Title
[報文]ナスの組織培養とその栽培について
Author(s)
濱井, 義則; 上田, 二男
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 14(1): 7-12
Issue Date
1998-10-01
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14148
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UETA DepartmentofBiochemistry,ChubuSeitoColtd. 11712Kadekaru .Nishihara-Cho,Okinawa90310102HigashiEsunomuraDevelopmentPublicltd.
2870Chikwaishi,HigashitsunomuTla,Takaoka-gun.Kochi785-5
緒 言 Fl品種は育成 お よび品質が均一 で、 なおか つ雑種強勢 を示す等の利点があ り、現在ほとん どの野菜でFl品種が利用 されているo Lか し、 Fl品種の作出のため には6・7世代 、 あ るい は それ以上の 自殖 を必要 とし、 目的 とする形質 を 固定す るには長い年月と労力 を要 してきた。一 方、前培養による花粉由来2倍体植物はホモ接 合体であ り、直接的に固定系統の誘導が可能で 形質固定期間 も短時間ですむ。そのため、近年 ナスを含め多 くの植物で約培養による植物体の 誘導が こころみ られるようになったl・2)0 ナスはカルス化の極めて激 しい植物である。 一度カルス化あるいはプロ トプラス ト化 した も のでは不定芽が形成 されるが、葉原基が肥厚 し 成育が不完全で、培地組成やホルモ ン濃度 を変 えた培地に継代 して も、再びカルス化がおこリ 完全 な植物体 を得ることがで きない。この よう な不定芽 をカルスか ら切 り離 して完全 な植物体 に成長 させ るためには、茎頂培養の要領で生長 点 と葉原基2個程度を付 けた組織か らの培養条 件の確立が急務 となる。 '沖縄県西棟町字裏手苅117・2 本研究は、それ ら条件確立の一環 として茎頂 培養 を検討するとともに、茎頂培養で得 られた 培養苗の栽培 について も言及 した ものである。
品
種
本研究ではナスの茎頂培養が可能か、さらに 茎頂培養で得 られた組織培養苗が親の形質をそ の まま受け継 ぐかを調べ ることを第-の 目的 と しているため、品種 として十市′トナスを用いた。 十市′トナスは早生種で、へたぬ きが良 く、革姿 は開張性で、節間は短 く分枝力は強い。果形は 短卵形で良 くそろい、高知県の主力栽培品種で 本研究が行われた東津野村で も、園芸作物 とし て よく栽培が行われている。 組織培養 ナスの茎頂培養は全 く行われていないにひとし い。その大 きな理由の 1つにカルス化の問題があ げられる。カルス経 由の不定芽や生長点にしろ、 結果的にカルスに埋 もれて正常な植物体を得るこ とができないからである。 この間題 を解決する 1 つの方法論 としては、か りにカルスが形成 された としても、それよりも早 く完全な植物体 に育成す る条件を確立すればいいことになる。南方資源利用技術研究会誌 写真 1. 茎頂培養 による植物体の誘導 そこで、条件設定のために室温25度、12時間 照明で、十市/トナスの成長点 をMS培 地 1リッ ター中にシュークロース30g、BAO.5mg、 リボ フラビン1mg、寒天8gを含 む固形培地に置床 すると、約1ケ月半後 には基底部の周囲にカル スが形成 される ものの、葉 2-3枚 をつけた小 さな植物体 に成長 した。この植物体 をさらに大 きく育成するために、基底部のカルス部分をカッ トして取 り除 き、それをシュークローネ30g、 寒天8gを含む1/2MS培地に移植す ると、基 底部の周囲にカルスが形成 されるが写真 1に示 す如 く、順化可能な大 きさの植物体 を得 ること がで きた。次 に、この植物体 を増やす 目的で、 それぞれ葉の付 いた節間部分をのこして分割 し、 それを同 じ 1/2MS培地に移植すると (写真2)、 約1ケ月後 には写真 1に示 した大 きさに成長す る。尚、この方法での増殖率は1ケ月で約3倍 であった。 最近、ナスのカルス由来の不定芽か ら完全 な 植物体 を得るために、マイクログラフテ ィング の方法が検討 さてし1る3).試験管内で ナスの不 定芽部分 を台木になる植物の旺軸上に置 き培養 すると、不定芽は生育 し、台木部分か ら発根 し て正常 な苗 を得 ようとする方法である。 このこ とは、ナス 自身による発根 もカルス化のため極 めて難 しいことを示 してい る。 しか し、
1
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MS培地で増殖育成 した十市′トナス を、基底部 に形成 したカルスを取 り除いて、 1リッター中 写真2. 茎頂培養によるナスの増殖 にハ イポネ ックス3g、IBA2mg、シュークロー ス30g、寒天10gの固形培地に移植す ると、カ ルス化は全 く見 られず、移植後20日目には写真 3で示す如 く、全ての苗で十分な発根が認め ら れた。 培養苗の特性 十市小 ナスの培養苗の特徴 は、実生苗 と異 な り極めて低 い位置か ら花芽 をつけることである。 その理由 としては本培養苗の場合、培養瓶内で 節間を用いて増殖 を繰返 している。普通、種か らの実生苗では二葉、本葉 と成長 してい くが、 おそ らく、その過程が短縮 されているか らであ ろう。又、果形については写真 4で示す如 く、 培養苗で得 られた実 と実生苗で得 られる果形 と の間には形質的な変化は認め られなかった。 こ のことは、本研究で行 った組織培養苗が親の形 質 を受け継いでいることを示 している。 培養苗による十市小ナスの栽培 栽培 は施設内植 えのマルチ ング栽培で (写真 5)、畦幅70cm、畦高 さ30cm、株 間90cmと し、 主枝4本 を誘引 して行 った。 施肥 は300坪 当 り 元肥 として堆肥3,000kg、それに苦土石灰160kg、 キャップテ ン有機 (10・10・10マ ンガン、ホウ 素微量入 り)200kgを、さらに追肥 と して液肥 2号 (10・5・8)を苗の成育 に応 じて施与 し た。写真
3.
