でうすぱあてれ御子 ぜずきりしとを一切人間の 御たゝじてと定め玉ふに依て一切人間のぜんあくを 御きうめいなされしやうばちの二ッををこなひ玉ふ御 位を与 へ玉ふなり又御主ぜずきりしとは此位を させるだうてすに下さるゝ也其位といふは人間の科を きゝ糺しあきらめられそれ 〳〵 にあひあたる 科をくりをさづけられよとの儀也或時御弟子達に 此御ゆるしの力を与へ玉ひて宣はく汝等すぴりつ さんとをうけよ又人間の科 を聞それをただすべし 然らば汝等世界にをひてさだめたらん事をは我も (1ウ) 天にをひてよしとすべしと此御辞を以てこんひ さんの道を定め玉ひこんへそるには又糺してのやくと して科をゆるさるゝ いりきを与へ玉ふなりされば此 儀を定め玉ふをもて我等にことにすぐれたる四ッの 御恩を下さるゝ者也〇一ッには我等 が科の糺してとなら るゝこんへそるは我等同生の人間なれば科をあら はす事もやすかるべし若此役をあんじよにあてがひ 給はゞこんひさんを申事なをかたかるべき事〇二ッには

(4)

我等が科をこんひさんにあらはすを以て似合たるいけんを うけ導かれ天狗のたばかりをのが るゝやうを教へらる べき事〇三ッには此こんひさんのさからめんとを定め 玉ふ事喩へば人間科におつまじき為にくつはの (2オ) 心 なり其故は科を犯してもこんひさんを申事ある まじきとおもはゞ猶ほしゐまゝに科をすべき事〇四 にはすぴりつさんとのがらさ我等があにまに来り玉ふ べき道を此さからめんとを以て調へ玉ふ事是也其故は よくこんひさんを 申たびごとにでうす御身のがらさを 与へ玉ふ事定まれる儀なりそれを如何といふに 此さからめんとに二ッの徳儀あり一ッには科にけがれ たるあにまをいさぎよくなす事 二ッにはもるたる科を もてうしなひたるがらさとでうすの御大切を二度 もとむる事是也故を如何といふに誰にてもあれこん ひさんをよく致すにをひては致したる程の科を悉く でうす赦し給ひ同くがらさをも下さるゝ也もし (2ウ) もるたる科なき人べにあるばかりを申さば其赦し をも下されあまさへ持たるがらさの上に新しきがらさ を下さるゝなり其ゆへは御主ぜずきりしと御だい くはんとしてこんへそるを定め玉ふに依て二ッの 御 ゆるしを下さるゝ也一にはぜずきりしとの御名代と してきかるゝ科を赦さるゝ事二ッには悪人科によて 来世にてうくべきくるしみを此世界にをひてそれに あひあたるぺにてんしやを与へらるゝをもて赦さ るゝ事但し此世界にてのぺにてんしや後生にて うくべき苦しみのほどにあひあたらざるにをひては 其不足なる 分をぶるがたうりよにてうくべきなり 故にこんひさん専也喩へばちやくするいしやうはよご (3オ) るゝ物なるによてさい 〳〵 あらふごとく何れも其為に 隙を得こんへそるましましさはりなきにをひては しげくこんひさんを申すべき事よきなり其ゆへは こんひさんを 物にたとふればあにまのけがれをきよむる すぴりつある湯屋の心也又人の出入しげきざしきは 必さうぢをもしげくせずしてかなはぬごとく我等が あにまも種々の妄念言語進退のみだりなるを もてけがるゝ事定まれる儀なればさい 〳〵 こんひ さんを致し其けがれをきよめずんば有べからず      ○弟二こんひさんを申べき人々たもつべき条々 こんひさんをふそくなる事なく 申さんとおもはゞ左に あらはす条々をたもつべし一にはこんひさんを申さざる (3ウ) まへに其覚悟の隙を定むべしゆへ如何となれば こんひさんと云は犯せしほどの科を思ひ出し背き 奉りしでうすの 御前に出て御赦しを乞ひ奉る 儀なれば御前に出奉らざるいぜんに先其かくご肝要

(5)

なり喩へば 主人より代官しよくを給はり知行の さいばんをする者其かんぢやうをとげん時は先我が家の 内にて算用をすべきがごとし二には如此かくごを 致さん 時をかせし科を猶たやすく思ひ出さん為に此次の 弟三ヶ条にあらはす条々をよむかきくかして其一ヶ 条づゝに心を留め犯したりや否やをしあんすべし 又此たよりとなる事は過しこんひさんより此 かた をくりし月日の数と其間にとりあつかひたる題目 (4オ) すまゐせし所あひ交りしともだち以下を思ひ 出すべき事〇三ッには此等 の儀をよくしあんするを以て 覚悟とゝのほりたるにをひては即ふかきこうくはいを 起し今より後でうすのがらさを以て此等の科を致す まじきとかたく思ひ定むべき事喩へば人ありて 下人に深くふびんをくはふべきに彼者其主人に對して をちどあるによて扶持をはなされてのち二度奉公の 望み有てかへらんと思はゞ二ッの事をすべき事専也一ッ にはそのをちどをくひかなしむべき事其ゆへは後悔 なくんば主人 の赦しもあるべからず二ッにはかさねて 主人の氣にたがふましきと思ひ定むべき事かくの ごとく我等もはかりなき御恩を与へ玉ふぜずきりしとに (4ウ) そむき奉りたるによて御赦しを蒙るべき為にをか せし科を後悔し今よりのち何たる科をもをかす まじきと思ひさだむべし其外只今も達したる こうくはいなく又科ををかすまじきとの思ひさだ めもよはき事をなげきかなしまん事専也されば 此後悔のつとめなを 〳〵 たしかならん為にこんひ さんを申ざる以前に何れの御影になりとも向ひて 如此申上べし 如何に御主ぜずきりしと我が でうすにてまします御身をそむき奉り数々の つみ科を犯したる事をつゝしんでこうくはい仕る 也 真に御内證をそむき奉らんよりは如何なるくるしみ なりともしのぎたらんは猶まさるべし只今も我か科に (5オ) あひあたるほどの後悔なき事をなげかしく存る也 然れば御身の御ぱしよんに對し玉ひ 只今まで 致したる科の御赦しを与へ給へ又今よりのちは 下さるべきがらさを以て二度科におつまじきとかたく 存し定 むる也と 四ッには右条々をつとめてよりこんへそるはぢきにぜず きりしとの御名代と心得深きうやまひをもて御 足もとにひれふしくるすの文を 唱へあやまりの おらしよを申べしそれより覚悟したるほどの 科を殘さずあらはし其御赦しをこひ奉る心地 して一ッづゝにいく度おちたるといふ事までも申 べき也もし其数を慥におぼえざるにをひてはをよそ (5ウ)

