海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察 : 埋め込み理論による新たな分析視角の提示
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(2) 96. (712). 横浜国際社会科学研究. 理論を軸とすることで,知識獲得においては,. 第10巻第6号(2006年2月). り一層高いとされる(Forsgren. 多様なアクターから構成される現地環境のネッ. 2000). しかし,こうした知識には「粘着性のレベル」. トワーク構造や個別アクターとの緊密な関係性. があり,あらゆる知識が移転困難であると位置. が海外子会社の能力構築にいかに影響を及ぼす. 付けるのは早計である(Foss. のかに焦点を当てた研究が一部で為されている 1999; Andersson (McEvily & Zaheer, et alリ. 2002).こうした点を解決することができるの. 2002).また,海外子会社が本国本社や他国拠 点に知識移転を行う上でも,単に移転すれば良. et al.,. &. Pedersen,. は「埋め込み理論」の有用性であろう. 浅川(1999)によれば,海外子会社の知識が 他拠点で採用される段階では,. 「知識の性質」. いという訳ではなく各拠点との密接な取引関 係・人的交流を通じた信頼関係の構築のもとで. と「認知的障害」が密接な関係にあるとしてい. 移転が可能になると考えられているのである. 泉の所在の明確化,どのようなネットワーク構. (Ⅲansen,1999;. 造により獲得された知識であるのかを把握する. Nahapiet. & Gboshal,. 1998). 以上の既存研究から理解できることは,海外. る.つまり,採用段階には海外子会社の知識源. 子会社の知識獲得と知識移転を別個の現象とし. ことで,認知レベルが向上すると考えられる. 以上の事から,本稿の目的は,最近までの海. て捉える際には有意義な視点が提供されてきた. 外子会社の知識獲得・知識移転に関する既存研. といえる.しかし,同時に現実問題を考えれば. 究のレビューを通じて,獲得と移転を別々に取. 不明確な点が指摘できる.つまり,実際の移転. り上げてきたことから生じる問題点を指摘し,. プロセスを考えた場合には,両者を統合的に考. 両者を統合的に考察する際の分析視角を提示す. 察する必要が出てくるのではないだろうか.餐. ることにある.. 得と移転を個別問題として捉えるのではなく,. 本稿は以下の様な構成から成る.第Ⅱ,. 現地で知識がいかにして獲得され,その後,多. において,海外子会社の知識獲得・移転に関す. 国籍企業内部へ採用・普及していく実質的な知. るレビューを行tl,第Ⅳ節では,両者の最近の. 識の流動化プロセスを捉えることが求められて. 研究動向として「埋め込み理論」を活用して分. いる.. 析された研究を提示する.第Ⅴ節では,既存研. Ⅲ節. 統合的な視点で捉えるには,まず,海外子会. 究の問題点と新たな研究視点を示す.最後の第. 社の知識が一体どこから創出されてきたのかを. Ⅵ節では,結びとして今後の研究課題を提起す. 考察することが先決である.その上で,先述の. る.. 「埋め込み理論」は重要な位置を占めるだろう. 例えば,知識移転を主として分析した既存研究 では,海外子会社の知識属性を「暗黙知・形式. Ⅰ.知識獲得の既存研究レビュー 海外子会社の知識獲得に具体的に焦点を当て. 知」などの単純な二分法の分類軸で位置付けて. た研究はそれ程多くない.ここでは,幅広い視. きた(Kogut&Zander,. 1993).このため,少な くとも,本国本社や他国子会社で有用な知識が,. 野からレビューすることを試みる.まず,多国. 海外子会社内部だけで創出された知識であるの. る現地知識の範囲が拡充することを示す.更に,. か,あるいは,現地環境を構成するネットワー. 海外子会社の知識獲得を資源ベース論・企業間. クアクターとの関係からもたらされた知識であ. 関係論を踏まえて理論的に考察する.. 籍企業の国際化の発展段階に伴い,必要とされ. るのかを判別することができないのである.ま た,海外子会社を取り巻くネットワーク間で創 出された知識は他国で有用性が高いと認識され. 1.国際化の発展段階論 海外子会社が,始めに現地環境の知識を必要. ているにも関わらず移転の困難性は内部知識よ. とするのは新しい市場への参入時である.進出.
(3) 海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察(島谷). (713). 97. 表1技術志向要因における海外R&D拠点の類型化. 研究開発拠点の類型化 ホームベース補強型 研究所. 立地場所の選定 科学的に優位性の高い 場所から選定. ホームベース応用型 研究所. 生産.販売拠点と立地 が隣接している場所を 選定. Kuemmerle. スタートアップ時 国際的経験を有する現 地人研究者をリーダー. R&D拠点の影響最大時期 本国中央研究所と現地研究機 開などとの人材交流、現地科 学コミュニティヘの参加促進 本国基礎研究所との関係を 強化する. に選択 本国の経験のある製品 開発技術者をリーダー に選択. (1997)参照. 国の経営環境は,政治・経済・法律・社会・文. や能力の獲得を目的とした技術志向要因であ. 化・技術などのあらゆる側面で本国とは異質で. る.この傾向の研究も1990年代以降見られるよ. あるために,現地で事業展開を行うには,ロー. うになってきている(Kuemmerle,. カル知識の獲得が重要になってくる.. 志向要因に関しては,現地の研究機開などから. もっとも,海外子会社が現地の知識獲得に直 接携わるのは,. 「直接輸出期」からである1).自. 社販売拠点が設立され,売上拡大・顧客ニーズ. 1997).技術. 新しいタイプの技術的知識を吸収し全社的な技 術能力のレベルアップを志向することを目的と している.. Kuemmerle. (1997)は,欧米日の製. の把握を追求するために,広告や価格政策に関 する差別化マーケテイングを試みるようにな. 薬・エレクトロニクス関連の多国籍企業32社の. る.そのため,現地の販売手法や顧客ニーズに. ぞれをホームベース活用型研究所とホームベー. 関する知識が重要になる.. に際しては,現地の市場規模・市場ニーズ,サ. ス補強型研究所に分類した.ホームベース活用 型研究所は,本国本社の知識を現地の生産・販. プライヤーの集積度などの環境要因を把握し,. 売拠点に移転・展開するための市場志向の拠点. 自社内の生産技術や知識移転能力などを勘案し. である.逆に,ホームベース補強型研究所は,. て決定する必要がある(茂垣,2001).. 現地の研究機関等から知識を吸収し,グローバ. では,. 「生産拠点設立期」. 「R&D設立期」において獲得される知. 海外R&D拠点の156社を分析対象として,それ. ル・グループ内での競争力強化を目的としてい. 識はいかなるものであろうか.. R&Dの国際化要 因に関する実証研究は1970年代から始まり,一. る(表1参照). 更に,海外R&D拠点の役割類型化に関する既. つの決定要因は,市場志向を目的としたもので & ある(Mansfield et al., 1979). Mansfield Romeo (1979)は, 1960年から1980年までのア. 存研究において,. メリカ系多国籍企業55社のR&D支出に海外. (ITU). R&D比率が占める割合を従属変数として回帰分 析を実行した結果,海外売上高比率と正の相関. 企業技術拠点(CTU)と類型化し,これらの役. がある一方で,輸出比率とは逆相関にあること. ていく可能性に言及した唯一の研究として有名. を示した.つまり,市場志向要因では,売上高. である2).. 促進のために現地特有の晴好や他の機能活動と の連携に的確に適応すべく,現地の知識獲得が 重要になっているのである. もう一方の決定要因は,現地から新しい技術. Ronstadt. (1978)は,米系多. 国籍企業7社の海外R&D拠点55社を分析し,そ れらを①技術移転拠点(TTU). ②現地技術拠点. ③グローバル技術移転拠点(GTU). ④. 割が海外R&D拠点の学習の蓄積とともに進化し. 以上のレビューから,海外子会社は,進出以. 後の機能分野での進展に伴い,現地環境を通じ て知識を獲得できる範囲が拡充することを示し た.また,現地への環境適合だけでなく学習を.
