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呼吸困難を抱えるがん患者への看護支援に関する研究の動向と課題

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はじめに 現在,終末期医療においてホスピス・緩和ケア病棟 の必要性が認識され,施設数の増加やケアの質の向上 等が進んでいる。しかしながら,ホスピス・緩和ケア 病棟で最期を迎える患者は,悪性腫瘍で死亡する患者 の6%前後に過ぎないと言われており,終末期医療の 多くは一般病棟で行われているのが現状である。 一般病棟では,手術後や急変等の重症かつ緊急性の 高いケアが優先されてしまい,結果的に終末期患者の ベッドサイドにゆっくりいられる時間が限られてしま う現状がある。特に,身体的な要因に加え,不安など の精神的,スピリチュアルな要因も複雑に影響し合う 呼吸困難に対する緩和ケアは充分でない。 清水1)は,呼吸困難について「“呼吸をする”とい う生きるうえでの基本となる機能が妨げられると,強 い恐怖を感じ,自分の身体へのコントロール感自体が 揺らぎ,次の呼吸をすることすら自信が持てなくなる」 と,呼吸困難が身体的苦痛のみならず,精神的苦痛・ スピリチュアルペインにも重大な影響を与えることを 述べている。また,不安の増強はさらに呼吸困難感を 悪化させるという悪循環を引き起こすこととなる。さ らに,小原2)は「呼吸困難は,がん患者・家族の QOL を大きく阻害して,がん治療の選択や治療経過 に大きな影響を与える症状である」と述べている。 呼吸困難は,がん患者にとって重篤な症状であり, 患者の身体面のみならず,スピリチュアリティをも大 きく揺るがす要因となり,その緩和ケアはがん患者の 全人的医療を行う際の重要なポイントとなる。 呼吸困難に対する緩和ケアとしては,モルヒネや抗 不安薬,ステロイド等の薬物療法や酸素吸入などの有 効性が一般化しつつある。しかしながら,不安や恐怖 などの精神的苦痛,スピリチュアルペインが呼吸困難

呼吸困難を抱えるがん患者への看護支援に関する

研究の動向と課題

加 藤 咲 子

1)

京 田 亜由美

1)

中 澤 健 二

1)

瀬 山 留 加

2)

武 居 明 美

2)

神 田 清 子

2) (2009年9月30日受付,2009年12月21日受理) 要旨:終末期がん患者における呼吸困難の発生頻度は非常に高いと言われているが,科学的根 拠に基づいた看護介入が確立していないことが現状である。本研究の目的は,呼吸困難を抱え るがん患者への看護支援に関する2004年から2008年までの5年間に掲載された原著論文を分析 し,研究の動向と課題を明らかにすることである。「医学中央雑誌」を用いて「呼吸困難」「が ん」「看護」をキーワードに検索を行い,研究デザイン,方法,内容の分析を行った。その結 果,対象論文は23件であり,研究デザインは因子探索研究が60.9%,種類は質的研究が61.0% を占めていた。研究内容は,《呼吸困難緩和のための看護支援の検討》《呼吸困難を抱える患 者の在宅療養に対する看護支援の検討》《がん患者の抱える症状と呼吸困難との関連性の検 討》の3つのカテゴリが形成された。総じてがん患者の呼吸困難に関する看護研究の論文数は 少なく,特に呼吸困難を緩和する看護介入の有効性を検証する研究が少ない状況であった。今 後は,呼吸困難を緩和する看護介入方法を確立するためのエビデンスレベルの高い研究や,患 者の主観的な呼吸困難感を把握できる評価尺度開発のための研究の必要性が示唆された。 キーワード:呼吸困難,がん,看護 1)群馬大学大学院医学系研究科  2)群馬大学医学部保健学科

