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労働者
10 万人あたりの労働災害による死亡者数で日本と英国を比較すると,1998 年
は日本
3.2 対英国 0.8
1),
2012 年は日本 2.3 対英国 0.6
2)となり,単純比較では日本は英
国に比べて約
4 倍「危険な国」ということになってしまう.これに対して,産業構造が異なっ
たり統計のとり方が異なったりするので,
単純に比較できないという見方がある.しかし,
建設業という単独業種で比較しても日本は英国の約
3 倍ということが紹介されている
3).
また,統計上の補正をしてもこの差が埋められるものとは思えない.なぜこのような差が
あるのか.英国の方が安全成績が良いならば,英国の労働安全衛生管理システムや技術を
そのまま日本に持ってくればこの差は埋められるのだろうか.
英国では,
1972 年にいわゆるローベンス報告“Safety and Health at work, Report of
the committee 1970-72”が出された.この報告に基づき,最低基準から自主管理(リス
クによる管理)を中心とし,個別規制から包括規制,などを特徴とする英国労働衛生安全
法が
1974 年に施行された.一方,日本では(個別)最低基準+自主的活動の促進(第 1 条)
が謳われた労働安全衛生法が,ローベンス報告が出された同じ年の
1972 年に施行された.
その後の実態を見ると,英国の自主管理というのは経営トップが行う管理であり,日本の
自主的活動というのは現場の労働者が行う活動というイメージが強い.少し極端な言い方
をすれば,英国型では労働者は不安全行動をするという前提で不安全状態を無くすよう機
械設備を安全化しようという「機械設備に頼る安全」
,日本型では労働者は不安全行動を
するので不安全行動をしないよう教育訓練していこうという「人に頼る安全」
,という側
面が強かったように思える.
日本のものづくりの優位性は,優秀な労働者に支えられた現場力の強さにあると言われ
ている.優秀な労働者となれるように,企業では長期雇用を前提にして企業内訓練を中心
とした人材養成に力を注いできた.このため,
5S(整理,整頓,清掃,清潔,躾)や「カ
イゼン」などのボトム・アップが機能し,また,人に頼る安全が機能してきたのではない
か.一方,英国では人に頼る安全,つまりボトム・アップが機能せず,機械設備に頼らざ
るを得ない安全ということも言えるのではないか.このような背景から,
英国ではトップ・
ダウン型であるマネジメントシステムが考案されたと思われてならない.日本では,近年
非正規労働者が増加して全雇用者の約
3 分の 1 を占めるようになったことや今後建設業
を中心として外国人労働者の増加が見込まれるなど,訓練を受ける機会が乏しい労働者の
増加が見込まれ,英国型に近づいていくようにも思われる.
ILO は労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)のガイドライン(ILO-OSH
2001)を 2001 年に策定し,ISO は紆余曲折を経ながら,OSHMS を国際規格 ISO45001
として,
2016 年の発行を目指して検討を進めている.名実ともに OSHMS はグローバル・
スタンダードとなるような勢いだが,日本では,中央労働災害防止協会が独自の基準に基
づく「JISHA 方式適格 OSHMS 認定事業」で効果をあげているとの報告がある
4).
「独自」
グローバル化と労働安全衛生研究
グローバル化と労働安全衛生研究
- 特集 労働安全衛生分野における新技術 -
- 特集 労働安全衛生分野における新技術 -
福 澤 義 行
独立行政法人労働安全衛生総合研究所 理事
巻 頭 言
「労働安全衛生研究」, Vol. 7, No.2, p.57-58, (2014)という意味は,基準の中に
KY(危険予知)活動や改善提案活動などのボトム・アップ活
動に関する事項が含まれているということである.このことは,他国のトップ・ダウンの
システムをそのまま単に「輸入」して日本の強みを捨て去るのではなく,それぞれの国や
企業における労働文化(働き方)に応じた輸入の仕方があることを示唆しているように思
える.
一方,アジアに進出した日系企業が,海外の事業場で
5S や KY 活動などのボトム・アッ
プ活動を経て
JISHA 方式 OSHMS 適格認定を受けて,労働災害防止の効果をあげている
事例が報告されている
5).また,フィンランド労働衛生研究所(FIOH)が音頭をとって
Zero Accident Vision(ZAV)という活動を欧州で広めようとしていることを最近知った
6).
日本のゼロ災運動によく似ており,FIOH の担当者に聞くと,ZAV は日本オリジナルだ,
と言われた.欧州でも日本の強みを研究して現場に実践しようとしている方々がいるのだ,
日本の自主的安全衛生管理活動が欧州にも輸出できる可能性があるのだと興味深く,意を
強くした.
結局,グローバル化における労働安全衛生研究の役割とは,①海外の良い管理システム
や技術は日本に適用できるか科学的に検証して日本の労働安全衛生水準の向上に役立て
る,②日本の強みや良いところは何なのかをきちんと科学的に検証し,新技術を開発して
発信し,グローバル・スタンダードに組みこんでいく努力をすることにより世界の労働安
全衛生水準の向上に寄与する,ということだと考える.このような観点から,本誌では,
今号と次号の
2 号にわたって「労働安全衛生分野における新技術」と題する特集を組むこ
ととした.②の観点からの論文はもちろんのこと,①の観点からの論文も投稿を期待した
い.
参考文献等
1) P. Hämäläinen et al., Global Estimates of Occupational Accidents, Safety Science
44 (2006) 137-156.
2) 日本は中央労働災害防止協会編「安全の指標 平成 25 年度」を基に筆者推計,英国
は
Health and Safety Executive, Annual Statistics Report for Great Britain 2011/12
3) 豊澤康男「英国の建設安全に関する実態調査(その 1)―準備から出国まで―」,安
衛 研 ニ ュ ー ス
No.67(2014-04-04),http://www.jniosh.go.jp/publication/mail_mag/
2014/67-column.html
4) 中災防マネジメントシステム審査センター「JISHA 方式 OSHMS 認定開始 10 周年」,
安全と健康 Vol.14 No.4(2013)329-333.
5) 西正幸「中国工場における OSHMS 導入とその効果」,安全と健康 Vol.14 No.4(2013)
340-343.また,第 72 回(平成 25 年度)全国産業安全衛生大会リスクアセスメント
/マネジメントシステム分科会特別集会での講演資料では,東南アジアの事例が紹介
されている.
6) M. Aaltonen, Zero Accident Vision in Promoting Safety Culture, XII International
Conference on Occupational Risk Prevention (2014) での講演資料.なお,ZAV につ
いては,
http://www.perosh.eu/research-projects/perosh-projects/safety-culture-and-accidents-promotion-of-zero-accident-vision/ をご参照いただきたい.
