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横浜における太陽紫外線放射量の長期変動

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Academic year: 2021

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(1)横浜における太陽紫外線放射量の長期変動 楠 稚枝*・鈴木 勝久**. ThelongtermvariationofsolarUVirradianceatYokohama Chie KUSUandKatsuhisa SUZUKI. 1. はじめに. 地上に到達する紫外線量の定常的な精密観測は、世界的には1990年代初めに開始されたばかりで歴史が 浅い。気象庁では、1990年につくばでの観測を最初とし、全国に4か所および南極昭和基地においてB領域 紫外線の観測を実施している。気象庁の観測によると、地上到達紫外線量は、1990年代初めから増加傾向 にあるが、日本上空のオゾン全量は1990年代初めに最小となった後、ほとんど変化がないかやや増加して きている。従って、日本における地上到達紫外線量の変動は、オゾン層の変化に起因するものではなく、 雲量の減少やエアロゾル量の減少、アルベドといった気象的要因による影響が大きいと考えられてきてい る。. 近年日本においても、紫外線の強度が「U〉インデックス」といった形式で分かりやすく伝えられるよう になった。また、紫外線が人体に及ぼす影響や紫外線の防御法についての情報も広まってきている。しか し、子どもを育む教育現場においては、紫外線を浴びる機会が多いにも拘わらず、関心がほとんど無い上 に正しい知識を持っていない。指導者側が知識を得る機会がないまま紫外線に対する認識が遅れ、対策は ほとんど取られていないのが現状である。. 国立環境研究所は、地球環境モニタリング・データベースプロジェクトの一環として、2000年に全国の 大学等と連携して有害紫外線モニタリングネットワーク(UV−net)を発足させ、2001年度より活動を開始し た。ここで用いられる計測器は、気象庁とは異なった帯域型紫外線計で、紫外線強度の瞬時値を継続的に 観測でき、紫外線量変動の詳細が把握できる。しかし、開始からまだ日が浅く、観測データの解析はあま. り進んでいない。本研究室は観測サイトとして参加しており、8年間程の有効データが蓄積している。観測 データを解析して地域的な紫外線量の変動を詳細に調べる材料は整い、可能となっている。 本論文では、UV−netの全天型紫外域放射計による8年間の観測データを基に、横浜における放射量の変動 を様々な角度から明らかにする。今回使用した解析方法は、比較的容易な観測と処理によって紫外線の動 向が調べられるため、学校での環境教育の一つとしても活用が可能と思われる。紫外線放射量の観測や解 析を通して、生徒だけでなく教える側も紫外線に対する認識を高めるとともに、自らの手で調べていく過 程を通して環境への関心や理解に役立てる手段となることを望んでいる。. 2.紫外域放射の概要 気象学では、紫外線の分類として、国際照明委員会によって定義された、C領域紫外線:UV−C(100∼280nm)、 B領域紫外線:UV−B(280∼315nm)、A領域紫外線:UV−A(315∼400nm)の波長区分を用いる。 太陽放射は通過する大気中の分子やエアロゾル粒子、雲粒子によって吸収・散乱されて減衰し、地上に 到達する。散乱過程における散乱強度と再放射の方向依存性は、太陽放射の波長と粒子の大きさとの相対 関係によって決まる。波長の短い紫外線ほど散乱過程の影響を強く受ける。地上に到達して観測される放 * 環境情報学府 **教育人間科学部.

