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短期大学部英文学科英語学習者の関係節構文の理解

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【研究ノート】

白 鳥 金 吾

短期大学部英文学科英語学習者の

関係節構文の理解

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北星論集(短) 第 14 号(通巻第52号) March 2016

キーワード:関係節,文法性判断テスト,非文法的

Key words : Relative Clause, Grammaticality Judgment Test, Ungrammatical

1.はじめに

 本研究の目的は,高等学校卒業後の英語学 習者(短期大学部英文学科)の英語の習熟レ ベルによる制限的関係節構文の理解の差異を 明らかにすることである。また,指導前後に よる理解度の変容を調査し,関係節構文の指 導の在り方について考察する。  これまでの関係節構文の理解に関する研究 では,英語母語話者と日本人学習者における 関係節構文の理解と算出のデータとの比較か らの調査が行われており(大場 , 1995),関 係節構文は,英語と日本語における形態的な 相違から,日本人学習者にとって習得が困難 な文法構造に挙げられている(大場 , 2003)。  高等学校で扱われる関係節構文について 「高等学校学習指導要領解説 外国語編 英 語編(平成11年12月,文部科学省)」では「関 係代名詞の用法については,中学校におい て次の場合の指導をしている。『主格の that, which, who 及び目的格の that, which の制限 的用法の基本的なもの。(中略)』とされてい る。高等学校においては,(中略)その他の 用法やその他の関係代名詞のうち,高等学校 での学習にふさわしいものを加えて指導す る」となっている。なお,今回の調査は旧課

短期大学部英文学科英語学習者の関係節構文の理解

白 鳥 金 吾

Kingo S

HIRATORI 目次 1.はじめに 2.方法 3.結果 4.考察 5.結論と今後の課題 [Abstract]

Reception of Relative Clauses by Japanese Learners of English at the Junior College Level

  Due to their structural complexity, English relative clauses present a major obstacle for Japanese learners of English. There are a number of English relative clause types that students must deal with. This report tested the reception of English relative clauses by Japanese learners of English at the junior college level with different levels of English proficiency by having them perform a Grammaticality Judgment Test comprising 22 questions related to English relative clauses. Participants in this study were required to take a pre- and post-test to determine their improvement. Results showed that there was a proficiency-related increase in possible correct judgment, and classroom instructions worked eff ectively for advanced level students. This report provides suggestions to help teachers of English develop eff ective classroom instruction to teach relative clauses.

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程最後の学生を対象としたことから旧学習指 導要領を参考とした。

 制限的関係節構文の具体的な指導について 旧課程の教科書3社(A,B,C)では, 【主格】

A:I have a friend who lives in Kyoto. (英 語Ⅰ,以下英Ⅰ)

B:There are laws that may seem too strict to Japanese people. (英Ⅰ) C:There are three key words which can

describe this site. (英Ⅰ) 【目的格】

A:The book which/that I lent you belongs to Tom. (英Ⅰ)

B:That s the old woman who Kenji helped cross the street yesterday. (英Ⅰ) C:Don t buy things which you don t really

need. (英Ⅰ) 【所有格】

A:I have a friend whose father is a famous actor. (英Ⅰ)

【前置詞+関係代名詞】

A:Do you know the man to whom Joan is speaking? (英Ⅰ)

B:The speed at which words and ideas spread is getting faster and faster. (英語Ⅱ) となっている。主格と目的格については中学 校との接続に配慮し全教科書とも英語Ⅰに掲 載されているが,所有格については取り扱っ ていない教科書があった。「前置詞+関係代名 詞(前置詞の随伴)」については,一部の教科 書で使用は見られるものの,前置詞の残留に ついてはほとんど取り扱われていなかった。  本研究では,高等学校までの制限的関係節構 文の学習状況を踏まえ,以下の調査を実施した。

