E in QM 最近の更新履歴 物理学ノート

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全文

(1)

目次 0

目次

0 序 1

0.1 幾つかの約束 . . . 1

0.2 波動の復習 . . . 1

1 光の二重性 2 1.1 光子のエネルギーと運動量 . . . 2

1.2 コンプトン効果 . . . 3

1.3 空洞輻射. . . 4

1.4 ヤングの実験・テイラーの実験 . . . 4

2 原子模型 5 2.1 長岡–ラザフォードの水素原子模型 . . . 5

2.2 ボーアの原子模型 . . . 5

2.3 ボーア-ゾンマーフェルトの量子条件 . . . 6

2.4 ド・ブロイの物質波 . . . 7

2.5 位相速度と群速度 . . . 7

3 シュレーディンガー方程式 9 3.1 波動方程式 . . . 9

3.2 Schrödinger方程式 . . . 9

4 波動関数の物理的意味 11 4.1 確率密度. . . 11

4.2 物理量の期待値 . . . 12

5 量子力学の成立 14 5.1 物理量と演算子 . . . 14

5.2 状態・状態ベクトル・重ね合わせの原理 . . . 15

5.3 観測・物理量・演算子のエルミート性. . . 16

5.4 固有値問題 . . . 17

5.5 ハイゼンベルグの不確定性関係 . . . 18

6 井戸型ポテンシャル 20 6.1 井戸型ポテンシャルに束縛された状態. . . 20

6.2 波動関数の滲みこみと無限に深い井戸. . . 21

6.3 運動量の固有状態 . . . 21

(2)

量子力学演習 No.0 (April 16th, 2015) 波動について 1

0

量子力学演習で使う定数

定数名      記号    単位または値

光速(真空中) c 2.99 792 458×108m s−1

プランク定数 h 6.62 60· · · ×10−34J s

エイチバー ℏ 1.05 45· · · ×10−34J s 電気素量 e 1.60 21· · · ×10−19C

ボルツマン定数 k 1.38 06· · · ×10−23J K−1

電子質量 me 9.10 93· · · ×10−31kg 陽子質量 mp 1.67 26· · · ×10−27kg

0.1

幾つかの約束

定義の記号:定義式の等号では,定義される側に:を付ける。例を挙げると

A:= B または C=:D. (0.1) それぞれAとDとが定義される量,BとCとが既知の量である。

ランダウ記号:関数 f(x)のa近傍での振る舞いを表すとき,下のランダウ記号を用いる。

f(x) =o(g(x))⇐⇒ lim

x→a

f(x)

g(x) =0 · · · f

(x)は,g(x)と比べて無視できる。 (0.2)

f(x) =O(g(x))⇐⇒ lim

x→a

f(x)

g(x)

≤ K · · · f(x)は,g(x)と同程度。K はある定数。 (0.3)

物理の問題では,aは0または∞の場合が多い。g(x)の代表例は,xnの形である。例えば,x→0で

ex =1+x+ 12x2+O(x3). (0.4)

単位系:単位系はSIを用いる。ただしエネルギーには,電子ボルト(エレクトロン ボルト)を併用する。

1電子ボルト:電気素量eの電荷を持つ粒子が,真空中において,1Vの電位差を持つ2点間で加速されるとき に得るエネルギー。1 eVと書く:

1 eV=1.60 21· · · ×10−19J. (0.5)

0.2

波動の復習

自習1.下の表の空欄を埋めて,光の波長λ,振動数ν,波数 k,光速cの間の関係式を確認しよう*1

色 紫 青 緑 黄 橙 赤

波長(nm) 380 430 490 550 590 640 780 振動数(1014Hz) 7.89

波数(107m−1) 1.65

自習2.単振動する質点のエネルギーを求めよ。質量や振幅など必要な量は,定義して使用して良い*2。 自習3.単振動ϕ(x,t) = Asin(k x−ωt)に対して,同位相点の進行速度を求めよ。

*1以下,特に断らない場合,光速と言えば真空中の光速を指す。

(3)

量子力学演習 No.1 (April 16th, 2015) 2

自習4.単振動ϕ(x,t) = Asin(k xωt)が満たす波動方程式は下のように2階微分方程式で与えられる: *

, 1

vph2

∂2 ∂t2 −

∂2

∂x2+-ϕ(x,t)=0, (0.6)

ここでvph:= ω

k は位相速度である。しかしϕ(x,t)= Asin(k x−ωt)が解になるという要求だけなら ( 1

vph

∂ ∂t +

∂ ∂x

)

ϕ(x,t) =0 (0.7)

でも良いはずだが実際はそうではない。なぜか? k > 0,ω >0として,ϕ(x,t)の進行方向を考えてみると良い。 自習5.真空中のマックスウェル方程式

divE =0, divB=0, rotE=− ∂

∂tB, rotH=

∂tD (0.8)

および真空中ではB = µ0H,D=ϵ0Eであることから真空中の電場E が満たすべき方程式を導け。下に書いた

ベクトル解析の公式を使うとよい。

rot(rotA)=grad(divA)− △A (0.9)

自習6.波動方程式(0.6)の一般解が,任意関数 f とgとを使って

f(k xωt)+g(k x+ωt) (0.10)

で与えられることを示し kとωの関係を求めよ。また f,gの波それぞれの進行方向を求めよ。 自習7.静止状態から1 eVに加速された電子の速さはどの程度か?

1

光の二重性

1.1

光子のエネルギーと運動量

自習8.光量子説によると振動数ν,波長λの光は,

エネルギーE =hν, 運動量の大きさ|p| = h

λ (1.1)

を持つ粒子(光子)として振る舞う*3。ここでhはプランク定数である。これを用いて空欄を埋めよ。下記の波長 は各電磁波の境界の値である。また500nmは,太陽光のピーク波長λmaxの近似値として挙げた。

名前 γ線 X線 紫外線 可視光線 赤外線

波長 0.01nm 50nm 380nm 500nm 780nm 1 mm 振動数(Hz)

エネルギー(J)

問題1.紫外線(波長5×10−8m)と赤外線(波長1

×10−6m)の一個の光子の持つエネルギーをJとeVで表せ。ま たこれらを水素原子のイオン化エネルギー13.6 eVを比較せよ。この大小関係から何が言えるか?

問題2.金属ナトリウムの仕事関数は2.3 eVである。これに(a)波長500 nmの太陽光(b)波長1000 nmの赤外線 ヒータ(c)北極星から届く波長350 nmの微弱な光を当てた場合,光電子が飛び出すかどうか述べよ。光電子が飛 び出すなら,その量や運動エネルギーを比較せよ。

自習9.タングステンに光を当てて光電効果による電子を放出させるためには,当てる光の波長が230 nm以下で なければならない。タングステンから電子を取り出すために必要な最小エネルギーは何eVか?また,タングステ ンに波長180 nmの光を当てた時に出てくる光電子の最大エネルギーはいくらか?

(4)

1 光の二重性 3

自習10.銅に光を当てて光電子を放出させるには,光の振動数が1.1×1015 Hz以上でなければならない。銅の表 面に振動数が1.5×1015Hzの光を当てたときに出てくる光電子の最大エネルギーはいくらか?