(2) 38. 楠 稚枝・鈴木 勝久. 射量は、直接太陽面から来る直達光成分と太陽面以外の天空領域から来る散乱光成分とが合わさった量で ある。. 紫外線は大気を通過する間に、成層圏に存在するオゾン分子によって、強い吸収帯のHartley帯(200∼ 310nm)と弱い吸収帯のHuggins帯(310∼360nm)で吸収され、UV−Cは地上に到達せず、UV−Bは全地上到達太陽 放射エネルギーのうちの0.2%弱、UV−Aは5∼6%ほどが地上に到達する。吸収帯の波長域から分かるように. UV一別まオゾン量に強く支配され、オゾン全量が1%減少するとUV−B量は2%程増加するといった見積りもさ れている。対流圏オゾンはオゾン全量のうちの10%程度に過ぎないが、近年その影響は無視できないと考. えられている(オゾン層破壊の科学,2007)。また、紫外線は大気分子によるレイリー散乱を受けて減衰し、 散乱係数は波長の4乗に逆比例するため、波長が短いUV−Bはより大きな影響を受ける。レイリー散乱による 効果は散乱過程における消散と散乱が合わさった結果の減衰である。さらに、紫外線の波長に比べて粒径 が同程度かそれ以上であるエアロゾル粒子や雲粒子によるミ一散乱を受けて減衰する。散乱強度の波長依 存性は弱い。エアロゾルとは大気中を浮遊する液体または固体の微粒子で、各種大気汚染粒子や土壌粒子、. 海塩粒子、火山噴出粒子などがあり、半径は1〃mを中心に0.01∼10〃mの範囲に及ぶ。特に森林火災や黄砂、 工業活動による粒子は地上のUV−B量を著しく減少させることが分かっている。また、すすは紫外線を吸収 し硫酸エアロゾルは散乱させるなど紫外線に与える影響は複雑である。晴天以外では雲の影響が紫外線量 を大きく左右する。一般に全天が雲に覆われている場合は紫外線量が少なくなるが、まばらな雲の存在は 散乱効果によって紫外線量を増加させる場合もある。雲の存在は地上到達紫外線量を大きく乱す。地上到 達紫外線の一部は地表面によって反射されて大気中に戻るが、都市環境においては一般に10%程度までで ある。多重散乱による減衰もあるが、概して寄与は小さい。 大気上端に到達する紫外線放射強度は変動している。これは地球の公転軌道が楕円で、太陽一地球間距離 が1月に短く7月に長くなる季節変動をすることや、太陽活動の周期性やフレアー等の変動が影響するた めである。さらに大気上端に到達した太陽放射が地上に到達するまでの減衰効果は、太陽放射が大気を通. 過する光路が長いほど大きく、緯度、季節、時刻によって変化する太陽高度の影響を受ける。大気路程(air mass)は、太陽天頂角(SZA)が零度の時に日射が大気層を通過してくる大気の厚み(距離)を基準とした相対 的な大気の厚みで表す。. 太陽紫外線が大気を通過して地上に届くまでの減衰は、直達光においてLambert−Beerの法則が成り立つ。 波長(入)の大気上端放射強度をⅠ。(入)、大気通過後の地上到達放射強度をⅠ直(入)、大気による主な減衰要. 因をオゾンによる吸収、レイリー散乱、エアロゾルによる吸収・散乱とすると次の式で表される。 Ⅰ直(入)=Ⅰ。(入)expト(で。3(入)+TR叩(入)+てa(入))m]. (1). ここで、で03(入)はオゾン吸収による減衰係数、てRay(入)はレイリー散乱による減衰係数、てa(Å)はエア. ロゾルによる減衰係数、mはairmass(m≒1/cosOz;Ozは太陽天頂角)である。地上で観測される放射は、. 他に、レイリー散乱やエアロゾルによる散乱光が含まれる。短波長域では、レイリー散乱による減衰量の 半分弱が再び地表に向かう(Iqbal,1983)と言われている。そこで太陽紫外線の散乱放射強度をⅠ散(入)とし. て、波長の影響が大きいオゾンによる吸収とレイリー散乱のみを考え、吸収■散乱による減衰量の半分が 地表に戻ると仮定した場合、およその散乱放射強度は次の式で表される。 Ⅰ散(^)=Ⅰ。(入)cosozexp(一丁。3(入)m)[卜exp(−てRay(入))m]×0.5. (2). 地上で観測される紫外線量Ⅰ(A)は直達光強度と散乱光強度の和として表される。 Ⅰ(入)=Ⅰ直(入)十Ⅰ散(入). 本研究では、この直達光と散乱光の和を全放射強度とする。. (3).

