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68回北数教札幌大会・高校部会第3分科会 2013.10.25

高校数学 I 「課題学習」におけるデータの分析の取扱い

北海道札幌東陵高等学校 川嶋 哲典

要 約

 新課程の高等学校数学には「データの分析」が新たな単元として加わった.この学習を通じて,生徒には

「統計的な見方・考え方」を身につけさせたい.しかしながら,現状の教科書「データの分析」の章の記述だ けでは不十分であると感じられる.そのため,「数学I」の教科書全16点の「課題学習」に掲げられたデータの 分析に関する課題を整理し,生徒が「統計的な見方・考え方」を養えるような課題とはどういうものであるべ きか考える.

 キーワード: 新課程,課題学習,データの分析,統計学習,教科書

1 背景

 平成 24 年度から高校数学においては,新学習 指導要領の内容が学年進行で実施されている.特 に必履修科目である数学 I では,これまで選択科 目 (数学 B,数学 C) に配されていた統計分野から, 記述統計に関する内容を整理し,「データの分析」 が新設された.ここでは,「中学校との接続に配慮 しつつ,分散や標準偏差,散布図や相関係数など を扱い,データを整理分析し,傾向を把握するた めの基礎的な知識や技能を身に付けさせることと されている (文部科学省 2009).

 景山 (2012) は,新課程用教科書の記述内容につ き,統計学の専門家の立場から分析し,総合評価 によって教科書間の優劣を述べている.また,松 元ら (2012) は,各教科書の構成,データの場面と データ数,問題における活動の質などに焦点を当 て,実際に授業を構成する上で検討・留意すべき 課題を示している.しかし,松元らの研究におい ては,数学 I の教科書における「データの分析」 の章の記述のみを分析対象としていたため,同じ く新学習指導要領で新設された「課題学習」の内 容や,教師用指導書の内容に関しては分析対象外

であった.

 本研究は,これを補完する意味をもつ.すなわ ち,新課程用教科書においてはすべての教科書の

「課題学習」の箇所に「データの分析」に対応す る課題が掲載されていることから,この点の整理 を試みようとしたものである.

2 目的

 下記の方法によって,数学 I の教科書の「課題 学習」のページのうち,「データの分析」に対応す る課題の内容・設問を調査し,「統計的な見方・考え 方」(景山 2011) を養成する内容になっているかど うかの現状分析を目的とする.その分析の背景は 先述のとおりである.これにより,「データの分析」 の授業をより豊かにするための糸口を探りたい.

3 方法

 平成 24 年度・25 年度使用の教科書は,平成 23 年に教科書検定に合格したものであり,高等学校

「数学 I」では 5 社・全 16 点が供給されている (表

1

(2)

1参照).これらの教科書において「課題学習」と して掲げられている記述のうち,「データの分析」 関連の内容を検討した.具体的には,次に掲げる 松元ら (2012) がとった方法のうち,本研究の内容 の性質上,4) の方法に則って調査した.

1) ページ数と指導時間数の関係 2) 単元の指導順序と既習内容の記述 3) データの場面とデータ数

4) 例題や問題などにおける活動の質 表 1: 調査に用いた教科書一覧 東京書籍 数 I 301 「数学 I」 東京書籍 数 I 302 「新編数学 I」 東京書籍 数 I 303 「新数学 I」 実教出版 数 I 304 「数学 I」 実教出版 数 I 305 「新版数学 I」 実教出版 数 I 306 「高校数学 I」 啓林館 数 I 307 「詳説数学 I」 啓林館 数 I 308 「数学 I」 啓林館 数 I 309 「新編数学 I」 数研出版 数 I 310 「数学 I」

数研出版 数 I 311 「高等学校数学 I」 数研出版 数 I 312 「新編数学 I」 数研出版 数 I 313 「最新数学 I」 数研出版 数 I 314 「新高校の数学 I」 第一学習社 数 I 315 「高等学校数学 I」 第一学習社 数 I 316 「高等学校新編数学 I」

4 各教科書の内容

課題 1

 函館市における 2000–2009 年の 3 月の平均気温 とさくら開花日の表から散布図を作成し,どんな 関係があるか考える.