「 労働安全衛生研究 」, Vol.7, No.2, pp.67-76, (2014)
1 はじめに
フ レ キ シ ブ ル コ ン テ ナ(Flexible intermediate bulk container.以下,FIBC という.)は,織布や樹脂シート で作られた柔軟な袋状の容器であり,粉体の貯蔵,輸送, 投入(仕込み)等に広く用いられている.しかし,便利 な反面,特に粉体を排出する際に粉体と容器壁の摩擦に よって静電気が発生し,着火危険性のある静電気放電を 発生することがある.このとき,可燃性物質(ガス・蒸 気または粉じん)が空気と適当な濃度で混合して爆発性 混合気が形成されていると,これに着火して爆発・火災 となる. 産業現場においてFIBC の静電気帯電に起因すると考 えられる災害事例は数多くあり,従前から国内に限らず, 海外,特に欧米では安全上の重要な課題であると認識さ れており,既に多くの研究報告がなされている1-3).さら に,このような国際的な関心の高まりを受けて,2005 年 には,初の国際規格(IEC 61340-4-4:2005)4)が制定さ れた.これは,国内では2009 年に整合化規格(JIS C 61340-4-4:2009 (IDT))5)として制定・公表された.ただ し,これらの規格は,FIBC の基本的な構造と試験方法 を示しただけであり,製品化および内袋を含めた正しい 使用方法についての言及がなかったために,必ずしも実 用的なものではなかった.この反省をふまえ,国際規格 の 改 正 作 業 が 行 わ れ,2012 年, 第 2 版(IEC 61340-4-4:2012)6)が成立・公表された.この規格では, 欧州電気標準化委員会技術報告書CENELEC CLC/TR 50404 7)を踏襲してFIBC をタイプ A,B,C および D の 四つに分類し,それぞれの構造上および性能上の要求事 項を定めるとともに,内袋もL1,L2 及び L3 の三つを 規定し,使用条件に対応した可能な組み合わせを取り決 めている.その他にも正しい使用方法に関する情報が追 加されるなど,製造者および使用者の双方にとって実用 性が大きく向上している.しかし,この中で,タイプC
フレキシブルコンテナに関連した労働災害と規格の動向
†山 隈 瑞 樹
*1 については,その性能上の要求事項について,国内では 受け入れがたい内容があるため,現在,JIS 化にあたっ て修正を検討中である.もちろん,修正に当たっては, 科学的な裏付けが必要であり,後述するように,筆者ら が実験的な根拠を提示した. 本稿では,FIBC に関連した静電気危険性を実例と理 論的・実験的観点から解説するとともに,静電気対策用 FIBC に関する規格の要点と動向を述べる. 2 FIBCFIBC に関連した災害事例と災害発生機構 1) 1) 災害事例 表1 に 1982 ~ 2012 年に国内で発生した災害事例を示 す.この例では,全てが容器(化学反応容器,貯槽,混 合機等)に向かって粉体を排出しているときに発生して いる.爆発または燃焼した物質は溶剤の蒸気又は粉体で ある.いずれの事例も着火源は明白ではないが,全ての 事例において,次のようなFIBC または内袋の不適切な 使用があったことが判明している. (a) 静電気対策品でない FIBC を使用していた. (b) 導電性 FIBC を使用していたが,排出中に非接地状 態となっていた. (c) FIBC と内袋の組み合わせが不適切であった(導電 性FIBC に非導電性内袋を使用,またはその逆). いずれの条件においても,FIBC または内袋に静電気 が蓄積したと推定され,これに起因する静電気放電が着 火源となった可能性が高い. なお,次に述べるように,粉体を充塡するときも着火 危険性があることに注意しなければならない. 2) 2) 災害発生機構 図1(a) および (b) に,静電気による爆発・火災が発生 するときの典型的な作業状況を示す.図1 (a) は,粉体を 充塡したFIBC から反応容器等に向かって投入する場合 である.この場合,静電気は,主として粉体とFIBC(ま たは内袋)との摩擦によって発生する.静電気放電は, FIBC から直接または近傍の非接地導体から間接的に生 じる.考慮すべき着火性放電は,火花放電,ブラシ放電, 沿面放電の三種類である.排出される粉体も電荷をもつ ので,粉体を受ける容器およびその近傍での放電現象に も注意が必要である.一方,図1 (b) は,粉体を FIBC に フレキシブルコンテナ(FIBC)は,粉体の貯蔵・輸送・投入等に広く使用されている.一方で,内容物と 容器壁との摩擦によって静電気が発生するため,内容物または周囲に爆発性混合物が存在する場合,静電気放電 による爆発・火災が発生するおそれがある.本稿では,先ず,FIBC に関連した災害の典型的な発生機構を静電 気放電の着火性という観点から解説し,国内での災害事例を紹介する.次に,静電気災害防止対策用FIBC の国 際規格(IEC 61340-4-4:2012)の要点を紹介するとともに,これを元に現在作成中の国内規格(JIS)について, 特に,IEC 規格との相違点を中心に解説する. キーワード:IEC 規格,JIS,フレキシブルコンテナ,静電気,爆発・火災 総 説 † 原稿受付 2014年07月24日 † 原稿受理 2014年09月03日J-STAGE Advance published date: September 19, 2014 *1 (独)労働安全衛生総合研究所 国際情報・研究振興センター 連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6
(独)労働安全衛生総合研究所 国際情報・研究振興センター 山隈瑞樹*1
FIBC 作業中の発生条件は,図 1(a) を例にすると次の ように推定される. ・ 粉体排出時,粉体とFIBC の摩擦により静電気が発 生する.FIBC には電荷が蓄積し,高電位となる. ・ 作業員が接地不良(例えば,ゴム底のスニーカを履く) であると,静電誘導現象により作業員の電位も上昇 する.FIBC の近傍にある金属製品(バケツ,スコッ プなど)も同様に電位が上昇する. ・ FIBC の抵抗が低い場合,反応容器との間で火花放 電が発生する.さらに,人体又は金属製品からも火 花放電が発生する. 火花放電の対策は,FIBC および人体を含む導体の接 地であり,これにより,作業中の電位が火花放電の発生 限界である約300 V 以下に保たれるようにする. (2) (2) ブラシ放電 ブラシ放電は,図2(b) のように,帯電した不導体から 発生する放電であり,非導電性材料で作られたFIBC(タ イプA およびタイプ B)から発生する.着火エネルギー 充塡する場合の着火機構を示すものである.この場合, 静電気は粉体と輸送用配管との摩擦で生じる.特に,空 気輸送の場合には電荷密度はかなり大きくなり,FIBC 内に堆積した粉体の表面でコーン放電が発生することが ある8).このとき,微細な粒子径(100 μm 以下)の粉じ んが浮遊していると,コーン放電で着火し,粉じん爆発 を生じる可能性がある. 爆発・火災発生の基本条件は,爆発性雰囲気(溶剤蒸 気または粉じんと空気が爆発範囲の濃度で混合している 状態)とその着火エネルギーを超えるエネルギーをもつ 静電気放電が同時に発生することである. これらの静電気放電の特徴は次のとおりである.また, 表2 に要点をまとめる. (1) (1) 火花放電 火花放電は,図2(a) のように,非接地または接地不良 状態の帯電導体と接地体との間で発生する放電であり, 一般に着火性が高く,ガス・蒸気だけでなく粉じんも対 象となる. 表1 FIBC に関連した爆発・火災事例(1982-2012) 発生年 可燃物の状態 人的被害 容器の内容物 FIBC の内容物 FIBC の材質 内袋の材質 1982 ガス 傷1 ポリスチレン(ブタン含) ポリスチレン ゴム引き布 ポリエチレン 1987 粉じん 死1 なし ステアリン酸鉛 ポリプロピレン ポリエチレン 1988 粉じん 死1,傷 1 なし パラニトロフェノキシアセトン ポリプロピレン ポリエチレン 1994 溶剤蒸気 死1,傷 1 メタノール他 ベンゾクアナミン 導電ゴム引き布 (接地不良) 使用なし 1997 溶剤蒸気 傷1 メタノール他 ベンゾクアナミン 塩化ビニル 使用なし 2001 溶剤蒸気 傷2 1,4- ジオキサン GOH(C29H28N2O5S) ポリプロピレン ポリエチレン 2004 ハイブリッド混合物 死1 なし ビシクロヘキサノール+トルエン ポリプロピレン ポリエチレン 2005 粉じん 傷1 なし トナー ポリプロピレン 導電ポリエチレン 2012 粉じん 傷3 なし ビスフェノールA ポリプロピレン ポリエチレン 図1 FIBC 作業中に生じる爆発・火災の典型例 (a) ฟసᴗ (b) ሲసᴗ