(3) 横浜における太陽紫外線放射量の長期変動. 3.観測方法と計測器 地上到達紫外線量の観測方法には目的に応じて、分光光度計を用いた波長別の紫外域放射量観測と帯域型の. 紫外放射計(積分型紫外線計)による波長域の総放射量観測とがある。本研究では後者のB領域紫外放射計 (MS−210W,英弘精機;波長280∼315nm)、A領域紫外放射計(MS−212A,英弘精機;波長315∼400nm)、全天日射計 (MS−402,英弘精機;波長300∼3000r皿)によって観測された連続的な測定値を用いる。このB領域紫外放射計は UV−Bの波長領域に有効感度をもつものの、どの波長も同じ感度で測定し帯域積分値として測定しているわけで. はない。また計測器の感度劣化は避けられない。紫外線を精度良く測定するために、計測器は毎年1回整備・点 検に出され、自然光の下でB領域紫外放射計の出力電圧と波長別紫外域放射計によるUV−B量(照度積分値)との比 較測定によって、波長域の積分嘩になるよう校正されたものを用いている。なお、SOLAC−Ⅲ(英弘精機)によっ て10秒毎にサンプリングされた瞬時値は演算処理されて毎1分平均値として収録されている。. 図1横浜国立大学屋上の日射観測 観測場所は横浜国立大学教育人間科学部第2研究棟7階部分屋上(北緯350 28′,東経1390 35′,標高80m) で、計測器の受光面は屋上床面から約90cmの高さにあり、四方に視野を妨げるものがなく水平に設置して ある(図1)。学舎は高台の上に位置し、木々に囲まれているが、直線距離にして東方約400mに自動車交通 量が多い首都高速道路(横浜新道と第三京浜道路)および国道1号線が通っている。また、南方約900mには国. 道16号線、北西約1200mには国道13号線が通り、交通量の多い幹線道路に囲まれている。観測は1999年3月 から行われ、機器調整などによる欠測日を除いて収録されている。 a). b). 図2 a)平塚教場における遮蔽実験の様子. b)横浜での遮蔽実験に使用したポータブルUV測定器(UV MONITOR MS−21l−Ⅰ,英弘精機). 39.

(4) 40. 楠 稚枝・鈴木 勝久. 2007年3月から、横浜国立大学教育人間科学部付属平塚教場(当初は2階屋上で観測,2007.12.20.より屋 外農場に移転,北緯350 20′,東経139019′,平地)においても同様の観測を行っている。計測器の受光面 は、屋外農場の草原上方約190cmの高さで、周囲は平坦で見渡しが良い。横浜国立大学より緑の多い環境で、. 直線距離にして南東約1500mに国道1号線、すぐ西に国道62号線が通っている。西側に隣接した河川の河川 敷は緑に覆われ、南方約1600mには高麗山がある。 その他に、晴天日に遮蔽板(直径5cmの黒色円盤)を測定器の受光部から太陽方向に50cln程離した場所に垂 直にかざして直達光を遮り、散乱光の強度を測定した(図2)。. 4.解析方法 観測された太陽放射の瞬時値や日積算値から経年変動や季節変動、日内変動、およびオゾンやair mass による影響を調べることにより、横浜における放射強度の変動や地域特性を明らかにする。データは校正 済みのものを使用し、平均太陽一地球間距離での値に補正をして用いた。遮蔽実験では、直達光遮蔽時の放 射強度と遮蔽前後の全放射強度平均値との比から散乱光の割合(散乱光/全放射)を求める。 5.結果 (1)s−rad(全天日射),UV−A,UV−B日積算値の経年変動. 図3は2000年から2007年までの横浜における8年間のS−rad,UV−A,UV−Bの日積算値の経年変動を表した グラフである。S−rad量は若干の変動は見られるものの、ほぼ横ばい状態であった。UV−A量とUV−B量はよく 似た増減をしているが、UV−B量はここ数年少なめの傾向が見られる。 日積算値は、地理的な条件による日照時間や太陽高度の違いで太陽放射の地上到達量が異なるといった. 影響が含まれるため、放射強度自体の変動や違いを調べるには、air massだけでなくオゾン量変動や雲に よる影響を取り除く必要がある。. (2)晴天日における同alr massでの放射量変動 天候と大気光路長の条件を同じにして放射強度の変動を調べた。大気光路長は横浜において年間の放射. 強度が調べられるSZA60Q(≒airmass2)のときとした。雲による影響を取り除くため、SZA600 となる時 刻前後で晴天であった場合の観測値を抽出して用いた。今回抽出したデータは959日分である。紫外域放射 量変動の要因となるオゾン全量の年間変動と合わせて比較を行い次のような結果を得た。なおオゾン全量 はNASAのTOMS Dataから横浜が含まれる格子点の値を用いた。. 図4は2000年から2007年までの横浜の8年間のSZA60O におけるS−rad,UV−A,UVLBの観測値と、オゾン 全量の経年変動を表したグラフである。同じ太陽高度の放射観測値であるにも係わらず、どの観測値にも. 変動が見られ、しかも毎年同じようなパターンで変動している様子が分かる。S−radとUV−Aの経年変動には 顕著な長期的傾向は見られず、特にS−radは毎年同じ季節に同程度の放射が地表に届いていると見られる。 これは日積算値の経年変動とよく似ている。UV−Bの値は年によって季節の放射強度に違いが見られ、年間 を通してオゾン全量と逆の変動を示していることが分かる。ただ、2003年の値をピークに2007年にかけて UV−Bの値には減少傾向が見られるのに対し、この間のオゾン全量にはっきりとした増加傾向は見られない。.