(4) (714). 98. 横浜国際社会科学研究. 第10巻第6号(2006年2月). 通じて子会社が役割進化する既存研究もみられ. 実行するために活用される資源は稀少であると. た.. いえる.. ③模倣困難性:多国籍企業が,. 「いつ,どこ. 2.資源ベース論. の国のどの都市」に子会社を配置したかによっ. では,海外子会社の知識獲得は,多国籍企業 全体にとって如何なる意義が存在するのであろ. て獲得できる資源が左右される(「時間圧縮の. うか.ここでは,資源ベース論を活用して,そ. 異なるために,資源の蓄積に関しても独自の経. の有用性を提示する. 戦略論の初期研究として著名な研究にPorter. 験に基づいており簡単には模倣できないのであ. (1980)のポジショニング理論がある.資源ベ. 晴好性及び現地企業の技術レベルにより左右さ. ース論は,ポジショニング理論に対抗するもの として発展していった経緯がある.例えば,ポ. れ,問題解決のパターンが各国で異なるために. ジショニング理論では「同一の戦略集団」に属. (「経路依存性」).また,各国の知識が,本国本. し,. 不経済」).つまり,各社で国際化の発展段階が. る.例えば,製品開発プロセスは,各国独自の. 競合他社からは容易に認識できないのである. 「同一の戦略を採用」したとしても企業間. 社や他国子会社の既存知識と融合されることで. で生じるパフォーマンスの差異を説明できな. 新たな知識が創造されるため,競争優位の源泉. い.資源ベース論は,それを克服する視点とし. がどこにあるのか把握し難いのである(「因果. て各個別企業の「資源」に着目し,産業内での 競争力の差異源泉として位置付けている.. 唾昧性」).. (Barney,. は,多国籍企業を水平的なネットワークとして. 1991;. 2001; Wernerfelt,. ④組織化:上述の資源を十分に活用するに. 1984).近年で. 捉える思考が必要である.. は,資源の中でも「知識」に着目する研究の蓄 積が行われている(Grant, 1996). このように知識獲得を資源ベース論の文脈で. 1996;野中・竹内,. 捉えることにより,各国の異質で独自性のある. 3).. 知識の獲得が,グローバル競争優位の構築に有. また,資源ベース論の論点は,持続的な競争 優位を獲得するためには,企業はいかなる特性. 用であることが推察できる.. の資源を有する必要があるのかを明白にするこ とにある. Barney (1991)は,持続的な競争優. 3.組織間関係論. 位源泉としての資源特性を①経済価値(Value) ②稀少性(rarity) ③模倣困難性(immitability) ,. ,. ,. しかし,資源ベース論では,海外子会社が独 自の能力構築をする際,現地環境を構成するア. ④組織(organization)に求めるVRIOフレーム. クターとの関係や学習を加味しておらず,あく. ワークを提起した4).このフレームワークを多 国籍企業に援用すると,. までも内部ネットワークを偏重した上での活用. ①経済価値:資源の価値が低下しないために. であったと考えられる.. 各国から新たな資源を獲得し全社的な資源ベー. つまり,海外子会社の知識獲得を捉えるには, 資源ベース論を活用した全社的な競争優位との. スを補強し得る論理が成立する.また,たとえ. 関連に言及するだけでは不十分である.実際,. 一国で当該資源の価値が低下したとしても,他 国に当該資源を移転させることで価値の持続性. 海外子会社が直接属している現地環境や現地市. は保たれる.. う視点が欠けていたのである.ここでは,組織. ②稀少性:例えば,多数の競合企業が国際戦 略を実行しても,相互に直接競合しない事業機 会が必ず存在する.この場合,その国際戦略を. 場に関する知識をいかに獲得しているのかとい 間関係論を踏まえて現地知識を獲得する論理を 示したい.. 現地環境からの知識獲得に関する先駆的研究.
(5) 海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察(島谷) として,. Johanson. &. Vahlne. (1977)のUppsala. モデルが挙げられる.多国籍企業は自らの海外 事業の経験を通じて,次第に知識を獲得し,以. (715). 99. ているために,ネットワークレベルの学習は考 慮にいれていない点が組織間関係論の欠点であ. 後の現地市場への投資行動にも影響を与えると. る(近能,2002).つまり,海外子会社の知識獲 得においても,より広範囲なアクターとの関係. している.しかし,彼らの研究の限界は,現地. を考慮に入れた硯点が必要となってくる.. アクターからの学習や買収などに関しては一切 触れておらず,知識獲得の主体も個人であるこ. Ⅱ.知識移転の既存研究レビュー. とから,海外子会社の存在を無視した個人学習. 当初,国際的な知識移転の研究は,海外直接. の域から脱していない. そのため,知識獲得の際に重視されるものと. 投資理論をベースとして多国籍企業の生成要因. して,海外子会社と現地アクターとの組織間関. 的知識が,ゼロもしくはゼロに近いコストで海. 係が重要となってくる.アライアンス論におい. 外に移転できると考えられ,これこそが多国籍. ては,なぜアライアンスが形成されるのかとい. 企業の優位性であると主張されたのである. ったアライアンスの形成目的に関して,資源依 存理論・取引コスト理論・学習理論にその理由. (Caves, 1982).. と共に展開された.本国本社の有する企業特殊. を求めてきた(山倉,2001).例えば,学習理論. Szulanski (1996)などが, しかし,その後, 「情報の粘着性」概念を導入したことから,多. におけるアライアンスの目的は,他企業の有す. 国籍企業内部においても知識移転は容易ではな. る知識や能力を学習し,既存知識との結合によ. く,多くの障害が存在することが明らかになっ. り新しい知識や能力を創造することにある.多. た.例えば,. 国籍企業の文脈に適用させた国際戦略提携にお. 性(Yon. いても,資源依存理論や学習理論をそのまま適. 性(Cohen. 「暗黙知・形式知」などの知識属. Hippel,. 1994). 用できるが,それに加えて,提携相手と組むこ. ,吸収能力などの組織属 1990)により移転の成 否が左右されるのである.ここでは,主として. とにより相手側の市場や事業セグメントに参入. 海外子会社から本国本社・他国子会社への移転. できる意図も含んだ独特な目的もある (Comes-Casseres, 1996).パートナーの選択に. を念頭に置いてレビューする5).. おいても,資源の相互補完性と共に組織間の共 通基盤も重視される.経営理念や組織文化など. 1.海外直接投資理論による初期研究 国際的な知識移転のベースは,海外直接投資. の共通性が無ければ,知識創造は進展しないの. 理論から形成されてきた.そもそも,企業は. である.パートナーの範囲に関しても,同業者. 「なぜ多国籍化するのか」という疑問に対して,. だけでなく主要顧客やサプライヤーなどと協調. Kogut. 関係を形成することで知識の幅が拡大する.. 全性によるものではなく,国境を越えて知識を. 更に,アライアンスの実行段階では,相互信. and. &Levinthal,. Zander. (1993)は「市場取引の不完. 移転することにより企業の優位性を発揮する」. 頼の醸成,吸収能力や共同学習の方法,トヅプ. と主張している.. マネジメントのコミットメント,相対的吸収能 &Lubatkin, 力が重要になってくる(Lane. (1976)による, この主張の背景には, Hymer 国内企業が海外進出する際,現地企業や進出済. 1998).また,アウトソーシングにおいても, 単に業務を委託するだけではなく学習視点も注. みの外国企業に対して一般的に不利であるため. 目されていることから,現地サプライヤーとの. している必要があると言及したことと一貫して. 学習も重要である(山倉,2001).. いる.例えば,独自の製造ノウハウなどを移転 することで多国籍化の形成要因を求めたのであ. しかしながら,組織間学習を2社間関係で捉え. に,何らかの優位性(企業特殊的優位性)を有.