Vol. 7, No.2, pp.67-76, (2014) 69 は3 ~ 4 mJ 以下であり9),ガス・蒸気の着火源となるが, 放電エネルギーが空間的・時間的に分散していることか ら粉じんには着火しないとみなされている10, 11).FIBC の電位がおよそ40 kV 以上になると作業員に激しい電撃 を与えることがある.シート状の絶縁物が接地体に密着 している場合,厚さ700 μm 以下であれば,ブラシ放電 には着火性がないことが知られている12). (3) (3) 沿面放電 沿面放電は,薄い絶縁層の表裏が互いに逆極性に帯電 し,かつ,電荷密度が極めて大きく(2.5×10 -4 C/m2以上) となったときに接地体の接近又は絶縁破壊をきっかけと して生じる.現実には,図2(c) のように,薄い絶縁性シー トが接地体と密着している場合に生じやすい.これは, 接地体に静電誘導によってシートと逆極性の電荷が生じ るためである.シートが薄いほど,かつ,絶縁破壊電圧 が大きいほど放電エネルギーは大きくなり,ガス・蒸気 はもちろん,粉じんの着火源ともなる.沿面放電は,ポ リエチレン製内袋などのシート状物体の絶縁破壊をきっ かけとして発生するので,対向電極を必要としない11). このような理由から,FIBC 作業において最も注意すべ き放電形態である.沿面放電の対策として,絶縁シート の絶縁破壊電圧を4 kV または 6 kV 以下 注 1とすること が有効であることが知られており13),後述の規格にも採 用されている. (4) (4) コーン放電 コーン放電は,図1(b) に示すように,比較的粗い粒子 径(1 mm 以上)の粉体を高速充塡するときに発生しや すい7).粉体層の表面電位が十分大きい場合,接地体が なくとも表面だけで放電を生じることもあるが,通常は 図2(d) に示すように接地体に向かって放電することが多 表2 FIBC で発生する放電の種類と特徴 放電の種類 発生場所 最大放電エネルギー 着火対象物 備考 火花放電 非接地導体 100 mJ 以上 ガス・蒸気,ハイブリッド混合物,粉じん FIBC 近傍の人体,金属製品でも生じる. ブラシ放電 非導電性物体 3 mJ 程度 ガス・蒸気,ハイブリッド混合物 作業員への電撃を生じる. 沿面放電 接地導体と薄い不導 体シート 1000 mJ 以上 ガス・蒸気,ハイブリッ ド混合物,粉じん ポリ製内袋で発生しやすい. コーン放電 粗い粒子径の粉体層 100 mJ 以上 ガス・蒸気,ハイブリッド混合物,粉じん 粉体の充塡中に発生しやすい. 注 1 沿面放電の発生限界は,厳密には 4 kV 以上であるが, FIBC のようにある程度の厚みがある場合,発生限界は高くな るので,規格上は6 kV に規定している. 図2 FIBC で発生する主な静電気放電 (a) ⅆⰼᨺ㟁 (b) ࣈࣛࢩᨺ㟁 (c) ἢ㠃ᨺ㟁 (d) ࢥ࣮ࣥᨺ㟁
い.したがって,導電性材料で作られたFIBC(タイプ C) では頻繁に発生しやすい.ただし,不導体材料で作られ たFIBC(タイプ A または B)でも,図 3 に示すように, 粉面付近に接地体(人体の一部でもよい)が接近すると これに向かってコーン放電が発生し,この場合の放電エ ネルギーはタイプC よりも大きいことが知られている6). 3 FIBCFIBC に関する規格 1) 1) 国際規格 (IEC 61340-4-4:2012)(IEC 61340-4-4:2012) の要点 IEC 61340-4-4:2012 で は, 静 電 気 対 策 の 観 点 か ら, FIBC を 4 タイプに分類し,それぞれの構造上および性 能上の要求事項を定めている.また,内袋についても3 タイプに分類し,それぞれの要求事項を定めるとともに, 使用条件に応じて適用可能なFIBC と内袋の組み合わせ を規定している.以下,その要点を解説する. (1) (1) FIBCFIBC のタイプ FIBC は,A,B,C および D の 4 タイプに分類される. このうち,タイプA は,B,C または D に含まれないも のであり,一切の静電気対策を講じていないものとみな す.タイプB ~ D の特徴を次に示す.また,表 3 にポイ ントをまとめる. (a) (a) タイプ B 不導体のシートまたは織布を材料とするFIBC であり, 材料の絶縁破壊電圧は6 kV 未満でなければならない.こ れは,2. 2). (3) で述べたように,沿面放電の発生を防止 するための措置である.ブラシ放電の発生は防止できな いが,IEC では,ブラシ放電は粉じんへの着火性をもた ないとの立場であり,使用環境にガス・蒸気または最小 着火エネルギー(以下,MIE ともいう.)3 mJ 以下の粉 じんが存在しない場合に限り,使用できる. ここで,“ ブラシ放電は粉じんへの着火性をもたない ” のに,MIE が 3 mJ を超える粉じんだけに使用を限定す る の は 一 見 矛 盾 で あ る が, こ れ は 規 格 初 版(IEC 61340-4-4:2005)において同じ制限が設けられていたこ と,および,コーン放電による着火危険性が高いことを 考慮したものである.筆者の私見であるが,3 mJ 未満の 粉体取扱い中に粉じん爆発を生じた事例は多く,かつ, 必ずしも原因は明らかではないことから,前述の理由が なくとも,この制限は“ 転ばぬ先の杖 ” として妥当なも のと考える. タイプB では,タイプ A と同様に電位は高くなる.し たがって,作業中は,作業員や金属製品(バックル,D 環などを含む)などの導体は全て接地しなければならな い. なお,溶剤を含む粉体(ハイブリッド混合物)は,ブ ラシ放電でも着火する可能性があることから,タイプB で取り扱ってはならない. (b) (b) タイプ CC タイプC は構造的には二種類に分類される.一つは, 図4(a) に示すように,不導体(例えば,ポリプロピレン) の織布に導電性テープまたは糸を格子状または縞状に織 り込みまたは縫い込んだものであり,これを国内ではク ロスタイプとよぶ14).導電性のテープまたは糸は電気的 に相互接続し,かつ,接地のための端子(これを,接地 可能接続点という.)をFIBC 本体上に1箇所以上設ける. もう一つは,図4(b) に示すように,布生地に導電性ゴム 引きをしたもの,または,導電性プラスチックシートを 材料としたFIBC であり,これを国内ではランニングタ イプとよぶ14).これも1箇所以上の接地可能接続点を設 ける.なお,導電面は内側,外側のいずれか片方であっ てもよいが,外側だけを導電面とした場合,沿面放電を 防止するため,その材料の絶縁破壊電圧は6 kV 未満とし なければならない. クロスタイプとランニングタイプのいずれであっても, 接地可能接続点と本体の導電性部分との間の抵抗は1.0× 表3 FIBC のタイプとその要求事項および使用条件 タイプ 構造上の要求事項(材料) 性能上の要求事項 使用可能な雰囲気 備考 B 不導体シート又は織布 絶 縁 破 壊 電 圧 が未満 6 kV MIE > 3 mJ の粉じんだけが存在 接地は不要.ゾーンは使用不可. 20 で C 不導体織布に導電性糸を縫 い込む 接地可能接続点(接地用端子)までの抵抗が 1.0 ×107 Ω 未満 ガスグループIIA 若しく はIIB,又は粉じんが存 在 接地は必要.ゾーン0 又は ゾーン20 では使用不可. 導電性シート D 制限なし 着火試験において着火しないこと ガスグループIIA 若しく は I I B ( M I E > 0 . 1 4 mJ),又は粉じんが存在 接地は不要.ゾーン0 又は ゾーン20 では使用不可. 注:タイプA は,タイプ B,C または D のいずれにも該当しないものであり,何ら静電気対策がなされていないので,爆発・火災 のおそれがある条件では使用してはならない. 図3 非導電性 FIBC におけるコーン放電の発生例