2.方法

2.1 被験者  北星学園大学短期大学部英文学科1年生で 英文法を履修している学生を対象に実施し, そのうち留学中の学生及び調査日に欠席もし くは記入漏れ等調査に不備等のあった学生を 除く97名のデータを使用した。2015年8月に 本学科で実施した TOEIC(L&R)のスコア をもとに,被験者を A, B, C, D の4段階に分 けた。ランク分けの基準及び各ランクの人数 は,Aランク550点以上13名,Bランク440点 以上24名,Cランク340点以上29名,Dラン ク340点以下31名である。 2.2 実験デザイン  本調査は2要因(4×2)水準の実験計画 を用いた。1つ目の要因はランク要因であり 被験者間要因であった。またAランク条件, Bランク条件,Cランク条件,Dランク条件 の4水準であった。2つ目の要因はテスト期 要因であり被験者内要因であった。また1回 目条件と2回目条件の2水準であった。 2.3 手順 ⑴データ収集  本調査では,制限的関係節構文の理解 度 を 調 査 す る た め, 文 法 性 判 断 テ ス ト (Grammaticality Judgment Test, 以 下GJT)

を用いた。GJTは主に言語習得研究におい て認知能力の解明に利用されており(横田, 2001),「本テストには従来型の文法テスト と大きく異なる点が2点あり,1つは判断 させる文の中に非文法的な文を含む点,も う1つは表面上では判断できない抽象的レ ベルの言語能力を扱う点」といった特徴が 示されている(横田,2001)。  調査に用いられた関係節構文の設問は22 項目(資料参照)で,主格,直接目的格, 関接目的格,前置詞の目的格,及び所有格 であった。提示された関係節構文は次のよ うな構造であった。 a. wh 演算子を含む文 法的な関係節構文(以下,分野 a),b. 補 文標識 that を含む文法的な関係節構文(以

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短期大学部英文学科英語学習者の関係節構文の理解 下,分野 b),c. 空演算子/空補文標識を

含む文法的な関係節構文(以下,分野 c), d. who(m) that / which that を含む非文 法的な関係節構文(以下,分野 d),e. 再 叙代名詞を含む非文法的な関係節構文(以 下,分野 e)。  被験者は提示された設問の文法性を5件 法(1−完全に不可能な文,2−おそらく 不可能な文,3−分からない,4−おそら く可能な文,5−完全に可能な文)で回答 した。 ⑵ GJT 実施時期  2015年9月に制限的関係節構文の講義開 始前と終了後に同じ設問で2回実施した。 ⑶制限的関係節構文の講義  制限的関係節構文の講義を4回実施した。 テキストは “Grammar in Use Intermediate THIRD EDITION CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS(英語版)” を使用した。 上記の手順により, ⑴ランクによって関係節構文の理解の程度 に差異が生じるか ⑵テスト期によって関係節構文の理解の程 度に差が生じるか ⑶ランクとテストの相互作用によって関係 節構文の理解の程度に差が生じるか  を検証し,制限的関係節構文の指導の在り 方について考察した。

3.結果

 今回の調査は,被験者間要因であるランク 要因と被験者内要因であるテスト期要因を用 いたので,1要因が被験者間要因,1要因が 被験者内要因の分散分析を用いた。よって分 野a∼eそれぞれの結果について,aから順 に記述していく。  まず wh 演算子の分野aのランク要因に おいては(図1),主効果が見られた(F[3, 93]=6.82 p<.001)。またBonferroni法による多重 比較を行ったところ,Dランク条件(M=23.24) の得点よりもAランク条件(M=27.85)の得 点の方が有意に高かった(p<.001)。さらにD ランク条件(M=23.24)の得点よりもCラン ク条件(M=25.71)の得点の方が有意に高か った(p<.05)。  また図2のテスト期要因においても主効 果が見られた(F[1, 93]=80.41 p<.001)。次 に Bonferroni 法による多重比較を行ったとこ ろ,1回目条件(M=23.13)の得点よりも2 回目条件(M=28.06)の得点の方が有意に高 かった(p<.001)。  ランク要因とテスト期要因の交互作用は見 られなかったが(F[3, 93]=1.59 n.s.),この 交互作用が見られたと仮定して水準間の差 異を明らかにするため Bonferroni 法による単 純主効果の検定を行った(図3)。まずテス 図1 分野 a のランク要因ごとの平均点 図2 分野 a のテスト期要因ごとの平均点