(6) 100. (716). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第6号(2006年2月). る.. その後,. Caves. (1982)などは,. 「知識の公共. 3.. 「情報の粘着性」の概念 先述のTeece. 財的」な性格に着目し,知識やノウハウなどの. (1977). Kogut. ,. 良 Zander. 無形資産が外部市場取引よりも多国籍企業内部. (1993)による実証研究では,知識の「暗黙性. での取引を通じた方が効果的・効率的に移転で. の度合い」により移転が左右されると主張して. きるとした「内部化理論」を提唱した.つまり, 差別化された生産能力などを海外子会社に移転. いた.最近では,このような移転困難な側面に 焦点を当てて多種多様な研究がなされている.. する際のコストは,ゼロまたはわずかなコスト. 例えば,. で移転可能であるとしている.. により提唱された「情報の粘着性」概念,ある. Yon. Hippel. (1994). ,. Szulanski. (1996). いは,椙山(2001a)では「知識の粘着性」と 2.技術移転を通じたコストの発生 知識の公共財的性格に基づく知識移転では,. して提唱している7). von Hippel (1994)では,粘着性の程度に影. ゼロもしくはわずかなコストで移転が可能であ. 響を与える要因として①移転する知識量の大. るとした.では実防,あらゆる知識において,. 小, ②知識そのものの性質,. コストが発生することなく移転が容易になされ. する組織の問題に分類している8).. Teece. (1996)では,多国籍企業内部での. szulanski. るのであろうか.. (1977)による技術移転の実証研究で. ③知識移転に従事. ベストプラクティスの移転に阻害要因があるこ. は,技術はゼロコストで移転されるものではな. とを実証している.彼は,グローバル企業8社. く,知識の性質の相違により「移転コスト」と. が有する38プラクティスの122移転のケースに. 「移転モード」が決定されると主張している6).. おいて質問票調査を実施し,知識移転の阻害要. つまり,移転コストに関する決定要因は, 術移転を実際に行った経験(経験の蓄積量). ①技. ②技術の年数(技術の利用に要した時間), 同様の技術を利用している企業数(技術特性に. ,. ③. 因として,. ①知識要因:因果関係の不明確さ. (causal ambiguity). ,. ,未証明度(unproveness) ②供給者要因:モチベーションの欠如,信頼性. ついての共有知識),であると示した.. の欠如,③受容者要因:モチベーションの欠如, ④コンテク 吸収能力の欠如,保持能力の欠如,. つまり,当該企業が「技術移転を行った経験」 を蓄積しており,更に「技術の年数」も相当程. スト要因:関係の悪さ(arduous などを列挙した.. relationship). 度経過していれば,その知識はコード化され易. 彼の研究は,吸収能力などの組織属性を含め. くなり,移転コストは大幅に下げられ,技術移. 包括的に分析している点が斬新である.とくに. 転が促進されるということである.また,移転. 興味深い分析結果は,従来まで主要な阻害要因. コストは,知識の受容側にとっても移転回数・ 経験が蓄積される(吸収能力)につれて減少す. として認知されてきた供給者・受容者のモチベ. る.このことは,本国本社の移転元による経験 の蓄積だけではなく,海外子会社の移転先での 吸収能力蓄積といった相互の能力向上において 成し遂げられるのである. 以上の技術移転に関する既存研究から,知識 は,ゼロまたは低コストで移転可能な訳ではな. ーションが当該研究では必ずしも有意な結果で はなかった所である.しかし,問題のあるプラ クティスなどをサンプルに含めていない点で限 界がある. Teece. (1977)による技術移転に焦点を当て. た研究だけでなく,. Szulanski. (1996)のプラク. く多様な要因を考慮に入れて実行する必要があ. ティス移転に関する研究を通じても,多国籍企 業内部での知識移転は困難であると理解でき. ると見てとれる.. る.このことから,最近の国際的な知識移転の.
(7) 海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察(島谷). (clark. 研究においても,知識属性を分析視角に取り入 れた研究(Kogut Kogut,. &. Zander,. 1993;. Zander. &. (717). 101. Fujimoto, 1991) ,知識が1つ欠落し ただけでも,上手く機能しないのである. and. 「観察可能性」は,例えば,競合企業が当該. 1995). ,あるいは組織属性の中でも吸収 能力などの学習要因を取り入れた研究(Gupta. 製品の製造ノウハウをコピーすることが可能な. &. 度合いである.例えば,競合企業が製品をリバ. Govindarajan, 2000;. Tsai,. 2001)が目立ってき. ている.. ースエンジニアリングして,製品機能を理解し, 設計図を引いてしまえば,その製品を製造する. 4.海外子会社による知識移転 「情報(知識)の粘着性」に関する視点は,. ことが可能になる程度のことである.しかし, 実際,全く同種の製品を製造する場合は,部品. 海外子会社から本国本社・他国子会社への知識. 等を的確に製造する際の品質管理や工程管理の. 2000)を アウトフロー(Gupta&Govindarajan, 分析する際にも有用な視点である9).このこと. ノウハウが必要であり,実質的な粘着性は高い. から,海外子会社からの知識移転に関して, 「知識属性」と「組織属性」の粘着性の枠組み. 中国で製造されているが,二輪車自体のサイズ. を活用して更に詳細に議論していく.. 本物の日本車と同様に機能しないことから,日. といえる.近年,日本製を莫似た模倣二輪車が や個々の部品の形態はコピー可能であっても, 本における製造ノウハウは粘着性が高いともい. [知識属性の粘着性]. える(島谷,2004;島谷・池田,2005)10). 知識属性の粘着性を議論する際,最も有名な 分類軸が「形式知」と「暗黙知」である(Yon. [組織属性の粘着性]. Hippel,. 海外子会社の知識移転は,知識属性だけでは. 1994).形式知は,知識がコード化され た数字,言葉,設計図,マニュアルなどに落と. なく,知識移転の主体である供給側と受容側の. し込まれているために移転は暗黙知よりも容易. 特性,両者間のコミュニケーション,受容側の. である.一方,知識の暗黙性が高まれば,移転. 吸収能力などの組織属性によっても影響を受け. は困難になる.例えば,暗黙知は,人間の経験. る.. 両者の特性として共通するものは,. の蓄積により,その度合いを高めている.熟練 や工作機械などを巧みに活用するノウハウは暗. 「モチベ. 黙的な要素が高く,移転のコストも高くなる.. ーション」である.供給側が,受容側に知識を 移転する意欲がなければ,あるいは,受容側が. そこで,暗黙知をコード化・伝達可能な形式知. NIH症候群のように知識を受け入れる意欲がな. に変換すれば,移転は容易になるが,そのおか. ければ,知識移転は成立しないのである. げで本来備わっている知識の特質を失ってしま. (szulansiki,1996;. う.. とくに,受容側にとっての移転成功の可否は, 「新し 「吸収能力」に左右される.吸収能力は,. また,知識移転は,暗黙性に加えて,. 「複雑. 性」と「観察可能性」によっても影響を受ける (Rogers,. 1980;. Winter,. 1987;. Zander. &. Kogut,. Gupta. &. Govindarajan, 2000).. い情報を評価し,自己のものとして吸収し,商 業化へ向けて適応する・能力」として定義してい. 1995). 「知識の複雑性」とは,知識が,多種多 様な異質なコンビテンシーを結合した性質を有. 識が新しいものであるかを受容側が評価する必. していることである.例えば,製品開発に関す. 要性があり,関連知識の過去の吸収経験によっ. る知識は,新技術に関する知識,顧客の晴好に 関する知識,サプライヤーの技術や製造方法に. て蓄積された能力が移転にも影響してくるので. 関する知識を統合して問題解決するために. ることから(Cohen&Levinthal,. 1990). ,当該知. ある.. 両者の「コミュニケーション頻度」も移転に.
