Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Changes in Partial Pressure of Arterial Carbon
Dioxide Induces Redistribution of Oral Tissue Blood
Flow in the Rabbit
Author(s)
半田, 麻里子
Journal
歯科学報, 109(5): 502-503
URL
http://hdl.handle.net/10130/1887
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 口腔外科手術において,口腔周囲組織は血流が豊富であることから,術中出血の制御が大変重要な問題であ る。口腔外科手術の出血量を減少させるために,ニトログリセリンや ATP などを用いた低血圧麻酔が検討さ れてきたが,重篤な合併症を起こした事故の報告もある。 一方,われわれの研究において,イソフルランとプロポフォールおよびフェンタニルを用いた全静脈麻酔の 口腔粘膜血流量に及ぼす影響が検討されており,イソフルランでは増加し,プロポフォールでは変化せず, フェンタニルでは減少した。また,炭酸ガスの負荷が咬筋組織血流量を減少させるなど,薬剤や炭酸ガスが組 織血流を変化させることが分かっている。 本研究では,口腔外科手術,特に顎変形症手術を想定して,全身麻酔による口腔組織血流量の制御について 検討するために,イソフルランおよびプロポフォール麻酔下に,動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)の変化がウサギ の下顎骨骨髄,咬筋組織および下顎骨骨膜の組織血流量へ与える影響を検討した。 2.研 究 方 法 体重2.5kg 前後の日本白色種系雄性家兎を使用した。全身麻酔下に総頸動脈血流量は超音波血流計で,下顎 骨骨髄と咬筋の組織血流量は水素クリアランス式組織血流計で,骨膜の組織血流量はレーザードップラー血流 計で測定した。麻酔維持をイソフルラン(n=10)またはプロポフォール(n=10)で行ったものの2群に分け
た。観察項目は終末呼気炭酸ガス分圧が約4kPa(≒30mmHg),5.3kPa(≒40mmHg),6.7kPa(≒50mmHg)
および8kPa(≒60mmHg)のときの心拍数,血圧,総頸動脈血流量,下顎骨骨髄,咬筋および下顎骨骨膜血流 量とし,終末呼気炭酸ガス分圧の負荷は吸気中に炭酸ガスを混合させることにより行った。 3.研究成績および結論 終末呼気炭酸ガス分圧が上昇するに従って総頸動脈血流量,下顎骨骨髄血流量は有意に増加し,咬筋血流量 は有意に減少した。また,下顎骨骨膜血流量には変化が認められなかった。さらに,総頸動脈血流量と下顎骨 骨髄血流量の間には正の相関が,咬筋血流量との間には負の相関が認められた。 以上のことから,イソフルランとプロポフォールのどちらの全身麻酔薬においても PaCO2の変化は口腔組 織血流量に変化を与えることが分かった。また,その変化は組織によって異なることから,口腔組織において 氏 名(本 籍) はん だ ま り こ
半
田
麻 里 子
(神奈川県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1634 号(甲第 933 号) 学 位 授 与 の 日 付 平成17年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Changes in Partial Pressure of Arterial Carbon Dioxide Induces Redistribution of Oral Tissue Blood Flow in the Rabbit
掲 載 雑 誌 名 Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 第66巻 1820∼1825頁 2008年 論 文 審 査 委 員 (主査) 一戸 達也教授 (副査) 金子 譲教授 内山 健志教授 川口 充教授 鈴木 隆教授 歯科学報 Vol.109,No.5(2009) 502 ― 50 ―
血流の再分布が起こっていることが示唆された。 したがって,実際の口腔外科手術においては,骨髄が術野となる場合は終末呼気炭酸ガス分圧を低めに設定 し,咬筋が術野となる場合は終末呼気炭酸ガス分圧を高めに設定したほうが出血量が少ないと予測され,手術 に応じて麻酔管理の条件を考慮するとよいということが考えられた。 論 文 審 査 の 要 旨 口腔外科手術において,術中の出血の制御は大変重要な課題である。現在までに低血圧麻酔や全身麻酔薬の 種類による口腔組織血流量の制御が行われてきたが,これらはいずれも薬剤の薬理作用を利用したものであ る。また,炭酸ガスの負荷により咬筋組織血流量は減少することは分かっているが,顎骨骨膜・骨髄など口腔 組織血流に対する炭酸ガスと麻酔薬の影響に関しては不明である。 本研究では,口腔外科手術,特に顎変形症手術を想定して,口腔組織血流量を制御する全身麻酔を考察する ために,炭酸ガス負荷と麻酔薬の種類がウサギの咬筋組織,骨髄および下顎骨骨膜の血流量へ与える影響を検 討した。 その結果,口腔組織において,終末呼気炭酸ガス分圧が増加するに従って咬筋組織血流量は減少し,下顎骨 骨髄血流量は増加した。また,下顎骨骨膜血流量は変化しないことが分かった。さらに,これらの口腔内組織 においては全身麻酔の維持をイソフルランで行うよりもプロポフォールで行った方が血流量は少ない傾向であ り,手術の内容に応じて麻酔管理の条件を考慮するとよいということが示唆された。 本審査委員会では,1.麻酔深度が呼吸状態に及ぼす影響 2.骨髄と咬筋の両方が術野となる手術におけ る適切な換気条件 3.口腔組織における血流の再分布のメカニズム 4.酸素の血管収縮作用 5.活性酸 素の影響 6.アシドーシスまたはアルカローシスの影響 7.エピネフリン添加局所麻酔薬の使用による不 整脈惹起の危険性 8.レーザードップラー血流計の精度 などの質問があり,概ね妥当な解答が得られた。 また,論文の英語表現や図表等について指摘があり修正がなされた。 本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと判 定した。 歯科学報 Vol.109,No.5(2009) 503 ― 51 ―