(6)

いくたび程と申べし喩へば他の物をぬすみたる事 十度あらば我盗みをしたる事十度ありと明かに 申べしさりながら然々其数をしらずをよそ十度 にもをよぶべきやいなやと思はゞ我れ盗み をせし事七 八度多くは十度にも及ばんかと申べし 兹 にをひて 一ッの心得あり如何なるもるたる科にてもあれはづ かしさかをそれかにひかれかくす事あるべからず其 故はこんへそるこんひさんを聞玉ふ時はぜずきりしとの 御名代なればこんへそるに科をかくす事は直にぜず きりしとを忖り奉らんとするにことならず是則 さきりれじよといひて大きにをもき科也故にこんひ さんに一ッのもるたる科をかくすにをひてはそれを初め (6オ) として其外の科も赦し給 はず却て其かくし たる事新き大科となるが故に科に科を重ぬる者也 されば如此科を かくしたる人は其由をこんひさんに あらはさずんば其後致すほどのこんひさんみな無益と なる也爰を以てこんひさんを申す人科をかくさんよりは 申さゞる事は 猶勝るべし然ば此科を隠すいはれは 或は恐れ或ははづかしき事のたぐひなればそれを 退くべき為に一ッの心得ありぱあてれこんひさんの内に 聞玉ふ事を他にあらはさるゝ事曽てなし縦ひ命を 失ふ事ありといふとも一のべにある科をもあらはさ るゝ事叶はれぬ 也 五にはこんへそるより授け給はんぺにてんしやを忘れ (6ウ) ざる にはやくつとめん事肝要也其上御主の御 教化に任せ御授けのぺにてんしやの外におらしよ ちしぴりなぜじゆん慈悲等の行体をなすべし此等の 所作相叶ふにをひては日々にもさなくは七日ごとになり とも致すべき事尤然るべき也其故はこんひさんのぺに てんしやを油断によてをこたるか或はつとむるといふ とも 我が科に相當るほどのぺにてんしやにあらずんば ぷるがたうりよにをひて其不足なる所を深きくる しみを以てほうずべき事定 りければ現在にて少 づゝなりとも科をくりをすべき儀也さりながら此 授けられしぺにてんしやの外の所作はせずして 叶はずといふにはあらず (7オ) 六ッにはゑうかりすちあを受奉る人ならばこんひさん過て より今度も又授り奉るべきや否やをこんへそるに とひきはめ授かるべきにをひては左の心得をなすべし 先是を授り奉らん人は其前の夜半時分よりのみもの 食物をたつべし若油断か又は何たる道にてもあれ 物をのみ食したるにをひては其日ゑうかりすちあを受 奉る事叶はず去ば此 御授けにはでうすの御実子 我等が御主ぜずきりしと在せば深き敬ひをもて

(7)

あるたるに近づき我があにまを御見舞として御来 迎なさるゝでうすの御むかひに出奉ると思ひとる べしさてあるたるの前にひざまづきぱあてれゑう かりすちやを授け給はん時は口をひらき舌を くちびる (7ウ) まてさし出し受奉りてよりは歯にてかむ事も 手をかくる事もなく只口の中のうるほひばかりにて のみ入べし 如此さからめんとを授り奉てよりはやく かへり申事は只今あにまにやどし奉りたる御方を かろしめ奉る道理なればせめて小半 時の間ゑけれん じやにかしこまり御 礼 のおらしよ其外過し科の 御赦し此後科におちざる為のがらさ又は我身を初め 一門 けんぞく科におちずさいなんを遁るゝやうにとつゝ しんで乞ひ奉るべし其故は其時御主汝があにまに 在せば汝が訴訟をきこしめし叶へ給はんとおぼし めし乞ひ奉る事を悦び玉ふ也もし又未ゑうかりす ちあを受 奉る事なく今度初めならばこんへそるに (8オ) 其致すべき 体をくはしく尋ねならふべし     ○第三こんしえんしやをたゞす道を教る事 こんひさんの為をかしたる科を思 ひ出さんとのぞまば まづ過しこんひさんより以来の年月をかんがへそれ より左にあらはるゝ条々をよむべし若我れとよむ 事叶はぬにをひては人によませ一ヶ条づゝに心を留め 過しこんひさん以来かやうの事を致せしや否やと しあんをしいだしたりとおぼえば其上 に此儀はいく たびありしぞとしあんし如此一ヶ条づゝに心を留め しあんして其内に致さゞる事あらば申にをよばず それを如何といふにをかせし科をば殘らずあらはさず してかなはざるごとく致さゞる科を申事或は他人の (8ウ) 科を申す事曽てあるべからず只わが致したる事 ばかりをありのまゝに申べし 又 兹 にをひて一ッの 心得肝要也左にかきしるすまだめんとすに付ての 条々皆もるたる科に非すべにあるもあるなり 其故は いづれのまだめんとをなりともそむく時其そむき やうかろくはべにあるとなりをもくはもるたるとなる なり喩へば四ばんめのまだめんとに付て夫は其妻に きぶくあたりたるやと左にあらはすべきところをば 如此分別すべしおとこ其妻を無理に打擲し又は きずをつけたる事あらばもるたる科也たゞし軽き 辞の折檻か少しうつ事以下はべにある 也同七ばんの まだめんとに盗みすべからずとある事をいふに其盗 (9オ) のあたひ凡銀ね三分四分の儀ならばべにあるなり たゞし十文目二十目ともとりたるにをひてはもる たる科也他是に同し     ○まだめんとすの事