(8) 102. (718). 横浜国際社会科学研究. は相当影響している.そもそも,普段からコミ ュニケーションを行っていない拠点同士が,ス ポット的に知識を移転するとは考えにくい.継. 第10巻第6号(2006年2月). 1.埋め込み理論の原点 「埋め込み理論」とは,そもそも社会学の分. 続的なコミュニケーションあるいは有用な知識. Granovetter 野から提起された概念である. (1985)は, 「個人や企業などのアクターの経済. の探索活動を行っていなければ知識移転そのも. 的行為に対する社会的影響を過小評価するのは. のが形成されないのである.. 誤りである」と主張し,. Ghoshalら(1994). 「全てのアクターの経. は,日本の松下電器産業の子会社とオランダの. 済的行為は社会的コンテクストという構造の中. フィリップスの海外子会社への調査を行い,子 会社の意思決定の自律性と子会社のトップマネ. に埋め込まれており,社会的影響を考慮に入れ. ジメントの非公式ネットワーキング活動が子会. 論じている11).つまり,全てのアクターの行為. 社一本社間,子会社間のコミュニケーション頻. は,具体的で継続的な社会関係システムを無視. 度に与える影響を検証した.. することはできないのである.このように,. て経済的行為を分析することが重要である」と. Granove仕er. Ⅳ.知識獲得と移転の最近の研究動向 一理め込み理論による分析-. (1985)は,後述する埋め込みの類. 型化の中でも構造的埋め込みに焦点を当てた一 人である.. (1985)を受けて,. Granovetter. Zukin. ここでは,近年,とくに注目されている埋め 込み理論を活用して,海外子会社の知識獲得と. piMaggio. 移転を分析している最近の既存研究をレビュー. 造的」 「認知的」. していく.. 含む幅広い概念に類型化可能であると提起して. 埋め込み理論を軸とすることで,知識獲得に. (1990)は,埋め込みの概念を「構 「文化的」. いる12).その中でも,近年,. 「政治的」な要因を 「構造的埋め込み」. おいては,多様なアクターから構成される現地. は,戦略論分野で特に注目されている理論であ. 環境のネットワーク構造や個別アクターとの緊. り,アクターを取り巻くネットワーク構造によ. 密な関係性が海外子会社の能力構築にいかに影. り,当該アクターの行動,資源,能力構築プロ. 響を及ぼしているのかを理解できる(McEvily &. Zaheer,. 1999; Andersson. et al., 2002).また,. 海外子会社が本国本社や他国拠点に知識移転を. セスあるいはパフォーマンスに影響を及ぼす概 1998; McEvilly & Zaheer, 念である(Gulati,. 行う上でも,単に移転すれば良いという訳では. 1999;近能,2002).つまり,ネットワークを構 成するアクター間で何らかの直接的・間接的な. なく各拠点と密接な取引関係・人的交流を通じ. 社会関係があることを「紐帯」と呼ぶが,こう. た信頼関係の構築のもとで移転が可能になるの. した企業や個人などのアクター間の紐帯が企業. である(Ⅲansen,. 1999;. Nahapiet. &. Ghosbal,. 1998).埋め込み理論による分析は,一国ベー. の能力構築や業績に影響を及ぼすのである. また,このようにアクターがネットワーク構. スでは,数多くの研究実績のある分野だが,港 外子会社の知識獲得・知識移転を通じた分析視. 造に埋め込まれている状況を分析する際に,社. 角での研究は,まだ緒に着いたばかりである.. サブ概念の次元で考察することが可能である.. まず始めに,埋め込み理論の原点を示し,漢. 一つは,分析レベルを二者間関係(ダイアド) に設定し,直接的な結合における紐帯の内容や. に,埋め込み理論を多国籍企業へ適用させる意 義,最後に,知識獲得と移転を分析した既存研 究をレビューする.. &. 会的ネットワーク理論では,分析レベルを更に. 質を議論する場合であり,. 「関係的埋め込み」. の次元と呼ぶ.もう-方は,分析レベルをネッ トワークに設定し,アクターがネットワークの. 全体構造の中でどのようなポジションに位置付.
(9) (719). 海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察(島谷). 103. けられているのかに着目し,ネットワークを構. 「内部ネットワーク」と各国子会社の「外部ネ. 成する多くの紐帯が全体としてどのような構造 特性を有しているのかを問題とすることを「構. ットワーク」を全て含めて考えれば相当巨大な 「多国籍企業ネットワーク」として,地球上に. 造的埋め込み」として分渠している(Gulati,. 現存する最大のネットワークとして位置付けら. 1998; Nabapiet. & Gboshal,. れても過言ではない(図1参照)15).. 1998;近能, 2002). また,ネットワーク構造を構成する尺度とし. て,. 「密度」rr接続性」. 「階層性」などの多種多. 様な視角があるが,その中でも最も重要なもの. (Hedlund, 1986),トランスナショナルモデル (Bartlettand Ghosbal, 1989) ,とくに外部ネッ トワークの存在に焦点を当てたGhoshal&. は「密度」であると考えられている(安田, 2001). 先述のZukin. &. DiMaggio. (1990)の埋め込み. Bartlett. (1990)の組織間関係モデルが有名で. ある.. 理論の類型化の四つの視点は,あらゆる側面で 海外子会社にも適用可能である.しかし,. このように多国籍企業をネットワークとして 捉えるモデルは,へテラルキーモデル. 「構. 造的埋め込み」の視点を重視した既存研究では,. これらモデルの発展経緯を示すと,当初,港 外子会社は,本国本社の一元的な命令により同. 「企業が埋め込まれているネットワーク構造が,. 一の役割を付与されて活動を行うユニットであ. 当該企業の行動,資源や能力の構築プロセス,. った.このことから,多国籍企業の組織構造面 においても常に本国本社が上位に位置する「ヒ. パフォーマンスへの影響についての探求」にあ るとしている(Gulati, のことから,. 1998;近能, 2002)13).こ. 「構造的埋め込み理論」は,海外. エラルキーモデル(階層性)」が一般的であっ た.しかし,次第に,各国子会社が直面する現. 子会社の知識獲得及び知識移転を分析する際に. 地環境の重要性や現地子会社の能力に適合した. 重要な視点を提供してくれると考えられる.以. 戦略的役割を付与されるようになり,多国籍企. 下の3., 4.では,. 業をより水平的なネットワークとして捉えなが. 「構造的埋め込み理論」の視点. (「関係的埋め込み」. 「構造的埋め込み」)から獲. 得と移転の分析を行っている既存研究を概観し. ら,ネットワーク全体が発展していくモデルを 提示したのである.. ていぐ4).. つまり,本社を中心としたヒエラルキー的な 支配構造から,相互依存性と学習を中心とした. 2.埋め込みの多国籍企業への適用意義 埋め込み理論を多国籍企業へ適用する際,多. 水平的なネットワーク関係をいかにマネジメン. 国籍企業をネットワークとして捉える国際経営. かしながら,こうした考えが広まりつつある中. モデルの考え方が重要になってくる.多国籍企 業が,一国レベルの既存研究と異なる特質はネ. で,ほとんどの研究の焦点は内部ネットワーク. ットワークがグローバル・レベルで広範になっ. そのため,自律的な海外子会社が属する現地. ていることである.. 例えば,本国本社一海外子会社,海外子会社 一他国子会社等の「ダイアド関係」,それらを 全て包含した「内部ネットワーク関係」がある. 同時に,各国子会社はそれぞれ異質なコンテク. トするのかに視点が移動してきたのである.し. に置かれていた.. 環境を取り摂った研究は,それ程多くはなかっ たのである.古くは,国内経営と国際経営を比 較する上で外部環境の相違を取り入れた議論 (Fareweatber, 1969) ,近年では,海外子会社の 役割類型化の研究において,海外子会社の現地. ストの中で外部アクターであるサプライヤー, 顧客,競合企業,政府機関等との「外部ネット. 環境の重要性を指摘する研究(Bartlett. ワーク関係」を有している.このことから,. るが,内部ネットワークに焦点を当てた研究と. Ghosbal,. 1989; Birkinsaw. & Hood,. 1998)等があ. &.