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ト期要因の1回目条件においては,ランク 要因の水準間に有意な差異は見られなかっ た。しかし2回目条件においては,Dラン ク条件(M=24.81)の得点よりもAランク条 件(M=31.08)の得点の方が有意に高かった (p<.001)。またDランク条件(M=24.81)の 得点よりもBランク条件(M=28.21)の得点 の方が有意に高かった(p<.05)。さらにDラ ンク条件(M=24.81)の得点よりもCランク 条件(M=28.14)の得点の方が有意に高かっ た(p<.05)。  またランク要因のAランク条件においては (図4),テスト期要因の1回目条件(M=24.62) の得点よりも2回目条件(M=31.08)の得点 の方が有意に高かった(p<.001)。同様にBラ ンク条件における1回目条件(M=22.96)の 得点よりも2回目条件(M=28.21)の得点の 方が有意に高く,Cランク条件における1回 目条件(M=23.28)の得点よりも2回目条件 (M=28.14) の 得 点 の 方 が 有 意 に 高 か っ た (p<.001)。そしてDランク条件においても1 回目条件(M=21.68)の得点よりも2回目条 件(M=24.81)の得点の方が有意に高かった (p<.01)。  次に補文標識 that を含む分野bにおいては (図5),ランク要因の主効果が見られた(F[3, 93]=5.40 p<.01)。また Bonferroni 法による多 重比較を行ったところ,Dランク条件(M=13.47) の得点よりもAランク条件(M=16.15)の得点 の方が有意に高かった(p<.01)。  また図6のテスト期要因においても主効 果 が 見 ら れ た(F[1, 93]=10.09 p<.01)。 次 に Bonferroni 法による多重比較を行ったとこ ろ,1回目条件(M=14.17)の得点よりも2 回目条件(M=15.53)の得点の方が有意に高 かった(p<.01)。 図3 分野 a のテスト期要因ごとのランク要因 における平均点 図4 分野 a のランク要因ごとのテスト期要因 における平均点 図5 分野bのランク要因ごとの平均点 図6 分野bのテスト期要因ごとの平均点

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短期大学部英文学科英語学習者の関係節構文の理解  さらにランク要因とテスト期要因の交互 作用も見られたので(F[3, 93]=3.55 p<.05), 水準間の差異を明らかにするため Bonferroni 法による単純主効果の検定を行った(図7)。 まずテスト期要因の1回目条件においては, ランク要因の水準間に有意な差異は見られな かった。しかし2回目条件においては,Dラ ンク条件(M=13.13)の得点よりもAランク 条件(M=17.85)の得点の方が有意に高かっ た(p<.001)。またDランク条件(M=13.13) の得点よりもBランク条件(M=15.71)の得 点の方が有意に高かった(p<.05)。さらにD ランク条件(M=13.13)の得点よりも C ラン ク条件(M=15.45)の得点の方が有意に高か った(p<.05)。  またランク要因のAランク条件においては (図8),テスト期要因の1回目条件(M=14.46) の得点よりも2回目条件(M=17.85)の得点 の方が有意に高かった(p<.01)。  次に空演算子/空補文標識を含む分野cに おいては(図9),ランク要因の主効果が見ら れた(F[3, 93]=4.65 p<.01)。またBonferroni 法による多重比較を行ったところ,Dランク 条件(M=8.89)の得点よりもAランク条件 (M=11.23)の得点の方が有意に高かった(p<.01)。  図10のテスト期要因においては主効果が見 られなかった(F[1, 93]=0.07 n.s.)。さらにこ の主効果が見られたと仮定して水準間の差異 を明らかにするため Bonferroni 法による多重 比較を行ったが,水準間に有意な差異は見ら れなかった。  またランク要因とテスト期要因の交互作用 は見られなかったが(F[3, 93]=1.67 n.s.),こ の交互作用が見られたと仮定して水準間の差 異を明らかにするため Bonferroni 法による単 純主効果の検定を行った(図11)。まずテス ト期要因の1回目条件においては,ランク要 図7 分野bのテスト期要因ごとのランク要因 における平均点 図8 分野bのランク要因ごとのテスト期要因 における平均点 図9 分野cのランク要因ごとの平均点 図10 分野cのテスト期要因ごとの平均点

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因のDランク条件(M=9.03)の得点よりも Aランク条件(M=11.85)の得点の方が有意 に高かった(p<.05)。また2回目条件におい ては,Dランク条件(M=8.74)の得点より もCランク条件(M=10.69)の得点の方が有 意に高かった(p<.05)。  しかしランク要因ごとのテスト期要因の水 準間では(図12),有意な差異は見られなか った。