(5) 横浜における太陽紫外線放射量の長期変動. Yokohama S−rad日積算値2000−2OO7. 2000年1月. 図3横浜における2000∼2007年のS−rad,UV−A,UV−B日積算値経年変動. 41.

(6) 42. 楠 稚枝・鈴木 勝久. kw/m2. YokohamaS−rad晴天瞬時値SZA60O(2000−2007). 0.6 0.55 0.5 0.45 0.4 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0. 2000年1月 2001年1月 2002年1月 2003年1月 2004年1月 2005年1月 2006年1月 2007年1月. 2000年1月 2001年1月 2002年1月 2003年1月 2004年1月 2005年1月 2006年1月 2007年1月 w/m2. Yokohama UV一日晴天瞬時値SZA60O(2000−2007). 0.55 0.5 0.45 0.4 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0. 2000年1月 2001年1月 2002年1月 2003年1月 2004年1月 2005年1月 2006年1月 2007年1月 DU. Yokohamaオゾン全量(2000−2007). 500 450 400 350 300 250 200. 2000年1月 2001年1月 2002年1月 2003年1月 2004年1月 2005年1月 2006年1月 2007年1月 図4 2000∼2007年、横浜における晴天日のSZA600 におけるS−rad,UV−A,UV−B観測値とオゾン全量(TOMS Ozone Data)の経年変動. 次にS−rad,UV−A,UV−Bの観測値およびオゾン全量において、季節変動の特徴を調べた。図5は、図4を 1年単位に重ねたグラフである。それぞれに一定の季節変動のあることがよく分かる。同じSZA600 におい てS−rad,UV−A,UV−Bの値にこのような季節変動パターンが存在することは、放射量の減衰を引き起こす大 気環境にも同様な季節変動パターンが存在すると思われる。横浜におけるオゾン全量の季節変動虹 4月 に最大、10月に最小値を取る一定のパターンを持っていることが分かる。同じ季節内の変動幅は、最大値 を取る4月頃に大きく、8∼9月にかけて小さくなっている。次に、このオゾン全量の季節変動パターンが放 射量の季節変動にどのように影響しているかをS−rad,UV−A,UV−Bで見ることにする。.

(7) 43. 横浜における太陽紫外線放射量の長期変動. 0.6. 8.5. 0.4 N∈ 盲 J. O.3. 0.2. 0.1. 3/1. 6/1. 5/1. 4/1. 9/1. 8/1. 7/−. 10/1. 11/1. 12/1. ヘリ﹂\、>. レ1. 1/1. 2/1. 2/1. 3/1. 3/1. 4/1. 4/1. 5/1. 5/1. 6/1. 8/−. 7′1. 7/1. 8/1. 8/1. 9/1 10/1. 12/1. 9/1 用/1 11ハ 12/1. 図5横浜晴天日SZA60O におけるSrrad,UVrA,UV−B観測値とオゾン全量の季節変動 (2001年のS−rad,UV−Aはデータ数が少ないため載せていない). 11/1.

(8) 44. 楠 稚枝・鈴木 勝久. Sてadは、毎年夏至頃に最小値をとり、冬至頃に最大値をとる一定の季節変動をしており、オゾン全量変 動の影響は見られない。オゾン以外の要因でS−radの観測値は一定の季節変動を示している。一般に、UV−A はオゾンの影響をほとんど受けないと言われているが、この帯域型放射計による観測値ではオゾン全量が 最大になる4月頃は僅かに弱まり、オゾン全量が最小になる秋にかけて強まる一定の季節変動を示している。 UV−Aはわずかにオゾン全量との相関が見られる。UV−Bはオゾン全量の変動に対してはっきりとした負の相 関を示している。オゾン全量が最大になる4月前後にUV−Bは最小となり、オゾン全量が最小になる10月前 後にUV−Bは最大となっている。. しかし、7∼9月にかけてUVqBはオゾン全量との相関が悪く、値のばらつ. きが大きくなる傾向が見られる。UV−Bの観測値はオゾンの影響を強く受けて一定の季節変動を示している が、それ以外の季節的な影響も受けていることが分かる。 次に、放射量変動のオゾンによる影響を調べるために、S−rad,UV−A,UV−Bの観測値とその時のオゾン全 量との相関をとって調べた。図6は横軸がオゾン全量、縦軸がSZA600 における各放射量の観測値で、2000 年から2006年までの値のグラフである。UV−Bはオゾン全量とはっきりとした負の相関を示すが、Sてadは相 関がみられず、UV−Aは僅かに負の相関を示している。. 紬. m2 YokohamaUV−A晴天日SZA608瞬時値(2000−2006). /. ぎ0. 0.5. 25. 0.4. 20. 0.3. 15. 0.2. 10. 0.1. 5. 0. 0. 22024026028030032034036038040042044046BU. 22024026028030032034036038040042044046β∪. w/m2 YokohamaUV−B晴天日SZA60O瞬時値(2000−2006) 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0. 22024026028030032034036038040042044046色∪ 図6 2000∼2006年横浜晴天日SZA600 におけるa)sLrad,b)uv−A, c)uv−Bの観測値とオゾン全量との相関図.