(10) 104. (720). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第6号(2006年2月). 図1多国籍企業ネットワーク. 比べてそれ程多くの研究蓄積はなかったのであ. 交流が促進されていないネットワーク構造に原. る.また,いずれの研究においても外部環境の. 因があるとしている(松崎,2001).このことか. 位置付けが不明確である.例えば,. ら,埋め込み理論を多国籍企業へ適用させる意. Ghosbal. (1989)では,. Bartlett&. 「現地環境の戦略的重要. 義は極めて高いと思われる.. 性」と「現地子会社の能力・リソース」として 役割を類型化しているが,. 「現地環境の重要性」. が,マーケットであるのか,あるいは,ネット. 3.埋め込み理論と知識獲得 近年では,多国籍企業に埋め込み理論を適用. ワークそれ自体にあるのか等は言及されていな. した研究が見られるようになってきた.. かったのである.. その先駆的研究として挙げられるのは, Gboshal. の外部ネットワークの相違を認識してはいる. 性により,国際的な資源配置を変化させる必要. が,ヒエラルキー的にコントロールを行う視点. 性を述べている.つまり,. でのみ現地への埋め込みを捉えていたのである (Andersson & Forsgren, 1996).言い換えるな. サプライヤー,顧客,政府機関,競合企業など. and. Bartlett. (1990)である.彼らは,. つまり,多国籍企業の古典的な研究モデルで は,各国に海外子会社を配置する中で,各国別. 各国子会社の外部ネットワークの埋め込みの属 「各国子会社と現地. らば,第Ⅴ節で言及するように,海外子会社と. のステークホルダーとの交換関係の大きさ(内 部密度)」と「本国と現地ネットワークなどの. 外部アクターとの緊密な関係性から創出される. 国境を越えた密度(セット間密度)」の差異に. 知識が,本国本社や他国拠点にとっても有用で. より多国籍企業の資源配置や求心性,パワーに. あるという視点での研究はほとんどなかったの. 影響を与えることを明らかにしている.この時,. である.同時に,内部ネットワークにおいても. 「内部密度」が高い場所には現地に資源を配置. グローバルイノベーションを推進する上で組織. する必要性が高くなる.例えば,外部アクター. 間学習が望まれているが,日本企業を中心とし. との濃密なリンケージによって現地適合を図る. て進展していないのは,密接な取引関係や人的. 場合などが挙げられる.逆に,. 「セット間密度」.
(11) 海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察(島谷). が高くなれば,現地への資源配置の必要性は低 くなる.他国子会社へのアクセスにより容易に. (721). 105. & DiMaggio, の各レベル(Zukin 1990)での分 析は,現在でもほとんどなされていない.. 同種の技術を入手可能になるからである. イノベーションの研究分野においても埋め込 み理論が重視されるようになってきた.例えば,. 4.埋め込み理論と知識移転 また,前述した知識移転の成否を決定付ける. 企業の技術開発に必要な知識が,地域の社会的. モチベーションや吸収能力,コミュニケーショ. ネットワークにおける非公式で互恵的な情報交. ン頻度などの組織的属性に加えて,埋め込み理. 換により発展することが明らかにされている.. 論を活用した知識移転への影響に関する研究も. 例えば,シリコンバレーやルート128のような. 増加している16).例えば,各拠点と密接な取引. 地域では別々の企業のエンジニアがインフォー. 関係・人的交流を通じた信頼関係の構築のもと. Hippel, マルに情報交換を行っている(Yon 1994). Frost また, (2001)は,海外子会社がイノ. で移転が促進されるのである.それにより,受. 1988; Saxenian,. け手側の認知度向上(NIH症候群のレベル低下) による知識共有が図られると考えられる.. ベーションのために利用する知識の地理的源泉. Tsai. に注目して,どのような条件のもとで子会社が 本国知識や現地知識を利用するのかを特許の引. Ghosbal. 用データを用いて探索している.彼は,子会社 のイノベーションの特性,子会社自体の特性 (特に技術的規模),現地国でのメンバーシップ が知識の源泉となる国を定める要因となること を確認している.このことから,子会社のイノ ベーションは地理的源泉により決して一様では なく,イノベーションごとに異なっており,そ れに応じて子会社あるいは本国本社で行うかを 決定している. また,最近になり,. 「関係的埋め込み」に焦. 点を当てた研究も増加している.. Anderssonら. &. Ghoshal. (1998)は,. Nahapiet. (1998)をベースとして,社会資本の3. つの次元(構造的・関係的・認知的)が多国籍 企業内部の事業間での経営資源の交換を通じて 各事業部における価値創造に正の効果があるこ とを検証した. また, Hansen. (1999; 2002)は,. 1999年のジ. ャーナルにおいて,グローバル電子機器企業1 社の41事業部, 120製品開発プロジェクトを調 査し,海外子会社での知識の探索と多国籍企業 の組織ユニット間での知識共有に関して「弱い 紐帯」が与える役割を検証した. 「プロジェク トの完了時間」を従属変数,. 「弱い紐帯」 (他事. 業部との平均的な接触頻度・近接性)を独立変. (2002)は,子会社の外部ネットワークにおけ. 数に設定し,更に「知識の複雑性」を媒介変数. る関係的埋め込み(技術的埋め込み・事業埋め. として用いた.その結果,現地で新しい暗黙的. 込み)が「子会社の市場パフォーマンス」と. な知識を探索する場合は,当該事業部と他国拠. 「多国籍企業におけるケイパビリティ開発への. 点との関係は「弱い紐帯」が望ましく,逆に,. 貢献度」にどのような影響を及ぼすかを回帰分. 知識移転時には,. 析で検証した.. が明らかとなった.一方で,形式知の場合は,. 「技術的埋め込み」は,業漬と. 「強い紐帯」が望ましいこと. 貢献度の両者で有意差が検出された.一方で. 「弱い紐帯」でも移転に問題はなく,プロジェ. 「事業埋め込み」は,両者に直接的な影響を与. クト完了時間の短縮化も達成されていた.. えないが,技術埋め込みへの影響を通じて間接. つまり,. 「弱い紐帯」のメリットは,他国拠. 的に影響を与えることが分かった.. 点との関係の維持コストを低下できる分,新し. このように,埋め込み理論の海外子会社への 適用は,主に構造的埋め込み理論の観点から分. い知識の探索に有用である(Granove仕re,. 析がなされ,それ以外の「認知」. の社会的関係を構築することが重要であると理. 「政治」 「文化」. &. 1985).. このことから,知識属性の相違に基づいて内部.