 次にwho(m) that / which thatを含む非文法 的な関係節構文の分野dにおいては(図13), ランク要因の主効果が見られた(F[3, 93]=10.16 p<.001)。またBonferroni法による多重比較を 行ったところ,Dランク条件(M=13.07)の 得点よりもAランク条件(M=17.50)の得点の 方が有意に高かった(p<.001)。またDラン ク条件(M=13.07)の得点よりもBランク条 件(M=16.21)の得点の方が有意に高かった (p<.001)。  また図14のテスト期要因においても主効 果が見られた(F[1, 93]=18.78 p<.001)。次 に Bonferroni 法による多重比較を行ったとこ ろ,1回目条件(M=14.45)の得点よりも2 回目条件(M=16.40)の得点の方が有意に高 かった(p<.001)。またランク要因とテスト 図11 分野cのテスト期要因ごとのランク要因 における平均点 図12 分野cのランク要因ごとのテスト期要因 における平均点 図13 分野dのランク要因ごとの平均点 図14 分野dのテスト期要因ごとの平均点 図15 分野dのテスト期要因ごとのランク要因 における平均点

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短期大学部英文学科英語学習者の関係節構文の理解 期要因の交互作用は見られなかったが(F[3, 93 ]=0.37 n.s.),この交互作用が見られたと 仮定して水準間の差異を明らかにするため Bonferroni 法による単純主効果の検定を行っ た(図15)。  まずテスト期要因の1回目条件において は,ランク要因のDランク条件(M=12.29) の得点よりもAランク条件(M=16.78)の得 点の方が有意に高かった(p<.01)。また2回 目条件においては,Dランク条件(M=13.84) の得点よりもAランク条件(M=18.23)の得 点の方が有意に高かった(p<.001)。さらに Dランク条件(M=13.84)の得点よりもBラ ンク条件(M=17.50)の得点の方が有意に高 く(p<.001), D ラ ン ク 条 件(M=13.84) の 得点よりも C ランク条件(M=16.03)の得点 の方が有意に高かった(p<.05)。またランク 要因のBランク条件においては(図16),テ スト期要因の1回目条件(M=14.92)の得点 よりも2回目条件(M=17.50)の得点の方が 有意に高かった(p<.01)。さらに C ランク条 件においては1回目条件(M=13.83)の得点 よりも2回目条件(M=16.03)の得点の方が 有意に高く(p<.01),Dランク条件において も1回目条件(M=12.29)の得点よりも2回 目条件(M=13.84)の得点の方が有意に高か った(p<.05)。  次に再叙代名詞を含む非文法的な関係節構 文の分野 e においては(図17),ランク要因の 主効果が見られた(F[3, 93]=9.91 p<.001)。 また Bonferroni 法による多重比較を行った と こ ろ, D ラ ン ク 条 件(M=11.11) の 得 点 よ り も A ラ ン ク 条 件(M=16.39) の 得 点 の 方が有意に高かった(p<.001)。またCラン ク 条 件(M=11.74) の 得 点 よ り も A ラ ン ク 条 件(M=16.39) の 得 点 の 方 が 有 意 に 高 く (p<.001),Bランク条件(M=12.29)の得点 よりもAランク条件(M=16.39)の得点の方 が有意に高かった(p<.01)。  また図18のテスト期要因においても主効 果が見られた(F[1, 93]=19.72 p<.001)。次 に Bonferroni 法による多重比較を行ったとこ ろ,1回目条件(M=11.73)の得点よりも2 回目条件(M=19.72)の得点の方が有意に高 かった(p<.001)。  またランク要因とテスト期要因の交互作 用は見られなかったが(F[3,93]=0.93 n.s.), この交互作用が見られたと仮定して水準間 の差異を明らかにするため Bonferroni法によ 図16 分野dのランク要因ごとのテスト期要因 における平均点 図17 分野 e のランク要因ごとの平均点 図18 分野 e のテスト期要因ごとの平均点