(9) 横浜における太陽紫外線放射量の長期変動. 図7は2003∼2006年におけるSZA60O のUV−Bとオゾン全量との年別の相関を示したものである。経年変動 グラフに見られたように、僅かであるがUV−Bに減少傾向が見られ、オゾン以外の影響の存在が何える。 次に、オゾン以外でUV−Bだけに影響を及ぼす因子が存在するかをUV−B/S.radの比を用いて各年で調べた。 オゾン以外の因子によるUV−B,STradへの影響が同じならば、UV−B/S−radの値とオゾン全量との相関は回帰 曲線上に集まると考えられる。図8は2006年のグラフである。SZA600 においては、毎年7∼9月頃にかけて オゾン全量に対するUV−B/SLradの値が相関から上方に外れることが確認できる。. YokohamaUV−B晴天日SZA60ご 瞬時値(2003−2006). 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400 420 440. 図7 2003∼2006年の横浜晴天日SZA60O におけるUV−B観測値とオゾン全量との相関図. Y。k。hama2006年SZA60Q 瞬時値UV−B/S一γadとオゾン. 6. OU. 2 0 0 −U ︵U ︵U n︶. P巴−S\皿−>⊃. 0. 4 0 0 ∩﹀ 0 0 ︵U ︵U ︻U O. 220 240 260 280 300. ne(D. 図8 2006年、横浜におけるSZA600 のUV−B/S−radの値とオゾン全量との相関図。 7−9月は塗りつぶした点で示す。. 45.

(10) 46. 楠 稚枝・鈴木 勝久. (3)横浜と陸別のUV−B強度比較. UV−B強度に地域性があるかを検証するために、清浄な大気環境とみられる陸別(北緯430 27′,東経 1430 46′)の値と比較を行った。横浜は陸別よりも緯度が低いため、同じ日の太陽の南中高度は常に高い。 またUV−Bはオゾン量の影響を強く受けるため、同じ日でオゾン量の差がなければ、南中時のUV−Bの値は横 浜の方が大きいと考えられる。そこで、同日もしくはなるべく近い日でオゾン量の差が/トさい晴天目の観 測値を用いて、1日d)UV−B強度変化を比較した。図9はその一例で、横軸にはairmassを用いた。同じairmass の値でUV−B強度を比べると、明らかにairmassの値が小さい時は陸別の方の強度が大きく、逆に、airmass 2近くやそれ以上では横浜の方の強度が大きいことが分かる。そこで2006年のデータを用いて、SZA600(≒ airmass2)における晴天目のUV−B観測値とオゾン全量との相関を比べた。オゾンの影響を同じとした場合、 やはりair mass2のUV−B強度は横浜の方が陸別より大きい傾向が見られる(図10)。 これはエアロゾルによる影響の違いと考えられる。横浜は陸別と比べてエアロゾルが多いためUV−B直達 光の減衰が大きくなり、air massが小さい時は横浜のUV−B強度の方が小さくなる。一方、air massが大き いときは散乱光の占める割合が増えることから、エアロゾルが多い横浜は散乱効果によってUV−B強度が大 きくなると推測される。. 2. 2006.5.〕∨−B(am). .. 8,8. 。.。.。.¥き乱 9. 0.7. 8. 0,6. 7. 0.5. 〇.〇.〇.〇.. モ0.4. 4. 0.3. 3. 0.2. 2. 0.1 1. 0. 0. 1. 1.2. 1.4. 1.6. 1.8 2 訓「maSS. 2,2. 2.ヰ. 2.6. 2.8. 3. 1. 1,2. 1.4. 1,6. 1.8. 2 2.2 airmass. 2.4. 図9 横浜と陸別における、観測日が近くオゾン量の差が小さい晴天日のUV−B日内変動比較の一例 (横軸はalr mass). m. 2006年UV−B晴天瞬時値SZA60O. 2. L. 紺. 【 0.4. ◆ ● _ H 何 】 u=:◇笹;了◇…◇ ⊆ヤ・ I 1 〉畿r さ㌔ ◆ 幣転芸ヒ;ヤ 打。㍗1。。 ,.=. ⊇. 0.3. 「刷伸一−、 n ●■●●●一一一. ” 1. 腿 ・;・∃ ヽ. 弓. 0.2. ‖. 0,1. 毒. 1臣 lr 弓【. 0. I. l. u. 図10横浜と陸別における、SZA600 のUV−B強度とオゾン全量との相関比較. 2,8. 2.8. 3.