(12) (722). 106. 横浜国際社会科学研究. 第10巻第6号(2006年2月). 解できる.. の流動化プロセスを捉えることが求められてい. 2002年のジャーナルでは, 1999年と同種のデ ータを利用し, 「知識の関連性」と「水平的ネ. る.. ットワーク」が知識共有にどのような影響を与 えるのかを検証した.知識の関連性を「当該事. 統合的な視点で捉えるには,第一に,海外子 会社の知識が一体どこから創出されてきたのか を考察することが先決である.その上で,先述. ドバイスを希求する関係」,水平的ネットワー. の「埋め込み理論」は重要な位置を占めるだろ う.例えば,知識移転を主として分析した既存. クを「ネットワークにおける最短到達距離」で. 研究では,海外子会社の知識属性を「暗黙知・. 操作化し, 1999年のジャーナルで用いたプロジ 「プロジェクトで ェクトの完了時間に加えて,. 形式知」などの単純な二分法の分類軸で位置付. 獲得した知識量」を従属変数に設定して測定す. 本国本社や他国子会社にとって有用な知識源泉. ると,水平的ネットワークが両変数に有意差を. が一体どこから創出されたものであるのかを判. もたらした.. 別できないのである.これらの分類は,いずれ. 業部が他の事業部に対してプロジェクトヘのア. (2001)も石油化学企業1社の24事業部. Tsai. と食品加工企業1社の36事業部に質問表調査を 実施し,. 「ネットワーク中心性」と「吸収能力」. けてきた(Kogut&Zander,. 1993).そのため,. も「知識そのものの性質」として個人的ノウハ ウや社内他部門との内部連携から創出される内 部の知識を考慮した特質として認識されてきた. がイノベーション(達成率)とパフォーマンス. (vonHippel, 1994;野中・竹内,. (収益率)へ与える影響を検証している.つま. 少なくとも,本国本社や他国子会社で有用な知. り,ネットワーク中心性と吸収能力が高いほど,. 識が,海外子会社内部だけで創出された知識で. 達成率と収益率に有意な影響を与えることが明. あるのか,あるいは,現地環境を構成するネッ. らかとなった.. トワークアクターとの関係からもたらされた知 識であるのかを分別して議論する必要がある.. 以上,海外子会社の知識獲得と移転に埋め込. 1996).このため,. み理論が影響を与えている既存研究を示した.. もっとも,海外子会社の役割は,現地環境と. また,これらの研究以外にも,外部アクターへ. 多国籍企業内部の橋渡しを行うという重要な役. の埋め込み性を通じたコンピテンス開発の問題. 割を有している(Ghoshal&. とコントロールの問題に焦点を当てた研究もあ. えば,ある海外子会社が直接属している現地環. る(Andersson. &. Forsgren,1996).. Bartle仕,. 1990).例. 境は,本国本社や他国子会社との直接的な関係 はない.そのため,本国本社や他国子会社は当. v.既存研究の問題点と新たな視点 第Ⅰ節から第Ⅳ節までの既存研究は,海外子. 該子会社の現地環境に直接アクセスすることは 困難であり,当該子会社の役割は多国籍企業内. 会社の知識獲得と知識移転を別個の現象として. 部と現地環境の「構造的な穴」-を埋める役割を. 捉える際には有意義な視点が提供されたといえ. 有する.このことから,海外子会社が現地から. る.. 獲得できる知識を多国籍企業内部に移転するこ. しかし,同時に現実問題を考えれば不明確な 点が指摘できる.つまり,実際の移転プロセス. とは自然な流れとはいえ,海外子会社内部で創 出される知識よりも本国本社が容易にアクセス. を考えた場合には,両者を統合的に考察する必. できない分,より貴重な知識である可能性があ. 要が出てくるのではないだろうか.獲得と移転. る.. を個別問題として捉えるのではなく,現地で知 識がいかにして獲得され,その後,多国籍企業. つまり,グローバルに知識が分散する今日に おいて,現地ネットワークから海外子会社が獲. 内部へ採用・普及・定着していく実質的な知識. 得可能な知識が現地での環境適合に限定して利.
(13) 海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察(島谷) 表2. 外部知識の源泉 クラスター.ベース. の知識 ネットワーク.ベース. の知識 Foss. &. (723). 107. 海外子会社の外部知識の源泉に関する類型化. 獲得の特徴 国家特殊的優位性ベースによるナ. 本国本社.他国子会社ヘの有用性 ネットワーク構成要素の全てが相互作用する. ショナルイノベ-ションシステム. ことで優位性を発揮,最も「場」に粘着的で あり,本社.他国子会社ヘの移転は困難 特定アクターとの実質的な業務活動に閲す. ヘのポジショニング. 単に「揚」に埋め込まれるだけで なく,顧客やサプライヤーとの長 期的な相互作用を重視する. る知の交換から,本社.他国子会社の同種 の事業部門やイノベーションヘ影響する. Pedersen(2002)を基に作成. 用されるだけではなく,本国本社や他国子会社. 向きな点も指摘できる.この事から,現地環境. にも活用できる可能性が高いということであ. を埋め込み理論で捉えることで,多くのアクタ. る.こうした視点は,獲得と移転を分離して考 察していては不明確であり,あくまでも獲得と. ーの存在が認識されるだけでなく,能力構築の 源泉も多様化すると考えられた.. 移転を連携して考える分析枠組みにより明らか. 以上のことから,次に,外部知識の源泉を. になるのである.. 「粘着性レベル」に応じて分類することを試み. 第二に,前述の通り,海外子会社の知識源泉. る.第一に,現地環境との相互作用を重視した. を「内部と外部」に分類する必要性を示唆し,. 既存研究としてポーターのクラスター理論が有. ネットワークアクターとの関係からもたらされ. 名である(Porter,. る知識は相対的に本国本社・他国子会社にとっ. ネットワークの構成要素(国のダイヤモンド). て有用であることを示した.しかし,有用であ. として,①要素条件(インプット・コスト及び. るのにもかかわらず,コンテクスト特殊性の問. 品質), ②需要条件(国の顧客水準),. 題から移転の困難性は内部知識より一層高いと. 略および競合の状況(国内での競争の性質と激. されている(Forsgren. しさ) ④関連・支援産業(国内における供給・ 支援産業の規模と水準)を列挙し,これら要素. 2000). しかしながら,果たして,あらゆる外部知識 etal.,. 1990).彼の研究の主張は,. ③企業戦. が同レベルで粘着性が高く,移転は困難なので. が相互関連することでダイナミック且つ刺激的. あろうか.従来,外部からもたらされる知識と. な事業環境を創出することを強調している.以. 言えば一様に移転は困難であると想定されてき. 上のことから,国家特殊的優位性をベースとし. たが,海外子会社と現地の外部アクターとの関. たナショナルイノベーションシステムに海外子. 係性を詳細に捉えていくことで,全ての知識が. 会社がポジショニングすることより知識が獲得. 一律で移転困難ではない理由が得られるのでは. 可能であるとした.本稿では,これを「クラス. ないだろうか.. ターベースの知識」 と位置付ける.. 例えば,第Ⅱ節の知識獲得のレビューにおい て,資源ベース論の視点では,海外子会社の能. (Foss. &. Pedersen,. 2002). 相対的に外部ネットワークを軽視している側面. 一方, Ford (1990)は,単に現地ネットワー クに埋め込まれるだけではなく,主に顧客やサ プライヤーといった特定の外部アクターとの長. がある.また,組織間関係論では,現地環境の. 期的な相互作用から得られる知識の獲得が海外. 硯点を考慮に入れているが,その関係性を2者. 子会社にとって有用であると主張している.本. 間関係に限定しているため,多くのアクターが. 稿では,特定アクターとの長期的関係から得ら. 存在する海外子会社の現地環境を捉えるには不. れる知識を「ネットワークベースの知識」. 力構築は内部で為されるという考え方であり,.