Vol. 7, No.2, pp.67-76, (2014) 71 10 7Ω未満でなければならない.この数値は,初版(IEC 61340-4-4:2005)においては 1.0×10 8Ω未満とされてい たものであり,第2 版では上限値が1桁小さくなった. この理由は,次の二つである. ① 初版においては,MIE が 0.14 mJ 以上のガス・蒸気 (ガスグループIIA 全てと IIB の一部を含む)に使用 を限定していたが,第2 版では,ガスグループ IIB も全て含めることとしたため,放電エネルギーをよ り制限する必要があること. ② 初版においては,静電気の発生電流の上限を3 μA と していたが,この制限を撤廃したこと.これにより, 30 μA の電流が発生しても,理論上,最大電位は 300 V 以下となり,火花放電を発生しないことが保 証される. ただし,この抵抗値の変更については,タイプC の製 造上および強度上の重要な観点が見落とされており,ま た,安全上の観点からも十分な検討がなされたとは言い 難いことから,後述のように,JIS 規格作成に当たって は日本で独自に検討を行い,数値の変更を提案している. (c) (c) タイプ D タイプD は,充塡・排出作業中に接地をすることなく, ガス・蒸気または粉じんへの着火性放電を防止する機能 を有するものである.着火性放電防止の原理は任意であ るが,絶縁性材料に導電性繊維を粗くまぶすことによっ て着火性のないコロナ放電を発生させる方法が一般的で ある15).タイプD は,これから発生する放電に着火性が ないことを,規格に定める着火試験によって証明しなけ ればならない.この試験では,最小着火エネルギー0.14 mJ 相当の混合ガスを用いるので,適用可能なガスグルー プは,IIA および IIB のうち,最小着火エネルギーが 0.14 mJ 以上のものに制限される.粉じんについては,タイ プC と同様に制限はない. タイプD は,日本国内ではあまりなじみがないが,欧 米ではよく使用されているものであり,タイプC にあり がちな接地忘れによる火花放電の発生がないことから, ヒューマンエラーによるリスクが低減される.ただし, 使用中,FIBC の電位はタイプ A または B と同様に高く なるので,タイプB と同じく,近傍の導体は必ず接地し なければならない. (2) (2) 内袋のタイプと FIBCFIBC との組み合わせ 内袋は,内容物の汚損防止,漏れ防止等の目的で使用 されるものである.通常,ポリエチレンなどの高分子材 料で作られるため,条件によっては抵抗率が非常に高く なり,静電気帯電しやすくなる.特に,沿面放電の発生 条件を構成しやすくなるため,FIBC 単体での使用より も危険性が増す16). 規格第2 版では,内袋に対する性能上の要求事項を定 めている.これは,表面抵抗率,絶縁破壊電圧および厚 さによって,タイプL1 内袋,L2 内袋および L3 内袋の 三つに分類しており,その要点は,表4 に示すとおりで ある.なお,原文では内袋は,例えば,“type L1 inner liner” と表記しているが,本稿では “ タイプ L1 内袋 ” の ように,タイプ名の後に“ 内袋 ” を付けることによって, FIBC のタイプとの混同を避ける.注2 表4 内袋のタイプとその要求事項および FIBC との組み合あせ タイプ 内面の表面抵抗率 外面の表面抵抗率 絶縁破壊電圧 厚さ 組み合わせ可 能なFIBC L1 1.0×107 Ω 以下 1.0×107 Ω 以下 測定不要 制限なし C 1.0×1012 Ω 超 1.0×107 Ω 以下 4 kV 未満 700 μm 未満 L2 1.0×109 Ω 以上 1.0× 1012 Ω 以下 1.0×10 9 Ω 以上 1.0× 1012 Ω 以下 測定不要 制限なし B, C, D 1.0×1012 Ω 超 1.0×109 Ω 以上 1.0× 1012 Ω 以下 4 kV 未満 700 μm 未満 L3 1.0×1012 Ω 超 1.0×1012 Ω 超 4 kV 未満 制限なし B 注:表面抵抗率1.0×107Ω超1.0×109Ω未満のものは,静電気対策が困難であるため除外されている. (a) ࢡࣟࢫࢱࣉࡢ (b) ࣛࣥࢽࣥࢢࢱࣉࡢ 図4 タイプ C の材料
(a) (a) タイプ L1L1 内袋 タイプL1 内袋は,少なくとも片面の表面抵抗率が 1.0 ×10 7Ω以下という導電性の高い内袋である.作業中,こ れを接地することによって電位は300 V 以下となり,火 花放電を生じないことが保証される.一方で,接地不良 であると容易に火花放電を生じるため,取扱いには注意 が必要である.タイプL1 内袋は,タイプ C とだけ組み 合わせることができる. (b) タイプ L2L2 内袋 タイプL2 内袋は,少なくとも片面の表面抵抗率が 1.0 ×10 9Ω以上1.0×10 12Ω以下の範囲をもつ内袋である. このタイプは,接地して使用することが原則ではあるが, たとえ接地不良となっても着火性放電を生じにくいとい う特長がある.L2 内袋は,タイプ B,C および D と組 み合わせて使用でき,前述の特長も相まって最も汎用性 のある内袋である. (c) (c) タイプ L3L3 内袋 タイプL3 内袋は,両面の表面抵抗率が 1.0×10 12Ω超 という絶縁性の内袋である.ただし,絶縁破壊電圧は4 kV 未満としている.この内袋は,沿面放電を生じること はないがブラシ放電を防止することはできない.したがっ て,組み合わせ可能なFIBC はタイプ B だけである. ここで,絶縁破壊電圧がタイプB では 6 kV 未満,タ イプL3 内袋では 4 kV 未満であり,それぞれ独立に測定 する.これらを単純に足し合わせれば約10 kV となり, 沿面放電の発生条件を満たすが,現実には,FIBC,内袋 ともに場所によって絶縁破壊電圧にばらつきがあること から,両者を組み合わせても6 kV を超える場所はごくわ ずかであるので無視してよく,安全上問題はない. なお,通常のポリエチレンでは,絶縁破壊電圧を4 kV 未満とすると極めて薄くしなければならないため,材料 としての強度が低くなることに留意する. 3)
3) JISJIS 規格(JIS C 61340-4-4JIS C 61340-4-4 第 2 版)での変更点 上述の国際規格第2 版の発行を受けて,これを JIS 規 格とするための委員会(JIS 原案作成委員会,一般財団 法人日本電子部品信頼性センター)が設けられ,原案が 作成された注3 .前述のように,国際規格におけるタイプ C の抵抗値については製造上,強度上および安全上の懸 念が呈せられたため,筆者等が安全上の観点から検証実 験を行った17).その結果,クロスタイプは1.0×10 7Ω未満, また,ランニングタイプは1.0×10 8Ω未満とすることが 適切との結論に至った.以下,その根拠を解説する. (a) (a) 通常使用時の放電波形 図5 に示すように,試験用のタイプ C をつり上げ,こ れに30 μA の電流を流して本体各部分の電位および放電電 流を測定した.この試験には抵抗を調整した特製のクロス タイプ(接地可能接続点までの抵抗は最大6.6×10 7Ω)お よびランニングタイプ(同2.0×10 8Ω)を用いた.なお, 30 μA は,FIBC の使用中に通常発生する最大級の電流(3 ~4 μA )18)よりもかなり大きな値であるので,十分な 安全率を加味した実験である. まず,抵抗約1.0×10 8Ωの箇所を給電点として30 μA を流したところ,その近傍の電位は,約3,000 V に達した. そのときの放電電流波形は,図6 (a) および (b) に示すよ うに,クロスタイプではピーク値が100 mA を超える単 発の大きなパルス状となり,また,ランニングタイプで は約10 μA のピークをもつ小さなパルスが連続的に発生 するものであった.これは,クロスタイプでは,単位長 当たりの抵抗が小さい導電性糸を使用しているため,抵 抗による電力消費が小さいこと,また,ランニングタイ プでは,逆に抵抗率が大きいために,ほとんどのエネル ギーが抵抗で消費されていること意味している.