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る単純主効果の検定を行った(図 19)。まず テスト期要因の1回目条件においては,ラ ンク要因のDランク条件(M=10.55)の得点 よりもAランク条件(M=14.62)の得点の方 が有意に高かった(p<.01)。また Cランク 条件(M=10.79)の得点よりもAランク条件 (M=14.62)の得点の方が有意に高く(p<.01), Bランク条件(M=10.96)の得点よりもAラン ク条件(M=14.62)の得点の方が有意に高かっ た(p<.05)。さらに2回目条件においても,D ランク条件(M=11.68)の得点よりもAランク 条件(M=18.15)の得点の方が有意に高かった (p<.001)。さらにCランク条件(M=12.69)の得 点よりもAランク条件(M=18.15)の得点の方 が有意に高く(p<.01),Bランク条件(M=13.63) の得点よりもAランク条件(M=18.15)の得点 の方が有意に高かった(p<.05)。  またランク要因のAランク条件においては (図20),テスト期要因の1回目条件(M=14.62) の得点よりも2回目条件(M=18.15)の得点 の方が有意に高かった(p<.01)。さらにBラ ンク条件においては1回目条件(M=10.96) の得点よりも2回目条件(M=13.63)の得点 の方が有意に高く(p<.01),Cランク条件に おいても1回目条件(M=10.79)の得点より も2回目条件(M=11.68)の得点の方が有意 に高かった(p<.05)。

4.考察

 分野 a,b 及びcは文法的な関係節構文で ある。wh 演算子の分野a及び補文標識 that を含む分野bにおいては,講義開始前はラン クによる関係節構文の理解の程度に差異が見 られないが,講義終了後は各ランクの平均点 が上昇しテスト期間による差異が認められる とともに,講義開始前には見られなかったラ ンク間の差異が発生した。特にAランクが他 のランクよりも上昇幅が大きくDランクの上 昇幅が小さい結果となった。  空演算子/空補文標識を含む分野cは分野 a及びbの結果と異なり,講義開始前にすで にAランクとDランクの間に関係節構文の理 解の程度に差異が見られた。しかし講義終了 後はAランクとDランクの間に統計的な差異 がなくなった。またテスト期による差異も認 められなかった。  これら3種類の文法的な関係節構文の結果 から次の4点が示唆される。1) wh 演算子及 び補文標識 that を含む関係節構文について は,「前置詞+関係代名詞」を除く多くの項 目が高校1年又は2年の初期段階で学習され ている。今回の調査で講義開始前のランク間 の差が小さく,また分野cに比べ総じて平均 点が高い結果となったのは,高等学校での制 限的関係節構文の指導の肯定的な影響による ものと推察される。2) 空演算子/空補文標 図19 分野 e のテスト期要因ごとのランク要因 における平均点 図20 分野eのランク要因ごとのテスト期要因 における平均点

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短期大学部英文学科英語学習者の関係節構文の理解 識を含む関係節構文は高校ではあまり取り上

げられない分野である。特に今回のテストで 提示された “The friend they lent money to bought a very big house.(間接目的格)” や “The magazine we got the information from

is useful.(前置詞の目的格)” に見られる「前 置詞の残留」は,高校間による指導内容の差 が生じやすい項目であり,講義開始段階では 高校での学習状況の違いや英語学習者の英語 能力の差異が結果に影響を与えたと推察され る。また今回の調査ではテスト期による差が 発生しなかっただけでなく,2回目は C ラン ク以外の平均点が減少するなど,他の分野と 違う結果を示し,講義(指導)による影響は 確認されなかった。高校卒業段階の英語学習 者が苦手としている項目であることを認識し た指導法の工夫・改善が求められる。3) テ スト期による wh 演算子及び補文標識 that を 含む関係節構文の理解の程度については,講 義終了段階において英語学習者の英語能力が 高くなるにつれてより正しい判断ができるよ うになる一方で,ランクDの上昇幅が小さい 結果となった。上位層をターゲットにした指 導に偏っていないかについて検証する必要が ある。またランクの差異による英語学習者の 英語学習に対する目的意識や動機付けが結果 に影響を与えたことも推察され,今後この点 について検証する必要がある。