(8)

第一御一体のでうすを敬ひ貴ひ奉るべし 第二貴き御名に かけてむなしきちかひすべからず 第三どみんごいはひ日をつとめ守るべし 第四汝の父母に孝行すべし 第五人を害す べからず 第六邪淫ををかすべからず 第七偸盗すべからず 第八人にざんげんをかくべからず (9ウ) 第九他の妻をこひすべからず 第十他の宝をみだりに望むべからず     第四まだめんとすの初の三ヶ条に付て糺す      べき事     第一ばんのまだめんと 一きりしたんになりてより 神 ほとけを拜みたりや 否やと糺し拜みたるにをひては幾度と其数をも 申べしよの条々にも如此なるべし 二 神 ほとけのばちををそれたる事ありや又人間に ばちりしやうをあたゆる事叶べきと思ひたるや 三ぜんちよのはうにまかせ月待日待をし或は祈 禱 の 為にみこおんやうじやまぶしなどをよびたる事 ( 10オ) ありや 四たとひ心中にはきりしたんをすてずとも或は人 よりきりしたんなりや否やと問はれたらん時言葉を もてちんじ或はきりしたんにあらずと顕さん為に ぜんちよの珠数まぼりなどをかけ其外ぜんちよの 行ひをなしたりや否や此等の儀は真実よりせざれば ひいですをうしなはする儀 にはあらざれども科 なればこんひさんに申べし 五うらなひまじなひなどを我とするか人にさする 事ありや 六又は時日はうがくを見夢を信じとりけだものゝ なきご ゑをきにかけたる事などありや ( 10ウ) 七ひいですの条々に信ぜざる事ありや 八きりしたんの教へは真実なりや否や又其 教への 内の何れの題目にてもあれ疑がはしく思ひたる 事ありや 九ならふ事かなひながらおらしよをならはず又知ながら 申さゞる事あらば是をもこんひさんに申べし又しら ざるにをひてはならひ知 たるにをひては今よりのち申 べし 十身上に悪事さいなん出来し或は心にまかせざる事 ある時でうすを恨み奉り或は万事を 治めはからひ 玉ふ事なきかと疑ひたりや     第二のまだめんと ( 11オ)

(9)

一ぜんちよにあたるせいもん中にも湯ぎしやう火ぎ しやうをとるか人にとらするかせし事ありや 二きりしたんにあたるせいもんたりといふともそら ぜいもんを致したる事有やせいもんの題目真なるに をひてはもるたる科にはあらざれども肝要の子細も なく敬ひなきにをひてはべにある科となるべし又 か のせいもんを致せし事 人にあたをなさんとの心 あてなりしや 三疑はしき事を真也といひてせいもんをたてたりや 四何にてもあれわが後生のけらくを得る為に肝要 なる事をすまじきとか又は何れの科 なりとも 犯すべきとせいもんしたる事ありや又加 のせい ( 11ウ) もんをとげたりや否や其故は如此のせいもんは致すべき 事にあらず致したりともとぐべき事にも非ず 五子細なくして人にしたるよき約束をたがへ たる事ありや 又其に依て他人の上にそんをさせ たる事ありや 六 神 佛にぐはんをたてたる事ありや若たてたりと いふとも科なればとぐる事なかれ 七でうす又はさんとすにたてたるぐはんを叶ひながら とげざる事ありや 八きよごんを云ひ中にも人のあたとなるきよごんを いひたる事ありや     第三のまだめんと ( 12オ) 一どみんご并にゑけれじやよりふれ玉ふべあと日にさせる いはれなくしてみいさを拜まざる事ありや 二せすたさばどくはれいずま其外ゑけれじやより いましめ玉ふ日に肉食したりや 三年に一度定りたるこんひさん或は命あやうき時に 望みてこんへそる在ましながらこんひさんを 申ざりし 事ありや其故はたとひあやうき病なりともこんへ そるありあひ給はずはこんちりさん計にてもすむ也 四ゑけれじやよりふれ玉ふぜじゆんを餘儀なき子細 なくしてやぶりたる事ありや     第五相殘る七ヶ条のまだめんとの事     第四のまだめんと ( 12ウ) 一父母に對する孝行いかゞありや又其事たらず なんぎなる時力をそへたりやいなや 二夫は妻を無理にきびしく折檻し女は夫より科 にあらざる事をいひ付る時随はざりしや否や 三子を持たる者はきりしたんにあたる肝要の題 目を教へ科をする事あらばいさめ中にも若道其 外の色にふける 事あらば折檻を加へ男子女子ともに 色ごのみの科に落ざるやうにせいをいるべき事なれば

(10)

此等の儀にゆるかせありや否やを糺すべし 四ぜんちよのひくはんを持たる人別して家内 にめし つかふ者ならばきりしたんになるべき にいけんを 加ゆべき事専要なれば此儀に油断ありや否やを ( 13オ) 申べし然といへどもおさへてきりしたんになさんと する 事曽あるべからず同其下人きりしたんならば 御おきての旨を保つ に心懸をなしたりや否やと 糺すべし     こんひさん申人知行をもつ人を進退する者     ならば此 上に又左の条々をしあんすべし 五領内の者どもに對して非道を行ひたる事ありや 六我が進退する者どもの内に公事沙汰など 出来 したる時非を糺さず理に落着したる事有や 七領内の者どもに力に及ばぬくはやくをかけ無理に ぶんざいに過て米錢を出させたる事ありや 八もるたる科になる事をいひつけたる事ありや ( 13ウ) 九害すべき程の科なくして我が進退する者を害させ たるか或は其科真なりや否やを知ず して成敗し たる事ありや 十人を成敗する時叶ひながらこんひさんを申させざり し事ありや又其者ぜんちよなりしを叶ひながら さゞるいぜんにきりしたんになさゞりし事ありや 十一科ある者を成敗する時科なきさいしけんぞく 一門の者どもを害したる事ありや 十二 物の奉行などをいひつけたる者あらはれて無理を 行ふと知ながらいさむる事なく知らぬていにてめし つかふ事ありや 十三ねんぐをおさむる時百姓を無理にせめいらでなさけ ( 14オ) なくあたりたるや     こんひさんを申す人物の役奉行代官などを     する人ならば又此条々を糺すべし 十四さいばんする主人の物を自他の為にかすめ取たる 事ありや 十五百姓など地頭におさめずしてかなはぬねんぐ又は 何れの人にてもあれわが主人にまいなはずして叶 はぬ事あるを或はわいろにふけり或はしたしみなるに よてひいきをし或は油断によて其利を主人に 失はせたりや同く一人のまいなふべき事を其あたら ざる別人にかけたる事ありや 十六公事役をさせ物を出さする 時主人の下知よりも ( 14ウ) 猶多くさせ其餘をばわたくしの徳となしたりや 十七百姓のねんぐを請とり又公事役などをさするに けんばうをこえ猶きびしくしたる事ありや其を 如何といふに此等の事は 達してつとめさすべき事けん