体感的 にも,指で触れたとき,クロスタイプでは強い電撃を感 じたのに対し,ランニングタイプではほとんど感じなかっ た. (b) (b) 着火実験 上記の試験用FIBC を任意の電位に帯電させ,図 7 に 示すような着火プローブを用いて6),FIBC からの放電で エチレン相当(MIE = 0.09 mJ) およびメタノール相当 (MIE = 0.14 mJ)の混合ガスに着火するか実験を行った. その結果,クロスタイプ(約6×10 7Ω)では,エチレン 相当ガスおよびメタノール相当ガスにそれぞれ2.5 kV お よび4.0 kV で着火した.着火のようすを図 8 に示す.一 方,ランニングタイプは,表5 に示すように,抵抗が大 きくなるほど着火に必要な電位は上昇し,特に,1.0×10 8 Ωでは,エチレン相当ガスでも15 kV 以上にならないと 着火しないという結果が得られた.したがって,ランニ ングタイプでは1.0×10 8Ωにできるだけ近い方が,接地 忘れというヒューマンエラーを考慮した場合,望ましい と結論できる.一方,クロスタイプは,2.5 kV でも着火 性放電を発生することから,着火防止のため極力電位を 下げることが重要であり,1.0×10 7Ω未満とすることが 妥当である.ただし,クロスタイプの接地忘れは,爆発・ 注 2 現在改正中の JIS C 61340-4-4 においても同様の表現が用 いられる予定である. 注 3 2014 年 9 月末現在,JIS C 61340-4-4 第 2 版は未発行. 図5 タイプ C からの火花放電測定システム
Vol. 7, No.2, pp.67-76, (2014) 73 表5 ランニングタイプの着火試験結果 抵抗 (Ω) 電位(kV) 着火の有無 メタノール相当 (MIE=0.14 mJ)(MIE=0.09 mJ)エチレン相当 6×104 8 有り -7 有り -6 有り 有り 5 無し 無し 1.6×106 10 有り 有り 9 有り 有り 8 無し 無し 1×108 20 有り -19 有り -18 無し -15 無し 有り 14 無し 無し 12 無し 無し 分類)19, 20)に応じて適切なFIBC(必要な場合,組み合 わせ可能な内袋を使用)を選択したとしても,慎重なリ スクアセスメントを行うべきである.例えば,次のよう な点は盲点となりやすいので注意する. 1) 1) 導電性粉体 導電性粉体,特に金属粉は,図9 に示すように,帯電 すると火花放電を発生する21).したがって,可燃性ガス・ 蒸気が存在する場合にはFIBC による充塡・投入作業は 行うべきではない.可燃性ガス・蒸気が存在しない場合 であっても,導電性粉体が可燃性であるときは,FIBC での取扱いは避けることが望ましい.どうしてもFIBC の使用が避けられない場合,タイプC とし,かつ,内面 を導電面としたランニングタイプとする.内袋は,タイ プL1 内袋とし,FIBC との電気的接触(ボンディング) を確実に行う. 2) 2) トナー トナーは,近年,印刷品質の向上を目的として粒子径 がますます小さくなっている.これに伴って最小着火エ ネルギーも小さくなってきており,3 mJ 未満のものもめ 火災を引き起こす可能性が極めて高いことに留意しなけ ればならない. 4 リスクアセスメントの盲点 表3 に示すように,爆発・火災の危険性(存在するガ ス・蒸気または粉じんのグループおよびゾーンによって 図6 タイプ C に電流 30 μA を流したときの放電波形 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 㻜 㻜㻚㻜㻜㻡 㻜㻚㻜㻝 㻜㻚㻜㻝㻡 㻜㻚㻜㻞 ᨺ 㟁 㟁 ὶ ( μA) 㛫 V -140 -120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20
-1.0E-05 0.0E+00 1.0E-05 2.0E-05 3.0E-05 4.0E-05
ᨺ 㟁 㟁 ὶ (mA) 㛫 (s) (a)ࢡࣟࢫࢱࣉ㸦6.6×107ƺ㸧 (b) ࣛࣥࢽࣥࢢࢱࣉ㸦2.0×108ƺ㸧 ᨺ㟁 㟁 ὶ 㛫 V ᨺ㟁㟁ὶ 㛫 ᨺ㟁 㟁 ὶ 㛫 V ᨺ㟁㟁ὶ 㛫 図7 着火プローブシステム 図8 着火プローブによるエチレン相当ガスの着火実験
ずらしくはない.さらに,抵抗率が極めて大きいので,いっ たん帯電すると電荷が緩和しにくいという性質をもつ. このことは,FIBC からトナーを大量に排出する場合, 粉面の電位が極めて高くなることを意味しており,周囲 に接地不良導体があると静電誘導によって電位が上昇し, 火花放電を生じるおそれがある.トナーの静電気危険性 に関しては未だ不明の点もあることから,トナーのMIE が3 mJ を超える場合であっても,タイプ B とはせず, タイプC または D を用いることが望ましい.また,周囲 に接地不良導体が生じないように入念に対策を行う. なお,トナーは吸湿性が低く,かつ,空間での分散性 がよい(凝集しにくい)という性質があるので,季節に 関係なく爆発性雰囲気を形成しやすいこともリスクアセ スメントの際には考慮すべきである. 3) 3) ハイブリッド混合物 可燃性粉体と可燃性ガス・蒸気が同時に存在する場合, これをハイブリッド混合物(hybrid mixture)という. ハイブリッド混合物においては,可燃性粉体または可燃 性ガス・蒸気の濃度がそれぞれ単独では爆発下限界に達 しなくても,総合して爆発範囲内となることがある.特に, 引火点が室温以下の可燃性溶剤を0.2 wt% 以上含む粉体 は容易に爆発性混合気を形成するので特別な注意が必要 であり,充塡・排出中,爆発性雰囲気を形成しないよう に十分な換気または送風を行う.さらに,このような粉 体を排出した後であっても,FIBC の内部には可燃性ガ ス・蒸気が残留している可能性があるので,通風のよい 場所で自然乾燥することが望ましい.ハイブリッド混合 物はブラシ放電でも着火するので10),タイプC または D を使用する. 5 まとめ-今後の動向 FIBC は,産業現場で多用される用品であるが,筆者 の見るところ,静電気に対する関心・注意が末端まで行 き届いているとは言い難い.静電気対策品は市場に出回っ ているが,一般品に比べれば高価であることから,コス ト的な面で二の足を踏んでいるのかもしれない.しかし, 本稿で紹介したように,形成される爆発性雰囲気に合わ せて適切に選択することによって,費用対効果の向上も 期待できる.例えば,粉体だけしか存在しない場合,最 小着火エネルギー3 mJ 未満のものがなければ,安価な タイプB で十分である.タイプ C を使用する場合であっ ても,ランニングタイプであれば何度でも繰り返し使用 することができるので,長期的には費用を低減できる. 国際規格第2 版は,大幅に改正され,実用性が大きく 向上したとはいえ,まだ,次のように,いくつかの積み 残しがあり,今後慎重かつ迅速に解決すべきと思われる. 1) 1) タイプ C の抵抗値基準の変更 3 3) に概説したように,タイプ C においてはクロスタ イプとランニングタイプの抵抗上限値は異なるべきであ り,次の国際規格改正において日本側から提案する予定 である. 2) 2) タイプ B に関する新たな試験基準の導入 タイプB における沿面放電の発生有無の判定基準は, 現規格では,材料の絶縁破壊電圧(6 kV 未満)によって いるが,実験的に沿面放電の発生の有無を判定する方法 の導入が求められている.これによって,FIBC 設計上 の自由度が大きく向上すると見込まれる. 3) 3) 電撃への配慮 爆発危険性がない作業環境においては,必ずしも静電 気対策品を使用する必要はないが,粉体の充塡・排出時 における静電気の発生は避けることができないものであ り,これによる作業員への電撃は大変不快なもので,作 業性を著しく低下させるのみならず,転倒などの二次的 災害を起こす懸念もある.タイプC はこの問題にも対応 できるが,さらに簡便かつ安価な方法があれば労働環境 の改善に大いに役立つであろう. 4) 4) 着火メカニズムに対する実験的知見の蓄積 静電気災害一般にも当てはまることであるが,FIBC 作業中に発生した爆発・火災は,着火源をある程度推定 できても特定までには至らないことが多い.それは,災 害発生後にFIBC そのものが大きく損傷するため,確た る証拠が残されていないことが主たる要因である.現在, FIBC においては,着火性放電として,火花放電,ブラ シ放電,沿面放電およびコーン放電が挙げられているが, 過去の災害事例をみると,必ずしもこれらの放電に帰結 できない例もある.例えば,粉体塊と内袋との剥離に伴 う放電,FIBC 内面において,粉体との摩擦帯電で高電 位となった部分で局所的に面状に生じる放電等は,未だ 証明はされていないものの着火源の候補と考えられてい る.これらの解明は実用上も学術上も大いに価値がある. 文 献