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の増悪に大きく影響していることを考えると,ベッド サイドでの患者に寄り添った看護介入が重要であると 推察される。 呼吸困難に効果があるとされている呼吸理学療法の 中に,胸郭や呼吸筋の緊張をほぐすマッサージや温罨 法等のリラクセーションがある。近年,終末期がん患 者に対するリラクセーション等に関する研究が数多く なされており,その効果も実証されてきている。しか し,呼吸困難緩和のための看護介入に関する研究は少 ない。がん患者の多くが入院している一般病棟の場に おいても実践可能な,広く一般化される介入方法の確 立が望まれる。 そこで本研究の目的は,呼吸困難を抱えるがん患者 への看護支援に関する論文を分析し,その動向と研究 課題を明確にすることである。 対象と方法 1.対象論文 呼吸困難を抱えるがん患者への看護支援に関連する 論文について,2004年から2008年までの5年間に掲載 された原著論文を対象とした。研究論文の検索は, Web版医学中央雑誌(Ver.4)を使用し,“呼吸困難” “がん”“看護”をキーワードに検索し,原則として内 容的に沿ったものを選択した。 2.分析方法 1)論文のレビューシート一覧を作成し,分析を行っ た。掲載年次順に,掲載誌,キーワード,目的,方 法,対象の背景・人数,結果,看護への示唆を項目 として挙げた。 2)研究内容に合わせ修正した分析フォームを用いて, 対象論文をデータ化した。分析フォームは,年次, 研究の種類,研究デザイン,データ収集方法,研究 対象,がんの種類,治療形態,研究内容を項目とし た。 3)研究内容の分析に関しては,各研究結果から明ら かになった内容を忠実に要約し,特徴を反映する意 味内容に従いコード化した。コードを研究内容の類 似性に従って分類し,サブカテゴリ化した。さらに サブカテゴリ化したものを,意味内容の類似性に従 い抽象化し,カテゴリ化した。 3.分析の信頼性の確保 分析の信頼性は,共同研究者間による検討を行い, その確保に努めた。研究者間で判断が困難である場合に は,繰り返し討議を行い,検討を重ねた上で決定した。 結果 1.対象論文数 日本において2004年から2008年までの5年間に掲載 された呼吸困難に関する論文は3,421件であり,さら にがん患者に関連した論文に絞ると906件となった。 しかし,それらは医学的視点から述べられているもの が多く,看護の論文に絞って検索した結果,23論文が 対象となった。対象論文数が少なかったため,本分野 の研究の動向を把握するために日本看護学会論文集に 掲載されている論文も原著論文として扱った。 2.呼吸困難感を抱えるがん患者に関する論文概要 表1に論文の概要を示した。年別では2008年が最も 多く9件であり39.1%を占めていた。種類別では質的 研究が61.0%で量的研究を上回った。研究デザイン別 では,因子探索研究が60.9%と多くを占めていた。 データの収集法別では,診療録・看護記録が最も多 く44.1%であった。呼吸困難の評価尺度としては, 『Borg Scale』『Hugh-Jones分類』が用いられていた。

研究対象者別では,患者を対象にした論文が67.7% と多くを占めていた。がんの種類別では肺がんが最も 多く,30%であった。 3.呼吸困難感を抱えるがん患者に関する論文の内容 分析(表23)∼25)) 22コードを意味内容の類似性に従いサブカテゴリ化 した結果,8サブカテゴリ,3カテゴリを形成した。 以下にカテゴリ毎に結果を述べる。なお,本文中では, カテゴリを《 》,サブカテゴリを〈 〉で示した。 1)呼吸困難緩和のための看護支援の検討 このカテゴリは〈呼吸困難を抱える患者に対する看 護支援の振り返りの分析〉〈呼吸困難を抱える患者に 対する看護介入の有効性の検討〉〈呼吸困難を抱える 患者に対する看護師の役割の検討〉〈呼吸困難感緩和 のための薬剤投与における看護師に必要な知識,技術 の検討〉〈化学療法の副作用としての呼吸困難の予防 のための看護支援〉の5サブカテゴリから形成された。 以下サブカテゴリ毎に結果を述べる。 〈呼吸困難を抱える患者に対する看護支援の振り返り の分析〉 このサブカテゴリは6コードから形成され,呼吸困 難を抱えるがん患者の事例を振り返ることで,看護支 援のあり方について考察している。 佐藤ら26)(前掲4))は,終末期がん患者が抱える

