Photochemical 1,4-Silyl Migration of
Disilanylcyclohexenones and Related Compounds
(ジシラニルシクロヘキセノンおよび関連化合物の
光化学的1,4-ケイ素転移反応)
著者
阿部 淳二
号
1308
発行年
1993
URL
http://hdl.handle.net/10097/25300
氏名・(本籍)
じ二
ん恥淳
べ部
あ阿
学位の種類博士(理学)
学位記番号理博第1308号 学位授与年月日平成5年3月25日 学位授与の要件学位規則第4条第1項該当 研究科専攻 学位論文題目 論文審査委員 東北大学大学院理学研究科 (博士課程)化学専攻 (山形県) Photochemica11,4-SilylMigrationofDisilanylcyclo-hexenonesandRelatedCompounds (ジシラニルシクロヘキセノンおよび関連化合物の光化学的 1,4一ケイ素転移反応) (主査) 教授櫻井英樹 授授授 山宮吉 本仕良 嘉満 則勉夫 教 教教助論文目次
GeneralIntroduction Chapter1.PreparationandSpectroscopicPropertiesofDisilanylcycloalkenones Chapter2.PhotochemisitryofDis三1anylcyclohexenonesandReユatedCompounds Chapter3.PreparationandPhotochemistryofS11ylmethylbenzoquinones Chapter4.PreparationandPhotochemicalReactionofDisilanylph七halim圭des 一194一論文内容要旨
序章 ケイ素どうしの結合からなるジシランのσ軌道エネルギーは,炭素類縁体におけるそれに比べ て格段に高く,むしろ対応するエチレンのπ軌道エネルギーに近い値をとることが知られている。 このため,ジシランのσ軌道は様々なπ電子系と相互作用することができ,例えばフェニルペン タメチルジシランにおいては,σ一π共役によって高いエネルギーを持つHOMOが形成される (スキーム1)。こういつたπ電子系置換基の導入によるHOMOレベルの上昇は,ジシランの光 反応性に大きな変化をもたらし,特にケイ素一ケイ素結合の開裂に伴う1,2一および1,3一 ケイ素転位反応については多くの研究例が報告されている。一方,当研究室では最近,ジシラニ ルベンゾキノンヘの光照射により末端のシリル基がベンゾキノンの酸素上へ1,4一転位するこ とを明らかにした(式1)。光化学的1,4一ケイ素転位反応としてはこれが初めての報告であ り,また転位の結果生じるシラーm一キノメタンが非ケクレ型構造を持つ化学種であることなど から,この新しい反応様式について極めて興味が持たれた。こういつた背景か・ら本研究では新規 な光化学的1,4一ケイ素転位反応系を構築し,その分光学的性質,光反応性,および反応中間 体について詳細に検討した。第1章ではジシラニルシクロアルケノンの合成および分光学的性質 について,また第2章ではそれらの化合物の光反応について述べる。特にジシラニルシクロヘキ セノンについては,その光学的1,4一転位によって生じるシラトリメチレンメタンを,ケイ素 が基本骨格に含まれた初めての3重項種として観測することに成功した。第3章ではシリルメチ ルベンキゾキノン,また第4章ではジシラニルフタルイミドの合成および光反応についてそれぞ れ検討し,1,4一ケイ素転位反応がこれらの系においても進行することを明らかにした。第1章ジシラニルシクロアルケノンの合成および分光学的性質
光学的1,2一ケイ素転位反応系を拡張する上で,ジシラニルベンゾキノンの部分骨格を持つ ジシラニルシクロアルケノン類の光反応性を知ることは重要であり,まずその合成について検討 した。 ペンタメチルジシラニルシクロヘキセノン1aは,ブロモシクロヘキセノンケタールをリチオ 化し,クロロペンタメチルジシランと反応させた後に酸加水分解することにより得られた(式2)。 またケイ素上に様々な置換基を導入した1b-g,異なるエノン骨格を持つ2a,3a,および4aに ついても同様の方法により合成した。これらの化合物は250-260nm付近に紫外吸収を持つが, これはσ一π共役によって形成された高エネルギーのHOMOからエノンが軌道への遷移,す なわちσガ分子内電荷移動吸収として帰属される(スキーム2)。また1eについてX線結晶構 造解析をおこなったところ,ジシラニル基がカルボニル酸素側へ倒れこんでいることがわかった (図1)。以上の結果より,ジシラニルシクロアルケノンにおいてもジシラニルベンゾキノンでみ られたようなケイ素一ケイ素結合の高い反応性,とりわけ光化学的1,4一ケイ素転位の可能性が示唆された。
第2章ジシラニルシクロヘキセノンおよび関連化合物の光化学
前章において合成したジシラニルシクロヘキセノン1aは光照射(λ≧300nm)によって速や かに反応し,t一ブチルアルコール中では5および6を,また四塩化炭素中では7を与えた(式 3,4)。これらの生成物は,トリメチルシリル基が酸素上へ1,4転位した結果生じる新規な 化学種,シラトリメチレンメタン8aに由来すると考えられる(スキーム3)。使用した光の波長 領域より,この8aの生成はエノンのnガ励起状態を経て進行していると考えられるが,これは σ一π共役によって反応性が向上したケイ素一ケイ素σ軌道とカルボニルn軌道との相互作用が あらわれた結果であり,反応機構を考察する上で非常に興味深い。8aは室温において極めて反 応性の高い活性種であるが,低温マトリクス中,1aの光分解過程を紫外吸収スペクトルを追跡 することにより,274nmに吸収極大を持つ化学種として直接観測することに成功した(図2)。 また8aは低温マトリクス中,3重項種に特有のESRスペクトルを与え,ケイ素原子を基本骨格 に含む3重類化字種としてはこのシラトリメチレンメタンが初めての観測例となった(図3)。 