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8) Glor M and Schwenzfeuer K. Occurrence of cone discharges in production silos. J. of Electrostat. 1997; 40-41: 511-516.
9) Glor M. Ignition of gas/air mixtures by discharges between electrostatically charged plastic surfaces and metallic electrodes. J. of Electrostat. 1981; 10: 327-332.
10) Glor M and Schwenzfeuer K. Direct ignition tests with brush discharges. J. of Electrostat. 2005; 63: 463-468. 11) 山隈瑞樹 . 不導体からの静電気放電による着火性の検討 . 労
働安全衛生総合研究所特別研究報告.
2013;JNIOSH-SRR-No.43: 25-30.
12) Ackroyd G and Puttic S. An investigation of the electrostatic ignition risks associated with plastic coated metal. Inst. Phys. Conf. Ser. No. 178, Section 1; 2003; 25. 13) Heidelberg E.Proceedings of 1st Int. Conf. Static Electricity,
Vienna, Austria. 1970; 351.
14) JIS Z 1651:2008 非危険物用フレキシブルコンテナ (2008). 15) 山隈瑞樹,児玉勉 . バグフィルタでの粉じんの剥離帯電特
性. 静電気学会誌 .2004; 28: 65-70.
16) Yamaguma M and Kodama T. Observation of Propagating Brush Discharge on Insulating Film with Grounded Antistatic Materials. IEEE Trans. on Industry Applications. 2004; 40: 451-456.
17) Yamaguma M, Goto K, Kokubun A. A study of resistance of anti-electrostatic flexible inter- mediate bulk containers. 5th World Conference of Safety of Oil and Gas Industry, Okayama; 2014.
18) 児玉勉,山隈瑞樹 . フレキシブルコンテナによる静電気災害 およびその防止対策. 静電気学会誌 . 2012; 36: 122-127. 19) IEC 60079-10-1:2008,Explosive atmospheres - Part
10-1: Classifi cation of areas - Explosive gas atmospheres (2008).
20) IEC 60079-10-2:2009,Explosive atmospheres - Part 10-2: Classification of areas - Combustible dust atmospheres (2009).
21) 山隈瑞樹,八島正明 . アルミニウム粉投入中の粉じん爆発原 因に関する実験的考察. 安全工学 . 2011; 50: 302-310.
Labor Accidents and Standards in Association with Flexible Intermediate
Bulk Containers (FIBC)
by
Mizuki Y
AMAGUMA,
*1Flexible intermediate bulk containers (FIBC) are widely used for the storage, transportation, and handling of powder. However, a large amount of electrostatic charge can be generated in an FIBC when electrifi ed powder is fed into it or when an FIBC that contains powder is emptied. In such cases, a non-treated FIBC can become highly electrifi ed to the point whereby incendiary electrostatic discharges take place, sometimes resulting in explosions and fi res if the powder is combustible or if an explosive atmosphere exists in the vicinity of the FIBC. In this paper, recent cases of accidents in Japan are introduced and the typical mechanisms of explosions and fi res are explained in detail. The international standard (IEC 61340-4-4:2012) and the future Japanese standard (JIS C 61340-4-4) for anti-electrostatic FIBC are described together with their differences.
Key Words: Explosion and fi re, FIBC, IEC standards, JIS, Static electricity
「 労働安全衛生研究 」, Vol.7, No.2, pp.89-99, (2014) 1 はじめに 近年,我が国を代表する化学プラントにおいて重大な 爆発火災災害が相次ぎ,関係労働者や消防隊員が死亡す る等多くの方が被災している.これを受け,2013 年 4 月, 厚生労働省では「化学プラントの爆発火災災害防止のた めの変更管理の徹底等について」1)により,化学プラン トの変更時等のリスクアセスメントを確実に実施するこ とを要請している. (公社)化学工学会安全部会では,化学プロセス産業に おける製造現場の安全管理担当者が抱える悩みを解決す べく,プロセス安全管理(Process Safety Management;
PSM)に関する業務に具体的で参考になる資料2)を提供 するとともに,PSM のあるべき姿を示した業務プロセス モデルの構築を行っている.また同部会では,変更管理 (Management Of Change;MOC)に関する取り組みと して,2009 年からの 3 年間,「変更管理のあり方」につ いて検討するワーキンググループ(以下,MOC-WG)を 設立し,プロセス安全に関する変更管理の課題を抽出す るとともに,以下のような論理的に整合の取れた変更管 理の仕組み作りを目指した議論を行っている. ① PSM の観点から変更管理の位置付けを明確にし,変 更及び変更管理の明確な定義を与えるとともに,要求 される管理の要点を整理する.
