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TDCモデルをもちいた体育学習の試み : TDC-rを用いた実践

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Academic year: 2021

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TDCモデルをもちいた体育学習の試みーTDC-rを用いた実践一 村瀬浩二(和歌山大学教育学部教授) 和歌山大学附属小学校教諭 則藤一起、矢出大輔、南拓哉 【目的】 ゴール型ゲームにおいて共通の課題とされ ていることは、スペースに走り込む、スペー スに走り込む仲間にパスを出すといった戦術 的な気づきである。これは、ボール操作能力 と並んでゴール型ゲームにおける技能として 発揮されるものである。一方で、この気づき はゲームに対する思考カ・判断力として捉え ることが可能である。しかし、この戦術的気 づきを思考カ・判断力として評価する方法は 確立されていないと言って良い。そこで、村 瀬 ら (2020) は TDC (Tactical Decision-making Competence: Richardson

&

Henninger, 2008)を元にした、レベル1 4 の4枚の図版(図1)による戦術的気づきを促す TDC-rを開発した。レベル 1は自身の技能実 施のみに注目している。レベル2はレベル1 +味方が見える段階である。レベル3はレベ ル2に加え相手も見える段階で、レベル4で はレベル3の要素に加え予測の要素が入る。 これを授業最後の振り返り時に、「ボールを持 っているときどんな風に見える?」という発 間と合わせて提示する。これによって、児童 らは自身のプレーについてメタ認知すること ができる。本研究はこのTDC-rを用い、小学 校のゴール型ゲームで実践することによって その効果を検証することを目的とする。 レベル1因字,.,., .' 払;!L.-

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【方法】 2019年6月と 11月 12月に和歌山大学附属 小学校 5年生のハンドボール単元にて実践さ れた。本研究は 11月 12月のハンドボール 単元 1クラス 26名を分析対象とした。 担当教員が毎授業の振り返り時に、 4枚の 図版を見せながら「ボールを持っているとき にどんな風に見える?」と発問し、そのレベ ルを学習カード上に記入を求めた。発問は第 2時 7時まで行われた。 ベ 3

レベル4

【結果】 子ども達の回答したレベルの平均を因 2に 示す。第2時のレベルは2.4(SD=l.01)であ っ た が 、 単 元 の 進 行 と と も に 第 3時 2.4 (SD=l.O)、第4時2.8 (SD=0.91)、第 5時 4

り合

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昇〗

Q 叶 杜

凡以

3.5 3 2.5 2 1.5 2時 3時 4時 5時 6時 7時 図1 TDC-rの図版 図 2 レベルの平均値の変化

(2)

-92-3.2 (SD=0.89)、第 6時3.3 (SD=l.07) 、 第7時3.2 (SD=l.3) と第7時を除き徐々に 上昇した。 一方で、自身のレベルを前時より低く認識 した回答は、 17事例で認められた。この事例 に関する学習カードのTDC-rに関わる記述を 下記に示す。 「全然連携をとれなかった。パスしたが、別 の向きを向いてパスできなかった。」 「自分ばかり(シュートを)打っていたので、み んなへのパスをできなかった。」 「パスが通らなくて相手ボールになってしま ったので、レベル 4を見えるようにして、パ スを通したい。」 「仲間が一切見えていないし、読めていなか った。」 「相手がレベル 4だったり、こけてもパスを 出していたのがすごい。」 また、レベルの認識に変化の無い事例や向 上した事例について、 TDC-rに関わる記述を 以下に示す。 「味方の動きを考えてパスを出せた。」 「後ろにいる仲間にパスができた。」 「レベル 2が見えて、仲間が相手の居ないと ころに行ってくれたのでパスしやすかった。」 「レベル 4がすごくうまくいったし、パスを つなげたシュートが4回もできて良かった。」 【考察】 上述の結果は、プレー中に児童のボール保 持時の判断能力が徐々に向上していったこと を示している。これは、プレー中のボール保 持時の視野が変化したことを示唆したと解釈 できる。さらに、この図版のレベル1 3は物 理的な視野を広げることを示しているが、レ ベル 4では数秒先の未来を予測することを求 めている。つまり、ピアジェのいう形式的操 作を求めており、視野の操作だけに留まって いない。この点において、 TDC-rは思考カ・ 判断力の向上を促すと言える。 また、本実戦で使用したTDC-rは視野を広 げることとさらに上位レベルにおいて予測す ることを提示しており、これを児章にとって はスモールステップによる目標設定として捉 えることができよう。 一方で、レベルの認識が下降した児童を確 認できた。これは、技能の低下を現している のではなく、むしろメタ認知能力の発達を示 すと考えられる。つまり、自身のできないこ とへ気づく能力を学んだと解釈できよう。レ ベルの認識が下がったことに対する記述を検 証すると、パスができなかったこと、レベル 4に関わって予測(読み)の必要性を現してい る。この認識の変化は、自身のメタ認知によ って次の学習の方向を導き出すことができ、 必要感をもった学びを生み出すことになる。 また、 TDC-rの認識に変化の無い場合や向 上した場合においても、 TDC-rに関わる記述 が多く見られた。このことは児章のメタ認知 において、 TDC-rが基準として働いたと捉え ることができる。 さらに、実践においてはこのレベルを用い た会話が児童間、教師—児童間において行われ ていた。これは、 TDC-rが共通理解として作 用したと解釈できよう。 【まとめ】 本研究はTDC-rを用いたゴール型ゲームの 実践を行った。その結果、①児章のプレー中 が向上したこと、②メタ認知の基準として作 用したこと、③児童間、教師—児童間の共通理 解として作用したこと、④目標設定として作 用したことが成果として挙げられる。 【文献】 村瀬浩ニ・古田祥子・井沼瑶(2020)ゴール型 ゲーム単元でのTDC改訂版(TDC-r)の実践と 効果の検証.和歌山大学教育学部紀要70,印刷 中

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