(11)

ばうたりといへども情なくせむべき事にはあらず 十八百姓の前よりは大きなるますにて請取主人へは 小きますにて治めたるや其外主人の下知をもて 飯米をおろし或は他にうけおひたる米五穀を渡す時 悉く渡さず我が為にか主人の為にかひかへ置きたる 事ありや     第五の まだめんと 一非道に人をがいしたる事ありや ( 15オ) 二けんくはをし打擲にんじやうし又は此等の悪事に 合力したる事ありや 三他人に恥辱をしかけ又はめんぼくを失 なはするほどの 悪口をいひたる事ありや 四人と中をたがひ物をいはず或は深きいこんをふくみ たる事ありや 五他人の上に悪事出来せん事をねがひ或は 真実より のろひたる事ありや 六人にもるたる科をすゝめ或は其科に合力したる事 ありやそれといつぱ非道のなかだちとなるたぐひ也 七 他人にいこんをふくませたがひに深く中をたがはせたる 事ありや ( 15ウ) 八さいしけんぞくの科をいましむる事叶ひながらいま しめ留めざりし事ありや 九刀だめしに死人をきりたる事ありや 十女人に子をおろさせ又は其為にいけんをくはへ或は薬を 与へたる事ありや 十一女人ならば子をおろしたる事ありやを申べし 十二同く うみ出してより害したる事ありや 十三男女によらずじがいせんと思ひたる事ありや     第六のまだめんと 一かうしよくの科に心得べき事あり其といつぱたがひに 妻なき時の科或は二人の内一人はふうふを持ながらをか せし科か又其あひての女びるぜんとて未夫のまじ ( 16オ) はりの道をしらざる人か又はふぼんのぐはんある人にて ありしやを申分べし 二女人のくはいにんせざるやうにまじはりをなせし 事ありや 三手かけをもちたりや 四手づからじやいんをもらしたりや又妄念によて 人の身に手をふれたる事ありや 五にやくだうの科ありや 六れんぼのうたをうたひ又はれんぼの沙汰を聞き 語るをもて悦びたりや又加 の沙汰ある 書物を 妄りなる心あてにてよみ聞たる事ありや 七れんぼのふみ又は使を人にやるかうけたる事ありや ( 16ウ)

(12)

八れんぼの道より人にかたみをやり或はとり又は持て ゐる事ありや 九 けいせいをたてたる者ならば其身の進退と其間の ひさしさを申べし 十男女によらず人にこひしたはれたく望み又其望 みを とげんとせしや     ふうふある人ならば又此条々を糺すべし 十一ふうふの間にもかたらひの時子をまうけざる に まじはりをなせしや 十二させるいはれもなきに女人わが妻の まじはりを同心 せず夫をたぼんの科にあやうくなせしや又夫のかた よりもかやうの儀ありや ( 17オ)     第七のまだめんと 一何なりとも物を盗みたる事あらば其色を申 べし其科のかろきをもきはこんへそるより糺し教へ 玉ふべければかへしわきまゆる儀も万事其御いけんに まかすべし 二金銀にすゞなまりのたぐひをふきまぜつかひたる 事ありや 三しやうばいにぬきばかりをしわたくしなるます などをつかひたりや 四うりかひの時悪き物を上にはよくみせ其外如何 の道 にてなりとも人をぬきたる事ありや 五物をかすに道理にはづれて利をとりたる事ありや ( 17ウ) 此儀に付てはこんへそるより教へ玉ふべければそれに 随ひてすべし 六人の無理にそんをする題目となりたるや 七力ありながらうけおひたる物をなさゞりし 事ありや 八めしつかふ者に定りたる給分をとらせざるや 九ばくちをうちたるや     第八のまだめんと 一他人にきよせつをいひかけたりやとりはき其題目 深き事なるにをひてはもるたる科なれば又其をいひ はるけずんばあるべからず喩へば物を盗みたる者は其を 返さずして叶はぬがごとく也 二人の科をほめたる事有や其を如何と云にほむるを ( 18オ) もて彼人に猶々科をさするたよりとなればなり 三肝要なるいはれなくして他人のもるたる科を 人にあらはしたる事ありや肝要なるいはれなく してといふ 事は彼もるたる科をしたる人にれう けんをくはゆる為ならばあらはしても科にあらざるに よてなり但是に付てもまよひあるまじき為に先 こんへそるに其 体を尋ね申べし 四他人の もるたる科を語りてそしりあひたりや

(13)