 次に who(m) that / which that を含む分野 d及び再叙代名詞を含む分野eは非文法的な 関係節構文である。分野dにおけるランク間 の差は,講義開始前はAランクとDランクの 間のみに見られたが,講義終了後はDランク がすべてのランクよりも統計的に有意に低い 結果となった。  分野eは,講義開始前と終了後のそれぞれ においてAランクが他のランクよりも統計的 に有意に高い結果となった。テスト期による 差も生じたが,各ランクの平均点が2回目に 上昇したという理由だけではなく,Aランク の平均点の上昇幅の大きさが結果に影響を与 えたと推察される。  これら2種類の非文法的な関係節構文の結 果から,「非文法的な関係節構文を排除」す ることは,「正しく文法的である」と判断す ることよりも,ランクによる影響を受けや すいことが示唆された。特に今回のテスト (GJT)は回答項目に “おそらく不可能な文 , 分からない , おそらく可能な文” の選択肢が あることから,文法的か非文法的かに対する 英語学習者の “確信や自信の度合い” の差が 結果に影響を与えたと考えられる。Aランク と他のランクを分ける違いは,この「非文法 的である」と判断する能力,つまり「やって はいけないこと」を判断する能力や,「やっ てはいけない」と認識できる広範な知識の差 によるものと推察される。非文法的な関係節 構文に関して,大場(2001)は「否定的証拠 を用いてその形態的特徴を認識させることも 効果があるかもしれない」と指摘しており, 今後,こうした観点からの指導法の工夫・改 善について検討することが必要である。

5.結論と今後の課題

 文法的及び非文法的な制限的関係節構文に おいて,英語能力が高くなるにつれて,より 正しい判断ができるようになり,また講義(指 導)による学習成果もランクの高い学習者に 出やすいことが示された。一方,今回の調査 ではどの分野においても総じてB及びCラン クのランク間とテスト期による統計的な差異 が生じていないことから,レベル分けの妥当 性についても検証する必要がある。また今回 の調査では具体的な指導内容を示さなかった が,今後は指導法によるランクやテスト期へ の影響についても調査が必要である。さらに 2016年度から新課程による学生が入学してく る。高校では「英語を基本とした授業」が始 まり,文法事項についても「言語活動を通し

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て定着を図る」ことが求められており,今後, 文法事項の理解の側面だけではなく,産出の 観点からの調査が求められる。 〔参考文献〕 大場 浩正 , “日本人英語学習者の文法能力の 発達過程:関係節構文の理解と算出のデータ から”, 中部地区英語教育学会紀要 , 第32号 , 65−72. 大場 浩正 , “日本人英語学習者における関係節 と wh 疑問の形態的特徴の発達過程”, 上越 教育大学研究紀要 , 第23巻 第1号(2003). 横田 秀樹 , “英語文法性判断テスト─メタ言語 知識に頼らない文法能力の測定─”, STEP BULLETIN 13号(2001). 文部科学省 , “高等学校学習指導要領解説 外国 語編 英語編”(1999). 〔資料〕 T h e s e n t e n c e s u s e d i n t h i s s t u d y (Grammaticality Judgment Test)

⑴ Grammatical relative clauses involving a wh-operator

1. The young man who always helped us was called George.

2. The boy who(m) I kicked yesterday broke the window.

3. The girl for whom I have bought a computer is my sister.

4. The woman from whom I received a present is in London.

5. The box which they kept their money in has been stolen.

6. The man whose feet were very big has bought new shoes.

7. The woman whose son you met last night is a good actress.

⑵ Grammatical relative clauses involving that 8. The student that has written this letter must

be very crazy.

9. The young lady that I employed last month works hard.

10. The woman that Charles gave a gift to looked very happy.

11. The picture that you are looking at was painted by Picasso.

⑶ Grammatical relative clauses involving a null operator and a null complementizer

12. The house you can see over there was built ten years ago.

13. The friend they lent money to bought a very big house.

14. The magazine we got the information from is useful.

⑷Ungrammatical relative clauses involving who(m) that or which that

15. *The woman who that is singing on the stage is my wife.

16. *The mirror which that Judy broke was very expensive.

17. *The cats which that I gave the milk to were very small.

18. *The woman whom that we talked with was our teacher.

⑸Ungrammatical relative clauses involving resumptive pronouns

19. *The building that it stands near the lake is our hotel.

20. *The classmate that you don t like him is very unkind.

21. *The student that I lent the book to her studied hard.

22. *The city that my uncle came from it is far from here.

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