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葡萄葉と茶飲料を用いた羊毛の染色 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

Dyeing of Wool Fiber with the Lieves of Vine and Tea Drink

勢 田 二 郎

Jiro SETA

1.緒 言  天然材料を使用した染色については、古来より文化として伝えられ、特に我が国においては、藍染 や黒染めとして用いられているだけでなく、その色調は、合成染料によるものと比較して、多くの色 名が存在するように好まれている。最近、以下のような動機の下に、この天然染料による染色が注目 されてきた1)。すなわち、1)伝統的染色技法の再生および古代布の保存や解析、2)趣味の染色への 応用、3)環境のための合成染料との置換などの複合的要因によるものと、生活スタイルの自然志向 などが挙げられる。さらに、このような動機の下に、資源の再利用の観点から、お茶やコーヒー残渣 からの染色物がもつ染色堅牢度や脱臭性などが検討された2、3)。しかしながら、その染色系の複雑さ のため、報告の多くは適用材料と繊維の組み合わせおよび色相や堅牢度および性能の結果である。  前報4)で述べたように、葡萄の葉による染色は良く染まり実用的であるという結果が得られたが、 その詳細はほとんど知られていない。山梨県においては、葡萄栽培が盛んであり、葡萄の果実は生食 やワインへの加工用として多量に消費されているが、葡萄の葉は果実の摘み取り後不要となる。この 廃棄される葉を染色材料として使用する際の基礎的検討を行うこととする。  植物による染色は、藍などのように、植物が有する特定色素をもつものを除き、一般には、植物に 含まれるタンニン成分と媒染剤(金属塩)によるものとされている。尚、タンニンという表現は、最 近あまり使われていないようであり、ポリフェノールやカテキン類と呼ばれている。茶成分としての カテキン類はタンニンの一種である。従来、植物タンニンによる染色についての学術的検討は、単離 されているカテキン類(カテキン、エピカテキン、・・・・)を用いた染色に関する報告は見当たらない。 本研究では、山梨県で栽培されているワイン醸造用葡萄を使用し、その葉による染色とカテキン類を 含む市販茶飲料による染色とを比較することにより、工業染色に応用する場合における基礎的知見を 得ることを目的とする。 2.実 験  2.1 試料  試料として使用した葡萄は、山梨大学工学部付属ワイン科学研究センター育種試験地において、 2006年10月12日採取した甲州種の葡萄葉である。採取後の処理は前報4)と同様である。染色に用いた 繊維も前報に用いたウール布である。物理化学的染色実験においては、吸着の駆動力を一定に保つた めに無限染浴条件を維持する必要があり、一般的には浴比を1:500以上にするため多量の試薬が必要と なる。比較に用いるカテキン類の試薬は高価であり、安易に用いることができないので、カテキン類 として市販茶飲料(花王製 ヘルシア緑茶)を用いた。これは、茶カテキン540mg/350mlの記載があり、 高濃度茶カテキン含有とされている。本報告では、第1段として市販茶飲料を用いた結果を報告する。

(2)

表1 葡萄果実染色布の耐光染色堅牢度 染色材料 媒染金属 洗濯 JIS L0844 摩擦 JIS L0849 耐光 JIS L0843 変退色 汚染 綿 絹 乾 湿 甲州葡萄葉 Al 1 5 4-5 4-5 3-4 1以下 Fe 4-5 5 4-5 3 2 3-4 Cu 4-5 4-5 4-5 3 3 3-4 Ca 1 3-4 4 4-5 3-4 3 茶飲料 Al 2 5 4-5 4-5 3-4 1以下 Fe 4-5 5 4-5 3 2 3-4 Cu 4-5 5 4-5 4 3 3 Ca 2 5 4-5 4-5 3-3 1以下    2.2 染色

 染色は、前報と同様に、SHAKING WATER BATH(SWB-25, アズワン(株))により95rpm 攪拌下、 抽出原液に酢酸4% owfを加え、浴比1:100、80 ℃ 60minの条件でおこなった。終了後は布を取り出し、 水洗後媒染をおこなった。媒染も、前報と同様に、4種の金属塩(CaCl2・2H2O, FeCl2・4H2O,(CH3COO)2 Cu・H2OおよびK2Al2(SO4)4・24H2O)2 %水溶液を用い、浴比1:100、80 ℃ 60minの条件でおこない、

水道水洗浄後風乾した。  茶飲料による染色は、市販品をそのまま用い、酢酸4% owfを追加して同様の条件下においておこ なった。 3.結 果  3.1 染色色相と堅牢度  図1は、甲州葡萄葉抽出物と市販茶飲料による4種の金属塩後媒染染色物の結果である。図は、前報 甲州 茶飲料 Al Fe Cu Ca 図1 甲州葡萄葉抽出物と茶飲料による染色結果