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呼吸困難に対しては薬剤投与だけでなく,開放感のあ る環境作りや,そばに寄り添うこと,排痰ケアなどの 看護介入の重要性を述べている。加えて,呼吸困難感 はトータルペインであることを認識し,家族をも巻き 込んだ全人的な視点で支援していくことの重要性も示 している。 また,磯部ら27)(前掲5))は,呼吸困難感によりパ ニックとなった患者の言葉や態度をそのまま受け止 め,落ち着いた態度で寄り添う援助が重要であること, また,日常生活動作により呼吸状態が悪化する場合で も,食事を摂取する,排泄行為の自立など「生への希 望」を示す患者には,その環境を整える援助が重要で あることを述べている。 坂本28)(前掲6))は,呼吸困難を軽減する看護介入 として排痰(体位ドレナージ,呼吸リハビリテーショ ン,吸引),酸素療法が効果的であったと述べている。 一方,小久保29)(前掲7))は患児を対象とした看護 支援について述べており,患児が呼吸困難を訴える時 には,呼吸状態の改善を図るだけでなく,必ずベッド サイドにいて患児のそばを極力離れないようにするこ と,呼吸困難を引き起こしている可能性のある胸痛な どの症状を早めに取り除くことの重要性を指摘してい る。 〈呼吸困難を抱える患者に対する看護介入の有効性の 検討〉 このサブカテゴリは3コードから形成され,呼吸困 難の緩和や予防のための看護介入の効果についての内 容を含んでいる。 伊原ら30)(前掲9))は,慢性呼吸不全患者を対象に 行われている呼吸リハビリテーションを,肺がん化学 療法中の患者に対して適応させた結果,患者自身が腹 表1 論文の概要

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式呼吸や口すぼめ呼吸などを習得することで,呼吸困 難感増強時の症状緩和や精神的安定につながったこと を報告している。また「呼吸リハビリ教室」を開催す ることの意義を「患者同士の交流から共感を得,孤独 感,不安感を軽減する」こととしており,集団療法の 効果についても言及している。 青島31)(前掲10))は,排便時に呼吸困難感が増強す る患者に対して「オリーブ油浣腸」を行うと,努責を 必要としないため有効であったと報告している。 和田ら32)(前掲11))は,終末期患者へリンパマッサ ージを行う際は,呼吸困難感を誘発しないように通常 の時間・手技回数を半減して行うことが望ましいと述 べている。 〈呼吸困難を抱える患者に対する看護師の役割の検討〉 このサブカテゴリは2コードから形成され,看護師 の役割を明確に提示している。 斉田33)(前掲12))は,肺がん終末期の呼吸困難時に おける看護者の役割として,『呼吸困難時の看護実践』 『患者の意思を尊重した援助』『苦痛を理解し,その場 を共有する』『症状が出る前から信頼関係を築く』『家 族へのケア』『看護者の教育』『セデーションに関する コーディネート』『チームとして患者・家族と向き合 う』の8項目を明らかにした。 〈呼吸困難感緩和のための薬剤投与における看護師に 必要な知識,技術の検討〉 このサブカテゴリは2コードから形成され,呼吸困 難感を効果的に緩和するためには薬剤の適正な使用が 重要であり,その知識を看護師が持つ必要性や,その ための研修会や症例検討会開催の重要性について述べ られている。 山戸ら34)(前掲14))は,終末期患者の呼吸困難を効 果的に緩和する薬剤投与の方法として,塩酸モルヒネ を比較的早期に少量から開始し,モルヒネの増量によ って緩和効果が見込めない場合にはセデーションの併 用を判断することが重要であるという知識を看護師が 持つことの必要性を述べている。 清水35)(前掲15))は,薬剤使用について本人や家族 と共に決定していくために,十分にコミュニケーショ ンをとることの重要性を示している。 〈化学療法の副作用としての呼吸困難の予防のための 看護支援〉 このサブカテゴリは次の1コードから形成されてい る。 柏原ら36)(前掲16))は,抗がん剤エルプラットの副 作用である咽頭のしびれによる飲水時の呼吸困難を予 防する方法として,常に温水の入った水筒を持ち歩き, 飲用することが効果的であったと述べている。 2)呼吸困難を抱える患者の在宅療養における看護支 援の検討 このカテゴリは〈在宅療養を困難にしている要因と しての呼吸困難〉〈呼吸困難を抱える終末期がん患者 の在宅療養を支える看護支援〉の2サブカテゴリから 形成された。 〈在宅療養を困難にしている要因としての呼吸困難〉 このサブカテゴリは4コードから形成され,終末期 がん患者の在宅療養を困難にしている要因として,呼 吸困難があることが論じられている。 山本ら37)(前掲17))は,退院後1週間以内に救急外 来を受診する患者にはがん患者が多いこと,受診時の 主訴として呼吸困難が多いこと,かつ帰宅可能な症例 が多かったことを報告し,在宅療養を開始するにあた り,呼吸困難に関する不安を軽減する支援を行う必要 性を示唆している。 また,新田ら38)(前掲18))は,可能な限り在宅で過 ごしたいと願っていた終末期がん患者の最終入院の理 由となる主訴の一つとして呼吸困難があったことを報 告している。 福井39)(前掲19))は,入院中の末期がん患者の在宅 療養移行実現のための条件として「患者に呼吸困難が ないこと」を挙げている。 〈呼吸困難を抱える終末期がん患者の在宅療養を支え る看護支援〉 このサブカテゴリは2コードから形成され,呼吸困 難を抱えるがん患者の在宅療養を支える看護援助につ いての内容から形成された。 角田ら41)(前掲21))は,在宅療養にあたり,呼吸苦 時の酸素投与や気道浄化のための吸引など,苦痛の軽 減のための看護技術を家族へ指導する重要性を述べて いる。 3)がん患者の抱える症状と呼吸困難との関連性の検 討 このカテゴリは〈がん患者の抱える他の症状の増悪 因子としての呼吸困難〉の1カテゴリから形成され た。