問題3.光量子説でも光を不連続に感じない理由を考える。波長λ=5.0×10−7mの光を出している30 WのLED

電球を1.0 m離れて見る場合,単位秒当たり瞳に飛び込む光子は何個か? 瞳の断面積は0.50 cm2とする。 問題4.人間の目が光を感じるには,視細胞内部にある1つの原子が約2.5×10−19Jのエネルギーを受け取る必要

がある。視細胞とその内部の原子を,それぞれ半径10−6m, 10−10mの球とする。

4-1. 0等星*4からの光が,断面積0.50 cm2の瞳を通して入り,1つの視細胞に集められたとする。光を波と考え た場合,視細胞内部の原子が必要なエネルギーを得るには何秒かかるか? またこの結果から何が言えるか? 4-2.星の瞬きが光量子説の証拠になるかどうか考えよ。0等星から単位秒当たりに入ってくる光子の数を計算す るとよい。光の波長は500 nmとする。

1.2

コンプトン効果

θ

φ λ

λ’

m v

緩やかに束縛された電子にX線を照射すると波長が少し長くなって散乱される。 右図のように入射X線の波長をλ,散乱X線の波長をλ′,さらにX線が散乱され

る角度をθ,電子の質量をmとすると,

λ′λ= h

mc(1−cosθ) (1.2)

という関係がある。この現象をコンプトン効果という。また h

mc =2.43×10

−12m (1.3)

を電子のコンプトン波長という。

自習11.非相対論的v ≪cでかつ,光子が正面衝突して弾性的に跳ね返る場合(θ =π) 1

λ =

1

λ′ +

mv2

2hc, v≃ 2h mλ =

1.45×10−3

λ (m/s) (1.4)

を確かめよ。また,λ=10−9mのときのλ′とvを計算せよ。答えは非相対論的近似と矛盾しないか? 問題5.上のコンプトン効果について以下の問いに答えよ。

5-1.入射および散乱光子の運動量をそれぞれ p, p′,反跳電子の運動量をqとして運動量保存則を書け。また,運 動量保存則より次式を導け。

q2 =(h

λ −

h

λ′)

2 +2h

λ

h

λ′(1−cosθ). (1.5)

5-2.コンプトン効果においてエネルギー保存則*5は次式で与えられる:

hν+mc2 =hν′+ √

m2c4+q2c2. (1.6)

(1.5),(1.6)式より(1.2)式を導け。ここでν, ν′はλ, λ′に対応する振動数である。

5-3.λ=0.5Åの場合,いろいろな散乱角θにおける波長のずれ△λ:= λ′−λを計算せよ*6

自習12.運動量pの光子が,運動量qの自由電子に衝突し,その運動量とエネルギーの全てを電子に与えて消滅 することは不可能であることを示せ。

*40等星の照度は2.5×10−6lxで,1 lx=

1

683W m−2である。

*5ここでは相対論的エネルギーを考えている。その詳しい意味や導出は相対論で学ぶ。

(5)

1 光の二重性 4

1.3

空洞輻射

2 4 6 8 10

1 2

u

4000K

7000K

5000K 6000K

ν

14

10 H

Z

10 J s m

-15 -3

問題6.M. Planckは,容器に閉じ込められた電磁波(空洞輻射)の単位振 動数あたりのエネルギー密度u(˜ ν,T)が

˜

u(ν,T) = 8πhν 3

c3 1

ek Thν −1

(1.7)

であることを導いた。ここでkはボルツマン定数である。 6-1.プランクの空洞輻射(1.7)の次元を求めよ。

6-2.hνkT の場合,(1.7)の近似式を求めよ。 6-3.hνkT の場合,(1.7)の近似式を求めよ。

6-4. (1.7)より,単位波長あたりのエネルギー密度u(λ,T) が

u(λ,T) = 8πch

λ5

1

eλc hk T −1

(1.8)

となることを示せ。またその次元を確認せよ。

6-5.u(λ,T) の最大値を与える波長λmaxに対してウィーンの変位則

λmaxT =2.90×10−3m·K (1.9)

が成り立つことを確かめよ。また太陽表面の温度T=5772 Kにおける λmaxを計算せよ。それはどんな光か? ま

た,宇宙背景放射の2.725 Kならλmaxはどれだけか? 超越方程式5−5e−y = yの非自明な数値解がy≑ 4.965で あることを使って良い。

1.4

ヤングの実験・テイラーの実験

L d

_ õ ¹

x r

1

r

2

O P

点光源 問題7.T. Youngは,右図のような二重スリットの実験を行い干渉縞が生

じることを確かめた。光を波と考えた場合,右端のスクリーン上に届く光 の強度は2つのスリットから来る光の重ね合わせと考えられるので,P点 での強度Iは

I(x;t)= E02 [sin

(kr1−ωt)

r1 +

sin(kr2−ωt) r2

]2

(1.10)

と近似できる。実験を十分長い時間続けると干渉縞ができることを,I(x;t) を計算することで示せ。L 2d,L xとする。

問題8.G. I. Taylorは,非常に弱い光でヤングの二重スリット実験を行い干渉縞が現れることを示した。用いたの は5.0×10−13Wの可視光。その振動数が5.0×1014Hzだとすると,光子は1秒間に何個やってくるか。また1

つの光子とその次に来る光子との間隔は何メートルか?

• 偏光

• 薄膜

• ニュートンリング • コヒーレント • 単スリット

(6)

量子力学演習 No.2 (May 14th, 2015) 5

2

原子模型

2.1

長岡–ラザフォードの水素原子模型

r

M

m

問題9.長岡−E. Rutherfordの水素原子模型について考える。以下,陽子の質量をM,電 子の質量をm,真空の誘電率をε0,電気素量をeとする。

9-1.静止した陽子を中心として,クーロン力によって電子が半径r,速さv で等速円運動 している*7。この系の全エネルギーEおよび円運動の加速度rω2,角速度ωをr の関数と してグラフで表わせ。Eの減少に伴って,r やrω2,角速度ωがどのように変化するか説

明せよ。

9-2.電荷を持った粒子が加速度運動すると電磁波を放射する。その放射によって単位時間 あたりに失うエネルギーPは,電荷q,加速度aの場合

P= q 2a2

6πε0c3 (2.1)

である。これをラーモアの公式とよぶ*8。長岡–ラザフォードの水素原子においても,この放射によってEが減少 する。ラーモアの公式を認めて,この現象を表す微分方程式を書け。

9-3.時刻t= 0における電子の軌道半径をrB として,前問の微分方程式からr =0になる時刻τを求めよ。また

以下の値を使ってτを数値的に計算せよ。この結果からどんなことが言えるか?

4πε0c2 =107A2N−1, rB =0.529×10−10m.

自習13.次の関係式を次元解析より導け。必要な物理量,物理定数は自分で選ぶこと。 13-1.ラーモアの公式(2.1)。ただし係数 1

6π は導けない。

13-2.ケプラーの第3法則(公転周期τ,軌道長径aに対して,τ2 a3)。 13-3.線密度 ρ,張力Sの弦に生じる横波の伝搬速度v を表す式。

2.2

ボーアの原子模型

水素原子の安定性を説明するため,N. Bohrは次の条件を考えた:

電子の円運動として許されるのは,(陽子の位置を原点とする)電子の角運動量の大きさmrvが

mrv=nℏ, n∈N=1,2,· · · (2.2)

を満たす定常状態だけである。また時々,高いエネルギーEn の定常状態から低いエネルギーEn′ の定常状態に 飛び移ること(遷移)があり,遷移のときにだけ

ω =EnEn (n>n) (2.3)

に対応する光子(電磁波)を放出する。(2.2) をボーアの量子条件,(2.3)をボーアの振動数条件という。この ように量子条件によって,古典的な軌道の中から許される軌道を選び出すことを軌道の量子化という。ここで ℏ:= h