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と同様に、CanoScan 9950Fスキャナーを用いて染色布を300dpiにて取り込んだものである。葡萄葉 と市販飲料による毛の染色結果は、若干の色相差は見られるが、大略同等と判断された。前述のよう に、染色機構の解析には多量の染料が必要とされるが、天然原料である葉抽出物の所有量が限定され、 安定的に使用されにくいことから、研究が市販茶飲料による代替できることを期待した。  先ず、数種の染色堅牢度試験を実施した。前報と同様に、日光堅牢度は山梨県富士工業技術センター に依頼したが、洗濯および摩擦試験は自前でおこなった。結果を表1に示した。葡萄葉抽出物と茶飲 料の結果はほぼ同等であり、洗濯、摩擦および耐光堅牢度において大きな差異は認められなかった。 洗濯において、AlおよびCa媒染において変退色が大きく、実用的ではない結果が得られた。この結果 は、従前の報告とは異なるので、媒染に用いた試薬および媒染方法について再検討が必要であると考 える。FeおよびCu媒染については、実用的であると考えている。これらの摩擦堅牢度については、若 干低い結果であったが、染色後のソーピングにより改善するであろう。    3.2 茶飲料による染色  染色の機構を調べる目的で、吸着等温線を求めるために、平衡実験をおこなった。葡萄葉抽出物は 少量のため、茶飲料をそのまま用い、浴比1:500で時間依存性を求めた。前報と同様に、染色物の濃度は、 反射率から計算したQtotal値6)を用いた。結果を図2に、染色物の画像を図3に示した。図から、120 時間程度の染色時間を使えば、80℃において平衡吸着が得られるように見える。吸着等温線から吸着 機構を類推するためには、茶飲料の濃度を変えて無限浴条件下に120時間程度の染色実験が必要であ る。しかしながら、一般的に茶飲料は時間とともに酸化などによる変質が進むとされている。例えば、 緑茶が時間とともに赤く変化することはよく知られている5)。 Qtotal 70 60 50 40 30 20 10 0 0 5 0 100 150 200 25 0 時間(h) 図2 茶飲料による銅媒染染色時間依存性 1 2 4 8 24 72 120 168 216h 図3 茶飲料による銅媒染染色時間依存性

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 そこで、茶飲料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による成分の分析をおこなった。茶飲料 の分析については、最近の健康志向を反映し、確率されてきており、HPLC装置の製造会社の報告(ジー エルサイエンス社、Technical Note No.23)を参考とし、山梨県食品衛生協会に依頼した。図4に結果 を示した。 尚、測定条件は、前処理としてクロマトデイスク(0.45μm)ろ過後、カラム(Inertsil ODS-3,5μm,150 ×4.6mm)、温度(40℃)、検出器(280 nm)、注入量(5μl)、溶離液(純水)である。図4は、上か ら茶飲料5時間加熱処理と茶飲料そのまま、および染色残浴を比較した。ピークを同定するために、5 種のカテキン類標準試薬(三井農林社製)をそのまま用いた。図中の略号は、それぞれ、EGC(エ ピガロカテキン)、C(カテキン)、EC(エピカテキン)、EGCg(エピガロカテキンガレート)お よびECg(エピカテキンガレート)を示す。今回の茶飲料には、同定に用いた5種のカテキン類が 存在することがわかる。24分付近に見られるピークは同定していない。5時間の加熱で成分変化が著 EGC EC C 混合標準液 100ppm EGCg ECg 茶飲料 染色残浴 10倍希釈 茶飲料 10倍希釈 茶飲料 80 ℃5h加熱 10倍希釈 0 8 16 24 32 40 48 56 時間(分) 図4 茶飲料による染色に関わるHPLC結果

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しく、上述のような平衡実験が、茶飲料そのままの使用では困難であることがわかる。  一方、染色残浴との比較により、染色にはEGC,EC,EGCg、ECgおよび24分付近に見ら れるピークが関与していることが推察される。Cについては明確ではない。茶飲料の加熱による変化 は、2時間までは変化していない結果が得られているが、染色中の系の変化は複雑であると考えられ、 これ以上の議論は現時点では無理であろう。    3.3 甲州葉による染色  前説と同様に、葡萄葉抽出物による染色についてもHPLC測定をおこなった。結果を図5に示した。 天然植物から抽出した成分は複雑であり、単純に同定できないが、EGCgやECgは見いだせず、 長時間の加熱により成分が変化することがわかる。染色残浴との比較おいても、染色に関与する成分 が不明確であった。EGC付近のピークが加熱により大きく変化しているので、この成分が寄与して いるとも考えられるが、断定はできない。 0 8 16 24 32 40 48 56 時間(分) ECg EGC EC C EGCg 混合標準液 10 0ppm 甲州葉原液 染色残浴 10 倍希釈 甲州葉原液 10 倍希釈 甲州葉原液 80 ℃2h加熱 10 倍希釈 図5 甲州葉による染色に関わるHPLC結果

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 以上のように、葡萄葉と茶飲料による染色は、色相や堅牢度が同じでも、学術的に同等と認められ なかった。天然染料による染色については、学術的な取り扱いは容易ではなく、個別の試薬を用いた 研究を積み重ね、多成分系の染色機構を推察しなければならない。今後の更なる研究を続ける必要が ある。 謝辞 葡萄葉を提供いただいた山梨大学工学部付属ワイン科学研究センターならびに守屋正憲氏に深 く感謝申し上げる。また、実験の一部に協力いただいた当研究室卒業生 石田智子氏に感謝する。 文献 1)例えば、G.W.Taylor ; 2EV0ROG#OL.,16,53-61(1986) 2)H.T.Deo,B.K.Desai ; *3$#.,115,224-227(1999) 3)Y.H.Lee ; *!PPL0OLYM3CI. Vol.103,251-257(2007) 4)勢田二郎:山梨大学教育人間科学部紀要,10,57-62(2008) 5)例えば、田中隆;化学と生物,40,513-518(2002)

参照

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