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〈がん患者の抱える他の症状の増悪因子としての呼吸 困難〉 このサブカテゴリは2コードから形成されている。 がん患者の抱える症状と呼吸困難との関連性について 検証されており,呼吸困難が他の症状の増悪因子とな りうることから,呼吸困難症状のコントロールの重要 性を指摘している。 細川ら42)(前掲23))は,呼吸困難がある患者は,そ うでない患者と比較して倦怠感が強いということを明 らかにしている。 小林ら43)(前掲25))は,呼吸困難増強により口腔内 乾燥が増強し,口腔粘膜症状が悪化することを明らか にし,呼吸状態が不良の場合は,口腔内の観察とケア を早期より行うことが重要であることを述べている。 4.カテゴリ間,サブカテゴリ間の研究論文数の割合 から見た量的比較(表3,表4) 3カテゴリの中で最も多かったのは《呼吸困難緩和 のための看護支援の検討》61.1%であり,《呼吸困難 を抱える患者の在宅療養における看護支援の検討》 26.1%,《がん患者の抱える症状と呼吸困難との関連 性の検討》13.0%が続いている。 サブカテゴリで上位を占めていたのは,〈呼吸困難 を抱える患者に対する看護支援の振り返りの分析〉 26.1%で最も多く,これらは全て事例研究であった。 続いて〈在宅療養を困難にしている要因としての呼吸 困難〉が17.4%であり,〈呼吸困難を抱える患者に対 する看護介入の有効性の検討〉,〈がん患者の抱える他 の症状の増悪因子としての呼吸困難〉が共に13.0%で あった。 考察 1.呼吸困難を抱えるがん患者への看護支援に関する 論文の概観 本研究では2004年以降に掲載された論文を対象とし ているが,それ以前の論文は症例検討がほとんどであ った。2004年から2008年の5年間の対象論文数は23文 献と少なく,本分野の研究が十分になされているとは 言い難い。がん患者が増加傾向にある近年において, がん患者の多くが有すると言われる呼吸困難に対し て,医学的視点からのみでなく看護学的視点からの介 入方法を確立していく必要性は高い。そのための看護 研究の蓄積が期待される。 研究の種類は質的研究61.0%,デザインでは因子探 索研究が60.9%と最も多かった。これは,対象となっ た研究に事例研究が多いことによるものと考えられ る。呼吸困難を緩和する看護支援方法を確立するため には,看護介入の効果の検証のために行う,臨床の場 での実験研究である因果仮説検証研究がより多くなさ れることが望まれる。 データ収集方法は診療録・看護記録からの情報収集 が最も多く(44.1%),呼吸困難を抱えるがん患者に 対する看護支援の内容を振り返り,分析する事例研究 が多かったことに起因すると考えられる。続いて,質 問紙(既存の尺度)が14.7%であったが,使用されて いる尺度『Hugh-Jones分類』は比較的ポピュラーで あり,呼吸困難による日常生活への影響を評価できる。 しかしながら,呼吸困難が比較的重度な場合や,薬剤 表3 カテゴリ間の研究論文数の割合 表4 サブカテゴリ間の研究論文数の割合