或は人のそしるに一味し語りたるやかやうの事を きかん時はさゝゆべき事肝要也     第九第十のまだめんと 一六ばんのまだめんとにあらはす条々の内何れにても ( 18ウ) あれたとひ所作にはとげずとも望みたる事ありや 二同く其まだめんとにあらはす科の内何れ をなり とも思ふ時悪念なりとわきまへながらそれをおもし ろく思ひよろこぶによて其念を留めたりや 三第十ばんのまだめんとにあらはす条々の内何れ にてもあれたとひ所作 にはとげずとも望みたる事 ありや   第六七のもるたる科に付てこんしゑんしやを   糺すべき条々     第一まんきの 事 一他人をいやしめたる事ありや 二もるたる科をしたる事をじまんして人に語りたる ( 19オ) 事ありや喩へばけなげ者とおもはれんとて人を したる事などをかたるたぐひの事 也 三此等の事をせずといへども身をほめられんとて したるやうにいひたりや 四たとひ善事なりとも人に善人と思はれんとの心 あてばかりにてせし事ありや     第二ねたみの事 一ぽろしもの上によき事出来する時そねみかな しみたりや 二同く悪事出来する時よろこびたりや     第三とんよくの事 一財宝を求めんとてもるたる科を致したる事有や ( 19ウ) 二ひにんのうえかつゆるを見て力ありながら合力せざりしや     第四ばうしよくの事 一ときやくするほど物を食しすごしたる事ありや 二分別をくらますほど酒をのみだる事ありや 三同く人にも分別をくらますほど酒 をすゝめたる 事ありや     第五たんりよの事 一けんぞく或は他人に對してふかきいかりををこし いこんをさんぜん為に仇をなさんと思ひたる事ありや     第六けだいの事 一わがあにまの扶かる道をならひしる事に油断ありや 二我が油断によて一圓談儀を聴聞せざるや ( 20オ) 三けんぞくの上のさいばんゆるかせなるによて下人子 どもの身持あしき事ありや      第七善作に日を送るべき為に保べき条々 きりしたんたる者よくこんひさんを致すべき道をば

(14)

はやあらはすによて今は又右にもいひしごとく二度科に おちかへるまじきたよりとなる事をあらはすべし 是 即日をよくをくるにあり さればまづ朝にねふりさめば即さんちいしまちりん だでぱあてれひいりよすぴりつさんと三のぺるさうな 御一体のでうす貴まれたまへと申上べしそれより 立揚りいしやうをちやくし其日科におつまじき 為にれうけんとなる一の儀をすべし是則ゑすきり ( 20ウ) つうらに見ゆるごとく汝が終を思ひ出せ科をする事 あるべからずとの儀也終 とは即死るとじゆいぞぱらいぞ いんへるのゝ事なり然ればまづひざまづきくるすの もんを唱へぱあてるなうすてるあべまりや三返申べし 是も又三にわけてさいしよのぱあてるなうすてるあべ まりや一返をばでうすぱてれに捧げ奉りて申上べきは 只今のおらしよを御身へ捧げ奉るわれふりよのわざ はひにあひとん死せざる にはからひ給へ頼み奉る 其つぎの一返をばでうすひいりよへ捧げ奉り如何に でうすひいりよぜずきりしと我死して後御糺明 あらん時御憐みをたれ玉ふ に此おらしよを捧げ奉る 三 ば ん め の 一 ぺ ん を ば す ぴ り つ さ ん と に 上 奉 り い ん へ る の ゝ ( 21オ ) 苦しみをのがし玉ひ御身のぐらうりやを与へ給へと 頼み奉るべし如 此致してより又申上べきは如何に でうすぱあてれ今日我が致すべきほどの所作を御身に 捧げ奉るぜずきりしとの御死去に 對し給ひわれ 今日一ッの科をも致さゞる に計ひ給へ如何にでうす ひいりよぜずきりしと今日申べきほどの辞を 悉く 捧げ奉る御身の御死去に對し玉ひて我今日悪き 辞をいはざる に頼み奉る如何にでうすすぴりつ さんと我が念りよを悉く捧げ奉るぜずきりしとの 御死去に對し給ひて我今日悪念に同心致さゞるやうに 御力をそへ給へと申べし其後又びるぜんさんた まりやにあべまりや三返しゆごのあんじよと我名の ( 21ウ) さんとにあべまりや一ぺんづゝゑかう致し如此申上べし 如何にでうすの御母 びるぜんさんたまりや又我を守護 し玉ふあんじよと我が名のさんとに申上奉る今日敵 より我に 仇を致さゞるやうに御守護を加へ給へ頼み 奉ると申べし此等の事をおぼゆる事叶はずはよむ 事も然るべし○若人ありて是より外別に致す べきおらしよあるによて 是をさしをきそれを申 度と思はゞ先其由をこんひさん申べきぱあてれにあら はすべし○されば右条々の儀をつとめをはりて以後 つねの日 なるにをひてはめん 〳〵 の所作を致すべし 但しどみんごか祝ひ日か用いずして叶はぬ日ならば ゑけれじやにさんけいしみいさを初めより終まで ( 22オ)

(15)

深き敬ひ信心を以て拜み其内にはこんたすのおら しよか又はくはんねんかを 致すべしおすちやとかりすを 拜み奉る時は此等のおらしよを申べし     おすちやを拜み奉る時のおらしよ 御主ぜずきりしとさんたくるすの上にをひて 世界を扶 け玉ふによてくぎやうらいはいし奉る 我等が科をゆるし給へ頼み奉る     かりすを拜み奉る時のおらしよ 一切の人を扶け給はん為にくるすの上にて流し玉ふ 御主ぜずきりしとの貴き御 血を拜み奉る ○談儀あらば徳を得度との望みにて聴聞すべし 喩へば病者は 醫者の云事をつとめん為に慥に其言を ( 22ウ) 聞がごとくなるべし又何れのくるす御影をも深く うやまふべし     日所作に守るべき事 不断家内にても又外にても人にさんくはいし物語を せん時三ッの事をたしなむべし 一ッ には他人の科をばたとひ真なりともあらはすべから ざる事其故はあらはすをもて外聞を失なはする者也 喩へば人の財宝をぬすむ事科なるごとくめんぼくを 失なはする事も又 科也たゞしそのあらはすあひて 其事をきゝれうけんをくはゆる事かなふ人ならば科に あらず是即こんへそるゑけれじやの司などの事也 二ッにはきよごんをいふべからざる事ゆへいかんとなれば ( 23オ) 其きよごんあさければべにあるとなり題目おほきに して人のあたとなる事ならばもるたる科也 三 にはいんらんにあたる事をいふべからざる事其故は かやうの儀はいひ手のあにまの事はいふに及ばず聞手の あにまにも仇をなす事喩へば毒薬の 人の身を破るが ごとし又てうせきのめしの時分に三ッのたしなみ あるべき事 一ッぜんをそなへてよりむさと食すまじき為に先 如此のべんさんのおらしよを申べし     しよくぜんのおらしよ でうすぱあてれひいりよすぴりつさんと三ッのぺる さうな御一体のでうす我等と此おんじきの上にべん ( 23ウ ) さんを唱へ玉ふやうにと頼み奉るあめんぱあてるなうす てる一ぺん 若此おらしよをしらずんばぱあてるなうすてる一返申 ぜんの上にくるすのもんを唱 へて食すべし此くるすの もんの御功力をもて其食物に天狗籠りゐるといふ とも即にげさるべし 二酒をすごすべからざる事ゆへいかんとなればさん ぱうろ宣ふごとく酒に色ごのみあり故に是をもちひ