化学プロセス産業における変更管理のあり方
†島 田 行 恭
*1斉 藤 日出雄
*2 ② 「グレーな領域」について,海外のガイドラインで述 べられている「同種置き換え(Replacement in Kind; RIK)」とみなされるかどうかを検討し,その具体的な 事例を提供する. ③ 変更管理を見える化するために,プラントライフサ イクルエンジニアリングの業務プロセス上で変更管理 の事例をトレースする. 本稿ではMOC-WG での議論を取りまとめたテクニカ ルレポート「変更管理のあり方を探る」3)を基に,化学 プロセス産業における変更管理のあり方について示す. 2 変更管理に関する課題 様々なリスクアセスメント手法や体系化されたリスク 低減措置の検討方法などが提案される中,通常の(=想 定された)プロセスに関する事故・災害の発生は少なく なっている.一方,事故はそれらの検討が十分になされ ていない部分,つまり検討対象から「抜け」た部分で発 生しており,その「抜け」が起きやすいのが「変更管理」 である. 1) 1) 変更管理の失敗事例から浮び上がる問題点 英国のナイプロ社のフリックスボロー工場で1974 年 6 月に大規模な蒸気雲爆発事故が発生し,工場内で死者28 人(そのうち18 人は計器室内),負傷者 89 人を出した. この事故では,運転条件の変更に伴いプロセスに発生し 得る影響が十分に検討されていなかった.変更管理の対 象となることは認識されていたが,変更に伴うリスクア セスメントが「不十分」であったとされている. 国内においても,変更管理不備の事故は散発している. ある石油化学会社で,常識的に安全サイドと考えられる 化学プラントは当初の設計に従って建設された状態のままで運転し続けることはなく,原料や製品のスペッ ク変更や,装置の改造など様々に変更しながら生産活動を行っている.これらの変更は適切に管理しなければ事 故・災害の発生に至る可能性が高いため,変更管理(Management Of Change;MOC)として重要視されており, 例えば米国OSHA のプロセス安全管理(Process Safety Management;PSM)では変更管理を一つの重要な要 素と位置付けている. 変更管理を適切に行うためには,変更管理に関する業務や必要な資源・情報を明示化する必要がある.(公社) 化学工学会安全部会では「変更管理のあり方」ワーキンググループを設立し,プロセス安全に関する変更管理の 課題を抽出するとともに,以下のような論理的に整合の取れた変更管理の仕組み作りを目指した議論を行ってい る.①PSM の観点から変更管理の位置付けを明確にし,変更及び変更管理の明確な定義を与えるとともに,要 求される管理の要点を整理する.②「グレーな領域」について,海外のガイドラインで述べられている「同種置 き換え(Replacement in Kind;RIK)」とみなされるかどうかを検討し,その具体的な事例を提供する.③変更 管理を見える化するために,プラントライフサイクルエンジニアリングの業務プロセス上で変更管理の事例をト レースする.これらの議論の結果はテクニカルレポートとしてまとめられている.本稿ではこのテクニカルレポー トに基づき,変更管理のあり方について示す. キーワード: 変更管理,プロセス安全管理,リスクアセスメント,プラントライフサイクルエンジニアリング, 業務プロセスモデル 資 料 † 原稿受付 2014年07月18日 † 原稿受理 2014年08月06日J-STAGE Advance published date: September 10, 2014 *1 (独)労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ *2 斉藤MOTラボ
連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6
(独)労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ 島田行恭*1
「変更管理」,及び「変更の種類」を次のように定義して いる. 【変更の定義変更の定義】 現在「妥当なもの」として認められたシステムの状態, あるいは「妥当であるべき」ものとして取り敢えず許容 された状態に対して,「ずれ」を生じさせる可能性のある 変化(を起こさせる行為). 【変更管理の定義変更管理の定義】 変更管理とは,安全管理システムにおいて,次のコン ダクターの役割を果たす機能である. z 安全管理システムの安全技術機能に対してトリガー をかけて,機能を適切に発揮させる. z ある安全技術機能から得られるプロセス安全情報を, 適切に他の安全技術機能に伝えて,適切な処置を行 わせる. z 変更に伴いアップデートされたプロセス安全情報を 最新化させる. 【変更の種類変更の種類】 変更の種類はその要因に着目すると,次のように大別 できる. z 物質の変更(原料組成,製品,etc.) z 運転条件の変更(運転温度,圧力) z 設備の変更(機器,装置,計器等) z 手順の変更(マニュアル) z 人・組織の変更(新入社員,転籍,合併) さらに,変更の分類とは別に,次のような特殊性・特 異性に着目することも必要である. z 一時的な変更 z (物質,運転条件,設備などに対する)軽微な変更2 z 緩やかな変化(環境要因の変動) 「一時的な変更」とは,短期間のうちに元に戻すまでの 仮の措置と安易に考えてしまうために,「変更」と認識で きずに見逃される可能性がある.「軽微な変更」とは,ご くわずかであるというために軽んじられて,「変更」と認 識できずに見逃される可能性がある.「緩やかな変化」と は,当事者が「変更」と認識できないような「じわじわ」 と変化が積み重なり,結果的に当初の状態から大きく変 化してしまうものであり,一時的な変更や,軽微な変更 の他,周囲の様々な環境が変化したことによる受動的な 変化が含まれる.この受動的な変化は,当事者が意図し ない変化であるために,「じわじわ」と進行した場合,変 更であると気付かれない危険性がある.「緩やかな変化」 の結果,システムと設計・運転意図との間で,当初の設 計合理性を維持できなくなることが懸念される. 2) 2) 変更管理の位置付け 海外におけるガイドラインを参考に,PSM における変 更管理の位置付けを新たに明確にする. 些細な形状変更であるとした運転現場の判断により,ウェ ザーシールを雨が吹き込まないように改善したところ, 通気がなくなり内部に蓄熱してボルトが伸び,漏洩トラ ブルが発生している.この改善は当初は変更(あるいは「変 更管理」を実施するほどの変更)と認識されておらず, 変更に関する検討が為されていなかった.事故後の分析 で,ウェザーシールに設けられていた開口部はフランジ 部分の温度管理に重要な働きをしていたことが分かった が,事故発生前には技術的な検討対象には当てはまらな い単なる付属部品の交換であり,リスクの増大につなが るという認識はなかった. 上記の他にも,「緊急対応」や「多忙」を理由とした検 討の後回し,「知識や知見」の不足,危険に関する「感受 性」の低下など,様々な理由による変更管理の失敗事例 がある.特に,最近の事故事例では,以前に発生してい たものと類似で,事故事例を調査し,それに関する対策 を実施しておけば防ぐことができたと思われる災害も多 く見受けられる. 「変更」を実施すれば人,物,設備に何らかの影響があ りリスクも生まれるが,その新たなリスクに適切に対応 する作業が変更管理である.そのためにはまずその行為 が「変更」であると認識し,変更管理の仕組みに乗せて 対応することが重要である.同種トラブルの再発防止の ためにも変更管理の確実な運用を妨げている認知不全あ るいは運用不全が何かを認識し,更なる改善が望まれて いる. 2) 2) MOC-WGMOC-WG で議論された変更管理の課題 MOC-WG では,化学プロセス産業における変更管理 について,企業メンバーが抱えている悩みを打ち明け合 うことで以下のような課題を抽出し,議論を行っている. 1 .「変更管理」とは何か? 2 .「変更管理」の対象は? 3 .「変更管理」の対象とならない変更とは? 4 .「変更管理」と「非定常作業管理」の関係は? 5 .「軽微な変更」とは? 6 .変更は全て拾い出され,変更管理されているか? 7 .変更管理には膨大な手間が掛かる,という重圧感を 解消できないか? 8 .変更管理で実施された検討内容に不備が無いことを どのように確認するか? 9 .変更管理の結果をどこまで周知し,反映させること ができるか? 10 .変更管理における課長の役割とその属人性を排除で きるか? 3 変更管理とは何か 1) 1) 変更及び変更管理の定義と変更の種類 米国OSHA 4, 5)やAIChE/CCPS 6, 7)等の各種ガイドラ イン及び企業等で採用している「変更」及び「変更管理 の対象」の定義を参考に,変更管理の対象外としている 同種置き換え(Replacement In Kind;RIK)の概念や そのグレーな領域の取り扱いについて議論し1,「変更」, 1 RIK とグレーな領域については 4 章で述べる. 2 4 章では「グレーな領域」と呼ぶ.