課題 2

 長野市の前年の夏の日照時間とスギ花粉飛散量 の記録から,2 つの数量間の関係を調べる.(「デー タの分析」の章の導入として課題提示.)

課題 3

1)最近 12 日間の気温と,売れたホットコーヒー, アイスコーヒーのそれぞれの数の記録から,散布 図を作成し,相関関係を調べる.

2)身のまわりの 2 つの量の関係について,相関が あるかどうか予想し,調べてみる.

課題 4

1)棒グラフから 2006 年と 2007 年の神奈川県藤沢 市の 7 月の海水浴客数を比較し,A 君は.「2006 年 に比べて 2007 年は海水浴客数が激減した」とし た.A 君の分析結果は正しいか正しくないか,話 しあう.

2) さらに 2000–2009 年の藤沢市の 7 月の海水浴 客数と平均気温のデータから,棒グラフの作成と 相関係数の算出.他に相関関係があると思われる データを調べる.

課題 5

1)パレート図の紹介

2)パレート図で表すと特徴が把握できる例をイン ターネットで調べてみる.

3) 3種の表 (会社の一般経費,売上伝票のミス件 数,小売店のおにぎりの販売比) についてパレー ト図で表し,わかったことをまとめる.

課題 6

 紙テープを繰り返し切り取り,切り取った長さ を測ってみる.50 回繰り返し,テープの長さの データを分析する.

1)度数分布表に整理する.

2) 1)の度数分布表をヒストグラムで表す. 3)平均値,標準偏差を求める.

4) 同様の作業を 100 回行い,得られたデータを 度数分布表に整理し.ヒストグラムで表す.また, 平均値と標準偏差を求める.実験結果からわかっ たことをまとめ,クラスで話し合ってみよう.

2

(3)

課題 7

1) スポーツ大会で行う競技の投票

• 度数分布表などで整理する.

• 選び出すルールを定め,それに従ってどの競 技を行うか決めてみる.

• 先の結果とは異なる競技に決まるルールを考 えてみよう.

2)日常生活においては,どのような場面でどのよ うな決定の方法が用いられているのかを調べてみ よう.

課題 8

「仮平均とデータの分析」

1) 仮平均の原理 (仮平均を求めてみる)

2) 仮平均を用いてデータの分散,標準偏差を求 める.

課題 9

「テストの得点を分析しよう」

1)度数分布表をつくる.そこからヒストグラムを 作り,気付いたことを発表する.

2)中間試験と期末試験の散布図をかき,相関係数 を求める.

3)期末試験の成績は,中間試験の成績から上がっ たと言えるか.「成績は上がった/上がっていない」 という立場で,理由を説明してみよう.

課題 10

「代表を選べ」

 外国から来た友だちに「日本の都道府県の広さ はどれくらい?」と聞かれました.あなたならど う答えますか?

1)平均値,中央値,最頻値を求めて比較し,具体 的な都道府県名を挙げる.

2)平均値を答えるとすると少し大きく感じること がわかる.その理由を考える.

3)最終的にあなたはどの都道府県を選んで答えま すか.

課題 11

  1 年間の 1 日ごとの最低気温のデータを,コン ピュータ (表計算ソフト) を利用して分析する. 1) 表計算ソフトで,各月の最小値,第 1 四分位 数,第 2 四分位数,第 3 四分位数,最大値を求め る.(関数を利用)

2)コンピュータで箱ひげ図をかき,気付いたこと を述べよ.

3)気象月報を利用して,気温のデータの箱ひげ図 を作り,データの分布のようすを調べる. 4)表計算ソフトを利用して,いろいろなデータを 分析してみよう.

5 結果

 本研究では松元ら (2012) の研究に倣い,課題学 習に掲載された設問・課題における活動の質を, 文末表現 (動詞) に着目して,評価の観点「数学的 な見方や考え方 (思考・判断がはたらく問いかけ)」

「数学的な技能 (代表値などの算出や図表を書く問 いかけ)」「数学的な知識・理解 (用語の意味を確 認する問いかけ)」に分けて分類した.問の中に複 数の活動 (動詞) がある場合にはその活動ごとに, 小問があるときは小問ごとに数えた.