(16)

すごす者はあにま色身にわざはひをなすなり喩へば 油は 火をもやすごとく酒もかうしよくの火ををこし たんりよいかりなどのもとひとなる也 三食すぎてよりは如此御 礼 のおらしよを申べし ( 24オ)     食後のおらしよ でうすのぐらうりやいやまじにおはしまし人間は 無事にさかえ死人はふたいのけらくにいたるやうに頼み 奉るあめんぱあてるなうすてる一ぺん 代々をかさねてしんらまんざうを治め給ひ万事叶ひ 玉ふでうす我等かうふり奉りたる万の御恩賞の御 礼 をなし奉るあめん ○そうじてつねになすべき心懸といふはわが家の内に 何たる悪事ありや下人子ども何たる科を致す ぞと尋ねさぐりていけんを加へいさめをなすべし又 女子を持たる人はみだりに人にまじはらざるやうに すべし其を如何にといふに主人は下人にいしよくを ( 24ウ) 与へ親は子どもを養ひそだつるのみならず其あにまに あたる事をもをこたる事なく心がけでうすを背き 奉らざるやうにせいを入ずして 叶はぬ儀也是を さし玉ひてさんぱうろ父母として子どもの上を 心懸ず主人として下人の上をさいばんせざるは主人 親にあたる役を勤めざるがゆへにぜんちよにもをとり たりと宣 ふ也 ○ゐぬる時はひざまづきこんしゑんしやのきう めいを致すべし是即五ヶ条にこもる也 一其日の御恩の御 礼 を如此致すべし如何に御主 今日我にくだされたるほどの御恩の御 礼 をつゝしみて 申上奉る ( 25オ) 二其日に致したる科をみしるやうにがらさを与へ 給へと頼み奉るべし 三其日中の心言所作には何とありつるぞと糺す べし其為 にはゆきたる所あひかたらひたる人を思ひ 出す事合力となるべし 四如此致してより科ありと思ひ 出さば即こうくはい 致しをもき恩を蒙りたる主人のめいを背きたる 者のごとく其あやまりを悲むべし 五今より後でうすを背き奉 らざるがらさをこひ 奉るべしそれよりして犯したる科をこうくはい 致しぜずゝの御疵に對して赦し給へと頼み申 何なりともおらしよを申びるぜんまりやを初め奉り ( 25ウ) 守護のあんじよ我が名のさんとをもたのみ奉りて ふすべし 此一くはんの内初心の人々分別しがたかるべき ことばの心をゝよそあらはす者也

(17)