(11) 47. 横浜における太陽紫外線放射量の長期変動. (4)日内変動の特性. 1日のUV−B強度変化は晴天日では太陽高度の影響を強く受ける。ここでは太陽放射の変動による影響を 取り除くためUV−B/S−radの比を用い、airmassとの相関をとって1日の太陽高度変化によるUV−B強度の変 動特性を調べた。全サンプル日数は213日である。alrmassは1日に2回、午前と午後とに同じ値をとるが、 airmassが同じであっても午前と午後とでUV−B強度に違いの見られる日が多数あった。午前に比べて午後 の方が小さくなる日は全サンプル日数の約65%あり、他は午前と午後の差がほとんど無いか、逆に午前の 方が大きくなる日であった。このことから、概ね横浜のUV−B強度は午後の方が午前より弱まる傾向がある。 図11はUV−Bが午後に弱まる傾向を示す日のものである。横軸がair mass、縦軸が観測値を表す。多くの日 はこのグラフが示すように、Srrad強度の午前と午後の違いはあまりなく、強度差の傾向はUV−Bの特色と思 われる。陸別で同様の検証をしたところ、横浜とは逆にUV牒弓重度は午後のほうが大きい傾向が見られた。 これは横浜と陸別との午前と午後のエアロゾル濃度の違いが影響していると考えられる。横浜では、UV−B に減衰効果があるエアロゾルが太陽南中後にかけて増加する傾向があり、UV−B強度が弱まるのではないか と推測される。. a)横浜 2. W舟. Yokohama2007.8.15.∪∨−B. ▼. 1.3. m2 Yokohama2007・8・15・S−rad. 1.2 l、1. 」⊥皿」. 二璽.. 1. 0.9 0.8. ・㌍乍uね. 1く1転. 0.7. 軋. 0.6. し−空車量. 0.5 0.4 0.3 0.2. H. 7. 7. 0、1 0. 11・2 1・4。iノ戒。SSl・8 2 2・2. H. 刑. ⊆. 】】. 1 1.2 1.4.1.6 1.8 2 2.2. 訓「maSS. b)陸別 w/m2 Rikubetsu2006・5,18・UV−B. kw/m2 Rikubetsu2006・5・18・S−「ad. 1. 1. 0.9. 09. 0.8. 0.8. 0.7 0.6. お. 0.7. 十+. 0.5. 0.6. 0.4. 0.5. 0.3. 0.4. 0.2. 0.3. 0.1. 0.2. 0. 1 1.2 1.4 .1.6 1.8. 2. 2.2. 1 1.2 1.4.1.6 1.8. alr maSS. 図11air mass変化に伴うUV−B,S−rad観測値の日内変動の一例. alr maS$. 2. 2.2.