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の効果や看護介入の効果を評価する際の,短時間での 変化を把握する場合には,さらに具体的な評価尺度が 必要となる。よって,このような場合には『Borg Scale』のような細かいスケールで評価するものや, 『VAS(ビジュアルアナログスケール)』など患者の 主観的な評価が柔軟に表現されるものが適していると 考える。呼吸困難は「呼吸時の不快な感覚」と定義さ れる主観的な症状であり,客観的な基準がない。した がって,呼吸困難の正確な評価のためには,主観的な 症状が反映されるような尺度が用いられることが必須 である。効果的な呼吸困難緩和のための介入を行うた めには,そういった患者自身が体験している症状を評 価できる尺度が必要であり,その開発のための研究が 期待される。 研究対象者別では,患者を対象にした論文が67.7% と多くを占めており,患者自身が体験している呼吸困 難を対象とする研究分野であるため,当然の結果であ る。在宅療養に関する研究論文では患者と家族を対象 とした論文も散見した。近年では,がん患者の療養の 場も施設から在宅へシフトしている傾向にあり,在宅 療養の質の向上のためには家族を含めた研究も重要で ある。また,一般病棟における緩和ケアに関して,呼 吸困難緩和が十分に行えていないと感じている看護師 が多く存在しているとの報告や,患者の死後,家族が 疼痛緩和に比べて呼吸困難に対する緩和ケアが不充分 であったと評価しているとの報告もあり,これらの問 題解決のために看護師や家族を対象とした研究の必要 性も伺える。 がんの種類別では肺がんが最も多く,30%であり, 呼吸困難の出現頻度について,肺がん患者で70%,終 末期がん患者全体で50%と報告されている44)ことか らも,肺がん患者を対象とした研究の必要性は高い。 しかし,がんの種類を問わないあらゆるがん患者を対 象とした研究も重要であり,広く終末期がん患者に適 応できる看護介入方法の確立が望まれる。 2.研究内容 研究内容コードを意味内容の類似性に基づき分類し た結果,3つのカテゴリが形成された。 《呼吸困難緩和のための看護支援の検討》は,多く は,がん患者の抱える呼吸困難緩和のための看護支援 を振り返り,分析する研究から導き出されていた。具 体的な内容としては,呼吸リハビリテーションに関す る検証が行われており,呼吸機能や経皮的動脈血酸素 飽和度などの検査データの改善は認められなかった が,患者の呼吸困難感に対する自己統制力や,自己効 力感が向上したと報告している。肺がんの患者は慢性 呼吸不全の患者と違い,肺がんの病状進行により生理 的な検査データの改善は認められにくいと考えられ る。また全身状態の悪化により,呼吸リハビリテーシ ョンの継続が困難な場合も多い。このような理由によ り,終末期患者に呼吸リハビリテーションを適応させ ていくことは困難が予想されるが,がんサバイバーと 言われる,治療後に社会で生活しているがん患者への 適応は有効性が予想される。終末期の患者に対する介 入研究の困難性も予想されるため,がん患者の抱える 呼吸困難に対する呼吸リハビリテーションの有効性を 検証していくためには,後者を対象とした因果仮説検 証研究の蓄積が必要であると考える。 また,このカテゴリでは,呼吸困難を抱える患者へ の看護師の対応や役割を具体的に示している論文も見 られた。ここで示された,「側に寄り添う」こと,環 境整備,体位の工夫,口すぼめ呼吸,呼吸介助などが 看護支援に特徴的な介入であると考える。このような 患者の精神面やスピリチュアリティも支える支援を, 薬物療法,酸素投与などと併用することで,より効果 的に症状緩和が可能になると推察される。したがって, これらの看護介入方法の科学的な根拠を明らかにし, 広く一般化していくためには,エビデンスレベルの高 い研究が望まれる。 《呼吸困難を抱える患者の在宅療養に対する看護支 援の検討》では,在宅療養に関することが論じられて いた。終末期がん患者の在宅移行を困難にしている要 因として呼吸困難が挙げられ,また,在宅移行を可能 とする条件として「呼吸困難がないこと」が挙げられ ていた。このことから,患者の在宅療養を可能とする ために,また QOL の向上,維持のために,患者また は家族が,呼吸困難緩和の方法を自ら習得する重要性 が伺える。施設内の看護介入方法のみならず,がん患 者が自ら症状コントロールができる方法,自己効力感 を得られる方法を確立するための研究も急務であると 考える。 《がん患者の抱える症状と呼吸困難との関連性の検 討》では,複数の複雑な症状を有すると言われるがん 患者において,呼吸困難は他の症状をも誘発し,増悪 させるということが述べられていた。「息苦しい」「息 ができない」という症状は,死を直接的に予想させ患 者の不安を増強させる。そのような不安やスピリチュ アルペインは,複数の症状の中でも呼吸困難が最も辛 いと答えている患者がいると報告されているように, 患者の全身状態や QOL を著しく悪化させると考えら れる。呼吸困難を個別に考えるのではなく,他の症状