(14) 108. 横浜国際社会科学研究. (724). (Foss&Pedersen,. 2002)として定義する.. 第10巻第6号(2006年2月). 識の移転は抑制されないのではないだろうか17).. ここで,外部知識の源泉に関する両者を比較 することで,あらゆる外部知識が移転困難であ. この事から, 「クラスターベースの知識」と比 較した場合,移転可能性は高まるだろうと考え. るのかに関して新たな示唆が導きだせるだろう (表2参照). 「クラスターベースの知識」は,国. られる.. 家特殊的優位性に基づくポジショニングにより. 地ネットワークへの埋め込みを活用して,. 海外子会社は知識を獲得できるとしている.一. 識源泉の所在の明確化」. 方で, 「ネットワークベースの知識」は,埋め. 性」に焦点を当てる事で,知識獲得と知識移転. 込まれるだけでなく,特定アクターとの長期的. を統合的に捉える枠組みを示した.また,浅川. な相互作用から得られる知識を重硯している.. (1999)によれば,実際,海外子会社の知識が. 両者は互いに補完的な立場をとっているが,. 他拠点で採用される段階では,. 「長期的な相互作用」を通じたネットワークベ. と「認知的障害」が密接な関係にあるとしてい. 以上のことから,ここでは,海外子会社の現 「知. 「外部知識の移転可能. 「知識の性質」. る.つまり,採用段階には海外子会社の知識源. ース知識の方が,海外子会社の実質的なケイパ ビリティの高度化を図りやすく(Forsgrenet. 泉の所在の明確化,どのようなネットワーク構. al., 2000),本国本社・他国子会社にとっても有. 造により獲得された知識であるのかを把握する. 益的な知識源泉となるだろう.. ことで,他国拠点の認知レベルも向上すると考. このことから,知識移転を考える場合にも, 「クラスターベースの知識」は,高等教育を受. えられる.. けた従業員,現地の研究機関,技術専門の大学. の知識」を本国本社や他国子会社に普及させる. からの知識ベースから得られる知識を主眼に置. には,内部拠点といかなる関係を構築していく. いており,海外子会社や研究所単位での分析で は有用な点もある.しかし,ネットワークの構. べきなのであろうか.当然の事ではあるが,単. 成要素の全てが相互作用することでその優位性. 人的交流を通じて信頼関係を醸成させることで. が形成されるという点で,最も場所に粘着的で あり,本国本社・他国子会社への移転は困難に. 受け手側のNIH症候群などが緩和されるだろう (1999) (Ghoshaletal., 1994).同様に, Hansen. なるのではないだろうか.. も知識獲得時には内部関係とは「弱い紐帯」を. 逆に, 「ネットワークベースの知識」は,実 質的な業務活動での知識獲得を志向している. つまり,製品開発プロセスt生産技術面の能力 構築において海外子会社は,現地の顧客やサプ ライヤーのどのようなネットワーク構造に埋め 込まれ,知識の交換がいかになされているのか. では,次の段階として「ネットワークベース. に移転すれば良いという訳ではなく取引関係・. 保持し,移転時には「強い紐帯」が必要である としている.また,. Subramaniamら(2001)ち 暗黙知のレベルによりコミュニケーションレベ ルも変更すべきであると主張していることか ら 内部知識以上の関係性の構築が必要であろ fワ. などのよりミクロな視点で言及されている.こ の点で「ネットワークベースの知識」は,本国本 社や他国子会社の同種の事業部門への実質的な. Ⅵ.結. び. 本稿では,最近までの海外子会社の知識獲得. 影響も考えられる.つまり,同種の製品や関連. と知識移転に関する既存研究のレビューを通じ. 製品の開発・生産を行っている拠点にとっては,. て,獲得と移転を別々に扱っていたことから生. 新たなイノベーションや工程改善につながるだ ろう.あるいは,新設子会社への能力移転,子. じる問題点を指摘した上で,海外子会社の現地 ネットワークへの埋め込みを利用し, 「知識源. 会社間の能力格差の是正につながり,決して知. 泉の所在の明確化」. 「外部知識の移転可能性」.