(12) 48. 楠 稚枝・鈴木 勝久. (5)平塚の特徴. 平塚における2007年4月∼2008年3月までの1年間のS−rad,UV−A,UV−B観測値に郊外としての地域特性 があるかを、横浜の2007年の値と比較して調べた。. SZA60O におけるSLrad,UV−A,UV−B観測値の季節変動グラフを作成したところ、横浜とよく似た変動を 示した。図12はUV−Bの強度について比較したグラフである。太陽の南中時刻および南中高度は平塚と横浜 とでは違いがあまりないので、観測値をそのままグラフにした。年間を通して、南中時のUV−B強度は横浜 より平塚の方が大きく、反対にSZA600 では小さくなっている。air massの違いによるUV−B強度の違いは、 横浜と陸別を比較した場合と似た傾向であることが分かった。一方、日内変動では午後の方が午前より弱 まるといった横浜と似た傾向が見られた(図13)。UV−Bに影響を与えるエアロゾルが横浜に比べて平塚の方. が少ないと考えられる。しかし、日内変動の傾向から、平塚もUV−Bに減衰効果があるエアロゾルが太陽南 中後にかけて増加する傾向があると推測される。. 7 6. . . 9. N∈\き. 8 7 6 5 ∩︶ 0 ∩︶. 0. ︵U. 4 2. ︵U. n﹀. 3 1 0. O ■U. /1. 2/1. 1/1. 2/1. 3/1. 4/1. 6/1. 5/1. 7/1. 8/1. 9/1 10/1 11/1 12/1. 0.45 0.4 0.35 0.3. 篭0・25. 0.2 0.15 0.1 0.05 0. 3/1. 4/1. 5/1. 6/1. 7/1. 8/1. 9/1. 10/1. 11/1. 12/1. 図12平塚の南中時およびSZA60O のUV−B観測値の季節変動(2007年度.横浜の2007年の観測値を重ねた). H一. 1. ‖. 9. α. H. 8 7 .6 5 4 .3 1. 。. 二さ乏ゝ. 図13. 平塚のair mass変化に伴うUV−B日内変動 1ヱ. 1・4airmasも8. 1.8. 2. 2ヱ. クー l O.

(13) 横浜における太陽紫外線放射量の長期変動. (6)遮蔽実験による散乱光の計測. 全天放射量のうち散乱成分が占める割合を実測するため、3で説明した方法で晴天日に遮蔽実験を行った。 実験には平塚教場では常時観測用の計器を用いたが、横浜ではポータブルUV測定器を用いている。2地点の 観測計器が異なるため観測値の絶対値を比較するには補正が必要となるが、散乱光が占める割合を調べる には問題がないと判断して用いた。平塚では2臥横浜では16回の実験を行い、UV−B散乱光強度の目内変動 を調べた。図14は2008年9月9日の平塚教場での遮蔽実験の結果である。この目は比較としてSてadについて も遮蔽実験を行った。平塚と横浜の遮蔽実験から、UV−Bは全天放射量に対する散乱光の割合が半分以上と 大きく、しかもその値は南中時を最小に、airmassが増すほど大きくなることが分かった。また、airmass が同じでも日によって散乱光の割合は異なるという結果も得られた。散乱光の割合はair mass以外にエア ロゾルなどの観測日の大気環境に左右されると考えられる。そこで、air massに関するUV−Bの散乱光の割 合変化を、実験結果と式(1),(2)によるUV−Bの計算値とで比べてみた。観測値と同様に計算値を波長域の 全放射強度とするため、UV−Bの波長域において直達光と散乱光の放射強度をそれぞれ波長別に計算し積分 して求めた。計算には実験当日のオゾン全量303DU(TOMS Ozone Data)を用い、エアロゾルその他の影響は 入っていない。なお計算に用いたオゾン吸収断面積はL.T.MolinaandM.J.Molina(1986)による実験値、レ イリー散乱の減衰係数はFrohlich and Shaw(1980)の計算式から求めた値、大気上端UV−B放射量は Thekaekara(1973)のデータを用いた。結果を図15に表す。実験値、計算値ともにairmassの増加に伴いUVLB は散乱光の占める割合が大きくなることが分かる。なお、計算値の割合の方が実験値に比べて全体的に小 さい値をとるは、計算式にはエアロゾルによる散乱などが含まれていないためと考えられる。UV−Bの散乱 光にはエアロゾルによる影響も大きいことが推測される。. また、図14から、S−radはそのほとんどが直達光であり、散乱光の割合は小さいことが分かる。実験で得 られた散乱光の割合は10%前後で、UV−Bと同じようにair massが増すと割合は大きくなっている。. 5. 1. 4. 1. 3. 1. 2. 1. n0 ︶ 人 0U ︿U O O O O. ﹂ 7 1 69 584 っり 2 1 0. ・l. ︵㌔\ぎ宅巴−S.︵写盲︶m>⊃. 8:30. 9:00. 9・30 10:00 10:30 11:00 11.30 12:00 12:30 13:00 13:30 14:00 14ニ30 15:00. 図14 2008.9.9.平塚におけるUV−BとS−radの遮蔽実験結果.両グラフとも深く落ち込んだ部分が遮 蔽時で、その値が散乱光の強度を示す。. 49.