2π =1.0545· · · ×10

−34J sはエイチバーまたはディラックのhと呼ばれる

*7本来は電子だけでなく陽子も動くため換算質量µ= M m

M+m を使うべきだが,簡単のため陽子は動かないとした。実際,Mはmの

1800倍以上あり,µ=9.105×10−31kgなので,µ→mに伴う理論誤差は高々0.05%に過ぎない。

(7)

2 原子模型 6

問題10.ボーアの量子条件を満たす電子の軌道半径rn と水素原子のエネルギーEnを,古典論と(2.2)とを組み 合わせて計算し,それぞれ下の形にまとめよ:

rn =

4πε0ℏ2 me2 n

2

=:aBn2, aB =0.529×10−10m, (2.4)

En =−81

πε0 e2 rn =

:ERyd

n2 , ERyd=13.6 eV. (2.5) またrnおよびEnをnの関数としてグラフで表わせ。n=1の状態を基底状態,その他の状態を励起状態という。 基底状態の軌道半径aBをボーア半径,エネルギーERyd をリュードベリ エネルギーという。正整数nは量子数と

呼ばれる*9

自習14. µ粒子(電荷は電子と等しく,質量は電子の207倍)が陽子に捕まってµ粒子原子を作る場合,その基

底状態の軌道半径は,通常のボーア半径の何倍になるか? 陽子は不動だとする。 問題11.水素原子の線スペクトル

ωnm:=

En−Em

ℏ =

ERyd

( 1 m2 −

1 n2

)   

m=1,2,3, . . .

n=m+1,m+2, . . . (n> m) (2.6)

に対して,mを固定し,n をm+1,m+2, . . . と変化させて得られるスペクトルの集まりを系列と呼ぶ。特に, m=1ならライマン系列,m=2ならバルマー系列,m= 3ならパッシェン系列と名前が付いている。ωnmに対 応する波長λnmを用いて,(2.6)を書き換えよ。また各系列の最短波長と最長波長を求めよ。各系列の電磁波の 名前は何か?

自習15.水素原子がn=4の定常状態からn=1の定常状態へ遷移した時に放出する光の振動数はいくらか? この光 子を放出する反作用によって,水素原子が得る反跳速度はいくらか? 水素原子の質量を1.67×10−27kgとする。

自習16.励起状態にある質量M の原子が運動量p(速さv)で運動しながら遷移し,エネルギーが∆E だけ低い 基底状態に移り,運動と同じ方向に振動数νの光子を放出した。原子の運動を非相対論的に扱った場合,運動量

保存則およびエネルギー保存則より

hν(1 v

c )

=∆E (2.7)

が成り立つことを示せ。また運動と逆方向に光子を放出するとどうなるか?

2.3

ボーア-ゾンマーフェルトの量子条件

A. Sommerfeldは,電子が楕円軌道を描いて運動している時にも量子条件を適用できるように,ボーアの量子 条件を以下のように一般化した:

I

pidqi =2πniℏ=nih (ni =0,1,2, . . .). (2.8)

ここでqi とpi はそれぞれ正準共役な一般化座標と一般化運動量である。左辺は,電子が軌道を1周する間の積 分を表す。添え字iに関して和は取らない。これをボーア-ゾンマーフェルトの量子条件という。

I

f(s)dsは,f(s) と線素dsの積を閉軌道に沿って足し上げる積分を表す。

自習17. x =0とx = Lにある固い壁の間を質量mの粒子が弾性衝突しながら往復運動している。この運動を位 相空間の図(横軸にx,縦軸にpをとった座標系)で表せ。またボーア-ゾンマーフェルトの量子条件を課した場 合,粒子のエネルギーにどんな制限がつくか述べよ。

自習18.全エネルギーがE= p 2

2m+ m

2

x2で表される調和振動子のエネルギー準位を求める。 18-1.調和振動子の運動を位相空間の図(横軸に x,縦軸にpをとった座標系)で表せ。 18-2.位相空間において,

I

pdqは何を表すか? ボーア-ゾンマーフェルトの量子条件から,エネルギー準位を求 めよ。

(8)

2 原子模型 7

2.4

ド・ブロイの物質波

L. de Broglieは,光(波)が粒子・波動の二重性を持つなら,電子など,これまで粒子と思われていたものも二 重性を持つはずだと考えた。つまり質量m,運動量p (p= |p|),エネルギーEの粒子の運動は

λ= h p =

2πℏ

p , ℏk = p, ℏω= E (2.9)

なる波長 λ,波数 k,角振動数ω の波動を併せ持つと仮説をおいた。この波動をド・ブロイ波または物質波と いう。

問題12.ド・ブロイの仮説を基にボーアの量子条件を波動性の観点から説明せよ。

自習19.問題12と同様な考察を自習17, 18に適用してみよう。うまく説明できるだろうか?

θ

d » \ Ê

問題13.右図のように,結晶面の法線方向から電子波を入射させると散乱波に 干渉縞が現れる。散乱波の強度が極大になる条件を求めよ。また,干渉縞を 効率良く観測するにはどうしたら良いか説明せよ。

自習20.自由電子の運動を考える。下の表で,与えられたエネルギーに対する 運動量とド・ブロイ波長を求めよ。自習ではなく問題にする。

エネルギーE(eV) 100 101 102 103 運動量p(kg m/s)

波長λ(m)

上の結果よりλをEの関数として両対数グラフで表せ。また,格子間隔が1 Åである結晶に電子線を照射して干 渉縞を見るには,何eV程度の電子線が必要か? λを 1

10 にするには,Eは何倍にする必要があるか? 自習21.次の粒子のド・ブロイ波長を求めよ。

21-1.加速器で3.00×107m/sまで加速した電子のド・ブロイ波。 21-2.加速器で3.00×107m/sまで加速した陽子のド・ブロイ波。

21-3.温度300 Kで熱平衡になっている質量1.67×10−27kgの中性子のド・ブロイ波。温度Tで熱平衡になってい

る粒子の平均運動エネルギーは 3

2kT である。

2.5

位相速度と群速度

分散関係 角振動数ωと波数k を結ぶ関係

ω =ω(k) (2.10)

を分散関係という。光(電磁波)や音の場合

ω=ck (2.11)

が成り立つ。ここで定数cは光または音の速さである。(2.11)のようにωがk に比例するとき,分散がないとい う。一方,比例以外の分散関係を持つとき,分散があるという。

自習22.音や光の速度に関して以下の問いに答えよ。

22-1.分散関係(2.11)を振動数νと波長λを用いて書き直せ。

22-2.分散のない1次元平面正弦波ψ(x,t) = Asin(k x−ωt) において,波の速度*10を求めよ。

自習 23. 自由粒子に対応するド・ブロイ波の分散関係を求めよ。前問と同様に1 次元平面正弦波 ψ(x,t) = Asin(k xωt)の振る舞いを調べ,波の速度が波数に依存することを示せ。

(9)

2 原子模型 8 屈折率 光が物質中を通る場合,分散関係は

ω = c

nk (2.12)

と書ける。nは屈折率である。nが波長に依存するなら,プリズムなどによって光を波長ごとに分けることがで きる。

自習24.振動数が一定の場合,屈折率の大きな物質に光が入射すると,波長はどう変化するか? 波の速度 分散関係が与えられると,2種類の速度が定義できる:

vph := ω

k, (2.13)

vg := dω

dk. (2.14)

前者を位相速度,後者を群速度という。群速度が定義できる条件 グライナー

d2ω

dk2 ≈0 (2.15)