○さんちいしまちりんだあで ○ た つ と き 三 の ぺ る さ う な ご い つ た い の でうすのおんこと也 ○でううすぱあてれ ○ だ い 一 の ぺ る さ う な の お ん こ と 也   ○でうすひりよ ○ だ い 二 の ぺ る さ う な の お ん こ と 也   ○でうすすぴりつさんと ○ だ い さ ん の ぺ る さ う な の お ん こ と 也   ○ゑうかりすちや ○ お ん あ る じ ぜ ず き り し と の そ ん た い ぢ き に そ な は り おはしますおんさづけのこと也 ○あにま ○ に ん げ ん の ち ゑ い の ち の し や う た い 也 こ れ し き し ん を は な れ て も ら い せにをひてをはりなくいきながらへぜんあくのへんほうをうくるたい也 ○こんひさん ○ ぱ あ て れ に わ が と が を あ ら は す こ と 也   ○ひいです ○ で う す の お ん を し へ を ま こ と に う け た て ま つ る こ と 也   ( 26オ) ○させるだうて ○ ぱ あ て れ の こ と 也   ○こんへさうる ○ こ ん ひ さ ん を き ゝ た ま ふ ぱ あ て れ の こ と 也   ○あんじよ ○ て ん に ん の こ と 也   ○さからめんと ○ お ん さ づ け の こ と 也 こ の お ん さ づ け は 七 あ り   ○もるだる科 ○ あ に ま を ゝ は り な き く る し み に お と す ほ ど の と が 也   ○べにあるとが ○ か ろ き と が の こ と 也   ○ぺにてんしや ○ こ ん ひ さ ん の さ か ら め ん と の こ と 也 ま た ぎ や う た い の こ と を も い ふ 也 ま た こ ん ひ さ ん の と き ぱ あ て れ さ づ け た ま ふ とがをくりのことをもいふ也 ○ぷるがたうりよ ○ げ ん ぜ に て を く り は た さ ゞ る と が を く り を た つ す る くるしみのところ也 ○すぴりつある ○ め に か ゝ ら ぬ こ と ま た ご し や う に あ た る こ と 也   ○まだめんとす ○ お ん あ る じ で う す ま た ゑ け れ じ や よ り さ づ け た ま ふ ごおきてのぢう 〴〵 也 ○ゑけれじや ○ きりしたんいちみのこと也またまいりどころてらなど をもいふ也またきりしたんのしゝやうなるつかさにもとる 也 ( 26ウ) ○べやと日 ○ い は ひ ゞ も ち ひ た て ま つ る ひ 也   ○くはれずま ○ ね ん ぢ う に い ち ど き り し た ん ぎ や う た い の た め と し て ゑけれじやよりさだめたまふ四十にちのこと也 ○ゑすきりつうら ○ で う す の お ん つ げ を も て か ゝ れ た る き や う も ん 也   ○じゆいぞ ○ せ か い の を は り に に ん げ ん の ぜ ん あ く を た ゞ し た ま ふ こ と 也   ○ぱらいぞ ○ ご し や う に を ひ て ぜ ん に ん の け ら く を き は め た ま ふ と こ ろ 也   ○いんへるの ○ ご し や う に を ひ て あ く に ん の く る し み を う く る と こ ろ 也   ○おすちや ○ ご み い さ の を こ な ひ の た め に せ う ば く を も て と ゝ の へ た る ゑ ん さ う の こ と   ○かりす ○ ご み い さ の お ん を こ な ひ に つ か ひ た ま ふ た つ と き し ろ か ね の う つ は も の 也   ○がらさ ○ で う す よ り あ に ま に あ た へ く だ さ る ゝ ご か う り よ く 也 ま た は あ に ま を で う す の ご な い せ う に あ ひ か な は す る ぜ ん ど く の こ と 也 こ の ぜ く ど く は でうすよりあたへくださるゝなり ○どみんご ○ 七 に ち の ひ か ず の し よ に ち こ れ も ち ゆ る ひ な り   ○せくんだ   ○ 二日    ○てるしや   ○ 三日 ( 27オ) ○くはるた   ○ 四日    ○きんた   ○ 五 日 ○せすた   ○ 六日     ○さばど   ○ 七日 このきやうのうちにそなはるじのよみこゑをつけあら はすなりこれも又やすくたづねあたらしめんが ためにかみかずの一二三にしたがひこゝにあつめをくじの うへにも一二三をつくるなり ひとたびまへにつけたる 字をかさねてはつけざるがゆへにかみかずと字のうへの かずをみあはせたづぬる字なきにをひてはまへに ありとこゝろへあとをたづぬべし ○一 ○ 善 か ぜ ん さ 作 か ○ 送 か を くる ○ 儀 か ぎ ○ 理 か こ と は り ○ 真 か し ん じ つ 実 か ○ 信 か しん ず る ○ 後 か ご し や う 生 か ○ 是 か こ れ す なは ち 即 か ○ 喩 か た と へ ○ 其 か その や ま ひ 病 か ○ 根 か ね ○ 後 か の ち ○ 二 か ふ た ゝ び 度 か ○ 道 か み ち ○ 教 か を しゆる ○ 者 か も の な り 也 か ○ 一 か い っ さ い 切 か ( 27ウ) ○ 悪 か あ く に ん 人 か ○ 科 か と が ○ 専 か も つ ぱ ら ○ 光 か く はう いん 陰 か ○ 左 か ひ だ り ○ 徳 か と く ぎ 儀 か ○ 人 か に ん げ ん 間 か ○ 定 か さ だ め ○ 依 か よつ て ○ 位 か く ら ゐ ○ 与 か あ た へ へ か ○ 御 か おんある じ 主 か ○ 糺 か たゞし ○ 或 か あ る と き 時 か ○ 弟 か で し 子 か ○ 達 か た ち ○ 力 か ち か ら ○ 宣 か の た ま ふ ふ か ○ 汝 か な ん だ ち 等 か ○ 聞 か き ゝ ○ 然 か しか れ ば ○ 世 か せ か い 界 か

(18)