ここでみられた光化学的1,4ケイ素転位反応は他のジシラニルシクロヘキセノンにおいて'も同 様に進行し,様々な置換基を持つシラトリメチレンメタン3重項種の発生を紫外吸収およびES Rスペクトルにより観測することができた。ESRスペクトルから求められるゼロ磁場分裂パラ メータによれば,シラトリメチレンメタン8におけるふたつのラジカル間距離Rはほとんどの場 合4.5Aと見積もられたが,共役系でしかも立体障害の小さなビニル基を導入した8bでは4.7A と求められ,共役系の拡張がみられた(表1)。 次にエノン側にメチル基を導入した11の光反応を検討したが,この場合には3重項種の発生は 確認されず,またむ一ブチルアルコールによる捕捉実験においても先の1の光反応とは異なり, ふたつのシリル基がそれぞれ1,4および1,2転位したことに由来する生成物12が得られた (式5)。1,4一ケイ素転位については1の場合と同様に進行するが,これによって生じる中間 体はメチル基どうしの立体的反発のために,シラトリメチレンメタン3重項種の形成に不可欠な 平面構造Aを維持することができず,結果的にメチレンシラシクロプロパンBが生成すると考え られる。メチレンシラシクロプロパンがアルコールと反応する際にはケイ素一ビニレン炭素聞結 合が開裂することが知られており,今回の反応においても同様の結果として12が発生したものと 思われる(スキーム4) 一方,シクロヘキセノン以外の骨格を持つジシラニルアルケノン2a,3a,および4aにおいて は,様々な失敗過程が存在することなどにより,いずれの場合にもシリル基の転位は観測されな かった(式6,7,8)。 以上のように,ジシラニルアルケノンの光反応においては,シクロヘキセノンを用いた際にの み効率よく1,4一ケイ素転位反応が進行することが明らかとなった。 一196一第3章シリルメチルベンゾキノンの合成と光化学
ケイ素一ケイ素結合と比較してケイ素一炭素結合におけるσ軌道エネルギーは低く,開裂しに くいことが知られているが電子受容性の高い置換基の導入によりその反応性が向上することは十 分に予想できる。シリルメチルベンゾキノン類はこのような条件を満たし,かっジシラニルベン ゾキノンと類似の構造を持つ極めて興味深い化学種であり,これらの合成および光反応について 検討した。 シリルメチルベンゾキノン13はジシロキシブロモベンゼンとシリルメチルグリニャール試薬と を反応させた後,酸化することにより得られた(式9)。紫外および赤外スペクトル測定により, シリルメチル基がベンゾキノンに対して強い電子供与基として作用することが明らかとなり,ケ イ素一炭素結合の高い反応性が期待された。そこで,まず13aへの光照射(λ≧460nm)をおこ なったがこの場合にはt一ブチル基の転位のみが進行し,メタノールによる捕捉実験において14 が得られた(式10)。これはより高い反応性をもつ置換基の存在によりケイ素一炭素結合の開裂 が妨げられた結果であると考えられる。実際,七一ブチル基を持たない13bを,t一ブチルアルコー ル中で光照射(λ≧460nm)すると,捕捉生成物15が好収率で得られ(式11),シリルメチルベ ンゾキノンにおいても光化学的1,4一ケイ素転位反応が進行することが明らかとなった。生成 物15は双性イオン中間体が捕捉された結果得られるものと考えられ(スキーム5),この化学種 の直接的な観測にむけてレーザー閃光分解実験などを検討中である。 第4章ジシラニル7タルイミドの合成と光反応 前章までは,ジシラニルベンゾキノンの部分骨格を持つ系について検討してきたが,さらに1, 4一ケイ素転位反応系の拡張にむけて研究を進めた。本章では高い光反応性を持つフタルイミド に着目し,ジシラニルフタルイミドの合成および光反応について検討した。 ジシラニルフタルイミド16はフタルイミドとク口口ジシランとの縮合により得られた(式12)。 つづいてこれらの光反応について検討したが,ペンタメチルジシラニルフタルイミド16cは,ベ ンゼン中で光照射(λ≧300nm)しても全く反応せず原料回収に終わった。これに対し,ケイ素 上にフェニル基を導入した16aおよび16bは速やかに反応し,生成物として1フaおよび17bをそ れぞれ与えた(式13)。フェニルジシランの高い光反応性がこの場合にも反映されたと考えられ る。ここでみられた反応は,窒素原子に結合しているケイ素部分がシリレンとして脱離するもの であり,その反応機構には大変興味が持たれた。1,4一ケイ素転位の結果生じる中間体はシリ レンのイミン錯体と考えられ,ここからシリレンが脱離した後,熱的な転位により17が生成する ものと思われる(スキーム6)。このように本章では光化学的1,4一ケイ素転位反応の新たな 可能性について提案することができた。スキーム1 ) ・,つU Se トVM SC.1 (S 9 σあト 8S
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lx 3334G 図3.シラトリメチレンメタン8aのESRスペクトル図. 表1.8のゼロ磁場分裂パラメータ 。!9嚇。!割u句。!5断。!脚舶師。!脚“M、ぴ洲(y・惣(y 〔ン鍋〔y歯
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㎝◎-㎝
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OH 70-96% CISIMe2R' 一 EtコN R'Me2Sl 「% B5・ウ泓
Rε■ qMgCH2SiMe3 Niα2(PR-3)2〔caL〕 oSIMe3,す
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O (式9) 13a(R=トBu,RI猛Bu,85%) 13b(R=H,RIゴMe,42%1 oSiMe3ゆ
013a
hv(λ≧460nm) MeOH、rl OHSiMe3園
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