自習25.群速度の物理的理解を深めるため,ほぼ等しい波数k1およびk2を持つ2つの1次元平面波

ψ1(x,t)=cos(k1x−ω1t), (2.16)

ψ2(x,t)=cos(k2x−ω2t) (2.17)

の重ね合わせ

ψ(x,t) =ψ1(x,t)+ψ2(x,t)

=2 cos (

k1−k2

2 x−

ω1−ω2

2 t )

cos (

k1+k2

2 x−

ω1+ω2

2 t )

(2.18)

を考える。ここでω1,ω2は,ある共通の分散関係ω =ω(k)により決まる角振動数を表す:

ω1=ω(k1), ω2=ω(k2). (2.19)

k1≃ k2であることを用いて,第1因子が空間的にゆっくり変動する波を表すことを示せ。さらにこの第1因子に

対応する波の速度が群速度(2.14)に等しいことを説明せよ。

自習26.自由粒子に対応するド・ブロイ波の位相速度および群速度を計算し,粒子の速度v = p

m と比較せよ。 粒子が力 F を受けて ds で表される軌跡に沿って運動するときエネルギーの変化はdE = F ·ds と書ける。

F= dp

dt であるから

dE = dp

dt ·ds= dp· ds

dt =v·dp (2.20)

となる。ここでvは粒子の速度。またvとpは平行なので

dE =vdp (2.21)

すなわち

dE

dp =v (2.22)

従って物質波の群速度は粒子の速度に等しい。 自習27.分散関係が

(10)

量子力学演習 No.3 (May 28th, 2015) 9

3

シュレーディンガー方程式

3.1

波動方程式

エネルギーE,運動量pを持つ自由粒子に対応するド・ブロイ波

p=k, E =ω (3.1)

の運動を支配する波動方程式およびその解を導く。 問題14.上のド・ブロイ波が,通常の1次元波動方程式

* ,

1

vph2

∂2 ∂t2 −

∂2

∂x2+-ϕ(x,t)=0 (3.2)

に従う正弦波で記述されると仮定し,Eと pとの関係式を導け。この関係式は自由粒子を表しているか?

自習28. E. Schrödingerは,自由なド・ブロイ波が満たす波動方程式が,時間に関して1階微分,座標xに関して 2階微分であるべきだと気付いた。その方程式を次の通りとする:

(

α∂ ∂t −

∂2 ∂x2

)

ψ(x,t) =0. (3.3)

28-1.方程式(3.3)に対し,試行解ψ(x,t) =cospx− Et +Bsinpx− Et を用いてαとBを定めよ*11。これによっ てシュレーディンガーが発見した波動方程式

iℏ∂

∂tψ(x,t)=−

ℏ2 2m

∂2

∂x2ψ(x,t) (3.4) およびその解が得られる。Bには符号の任意性があるので,(3.4)と一致するように選ぶ。

28-2.関数ψ1(x,t) = Ae

i

ℏ(p x−E t) およびψ

2(x,t) = Ae−

i

ℏ(p x+E t) も波動方程式(3.4)の解であることを確かめよ。 またこれらの関数にiℏ ∂

∂t および−i

ℏ ∂

∂x を作用させると,元の関数の何倍になるか?

3.2

Schrödinger

方程式

粒子にポテンシャルV(x)で表される保存力が働く場合,(3.4)は

iℏ∂

∂tψ(x, t) = [

−ℏ

2

2m

∂2

∂x2 +V(x) ]

ψ(x, t) (3.5)

と変更される。これをSchrödinger方程式と呼び,その解を波動関数という。3次元に拡張すると

iℏ∂

∂tψ(r, t)= [

−ℏ

2

2m△+V(r) ]

ψ(r, t) (3.6)

となる。は3次元のラプラシアンを表す。同じく,解を波動関数と呼ぶ。

問題15.波動関数がψ(r, t) = f(t)u(r) と変数分離できる場合を考え,f(t)およびu(r)が満たすべき方程式を導 け。ただしu(r)の方程式が次式になるようにまとめよ。

[

−ℏ

2

2m△+V(r) ]

u(r) = Eu(r). (3.7)

方程式(3.7)は時間微分を陽に含まないので,時間に依らないSchrödinger方程式と呼ばれる。その解である波動 関数はエネルギーが一定の定常状態を表す。

(11)

3 シュレーディンガー方程式 10

問題16.直線上を運動する質量mの自由粒子について調べる。変数分離できるψ(x, t) = f(t)u(x)と仮定し,波 動関数ψ(x, t)を求めよ。この波動関数はどんな波の重ね合わせか?

問題17.ポテンシャルV(x) の変化によって,波長λや波数 k,群速度vgがどのように増減するか調べる。V(x) は

V(x) = 

0 ifx< 0 領域I

V (定数) ifx> 0 領域II (3.8)

とする。シュレーディンガー方程式の試行解をψ(x, t)= Aei(k x−ωt)として分散関係ω(k)を各領域で求めよ。領 域IからIIへ入射させるとλやk, vgはどう変化するか? V ≷0それぞれの場合について述べよ。

問題18.シュレーディンガー方程式を使って水素原子のエネルギー準位を導く。

18-1.適当な仮定をおいてシュレーディンガー方程式を変形し,エネルギー準位を決定する方程式 [

− ℏ

2

2m ( d2

dr2 + 2 r

d dr

)

− e

2

4πε0r −E

]

u(r) =0 (3.9)

を導け*1218-2.境界条件 lim

r→∞u(r)→0と矛盾しない最も簡単な関数u(r) =e

−ξr を用いて

ξ = 1 aB

, E =−

ℏ2 2mξ

2 =−

ℏ2 2maB2

=−ERyd (3.10)

となることを示せ。

18-3.より一般の解を得るため試行解をu(r) = f(r)e−ξr と選び,f(r)に関する方程式を書け。また,f(r)が多項 式解 f(r) =c0+c1r+c2r2+· · ·+cn−1rn−1を持つとして,Enを求めよ。

問題19. x軸上のx= 0とx = Lの間に閉じ込められ,その間を自由に往復する質量mの粒子のエネルギー準位 を決めよ。その際,可能な量子数を明確にせよ。

周期境界条件を用いた場合。

問題20.長さLの軽い棒の一端を原点に固定し,他端に質量mの粒子を取り付ける。これを水平面内で回転させ る運動のエネルギー準位を求めよ。回転角をϕとし,波動関数ψ(ϕ)に周期境界条件ψ(0)=ψ(2π)を課す。量子 数nは,整数・非負整数・正整数のどれが正しいか?