(14) 50. 楠 稚枝・鈴木 勝久. w/m2. 計算による∪∨−B強度. O n︶. 4. 1. 5. 1.2. 6. 1.4. ︵U. 瑚宗蚕 昭 利 \ 栄 ﹂ 皿 轟. 1.6. 3. 0.8. 0. 0.6 0.4 0.2 0. 1 1t2. 1・もirmasヨ・6. 1・8. 2. 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 a‖’maSS. 図15 左図は(1),(2)から求めたUV−Bの波長域直達光強度と散乱光強度(300DU)のair mass に伴う変化を表したグラフ。右図はUV−Bの全天放射量に対する散乱光の割合を遮蔽実 験と(1),(2)の計算値からそれぞれ求めて表したグラフ。横軸はair mass,縦軸は割 合を示す。air massが大きいほど散乱光の占める割合が大きい。. 以上の通り、横浜のUV−B観測値を中心に放射量の変動を一部陸別と比較して調べた結果、地域的な特性 が明らかになった。これらの地域特性は局所的な大気環境が影響して生じたものと考えられる。都市域で. ある横浜では、主に大気汚染による影響がUV−B量の変動に現れていると考えられる。また、近年のエアロ ゾルの質的変動、特にUV−B波長域に大きく影響する微小粒子の増加等が横浜のUV−B量変動の地域特性を作 っている可能性も考えられる。神奈川県では大気汚染物質の挙動を常時観測し、1時間値が公開されている ので、そうしたデータを用いてUV−Bの強度を変動させる要因を調べることが可能である。 6.結言令. 帯域型の紫外放射計による波長域の総量観測値を使って横浜の太陽放射強度の解析を行った結果、B領域 紫外放射については以下の点が明らかになった。 (1)晴天日のSZA60O におけるUV−B強度は、オゾン全量と強い負の相関を示しながら一定の季節変動をし ているが、7∼9月にかけてはオゾンとの相関が悪く、値のばらつきが大きくなる傾向が見られる。 (2)晴天日のSZA600 におけるUV−B強度は、2003∼2006年にかけてオゾン以外の要因でわずかに減少傾向 が見られる。. (3)陸別と比較して、UV−B強度は、airmassの小さい時には値が小さく、airmass2近くやそれ以上では 逆に値が大きくなる傾向がある。 (4)UV−B強度の日内変動では、午後の方が午前より小さい傾向がみられ、陸別は逆に午後の方が大きい傾 向を示す。. (5)平塚でのUV−B強度は、横浜と比較して、air massが小さい南中時には値が大きく、SZA600 では値が 小さくなるといった陸別と似た傾向を示す一方、日内変動では午後の方が午前より小さいといった都 市環境である横浜と似た傾向を示す。. (6)遮蔽実験の結果、横浜・平塚ともにUV−B全天放射量の半分近くは散乱光で、airmassが増すほどその 割合は大きくなる。 (7)横浜では、UV−Bの吸収・散乱に寄与するエアロゾル成分が多く、その変動によるUVルB強度の変動が生. じて、地域特性をつくっていると考えられる。. 2.

(15) 横浜における太陽紫外線放射量の長期変動. 51. 参考文献 伊藤真人,2005,ブリューワ一分光光度計を利用した散乱波長別紫外域日射の精密観測,高層気象台嚢報65 号,23−36.. 伊藤真人,2005,ブリューワ一分光光度計による地面反射波長別紫外域日射の精密定常観測結果2004年,高 層気象台嚢報65号,37−44. 伊藤真人,2006,ブリューワ一分光光度計用自動遮蔽装置による散乱波長別紫外域日射の定常観測,高層気 象台嚢報66号,47−56.. 伊藤真人,2007,ブリューワ一分光光度計による地面反射・散乱波長別紫外域日射の年変化高層気象台嚢報 67号,19−32. Iqbal,M.,1983,AnIntroduction to SOLAR RADIATION,ACADEMIC PRESS.. 環境省,2008,平成19年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書第3部太陽紫外線の状況. 気象庁,2008,オゾン層観測報告書2007. 佐々木政子,2008,絵とデータで読む太陽紫外楓国立環境研究所. 北海道大学大学院環境科学院編,2007,オゾン層破壊の科学,北海道大学出版会.. Thekaekara,M.P.,1973,Solar energy outside the earth’s atmosphere.Sol.Energy14(2),109−127. 有害紫外線モニタリングネットワーク事務局編,2005,有害紫外線モニタリングネットワーク活動報告書, 国立環境研究所..

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