様 式 7
論 文 内 容 要 旨
報 告 番 号 乙 創 第 号 氏 名 土 屋 俊 太 郎
学 位 論 文 題 目
Pharmacological Research on Therapeutic Agents for Nonalcoholic Steatohepatitis Using a Newly Established Mouse Model
( 新 規 構 築 マ ウスモデ ルを使 用 した 非 アルコー ル性 脂 肪 性 肝 炎 治 療 薬 の薬 理 学 的 研 究 ) 内 容 要 旨 非 アルコール性 脂 肪 性 肝 炎 (NASH)は、世 界 的 な生 活 様 式 の欧 米 化 によるメタボリックシンド ローム患 者 の増 加 に伴 い、その患 者 数 が増 加 していることから、今 後 は大 きな社 会 問 題 となること が予 想 される。しかし、現 在 の標 準 治 療 は生 活 習 慣 の改 善 のみであり、治 療 薬 が渇 望 されている 。そこで、NASHの新 規 治 療 薬 を創 出 する事 を目 的 とし、新 規 に構 築 したマウスモデルを使 用 し て治 療 薬 候 補 を薬 理 学 的 に評 価 した。 まず、NASHの病 態 モデルとしての妥 当 性 を病 態 生 理 学 的 に検 証 するため、1w/w% コレステ ロールと41 kcal%脂 肪 を含 む改 変 コリン欠 乏 アミノ酸 規 定 食 を負 荷 した低 密 度 リポタンパク質 受 容 体 欠 損 マウスの表 現 型 解 析 を行 った。その結 果 、肝 臓 では、負 荷 1週 目 から小 滴 性 および大 滴 性 の肝 細 胞 脂 肪 滴 沈 着 が認 められ、8週 目 までに大 滴 性 の肝 細 胞 脂 肪 滴 沈 着 がほぼ全 ての 肝 細 胞 にみられる程 度 まで増 悪 し、16週 目 以 降 でやや減 弱 した。マクロファージや好 中 球 を主 体 とする炎 症 性 細 胞 浸 潤 と、TNF-αやIL-1βを含 む炎 症 性 遺 伝 子 発 現 増 加 も1週 目 から認 められた 。血 漿 中 肝 逸 脱 酵 素 は負 荷 1週 目 から増 加 し、4週 目 にピークを示 した後 、徐 々に減 少 した。コラ ーゲン-I遺 伝 子 発 現 増 加 と並 行 して、開 始 4週 目 からシリウスレッド染 色 で赤 染 される肝 線 維 化 面 積 の増 加 が観 察 され、16週 目 には肝 臓 全 体 に著 しい線 維 化 が認 められた。また、肝 細 胞 過 形 成 、肝 細 胞 腺 腫 、肝 細 胞 癌 が、それぞれ24週 、31週 、39週 以 降 に確 認 された。 次 に、病 態 モデルとしての妥 当 性 を薬 理 学 的 に検 証 するため、NASH患 者 に対 して有 効 性 の 報 告 がある薬 剤 の有 効 性 を本 モデルで評 価 した。その結 果 、ペルオキシソーム増 殖 因 子 活 性 化 受 容 体γ作 動 薬 ピオグリタゾンの7週 間 経 口 投 与 により肝 臓 中 のコラーゲン-I遺 伝 子 の発 現 が減 少 し、組 織 学 的 にも肝 線 維 化 が抑 制 された。また、ピオグリタゾンは血 漿 肝 逸 脱 酵 素 、肝 臓 中 トリ グリセライド(TG)量 、その他 の線 維 化 関 連 遺 伝 子 (TGF-β、osteopontinおよびTIMP-1)および IL-6遺 伝 子 の発 現 を抑 制 した。一 方 、アンジオテンシン II受 容 体 拮 抗 薬 カンデサルタンの薬 効 は 限 定 的 であった。本 モデルにおけるピオグリタゾンの薬 効 はNASH患 者 における臨 床 結 果 と類 似 していることから、本 モデルがNASHの病 態 生 理 の一 部 を反 映 している事 が示 唆 された。 最 後 に、新 規 治 療 薬 の探 索 を目 的 として、ジペプチジルペプチダーゼ -4(DPP-4)阻 害 薬 アロ グリプチンとピオグリタゾンの併 用 投 与 での有 効 性 を本 モデルで評 価 した。アログリプチンは血 漿 中 DPP-4活 性 を用 量 依 存 的 に24時 間 に亘 って阻 害 した。アログリプチンおよびピオグリタゾンの 7 週 間 経 口 投 与 により、肝 臓 中 TG量 および肝 線 維 化 形 成 が抑 制 された。単 剤 投 与 と比 較 して、3 週 間 の併 用 投 与 により肝 臓 中 TG量 および肝 臓 中 コラーゲン-I遺 伝 子 が強 く抑 制 された。肝 臓 中 CD11b遺 伝 子 発 現 およびMCP-1量 も併 用 投 与 により抑 制 された。 以 上 の成 績 から、本 モデルが病 態 生 理 学 的 および薬 理 学 的 に NASHに類 似 した病 態 を示 す こと、さらにアログリプチンおよびピオグリタゾンの併 用 療 法 が本 モデルで有 効 性 を示 し、 NASHの 新 規 治 療 薬 となりうることが示 唆 された。