自習29.復元力F(x) =−k xの1次元調和振動子を考える(k は正の定数)。 29-1.波動関数をu(x)としてシュレーディンガー方程式を書け。

29-2.x に対応する無次元変数ξ =αx,およびEに対応する無次元固有値λを導入して,方程式を d2u

dξ2 +(λ−ξ

2)u

=0 (3.11)

の形に変形せよ。αとξの表式も求めよ。

29-3.無限遠ξ → ±∞の漸近領域での振る舞いを調べることで,nを任意の有限値として,u(ξ) =ξne±12ξ2 が解で

あることを確かめよ。

29-4.H(ξ)を有限多項式として解をu(ξ) = H(ξ)e−12ξ2 とおき,H(ξ)に対する方程式を導け。

29-5.H(ξ)が有限次であることを用いて,エネルギー準位を求めよ。

*123次元極座標のラプラシアンが不明なら,https://sites.google.com/site/tomoyosemphysics/MiscにあるLaplacian-in-3pole.pdfを参照せ

(12)

量子力学演習 No.4 (June 18th, 2015) 11

4

波動関数の物理的意味

4.1

確率密度

波動関数ψ(r,t)によって記述される粒子を観測する時,その粒子を位置r近傍の微小体積d3r = dx dydzの中 で見つける確率は,波動関数ψ(r,t)の絶対値の2乗で与えられる:

r 近傍の微小体積d3r の中に存在する確率=|ψ(r,t)|2d3r =ψ∗(r,t)ψ(r,t)d3r. (4.1) ただし,次の規格化条件*13を満たす必要がある:

$

−∞|

ψ(r,t)|2d3r =

$

−∞

ψ∗(r,t)ψ(r,t)d3r =1. (4.2)

ψが規格化条件を満たさない場合には

$

−∞

[

Nψ∗(r,t)] [

Nψ(r,t)]

d3r =|N|2

$

−∞

ψ∗(r,t)ψ(r,t)d3r =1 (4.3)

となるように定数N を定め,Nψを改めて波動関数ψと定義する。この操作を波動関数の規格化という。なお規

格化された波動関数に対して|ψ(r,t)|2を粒子を見出す確率密度と呼び ρ(r,t)で表す*14:

ρ(r,t) := |ψ(r,t)|2 =ψ∗(r,t)ψ(r,t). (4.4)

問題21.波動関数がψ(r,t)=u(r)e−

i

ℏE t と書けるときρ(r,t)が時刻に依らないことを示せ。またエネルギーの基 準点をずらしても ρ(r,t)が変化しないことを説明せよ。

自習30.平面波解ψ(x,t)= N ei(k x−ωt)の場合,ρ(x,t)がxにもtにも依存しないことを示せ。またその理由を直 観的に説明せよ。

自習31. 次の1 次元波動関数を規格化し,ρ(x) をグラフで表せ。x ∈ [−L,L] とする。b とcでは,境界条件 u(L)=u(−L) =0からk を定めよ。

a. u(x) = N b. u(x) = Nsink L x c. u(x) = Ncosk L x

問題22.波動関数の規格化(4.2)の左辺が,時刻に依存しないことを示せ。波動関数やポテンシャルに,必要な条 件を課してよい。

自習32. ρ(x)のtに関する導関数を計算し,連続の方程式

∂ ρ(r,t)

∂t +∇ · j =0. (4.5)

を導け。j(r,t)は確率の流束*15と呼ばれる。j(r,t) の物理的意味を述べよ。

問題23.規格化された波動関数ψ(x,t)= N+ei(k x−ωt)+N−ei(−k x−ωt) に対して,確率の流束を求めよ。

自習33.x軸上を運動する自由粒子の波動関数の時間発展を調べる。初期条件としてt=0で

ψ(x,0) = 4 √

1

πa2 exp [

− x

2

2a2 +ik0x ]

(4.6)

とし,シュレーディンガー方程式の試行解として

ψ(x,t)=exp [

−α2(t)x2 β(t)xγ(t) ]

(4.7)

を選んで,α(t), β(t), γ(t)を定めよ。その結果を用いて,この波動関数の時間発展を説明せよ。

*13確率の総和は1であるため。総和が積分で表わされるのは,rが連続変数であるため。

*14存在確率密度と呼ぶことも多い。ただし,実際に存在しているのではなく,観測した時に見出す確率に過ぎない。

(13)

4 波動関数の物理的意味 12

4.2

物理量の期待値

確率密度関数が ρ(x)で与えられた場合,任意の関数 f(x)の期待値f(x)

⟨ f(x):=

∫ ∞

−∞

f(x)ρ(x)dx (4.8)

と定義する。よって波動関数ψ(x,t)で表される粒子の位置を測定した場合,その期待値x

⟨x=

∫ ∞

−∞

xρ(x,t)dx =

∫ ∞

−∞

x|ψ(x,t)|2dx =

∫ ∞

−∞

ψ∗(x,t)xψ(x,t)dx. (4.9)

で計算できる。

自習34.次の波動関数u(x)で表される粒子に対して,期待値xを計算せよ。結果の次元を確認すること。

a. u(x) = √1

δ (x ∈[a, a+δ]) b. u(x) =

1 √

a√π

exp [

−(x−b)

2

2a2 ]

c. u(x) = √1 a√π

exp [

−(x−v0t)

2

2a2 ]

問題24.水素原子の基底状態における波動関数はu1(r) = Nexp [

ar

B

]

であり動径r だけに依存する。これを規格 化し動径方向の確率密度関数P(r)を求めよ。また期待値rおよび確率密度が最大となる距離rmaxを計算せよ。 問題25.次の手順に従って運動量の期待値pを微分演算子の期待値で表せ。

25-1.速度の期待値(位置の期待値のtによる導関数)

⟨v⟩:= d dt ⟨x⟩=

d dt

−∞

ψ∗(x,t)xψ(x,t)dx (4.10)

をシュレーディンガー方程式とその複素共役を使って変形して

⟨v⟩= i

∫ ∞

−∞

[

(Hˆψ∗)xψψ∗x(Hˆψ)]dx (4.11)

の形にまとめ,Hˆ を書き下せ。

25-2.v⟩を演算子の期待値で表せ。またその結果を用いて次式を確認せよ。

⟨p=

∫ ∞

−∞

ψ∗(x,t) ℏ i

∂x ψ(x,t)dx = ⟨ i ∂ ∂x ⟩ . (4.12)

問題26.波動関数ψ(x,t)のフーリエ変換 ˜

ψ(p,t) = √1

2πℏ

∫ ∞

−∞

ψ(x,t)e−

i

ℏp xdx (4.13)

を用いるとpの期待値pは下のように書ける:

⟨p=

∫ ∞

−∞

˜

ψ∗(p,t)pψ˜(p,t)dp. (4.14)

26-1. (4.14)を計算し(4.12)と一致することを確かめよ。ただし無限遠で波動関数とその導関数は0とする。 26-2.同様に次式を証明せよ:

⟨ pn⟩

=

∫ ∞

−∞

ψ∗(x,t) (ℏ

i

∂ ∂x

)n

(14)

4 波動関数の物理的意味 13 問題27.全エネルギーEの期待値が,運動エネルギーの期待値とポテンシャルの期待値との和

⟨E= ⟨

p2 2m

+⟨V⟩ (4.16)

だと仮定し,Eを微分演算子の期待値で表せ。

問題28.任意の関数ϕ(x,t), ψ(x,t)に対して,内積ϕ, ψ

⟨ϕ, ψ:=

∫ ∞

−∞

ϕ∗(x,t)ψ(x,t)dx (4.17)

と定義する。ϕ(x,t)とψ(x,t)が遠方で十分早く0になる場合,次式が成り立つことを示せ*16 ⟨ ˆ

H ϕ, ψ=ϕ,ψ. (4.18)

問題29.問題25の手順を参考に加速度の期待値 d 2

dt2 ⟨x⟩を計算し, d

dt ⟨p⟩を書き下せ。結果をニュートンの運動 方程式と比較せよ。

問題30.波動関数ψ(x,t) = N(e3ik x+eik x)e−iωt に関して以下の問いに答えよ。x の範囲はx ∈[−π, π]で,kは 整数とする。次元の確認が分かりにくい。k を残すようにする? 周期境界条件?