Vol. 7, No.2, pp.89-99, (2014) 91 (1) (1) プロセス安全管理における変更管理 ① OSHA/PSM OSHA/PSM は表 1 に示す 14 要素で構成されているが, 変更管理は独立した一つの要素と位置付けられている. OSHA/PSM における変更管理の要求事項は次の通りで ある. (i) プロセス上の化学物質,技術,機器及び手順に対 する変更,及びプロセスに影響する施設に対する変 更を管理する手順書の策定とその実施 (ii) 変更する前に下記事項を確実にすること: (a) 提案されている変更の論拠となる技術 (b) 安全衛生に及ぼす影響 (c) 操作手順の修正 (d) 変更している期間 (e) 提案されている変更に関する法的要求事項 (iii) 操作及び保全関係者,工事に影響を与えるコン トラクターに対して事前に,通知し訓練すること (iv) 変更がプロセス安全情報に影響を与える場合に は,プロセス安全情報を改訂すること (v) 変更が操作手順に影響を与える場合には,操作手 順書を改訂すること (ii) (a) の “ 論拠となる技術 ” とは,表 1 の (d) プロセス 安全情報の整備や(j) 機器の健全性の要素を検討すること に該当する.また(b) の “ 安全衛生に及ぼす影響 ” は表 1 の(e) プロセス危険解析の実施,(i) 試運転前の安全レ ビューなどに該当する.すなわち,変更管理に対する要 求事項はPSM の他の要素と重複する. 変更管理は比較的新しく管理要素として注目されたこ とから,すでに実行されている様々な技術管理,安全管 理や設備管理などのマネジメントシステムに関連付けら れた内容となる.そのためCCPS では新規(または改訂時) に変更管理システムを構築するための留意点をガイドラ インにまとめている7). 一方,変更管理で要求される事項は,事業所にて日常 の業務として遂行されている事柄,例えばプロセス設計, 運転管理,設備保全管理,安全管理(PSM の他の要素, 例えば安全性の評価など),あるいは事業所全般の基盤と なる教育やコミュニケーション,文書管理などの活動と 重複する.変更に対する検討は,変更管理という新しい システムにおいて実施するまでもなく,日常の業務にお いて当然実施されている. ② OHSAS18001:2007
OHSAS (Occupational Health and Safety Assessment Series) 18001:2007 8, 9)の 実 施 ガ イ ド ラ イ ン で あ る OHSAS 18002:2008 10, 11)では,危険源の特定及びリスク アセスメントプロセスの概要が図1 に示すようにまとめ られている.OHSAS では,「変更をマネジメントする3」 は独立した一つの要素としては位置付けられておらず, 各箇条に含まれた形となっている. OHSAS における変更管理の意図は次のように解釈さ れる.すなわち,労働安全衛生マネジメントの主要目的は, リスクアセスメントを適切に行い,管理策(リスク低減 措置)を実施していくことにある.変更は新たな危険源 を生み出し,リスクが発生する重要なきっかけ(トリガー) の一つとなる行為である.従って,他のリスク発生のきっ かけ,例えば機械や設備そのもの,それらの老朽化,あ るいは社員の定常・非定常な活動一般などと同様に,リ スク管理の重要なテーマの一つとして「変更をマネジメ ントする」が含まれる.つまり変更のマネジメントはリ スク管理に包含され,労働安全衛生マネジメントの全て の項目が変更に関しても該当し,適用される. (2) (2) リスクマネジメントと変更のマネジメント 豊田11)は図1 の「変更をマネジメントする」は個別の 変更案件への対応として,リスクアセスメントの実施(危 険源の特定,リスクの評価,及び管理策の決定)(Plan), 管理策(リスク低減措置)の実施(Do),監視と見直し (Check),及び修正(Act)という PDCA サイクルを回 すこととし,これを「狭義の変更のマネジメント(以下, 本稿では「変更のリスク管理」と呼ぶ)」としている.表 2 に変更のリスク管理の重要な項目を示す. 一方,これに対応する「広義の変更のマネジメント(以 下, 本 稿 で は「 変 更 の 統 合 管 理 」 と 呼 ぶ )」 は OHSAS18001 の全体と解釈することができ,事業所全体 にわたる変更管理への対応を行う.表3 に変更の統合管 理の重要な項目を示す.
3 OHSAS の和訳版では,Management of change を「変更の
マネジメント」と訳している. 図1 危険源の特定及びリスクアセスメントプロセスの概要 2) (1) ձ OSHA/PSM (l) Management of Change ኚ᭦⟶⌮ ղ OHSAS18001㸸2007 ኚ᭦䜢 䝬䝛䝆䝯䞁䝖 䛩䜛 ⟶⌮⟇䜢ᐇ䛩䜛 䝸䝇䜽䜢ホ౯䛩䜛 ༴㝤※䜢≉ᐃ䛩䜛 ⟶⌮⟇䜢Ỵᐃ䛩䜛 ᪉ἲㄽ䜢㛤Ⓨ䛩䜛 ┘ど䛧 䝺䝡䝳䞊䛩䜛 表1 OSHA/PSM で要求される要素 (a) (b) Applications Defi nition 適用 定義 (c) (d) (e) (f) (g) (h) (i) (j) (k) (l) (m) (n) (o) (p) Employee Participation Process Safety Information Process Hazard Analysis Operating Procedures Training
Contractors
Pre-Startup Safety Review Mechanical Integrity Hot Work Permit Management of Change Incident Investigation Emergency Planning and Response Compliance Audits Trade Secrets 従業員の参加 プロセス安全情報の整備 プロセス危険解析の実施 運転手順書の作成 従業員に対する教育,訓練 請負業者の審査と教育 試運転前の安全レビュー 機器の健全性 火気使用許可 変更管理 変更管理 事故調査 緊急時の対応計画 監査 業務秘密管理