ナスの発根状況 潅水は苗の活着 を促進するために定植後 7-10日間迄は、乾燥 に注意 して毎 日行い、その後 は潅水量を控 え目として約 3- 5日に一度の割 合で行った。又、花ぬ き、整枝、摘葉等はそれ ぞれ慣行法に従 った。尚、栽培期間は平成 9年 4月23日から平成 9年10月31日迄 と し、栽培個 体数は実生の接 ぎ木苗及び培養苗でそれぞれ16 本であった。その中で栽培調査対象は培養苗の 場合、順化の遅れか らいずれの苗も小さいため、 定植時に実生の接 ぎ木苗 と大 きさがかろうじて 類似 している4個体で行 うこととした。 写真6と表 1は十市小ナスの栽培状況 と、そ の収穫量 を示 したものである。秀品率は培養苗 および実生苗でほとんど変化は認められないが、 1本当 りの個数 は培養苗で207、 7個 、実生苗 で178、 5個 と、培養苗で約 15%増加す ること が明 らか となった。また栽培終了後、栽培調査 対象株以外 も含めて、それぞれの根を検討 して 見ると、写真7で示すごとく、培養苗の株では 実生苗の株 より毛根が極めて多 く発生すること 写真4.
ナスの果実 がわかった。 ナスの病害虫 ナスの主な病害虫には ミナ ミキイロアザ ミウ マ、アプラムシ類、オンシツコナジラミ、ハ ダ ニ、ホコリダニ類、ハスモ ンヨ トウ、うどんこ 病、灰色かび病、立枯病等が知 られている。そ れらの病害虫に雁思および雁病 した株では、ナ スの採取量 も少ないうえに品質が悪 く、最悪の ときは園 としての経済的価値 を失い、最近では ナス栽培上の主要な制限因子になっている。そ のため、農薬等は安全使用を基準 とし、予防発 生初期散布など適宜な病害虫防除は欠かす こと がで きない。 ところで、本研究で使用 したほ場は、ナスの 栽培地か ら離れ、また、新 しく耕作 した地域の ため、栽培期間中ハ ダニが少 し発生 したものの、 連作障害で見 られるような、その他病害虫の発 生は認められなかった。南方資源利用技術研究会誌 写真5. ナスの栽培状況
考
察
ナスの茎頂培養は今まで全 く行われていなかっ た。それは、ナス にはF1品種 が存在 し、 か り に茎頂培養で培養苗 を得た として も、多 くの研 究者はあま り意味がない と考 えていたのではな いだろうか。 しか し、ナスはカルス化の極めて 激 しい植物で、またカルス化ゆえ培養条件 もほ とん ど確立 されていない植物で もある。そのた め、最近では、カルス化あるいはプロ トプラス ト化によって得 られるナスの不定芽か ら、完全 な植物体 を得るために、茎頂培養系4・5)が確立 していない植物か ら単 にウイルスフリー苗 を得 る手段 として提案 されたマイクログラフテ ィン グなどの方法論が検討 されるなど、一連の基礎 的な培養条件の確立が急がれていた。 本研究で確立 した十市小 ナスの茎頂培養系の 培養条件では、初代培地 (MS培 地 1リッター 中にシュークロース3
0g,BAO
,
5
m
g
、 リボ フラ ビン1m
g
、寒天8g)
に成長点 を置床すると、 基底部の周囲にカルスが形成 される ものの、約 1ケ月半後には葉2-3枚 をつ けた小 さな植 物 体 に成長する。それを、基底部のカルス部分 を カッ トして、増殖をかねた1/2MS培地 (シュー クロース3
0g
、寒天8g)
に移植 し、さらに、 それを発根培地 (1リッター中にハ イポネ ック ス3g、I
BA2m
g
、シュークロース3
0g