30-1.この波動関数を規格化し,その次元を調べよ。 30-2.位置の期待値⟨xを求め,その次元を調べよ。 30-3.運動量の期待値pを求め,その次元を調べよ。 自習35.波動関数がϕ(x) = Nexp[− x

2

2a2 +ik0x ]

で表されるガウス型波束を考える。 35-1.位置の確率密度|ϕ(x)|2を求め,図示せよ。

35-2.運動量の確率密度|ϕ˜(p)|2を求め,図示せよ*17

自習36.シュレーディンガー方程式のガリレイ変換について,簡単のため1次元を例に調べる。座標系(x,t)に対 して一定の相対速度vで動く座標系(x′,t′)がある。2つの座標系の関係は

x′= x−vt, (4.19)

t′=t (4.20)

である。当然2つの座標系は本質的に同等なので,どれを使っても同じ物理現象を記述できるはずである。従っ て座標系(x′,t′)でも,座標系(x,t)と同じ形のシュレーディンガー方程式

iℏ∂ψ ′(x,t)

∂t′ =

[

−ℏ

2

2m

∂2 ∂x′2 +V

(x)]ψ(x,t) (4.21)

が成り立つ。ただしV(x)=V′(x′)である。

36-1.同じ物理現象を表すためには,各座標系での波動関数ψ(x,t)およびψ′(x′,t′)から決まる確率密度も等しい はずである。従ってその違いは位相因子だけとなる:

ψ′(x′,t′)=ei S(x,t)ψ(x,t). (4.22)

実関数S(x,t)が満たすべき方程式を導け。

36-2.v=0でei S(x,t) =1となる境界条件の下でS(x,t)を決定せよ。

36-3.ψ′(x′,t′)を用いて確率の流束 j′(x′,t′)を求め j(x,t)と比較せよ。この結果から何が言えるか?

*16 ここで積分範囲を−∞ → ∞としているが,xの定義域によって変わる場合がある。例えば、−π→πなど。 *17φ˜(p)はφ(x)のフーリエ変換を表す。(4.13)を参照。積分公式

0 e

−x2

cos 2λx dx=

√ π 2 e−

λ2

(15)

量子力学演習 No.5 (July 2nd, 2015) 14

5

量子力学の成立

5.1

物理量と演算子

量子力学の体系では,系の物理的情報は波動関数が保有する。状態を決める事から波動関数を状態関数ともい う。一方,位置や運動量などの物理量は,状態関数に作用する演算子になる。位置xと運動量px の演算子は

ˆ

x= x· (5.1)

ˆ

px =−iℏ ∂

∂x (5.2)

である。xˆの後の·は,「xを掛ける」ことを表す。pˆ=−iℏ ∂

∂x の様に微分を含むものを微分演算子と呼ぶ。演算 子だと明示するためハットˆをつける。3次元空間内の運動では,位置r と運動量pの演算子は

ˆ

r =(xˆ, yˆ, z)ˆ = (x, y, z), (5.3)

ˆ

p=−iℏ∇=−iℏ ( ∂

∂x,

∂ ∂y,

∂ ∂x

)

, (5.4)

それらの期待値は

⟨rˆ=⟨ψ,rψ⟩, (5.5)

⟨pˆ=⟨ψ,−iℏ∇ψ⟩ (5.6)

となる。ここで,前節で定義した内積⟨ϕ, ψを3次元に拡張した:

⟨ϕ, χ=

$

−∞

ϕ∗(r, t) χ(r, t)d3r. (5.7)

以下,内積の記号⟨ψ, χは常に対象とする全空間積分とする。またこの記号をブラケットと呼ぶ。

■演算子同士の和や積 演算子 AˆとBˆ の積 AˆBˆ は,関数に近い方から順に作用させる:

(AˆB)ˆ ψ = A(ˆ Bˆψ). (5.8)

分配法則が成り立つ: (ˆ

A(Bˆ +C)ˆ )ψ = (AˆBˆ+ AˆC)ˆ ψ, ((Aˆ+B)ˆ Cˆ)ψ = (AˆCˆ+BˆC)ˆ ψ, (5.9)

ただし,一般に交換法則は成り立たない: ˆ

ABˆ , BˆAˆ ⇐⇒ AˆBˆBˆAˆ ,0. (5.10)

このとき,AˆとBˆ は非可換であるという。一方,演算子同士の積が交換するとき ˆ

ABˆ = BˆAˆ⇐⇒ AˆBˆ−BˆAˆ =0 (5.11)

ˆ

AとBˆ は可換であるという。

(5.10),(5.11)式に現れたAˆBˆ BˆAˆを交換関係あるいは交換子と呼び

[ ˆA, Bˆ] := AˆBˆ−BˆAˆ (5.12)

と書く。特に位置と運動量の交換関係を正準交換関係という:

[ ˆx, pˆ]=iℏ. (5.13)

(16)

5 量子力学の成立 15 問題32.次の交換関係を計算せよ。nは非負整数とする。

a)[ ˆx, pˆ2] b)[ ˆx, pˆn] c) [ ˆx2, pˆ] d) [ ˆxn, pˆ]

問題33.次の関係を確認せよ。1次元なのでpˆx をpˆと書く。

d dt ⟨x⟩=

i

ψ,[Hˆ

, xˆ]

ψ⟩, d

dt ⟨p⟩= i

ψ,[Hˆ

, pˆ]

ψ⟩. (5.14)

またその結果から,[Hˆ

, xˆ] [Hˆ

, pˆ] ˆ

x, pˆなどを用いて表わせ。何がしたいのか分かりにくい。 問題34.3次元における正準交換関係

[ˆrk, pˆl]=iℏδk l, [ˆrk, rˆl]=0, [ ˆpk, pˆl]=0. (5.15)

を確認せよ。ただしk,l=1,2,3で1はx成分,2はy成分,3はz成分を表す。またδk l は

δk l =  

1 (k =l)

0 (k ,l) (5.16)

という関数で,クロネッカーのデルタと呼ばれる。

問題35.古典力学において,角運動量LはL= r ×pと与えられる。

35-1.古典力学における角運動量のx, y, z成分を x, y, zと運動量px, py, pz とを使って書け。

35-2.r と pを演算子に変えて,量子力学的な角運動量演算子を書け。

35-3.角運動量の交換関係を計算し,

[Lk, Ll]=iℏϵk l mLm (5.17)

となることを確かめよ。ここで

ϵk l m =   

ϵ123=ϵ231= ϵ312 =1

ϵ321=ϵ213= ϵ132 =−1

0 (その他)

(5.18)

である。

自習37.交換子の定義を使って次の恒等式を確かめよ。ただし,αは任意の複素数とする。

[ ˆB, Aˆ]=−[ ˆA, Bˆ], [A, A]=0, (5.19) [ ˆA, Bˆ+Cˆ]=[ ˆA, Bˆ]+[ ˆA, Cˆ], [ ˆA, αBˆ]= α[ ˆA, Bˆ] (5.20) [ ˆABˆ, Cˆ]= Aˆ[ ˆB, Cˆ]+[ ˆA, Cˆ] ˆB, [ ˆA, BˆCˆ]=[ ˆA, Bˆ] ˆC+Bˆ[ ˆA, Cˆ], (5.21)

[ ˆ

A, [ ˆB, Cˆ]]

+[Bˆ, [ ˆC, Aˆ]]+[Cˆ, [ ˆA, Bˆ]]=0. (5.22)

✎最後の式は,特にJacobi恒等式呼ばれる。代数学で重要な関係式である。

5.2

状態・状態ベクトル・重ね合わせの原理

以下,「状態関数(波動関数)とその微分は遠方で十分早く0になる」と仮定する。任意の演算子 Aˆの期待値は,

⟨Aˆ=⟨ψ,Aˆψ⟩ (5.23)