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との関連性を考え患者の全体像を捉えたうえでの,ト ータルペインとしての介入は重要であり,このような 研究のさらなる積み重ねが必要である。 呼吸困難緩和のための看護介入は,がん患者だけで はなく慢性呼吸器疾患においても重要であり,これま でに多くの研究がなされ介入方法も確立している。が ん患者に特化した看護支援を考える際には,呼吸困難 を抱えるがん患者がどのような体験をしているのか, どのような特殊性があるのかを明らかにする必要性が あるが,それらの研究は多くない。よって,介入方法 を確立するためにこのようながん患者の体験に関する 研究が行われることも望まれる。 今後は,がん患者が抱える呼吸困難の体験に関する 研究,呼吸困難緩和の看護介入を確立するための研究, 呼吸困難感を主観的に評価可能な尺度の開発のための 研究の必要性が示唆された。 3.研究の限界 本研究は,“呼吸困難”“がん”“看護”をキーワー ドに文献検索を行ったが,文献を選定するにあたって は筆者の主観的判断が含まれている。また,キーワー ドとして記していなくても論文中やその内容に,呼吸 困難を抱えるがん患者への看護支援について含んでい るものが他にあることは否めない。 引用文献 1)清水麻美子.認定看護師から学ぶケアの極意 緩和ケ ア④ 呼吸器症状のマネジメント 呼吸困難.月刊ナ ーシング 2008;28(4);102−105 2)小原弘之.特集 癌緩和医療のベストプラクティス 6.呼吸器症状の緩和.コンセンサス癌治療 2008; 7(3);146−149 3)鈴木亜里.終末期の40歳代舌癌患者と家族への看護― 気がかりとなっていた家族へグリーフケアを行って―. 全国自治体病院協議会雑誌 2009;48(3);31−32 4)佐藤愛子,白川律子.呼吸困難が強い患者に対する看 護師の関わり.三豊総合病院雑誌 2008;29;38−41 5)磯部佳代,中野りか,良村貞子.終末期の40歳代肺が ん患者の意思を尊重した援助―呼吸困難感を増悪させ ながらも自ら行動することを望んだ事例―.日本看護 学会論文集 成人看護Ⅱ 2007;38;17−19 6)坂本妙子.終末期患者の自己実現を支える援助をKOMI レーザーチャートで振り返って.奈良県立三室病院看 護学雑誌 2007;23;46−49 7)小久保知寿子.【子どもが「痛い」と言ったとき】 事 例にみる看護の実際 白血病患児から考える胸痛時の 看護.小児看護 2006;29(9);1258−1263 8)森山美千留,藤本ひとみ,秋山恵江,飯野英親.実践 REPORT 呼吸不全と戦争による深い罪悪感に悩みな がらターミナル期を迎えた末期がん患者の看護介入の 経験.看護実践の科学 2005;30(9);98−102 9)伊原美和子,橋場梢,長沢恵美子,佐々木まり子.肺 癌化学療法中の呼吸リハビリテーション.日本看護学 会論文集 老年看護 2003;34;3−5 10)青島めぐみ.肺がん終末期患者の排便コントロールに ついて.日本看護学会論文集 成人看護Ⅱ 2007; 38;115−117 11)和田真由美,岩切愛佳,濱田智美,本田和子.下肢リ ンパ浮腫のある子宮頸癌患者へのリンパマッサージの 効果.日本看護学会論文集 成人看護Ⅱ 2008;39; 335−337 12)斉田まち子.肺がん終末期の呼吸困難時における看護 者の役割.神奈川県立保健福祉大学実践教育センター 看護教育研究集録 2006;31;251−257 13)小畑絹代,岡本美代子,福田美貴.インフォームドコ ンセントにおける看護師の役割―バッドニュース告知 における関わり―.大分県立病院医学雑誌 2005; 34;112−114 14)山戸千枝,金子和恵.終末期患者の呼吸困難に対する 塩酸モルヒネ注射薬の使用実態―認定看護師としての 活動開始前後2年間の比較―.日本看護学会論文集 成 人看護Ⅱ 2008;39;200−201 15)清水奈緒美.苦痛症状が十分にコントロールできなか っ た 白 血 病 患 者 の ケ ア に 関 す る 検 討 . が ん 看 護 2008;13(7);742−745 16)柏原彩乃,中山敏子,池下真智子,村上京子.聞き取 り調査を通してエルプラットの神経症状について検討 する.尾道市立市民病院医学雑誌 2008;24(1);13− 17 17)山本亜希子,山田恭子,吉田眞利子,上北香好,芝田 里花.退院後1週間以内に救急外来を受診した患者の実 態 . 日 本 赤 十 字 社 和 歌 山 医 療 セ ン タ ー 医 学 雑 誌 2006;24;97−104 18)新田美智子,環さとみ,中園和子,中村直子,瀬口あ さみ,五所代志恵,工藤美鈴,千木良直子,長谷川千 賀子,徳永清子,今永博美,深野昌宏,岩本拓也.可 能な限り自宅での生活を希望し,外来緩和ケアを行っ た症例の経験から.癌と化学療法 2006;33(Suppl Ⅱ);364−365 19)福井小紀子.入院中の末期がん患者の在宅療養移行の 実現に関連する要因の検討―全国調査の実施―.病院 管理 2006;43(4);299−309 20)黒澤志保,二宮フミ子.胃癌術後の終末期にある患者 の看護 疼痛コントロールが困難だった一例を通して 考えたこと.松村総合病院医学雑誌 2006;23(1);7− 11 21)角田直枝,亀田静江,飯田智恵子.在宅ケアに向けた 患者・家族へのサポート ∼吸引・在宅酸素・輸液が 必要であった終末期食道がん患者の自宅退院に向けて ∼.がん看護 2005;10(3);244−246 22)三浦浅子,儀俄友子.終末期にある食道癌患者の外泊 支援へのアプローチ―最後の願いを叶える看護―.日