○二 ○ 御 か み こ と ば 辞 か ○ 御 か ご を ん 恩 か ○ 同 か ど う し や う 生 か ○ 若 か も し ○ 役 か や く ○ 給 か たま ふ ○ 申 か ま う す ○ 似 か に あ ひ 合 か ○ 導 か み ち び く ○ 天 か て ん ぐ 狗 か ○ 故 か ゆ へ ○ 犯 か を か す ○ 猶 か な を ○ 来 か き たる ○ 調 か と ゝ のゆる ○ 誰 か た れ ○ 致 か いた す ○ 程 か ほ ど ○ 悉 か こと〴〵く ○ 赦 か ゆる す ○三 ○ 持 か も つ ○ 新 か あた ら し ○ 名 か み や うだ い 代 か ○ 来 か ら い せ 世 か ○ 但 か たゞし ○ 苦 か くるし む ○ 不 か ふ そ く 足 か ○ 分 か ぶ ん ○ 隙 か ひ ま ○ 湯 か ゆ や 屋 か ○ 出 か しゆつに う 入 か ○ 必 か か な ら ず ○ 我 か わ れ ら 等 か ○ 種 か し ゆ 〴 〵 々 か ○ 妄 か ま う ね ん 念 か ○ 言 か ご ん ご 語 か ○ 進 か し ん だ い 退 か ○ 条 か でう〴〵 々 か ( 28オ) ○四 ○ 覚 か か く ご 悟 か ○ 如 か い か ん 何 か ○ 云 か い ふ ○ 思 か お も ひ ひ か ○ 背 か そ む く ○ 乞 か こ ふ ○ 先 か ま づ ○ 肝 か か ん よ う 要 か ○ 主 か し ゆ じ ん 人 か ○ 代 か だ いく は ん 官 か ○ 知 か ち ぎ や う 行 か ○ 家 か い ゑ ○ 算 か さ ん よ う 用 か ○ 次 か つ ぎ ○ 否 か い な や ○ 数 か か ず ○ 題 か だ い も く 目 か ○ 交 か ま じは る ○ 起 か を こ す ○ 深 か ふ かく ○ 彼 か か の も の 者 か ○ 對 か たい す る ○ 扶 か ふ ち 持 か ○ 奉 か ほ う こ う 公 か ○ 後 か こ う く は い 悔 か ○ 氣 か き ○五 ○ 蒙 か か う む る ○ 達 か たつ す る ○ 御 か ご ゑ い 影 か ○ 向 か む か ふ ○ 仕 か つかまつる ○ 真 か ま こ と ○ 内 か な い せ う 證 か ○ 右 か み ぎ ○ 足 か あ し ○ 文 か も ん ○ 唱 か と な ふ ○ 殘 か の こ す ○ 慥 か たしかに ○六 ○ 他 か た ○ 盗 か ぬ す む ○ 明 か あ き ら か ○ 兹 ここゝ ○ 直 か ぢ き ○ 忖 か た ば かり ○ 則 か す なは ち ○ 初 か はじ め ○ 却 か かへつ て ○ 重 か かさぬる ○ 無 か む や く 益 か ○ 爰 か こ ゝ ○ 勝 か まさり ○ 隠 か かく す ○ 恐 か を そ れ ○ 退 か しり ぞ く ○ 曽 か かつ て ○ 縦 か た と ひ ○ 命 か いの ち ○ 失 か う し な ふ ○ 授 か さ づ くる ○ 忘 か わ す る ゝ ( 28ウ) ○七 ○ ○ か や う 教 か け う け 化 か ○ 任 か まか す ○ 慈 か じ ひ 悲 か ○ 行 か ぎ や う たい 体 か ○ 所 か し ょ さ 作 か ○ 相 か あ ひ か な ふ 叶 か ○ 尤 か も つ と も ○ 油 か ゆ だ ん 断 か ○ 當 か あたる ○ 現 か げ ん ざ い 在 か ○ 受 か う くる ○ 過 か す ぐる ○ 夜 か や は ん 半 か ○ 食 か しよく ぶ つ 物 か ○ 食 か く ふ ○ 実 か じ つ し 子 か ○ 在 か ましま す ○ 敬 か う や ま ひ ○ 近 か ち か づ く ○ 見 か み ま ふ 舞 か ○ 来 か ら い か う 迎 か ○ 舌 か し た ○八 ○ 歯 か は ○ 手 か て ○ 小 か こ は ん じ 半時 か か ○ 遁 か の が る ゝ ○ 汝 か な ん ぢ ○ 訴 か そ せ う 訟 か ○ 悦 か よ ろ こ び ○ 未 か いま だ ○ 留 か と ゞ む る ○九 ○ 皆 か み な ○ 非 か あ ら ず ○ 夫 か おつ と ○ 妻 か つ ま ○ 打 か ち や う ち や く 擲 か ○ 軽 か か ろ し ○ 折 か せ つ か ん 檻 か ○ 凡 か を よそ ○ 銀 か し ろ か ね ○ 貴 か たつ と ぶ ○ 守 か ま も る ○ 父 か ぶ も 母 か ○ 孝 か か う 〳 〵 行 か ○ 害 か こ ろ す ○ 邪 か じ や い ん 淫 か ○ 偸 か ち う た う 盗 か ○十 ○ 宝 か たか ら ○ 望 か の ぞ む ○ 神 かかみ ○ 拜 か お が む ○ 幾 か い く た び 度 か ○ 祈 こきた う 禱 こ ○ 言 か こ と ば 葉 か ○ 顕 か あ ら は す ○ 珠 か じ ゅ ず 数 か ○ 行 か を こ な ひ ○ 夢 か ゆ め ( 29オ) ○十一 ○ 疑 か う た が ふ ○ 出 か しゆつ ら い 来 か ○ 恨 か う ら み ○ 治 か おさ む ○ 子 か し さ い 細 か ○十二 ○ 約 か や く そ く 束 か ○ 肉 か に く じ き 食 か ○ 餘 か よ ぎ 儀 か ○十三 ○ 随 か した が ふ ○ 男 か な ん し 子 か ○ 女 か に よ し 子 か ○ 落 か おつる ○ 専 か せ ん よ う 要 か ○ 旨 か む ね ○ 保 か た も つ ○ 心 か こ ゝ ろ が け 懸 か ○ 領 か り や うな い 内 か ○ 公 か く じ 事 か ○ 沙 か さ た 汰 か ○ 落 か ら く ぢ や く 着 か ○ 米 か べ い せ ん 錢 か ○十四 ( ○ か 注 ) 成 か せ い ば い 敗 か ○ ○ か こ ろ す 奉 か ぶ ぎ や う 行 か ○ 百 か ひ や くし や う 姓 か ○ 自 か じ た 他 か ○ 地 か ぢ と う 頭 か ○ 利 か り ○十五 ○ 多 か おほく ○ 請 か う くる ○ 情 か な さ け ○ 飯 か は ん ま い 米 か ○ 五 か ご こ く 穀 か ○ 置 か を く ○ 恥 か ち じ よ く 辱 か ○ 悪 か あ つ こ う 口 か ○十六 ○ 刀 か かた な ○ 死 か し す る ○ 薬 か く す り ○ 語 か かたる ○ 書 か し よ も つ 物 か ○ 妄 か み だ り ○ 使 か つか ひ ○十七 ○ 金 か き ん ぎ ん 銀 か ( 29ウ) ○十八 ○ 一 か い ち み 味 か ○十九 ○ 善 か ぜ ん じ 事 か ○ 財 か ざ い ほ う 宝 か ○ 求 か も と む ○廿 ○ 酒 か さ け ○ 仇 か あ た ○ 扶 か た す かる ○ 一 か い ち え ん 圓 か ○ 談 か だ ん ぎ 儀 か ○ 聴 か ち や うも ん 聞 か ○ 朝 か あした ○ 立 か た ち あ が る 揚 か ○廿一 ○ 終 か を は り ○ 捧 か さ ゝ ぐ ○ 糺 か き う め い 明 か ○ 憐 か あ は れ む ○ 死 か し き よ 去 か ○廿二 ○ 守 か し ゆ ご 護 か ○ 敵 か て き ○ 心 か し ん 〴 〵 信 か ○ 血 か ち ○ 病 か び や うじ や 者 か ○ 醫 か い し や 者 か ○廿三 ○ 家 か け な い 内 か ○ 司 か つかさ ○ 毒 か ど く や く 薬 か ○廿四 ○ 籠 か こ も る ○ 恩 か を んし や う 賞 か ○廿五 ○ 親 か を や ○ 養 か や し な ひ ○ 勤 か つ と む る ○ 悲 か か な し む ○ 疵 か き ず ( 30オ) 注   原文では、 「 ○ 」を欠いているので、私に補った。 (うるしざき   まさと/本学教授)

参照

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