と書ける。特に,同じ関数同士の内積ψ, ψは頻出し,その平方根を

∥ψ:=√⟨ψ, ψ⟩ (5.24)

(17)

5 量子力学の成立 16

重ね合わせの原理:φ(r,t)とψ(r,t)が,同じシュレーディンガー方程式を満たす質量mの粒子の状態関数な

らば,任意の複素数α,βを係数とするφとψの線形結合

αφ(r,t)+ βψ(r,t) (5.25)

も同じシュレーディンガー方程式を満たす状態関数である。 問題36.重ね合わせの原理が成り立つことを確かめよ。 問題37.内積とノルムに関して以下の問いに答えよ。

37-1.内積の中の左右の関数を入れ替えると元の内積の複素共役になること

⟨ψ, φ=⟨φ, ψ⟩∗ (5.26)

を証明せよ。

37-2.任意の複素数αに対して

0 ≤ ∥φ+αψ∥2 (5.27)

が成立することを利用して,シュワルツの不等式

|⟨φ, ψ⟩| ≤ ∥φ∥ ∥ψ (5.28)

を証明せよ。等号が成り立つのはφがψの定数倍φ =αψのときであり,この場合φとψは平行であるという。 一方,恒等的に0でないφとψとの内積が0の場合,φとψは直交するという。

37-3.任意の状態関数ψは,ψと1次独立な状態関数 χを用いて

ψ=ψ∥+ψ⊥, ψ∥ = ⟨χ, ψ⟩

∥χ2 χ, ψ⊥=ψ−

⟨χ, ψ

∥χ2 χ, (5.29)

と分解することができる。ψ が χに平行な成分で,ψが χに垂直な成分であることを示せ。前者ψをψの正

射影ともいう。内積やノルムを定義することで,状態関数ψ(x,t)を無限個の成分を持つベクトルと考えることが できる。するとノルム∥ψはベクトルψの大きさと見なすことができる。この観点では,ψは状態ベクトルと呼 ばれる。

5.3

観測・物理量・演算子のエルミート性

■エルミート演算子 ψ(r,t)と χ(r,t) を任意の状態関数とするとき,演算子Aに対して

$

−∞

ψ∗(r,t)Aˆ χ(r,t)d3r =

$

−∞

Bψ(r,t))∗

χ(r,t)d3r (5.30)

を満たすBˆを Aˆ のエルミート共役といい,Aˆ†と書く。すなわち

$

−∞

ψ∗Aˆ χd3r =

$

−∞

( ˆ A†ψ)∗

χd3r. (5.31)

特に Aˆ†= Aˆである演算子をエルミート演算子という

*18。演算子Fˆ がエルミートである条件は $

−∞

ψ∗Fˆ χd3r =

$

−∞

(ˆ Fψ)∗

χd3r. (5.32)

である。ブラケットで表すと,以下の通り:

⟨ψ,Aˆχ=⟨Aˆ†ψ, χ⟩ (5.33)

⟨ψ,Fˆχ=⟨Fˆψ, χ⟩ (5.34)

(18)

5 量子力学の成立 17 問題38.演算子に関して以下の問いに答えよ。

38-1.演算子 Aˆのエルミート共役 Aˆ†が一つに定まることを確かめよ。

38-2.演算子 Aˆ,Bˆの線形結合αAˆ+ βBˆ および積AˆBˆ に対して,そのエルミート共役は

(αAˆ+ βB)ˆ † =α∗Aˆ†+ β∗Bˆ†, (AˆB)ˆ †= Bˆ†Aˆ† (5.35)

と与えられる。これらを確かめよ。

38-3.エルミート演算子の期待値が実数になることを示せ。 38-4. ˆAとAˆ†に対して次の関係式が成立することを示せ:

⟨ψ,Aˆ†φ=⟨φ,Aˆψ∗. (5.36)

一般に物理量の期待値は実数なので,物理量を表す演算子はエルミートでなくてはならない。 38-5.位置演算子xˆ,運動量演算子pˆ=−iℏ ∂

∂x,および位置と運動量の積xˆpˆがエルミートかどうか調べよ。 38-6.角運動量演算子L= (Lx, Ly, Lz)およびハミルトニアンHˆ がエルミートであることを示せ。

5.4

固有値問題

問題39.同じ状態のψをいくつも用意し,それらに対して物理量 Aˆを測定すると,通常いろいろな測定値が得ら れる。すなわち測定値の分散

⟨(∆A)ˆ 2ψ :=⟨ψ,(Aˆ− ⟨Aˆ⟩ψ)2ψ⟩ (5.37)

は0より大きな値をとる。ここで∆Aˆは偏差であり,⟨Aˆψ は状態ψに対する期待値を表す:

∆Aˆ := Aˆ− ⟨Aˆ⟩ψ, ⟨Aˆ⟩ψ :=⟨ψ,Aˆψ⟩. (5.38)

特別な場合として Aˆ を測定したときの分散が0となる状態をuとする。uが恒等的に0でない限り ˆ

Au=au (5.39)

が成立することを示せ。ここでa:=⟨Aˆ⟩u である。

aやuは,演算子Aˆによって決まる特定なものである。この方程式を満たすaを Aˆ の固有値,uを固有値aに 属する固有関数(固有状態)と呼ぶ。また(5.39)のような方程式を固有値方程式または固有値問題という。 問題40.x軸上の x=0,Lにそびえる剛体壁の間を自由に運動する質量mの質点を考え

40-1.エネルギー固有状態uを求めるためのシュレーディンガー方程式を書け。 40-2.剛体壁の内側での一般解を求めよ。

40-3.境界条件u(0) =u(L) =0を採用し,エネルギー固有値Enを求めよ。その際,量子数nを具体的に定めよ。

40-4.規格化することで,エネルギーEn に属する固有関数unを計算せよ。

40-5.固有関数un(x) の集合{un(x)}について,異なる固有値に属する固有関数が互いに直交すること

⟨un,un′⟩=δnn′ (5.40)

を確かめよ。この性質を正規直交性という。正規には,規格化されているという意味がある。またun を用いて, ψ(0) =ψ(L) =0を満たす任意の関数ψ(x)を

ψ(x)=

n=1

γnun, γn=⟨un, ψ⟩ (5.41)

(19)

5 量子力学の成立 18

問題41. Aˆ の固有関数ではない状態ψで Aˆ の測定をしたとき,固有値anが得られる確率を考える。ここでAˆの 固有値an (n=0,1,2. . .) に属する固有関数をunとし,{un(x)}は完全正規直交系をなすとする。

41-1.ψをunで展開し,その展開係数γnを求めよ。

41-2.ψが規格化されている,すなわちψ, ψ=1であることを利用して次式を導け。

n=0

|γn|2=1 (5.42)

41-3. ˆAを測定したときの期待値ψが

⟨Aˆψ =

n=0

|γn|2an (5.43)

となることを示せ。この式から,状態ψでAˆの測定をするとき測定値anが得られる確率は|γn|2である という ことが言える。一般にこのγnを確率振幅という。

5.5

ハイゼンベルグの不確定性関係

問題42.ある状態ψに対して位置xˆ と運動量pˆを測定した場合を考える。 42-1. ˆx とpˆそれぞれの期待値をψの内積を使って表せ。

42-2. ˆx とpˆそれぞれの偏差∆xˆ,∆pˆおよび分散分散(∆x)ˆ 2(∆p)ˆ 2を書け。 42-3. ˆx とpˆの正準交換関係を利用し,∆xˆと ∆pˆの交換関係を導け。