(15) (725). 海外子会社の知識獲得と移転に関する一考察(島谷). に焦点を当てる事で,知識獲得と移転を統合的. に分析する研究として「センター・オブ・エク. に捉える分析視角を示した.. セレンス(COE)」による一連の研究があり, 移転に際してのジレンマを指摘している. 今後は,本稿で提示した海外子会社の知識獲. 109. 得と移転を統合的な分析枠組みで捉えていくこ. (Forsgren. et al., 2000;. とが,グローバル競争優位構築への理解につな. Bjorkman. etal.,. がると考えられる.また,統合的な分析枠組み. ンマを克服するメカニズムの研究は,知識属性. のもとで,今後為されるべき研究課題として以. 2001b)や情報 の粘着性を克服する研究(椙山, 処理メカニズムの充実度を取り上げた研究. 下3点を示しておきたい. 第一に,海外子会社は,進出当初から進出以. (Subramaniam. Foss. &. Pedersen,. 2002;. 2004)18).しかしながら,ジレ. 2001)など,まだ緒につ. etal.,. 後にかけて他企業との新たな協力関係の形成・. いたばかりである.本稿で提示した,知識獲得. M&Aの実施から,獲得できる外部の知識源泉 も異質なものに変化するだろう.ところが,港. と移転を埋め込み理論で統合的に捉える新たな 視点も,ジレンマの克服への示唆としては有用. 外子会社の属する現地環境のネットワーク構造. な分析視点であろう.しかし,単に現地ネット. が変容したことからもたらされる能力構築プロ セス視点での分析はあまりみられない.それに. ワークや内部ネットワークに海外子会社が埋め 込まれれば良いという訳ではなく,吸収能力な. 伴い,当該子会社の知識供給者としての重要度. どの学習要因も同時に加味することで,多国籍. や内部ネットワーク自体の関係性の変化も生じ. 企業の知識流動化プロセスである採用一普及一. てくる可能性があるが,こうした動態的な視点. 定着の分析が精練化されるであろう.. での研究を行う必要があるだろう.. 謝. 第二に, Ghosbal&Bartle仕(1990)も指摘し た通り,海外子会社が属する現地環境のネット ワークの特質(内部密度)は各国別に異なって おり,それぞれが多種多様なネットワークを形 成していると考えられる.それに応じて,海外. 注. 異なるだろう.例えば,浅川(2002)では日本 主として外部研究機関や大学への埋め込みを測 定していた.また, Scbmid &Schurig (2003) の研究では,欧州にある海外子会社2110社のケ イパビリティ開発に関して概ね顧客と競合企業 への埋め込みが重要であると分析した.このよ うに,機能別・各国別で重視するアクターが異 なることも考慮に入れて分析する必要がある. 同時に,各国別でアクターの重要度が異なるこ とから,本国本社や他国拠点に対する知識供給 者としての海外子会社の重要度も一律ではない と考えられる.両者を取り入れた多面的な分析 が必要である. 第三に,近年では,知識の獲得と移転を同時. ′. 本論文作成にあたり,横浜国立大学経営学会「合 崎研究助成金」の財政支援を受けた.また,指導教 官の茂垣広志先生並びにレフェリーの先生から有益 なコメントを頂いた.ここに深く感謝の意を申し上 げたい.. 子会社ごとにネットワーク構造への埋め込みも 企業の在欧米R&D拠点を対象としているので,. 辞. 「間接輸出期」がある. 1) 「直接輸出期」の前に, この時期は,貿易の知識や現地環境に関して未 知の部分が多く商社などの中間業者や現地販売 ノウハウを保持する現地業者を用いることが多 い(茂垣,2001). (1997)の類型化では,学習によ 2) Kuemmerle る役割進化ではなく環境や能力の適合を重視し ていた.. 3)資源ベース論で取り扱う「資源」とは,経営 者・従業員,資本設備,金融資産等の有形資産, 技術・経営ノウハウなどの無形資産に分架可能 である.. (1991) pp.105-114 4) Barney 5)しかし,第Ⅲ節の1, 2は,主に本国本社から 海外子会社への知識移転の特徴を有している. (1993)でも,技術がコード 6) Kogut&Zander 化可能性,伝授可能性,複雑性の点で困難であ る揚・合,完全所有子会社への移転が望ましいと.
(16) 横浜国際社会科学研究. (726). 110. している.. (1994) Szulanski (1996) ,椙山 (2001a)の粘着性に対する呼称は「情報」 「知 識」としているが,特に区別して言及している Kogut&Zander (1992) 訳ではない.しかし, では,情報を「意味そのもの」,ノウハウを 「物事を効率的に進めるための実践的なスキル や専門性」と分類している研究もある. (1994) 8)また,椙山(2001a)では, vonHippel の上記分類を活用して①②を「知識属性」の粘 着性, ③を「組織属性」の粘着性に再分類して 7). Yon. Hippel. ,. いる.. 9)多国籍企業内部の知識移転は,これまで移転 の方向性や移転先を不明確に取り扱ってきた が, Gupta & Govindarajan (2000)の研究は, 知識移転を本国本社から海外子会社へのインフ ローだけでなく,海外子会社から本国本社・他 国子会社へのアウトフローの両面から移転の方 向性を分析した先駆的研究である. 10)島谷(2004),島谷・池田(2005)では,日 本でインテグラル製品として位置付けられる二 輪車が中国市場では一般的にモジュール製品と して認識されている事から,日本企業が中国式 のビジネスモデルや地場サプライヤーの設計能 力を一部の部品で活用可能ではないかという問 題意識から,ヒアリング調査を行った結果,覗 状では日本企業のビジネスモデルや国際製品開 発分業に何ら影響を及ぼさない結果が得られ た.この事から,中国式の擬似的オープンモジ ュール(藤本,2002)は,日本本社・他国子会 社では有用ではなく,中国市場で限定して機能 する非常に粘着性の高い知識であるとも理解で きる.. ll)実際には,アクターの経済行為を分析する際, 社会的影響を軽視するのも過度に強調し過ぎる のも誤りであり,中間的な立場が相応しいと考 えられている. (1990) pp.15-20 12) Zukin&DiMaggio 「関係的埋め込み」 13)さらに,近能(2002)は, の特徴である「強い紐帯/弱い紐帯」, 「構造的 埋め込み」の「密なネットワーク/疎なネット ワーク」に関して,それぞれのメリット・デメ リットを指摘した上で,重複する特徴を統合し て,新しい視点として「ハイブリッド型のネッ トワーク」構造を提起している. 「埋め込み理論」という用 14)以下の文章では, 語を使う場合,主に「構造的埋め込み理論」 (「関係的埋め込み」 「構造的埋め込み」の両者 を含む)を指している. 15)表2では,左右の子会社のみ外部ネットワー クに属しているように記しているが,上下の子 会社も同様に外部ネットワークが存在してい る.. 第10巻第6号(2006年2月) 16)埋め込み理論が知識移転に与える影響を組織 的属性の一部として位置付ける事も可能である が,知識移転への影響を考察している最近の埋 め込み理論の議論を取り上げるために本節に位 置付けている. 17)知識移転の既存研究では,移転の方向性や移 転先も明確にしておらず,同種の製品を開発・ 生産している拠点への移転という点においても 「ネットワークベース知識」の視点は意義深い ものである. 18)獲得と移転のジレンマは,移転にかかるコス トは誰が負担するのかという問題,獲得した知 識を移転してしまえばパワーを喪失するという 問題,エージェンシー理論の問題,コンテクス ト特殊性の問題,移転に際しての資源と時間を 使うことの問題など多岐に渡って存在する. 参考文献 Andersson,. U. aIld Forsgren,. "Subsidiary. multinational Business Review Andersson,. strategic. subsidiary development. &. corporation," 5 (5),pp.487-508. U・・ Fors.gren,. "The. (1996). M.. embeddedness. M・. Impact. in the control International. Holm・. and. Of external. performance in the. and. (2002). U・. networks: competence ". corporation,. multinational. Strategic Managementjourna1 23, pp.979-996 浅川和宏(1999) 「世界標準プラクティスの社内 普及過程における障害要因:日欧製薬企業の場 合」 『医療と社会』9 (2),pp.19-53 浅川和宏(2002) 「グローバルR&D戦略とナレッ ジマネジメント」 『組織科学』36 (1),pp.51-67 Bartlett, C. A. and Ghoshal, S. (1989) Managing Across. Borders:. Harvard. The. Business. "Firm. ∫.(1991). Barney,. Transnational. School. Press,. Solution.. Boston,. MA.. resources. and sustained Journal competitive advantage, of Management 17 (1) ,pp.99-120 Sustaininig Barney, J. (2001) Gaining and ". Competitive. Advantage.. Birkinshaw,. ∫.and "Multinational. and. charter. Building Firms-SpeciflC. Corporation: Strategic. Prentice-Hall. (1998). subsidiary evolution: in foreign10Wned change. companies,"Academy 23 (4),pp. 773-795 Birkinshaw, J., N. Hood ". NY:. N. Hood.. ¶1e. Role. Management. of. Capability subsidiary. Management. Review. (1998) and S. Jonsson. Advantage in Multinational of Subsidiary Initiative," Journal 19 (3) pp.221,. 242. Bjokman, "Managing. I.,W.. B. Rasmussen knowledge. and transfer. Li Li. in MNCs:. (2004) the.
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