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本看護学会論文集 成人看護Ⅱ 2004;35;301−303 23)細川 舞,平井和恵,皆川理穂,高階淳子,武居明美, 神田清子.化学療法患者と放射線療法患者の倦怠感の 比較.群馬保健学紀要 2008;29;63−70 24)平井和恵,狩野太郎,高階淳子,細川 舞,石田和子, 神田清子.量的評価にみるがん患者の倦怠感の特徴― 臨床における倦怠感アセスメントへの示唆―.横浜看 護学雑誌 2008;1(1);18−25 25)小林典代,川田忍,中村恵子,腰塚香,金井和美.ス テロイド療法を受けている患者における口腔粘膜症状 の増悪因子.日本看護学会論文集 看護総合 2008; 39;194-196 44)松本俊子.呼吸困難のケア.Nursing Today 2008; 1;8

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The research trend of studies and problems on the nursing

assistance for the cancer patients having a difficulty in breathing

Sakiko KATO

1)

, Ayumi KYOTA

1)

, Kenji NAKAZAWA

1)

Ruka SEYAMA

2)

, Akemi TAKEI

2)

, Kiyoko KANDA

2)

Abstract:It has been reported that the incidence of dyspnea in the cancer patients at the terminal stage is very high, but the scientifically-grounded nursing intervention has not currently been established yet. This study aims to analyze original papers published for five years from 2004 to 2008 on the nursing assistance for the cancer patients having a difficulty in breathing, and to clarify the trends and problems of studies. The design, methods, and contents of a study were analyzed through an Internet search on Japana Centra Revuo Medicina using the key words “difficulty in breathing,” “cancer,” ”nursing.” As a result, 23 matches were found, out of which those using factor exploratory research accounted for 60.9% in terms of study design and those using qualitative research accounted for 61.0% in terms of research type. The 3 categories of the study contents were formed; namely the “study on the nursing assistance for relieving dyspnea”, the “study on the nursing assistance towards home care for a cancer patient with dyspnea” and the “study on the relationship between the symptoms and dyspnea of a cancer patient”. Generally, there are a few published papers on the nursing problems related to dyspnea of cancer patients. Especially, the studies verifying the cause-and-effect hypotheses to prove the effectiveness of the nursing intervention for relieving dyspnea were limited. It was suggested that a study with a high level of evidence to establish the method of nursing intervention for alleviating dyspnea and a study to develop an appraisal scale enabling to grasp a patient’s subjective feeling of difficulty in breathing should be carried out in future.

Key words:difficulty in breathing, cancer, nursing

1)Gunma University, Graduate School of Medicine 2)Gunma University, School of health Sciences

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