 その結果,50 の設問 (課題提示) のうち,20 が

「数学的な見方や考え方」に関するもの,30 が「数 学的な技能」に関するものであった.前者におい ては,作成した図や,求めた数値をもとに,分析 させるものや理由を述べさせるものが多く,また

「話しあってみよう」というものもいくつか見受 けられた.後者においては,分析や話し合いの前 提として作図させるもの,数値を求めさせるもの が大半である一方で,「仮平均」や「パレート図」 といった,本文では述べられていない概念を課題 学習のページで扱ったり,コンピュータの利用法 を取り上げている場合に多くなっていることがわ かった.

 なお,「数学的な知識・理解」に関する設問はな かった.この点は,「データの分析」の本文につい てと同様の結果である (松元ら 2012).

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6 結びにかえて

 上記の分析結果から,教科書の課題学習のペー ジには「数学的な見方や考え方」を問う活動が多 く掲載されており,筆者としては嬉しい限りであ る.統計学習においては,様々な統計概念や作図 の方法,統計数字の算出法を学習することはもと より,それらの数字や図表の示す意味を正確に把 握できる能力の育成こそが本質であると考えてい るからである.一昨年度の実験授業 (川嶋 2012), および昨年度の数学 I の授業において,そのこと を意識して授業構成をしてきたつもりである.  ただし,ここで言う「数学的な見方や考え方」 は,筆者はあくまでも評価の観点としての用語と して用いていることをここで断っておく.  筆者は,高校数学に「データの分析」が導入さ れたことは,高校数学の学習指導法を見直す契機 であると考える.景山 (2011) が指摘しているよう に,「統計学の本質は,帰納的推論の中に演繹的 推論の過程を導入することにより科学的な結論を 導く点にある」のであって,数学 I の「データの 分析」にあってもこのことを意識した指導法を心 がけなければならないと考えている.数学的な見 方・考え方と統計 (学) 的な見方・考え方の相違点 と類似点を高校教員がきちんと理解しておかなけ ればならない.その意味で,教材研究をより深く 行い,各教科書の課題学習に掲げられた事例を適 切なタイミングで活用することは大変有意義であ ると考える.指導する側の教員が上手に取捨選択 をし,あるいは課題の設定を行い,確かな理解の うえで授業を構成していくと,統計学習はもっと 豊かになるのではないだろうか.

謝辞

 本研究にあたっては,静岡大学教育学部の松元新一 郎教授から示唆を得,また,各出版社から資料を提供 していただいたことで遂行することができた.この場 を借りて御礼申し上げたい.

参考・引用文献

[1] 景山三平 (2011),「小・中・高等学校におけ る統計教育の課題―新学習指導要領から見え

るもの―」,広島工業大学紀要教育編,10, pp.37–43.

[2] 景山三平 (2012),「新学習指導要領に基づく高 校教科書『数学 I』の統計記述内容及びその 評価」,広島工業大学紀要教育編,11,pp.61– 66.

[3] 川嶋哲典 (2012),「新課程数学 I『データの分 析』の実験授業の試み」,北海学園大学教職 課程年報,4,pp.38–42.

[4] 国立教育政策研究所 (2012),「評価規準の作 成,評価方法等の工夫改善のための参考資 料」,教育出版,p.32.

[5] 松元新一郎ほか (2012),「高等学校・数学 I 教 科書における『データの分析』の現状と今後 のあり方」,日本数学教育学会第 45 回数学教 育論文発表会論文集,pp.719–724.

[6] 文部科学省 (2009),「高等学校学習指導要領解 説 数学編 理数編」,実教出版,p.7, pp.25–27, pp.67–68.

[7] 吉田明史編著 (2010),「高等学校新学習指導 要領の展開 数学」,明治図書,pp.47–53.(西 村圭一執筆)

[8] 渡辺美智子 (2012a),「新課程における問題解 決力育成に向けた統計教育のあり方―共通教 科『情報』と数学 I の連携―」,じっきょう 情報教育資料,34,pp.1–5.

[9] 渡辺美智子ほか編著 (2012b),「問題解決学と しての統計学」,日科技連.

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参照

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