、寒天 log)に移植す ると、十分な根 を持つ完全 な植 物 (写真3)が得 られ、ナスで も茎頂培養がで 写真6. ナスの栽培状況 きることを始めて明 らかに した。 また、本条件 で得 られた完全植物体 は果形及び草姿等か ら考 えて親の形質 を受け継いでいる。 このことは、 薪培養あるいは不定芽か らの完全 な植物体誘導 に本培養条件 を利用することがで きれば、培養 段階での遺伝子的な変化 を考 えることな く、効 率面の向上に も道 を開 くものであろ う。 一方、培養苗 を用いたナスの栽培に関 しては、 栽培調査対象株 のnの数が少 ない (培養苗4 本) ものの、培養苗で収穫量の増加が示唆 され た。現在、ナスの栽培 を含め園芸作物の栽培 に は、いかに効率 よく単位面積 あた りの収穫量 を 増やすかが課題 となっている。その点本研究で 得 られたナスの培養苗 を利用すれば、従来法 に もとづいた栽培方法で も収穫量の増加は可能で、 収益面での増収 も期待で きる。実際、根 を検討 して見ると、それ らのことを証明す るかの よう に、栽培調査対象株以外の株 を含め、栽培 に寄 与 した16本の培養苗の株では、実生の接 ぎ木苗 の株 よ り毛根が極めて多 く発生 し、根張 りも良 いことが確認 された。 培養苗でなぜ毛根が多 く発生す るのかについ ては、現在の ところ明 らかではないが、おそ ら く培養苗の方が実際の栽培で利用 されている実実生の接 ぎ木苗 培養苗 写真
7.
栽培修了期 における毛根の発生状況 生の接 ぎ本苗 よ り、樹勢が強いことが考 え られ る。一般的にナスの栽培 では主枝 4本 を誘引 し て行われて きた。 も し従来法 と異 なって、樹勢 の強い培養苗を主枝5-6本誘引 して栽培 を行 っ たとしたな らば、単位面積 あた りの収穫量の増 加は計 りしれない。 また最近、連作障害 を防止 す る 目的でナスのポ ッ ト栽培 も考案 されている。 この方法は、ポ ッ ト内の土 を毎年 いれかえるこ とによ り連作障害 を防止 しようとす る もので、 当然の ごと く栽培ベ ッ トが小 さ くなるため、樹 勢の強い培養苗等が必要 となって くる。 したがっ て、培養苗の能力 を うま く引 き出す栽培方法の 確率 は今後の研究 にゆず るに して も、培養苗の 可能性 とその重要性 は益 々高 まってい くもの と 思 われる。 g、lBA2mg、シュー クロース30g、寒 天10gを発根培 地 と して用い、ナスで茎 頂培養が行 えることを始めて明 らかに し た。 2.培養段階での増殖率は培並瓶内の幼笛 の 節間を用いたため、 1ケ月間で約3倍 で あった。 3.茎頂培養で得 られた培養苗 を栽培 に寄与 し、果実お よび草姿 な どの形質的な観察 寮か ら、培養苗 は実生 の接 ぎ木苗 よ り低 い位置で花芽 をつ け、また親の形質 を受 け継 ぐことが明 らか となった。 4.茎頂培養で得 られた培養苗 と、実際に利 用 されている実生の接 ぎ木苗の比較栽培 を調査 してみ る と、収穫率が培 養 苗 で1 本 あた り約15%増加す ることが認め られ た。 5.栽培終了後 、根 を観察 してみる と、実生 の接 ぎ本苗 よ り培養苗で毛根が著 しく発 生す ることがわかった。 尚、本研究 は、高知県高岡郡東津野村 におけ る平成7年度財団法人電源地域振興セ ンター専 門家派遣事業 、平成8年度財 団法人電源地域振 興 セ ンター専 門家派遣事業 、平成9年度財団法 人電源地域振興 セ ンター専 門家派遣事業で行 わ れた ものである。 文 献 1.岡田昌久、猪 野亜 矢 、松 本満夫 (1993). 米 ナス朽培養 による植物体誘導.高知 農技 七研報.2:41-442
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瀧川尚子 、三輪龍 士 、 武 田恭 明 、矢 滞進(1992).ナスの所培養 における旺 様体 形 成 率の向上.植物組織培養.9(3):184-189 3.山本雄慈、松本理 (1994).マ イク ログ ラ フテ ィングによるナス不定芽の再 カルス化 抑制 と成長促進.園学雑 .63(1):67・72 4.Huang S.C.and D.F.Millikan (1980).
In vitro Micrografting ofappleshoot
南方資源利用技術研究会誌
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