42-4.任意の状態ψに対して,xˆとpˆの標準偏差∆x = √

⟨(∆xˆ)2と∆p= √

⟨(∆p)ˆ 2との間に

∆x∆p≥ ℏ2 (5.44)

なる不確定性関係が成り立つことを示せ。任意の実数αに対して,(∆xˆ+iα ∆p)ˆ ψのノルムの2乗

∥(∆xˆ+iα ∆p)ˆ ψ∥2=⟨(∆xˆ+iα ∆p)ˆ ψ, (∆xˆ+iα ∆p)ˆ ψ⟩ (5.45)

が非負であることを利用すると良い。

問題43.次のガウス型波束に対して不確定性関係を確かめよ。

ψ(x) = √

α πexp

[

−α2(xa)2+ibx] (5.46)

(20)

5 量子力学の成立 19

問題44. x軸上のx =0,Lにそびえる剛体壁の間を自由に運動する質量mの質点を考える。この状況は下のポテ ンシャルV(x)で表される。

V(x) =

0 (0 x L),

∞ (x 0,L x). (5.47)

44-1.エネルギーに対応する演算子ハミルトニアンH =

2

2m d

dx +V(x)の固有状態をu(x) と置き,固有値方程

式を書け。

44-2.剛体壁の内側での一般解が次のようになることを確かめよ。

u(x)= Asin

2mE

ℏ x+Bcos √

2mE

ℏ x (5.48)

44-3.境界条件u(0) =u(L) =0より,Bと

2mE

ℏ が次式の通りに求まることを示せ。

B=0,

2mE

ℏ =

L (n=1,2, . . .). (5.49)

44-4.エネルギー固有値Enが次式になることを確かめよ。ただしnは量子数である。

En = π 22

2mL2n

2 (n

=1,2, . . .). (5.50)

44-5.規格化により振幅 Aを決定し,エネルギーEnに属する固有関数unが

un(x) = √

2 L sin

L x (5.51)

で表されることを示せ。内積を考える範囲は0 x Lでよい。

44-6.固有関数un(x) の集合{un(x)}について,異なる固有値に属する固有関数が互いに直交すること

⟨un,un′⟩=δnn′ (5.52)

を確かめよ。この性質を正規直交性という。

ψ(0) =ψ(L) =0を満たす任意の関数ψ(x)を

ψ(x)=

n=1

γnun, γn=⟨un, ψ⟩ (5.53)

のように展開することができる。この性質を完全性いう。この {un(x)}のように,正規直交性と完全性を持つ関 数の集合を完全正規直交系と呼ぶ。

(21)

量子力学演習 No.7 (July 25, 2013) 20

6

井戸型ポテンシャル

6.1

井戸型ポテンシャルに束縛された状態

問題45.束縛状態のモデルとして x軸上の引力ポテンシャル場V(x)

V(x)= 

0 a< x< a

V0 |x| > a (V0 >0) (6.1)

の下で運動する質量mの粒子を考える。

45-1.V(x)を図示せよ。図示した形から、(6.1)で表されるポテンシャルは井戸型ポテンシャルと呼ばれる。 45-2.定常状態ψ(x,t) =u(x)e−i E t/ℏに対するシュレーディンガー方程式

[

−ℏ

2

2m d2

dx2 +V(x) ]

u(x) = Eu(x) (6.2)

を領域ごとに分けて書け。ここでEはエネルギー固有値とする。

以下、境界条件『x → ±∞でu0』および接続条件『x =±aで波動関数とその微分が滑らかつながる』の下で 議論する。

45-3.領域I (x > a)でE V0と仮定し、シュレーディンガー方程式(6.2)の解を求めよ。さらに、E ≥ V0の場

合、境界条件を満たす非自明な解が存在しないことを示せ。

45-4.領域IでE <V0と仮定し、方程式(6.2)の境界条件を満たす解を求めよ。

u(x) = Ae−αx+Beαx (6.3)

の形で求めよ。

45-5.領域II (x <a)で、シュレーディンガー方程式(6.2)の境界条件を満たす解を(6.3)と同じ形で求めよ。 45-6.領域III (|x| <a)でE >0と仮定し、シュレーディンガー方程式(6.2)の解を下の形で求めよ。

u(x) =Ccosk x+Dsink x (6.4)

45-7.得られた波動関数に対して接続条件を課し、2種類の独立な解(解が満たす条件)があることを示せ。 45-8. 2種類の解のうち、D=0である解us(x)を具体的に書き表せ。

45-9.D=0の場合、ξ = k a、η =αaとおき、45-7.の条件とξ2+η2の値を計算せよ。 45-10.この2つの式をξη 平面で図示し、その交点(ξn, ηn)を見出せ。

45-11.交点の座標を(ξn, ηn)とし、エネルギー固有値Enを求めよ。この結果から、エネルギー固有値が離散的で あることがわかる。

45-12. 2種類の解のうち、C=0である解ua(x)について、45-8∼11.を繰り返せ。

45-13.ポテンシャルの体積V0a2を大きくし √

2mV0a2

ℏ2 の値を増加させると、どの様にエネルギー準位が埋まっ ていくか述べよ。

45-14.得られた波動関数をエネルギーの低い順序に図示せよ。

45-15.n 番目の波動関数がn1 個の節を持つことを確かめよ。および(1)n−1 のパリティを持つことを確か めよ。

(22)

6 井戸型ポテンシャル 21

6.2

波動関数の滲みこみと無限に深い井戸

井戸型ポテンシャル場における束縛状態の波動関数 un(S) と u(A)n は、壁の外側に滲みこんでいる。u(S)n = Cn(S))cosknae−αn(x−a) の場合、その滲みこみ距離lnは次式で与えられる。

ln∼ 1

αn =

ℏ2 2m(V0−En)

(6.5)

これは、En < V0 の場合、古典的には決して入り込めない壁の外側に粒子が見つかる確率が有限であることを意 味する。この現象は、量子力学に特有な現象でトンネル効果と呼ばれる。

問題46.前回の問題で、ポテンシャルの高さが無限V0→ ∞の場合を考える。 46-1.偶パリティ状態に対して、ξn とEn、波動関数を求めよ。

46-2.同様に、奇パリティ状態に対して、ξnとEn、波動関数を求めよ。

46-3.得られた波動関数をエネルギーの低い順序に図示せよ。

6.3

運動量の固有状態

ポテンシャル内部の波動関数はcosknxやsinknxなので、時間に依存する部分e−i Ent/

との積も含めると ei(knx−Ent)/ℏ, または

e−i(knx+Ent)/ℏ (6.6)

である。この波動はそれぞれ、波数kn = pn/ℏで xの正方向に進む波と波数−kn =−pn/ℏで xの負方向に進む 波を表す。

この状態は、エネルギーの固有状態と同時に運動量演算子pˆ=−iℏ d

dx の固有状態でもある。 ˆ

pup(x) =−iℏ d

dxup(x)= pup(x) (6.7)

を満たす関数は(6.6)式のup(x) =ei p x/

の形だけである。このup(x)の規格直交条件は

⟨up′,up=|N|2

∫ ∞

−∞

e−i p′x/ℏei p x/ℏdx =|N|2

∫ ∞

−∞

ei(p−p′)x/ℏdx =δ(p−p′) (6.8)

で与えられる。ここでδ(pp′) は、任意の滑らかな関数 f(p)に対して次式を満たすデルタ関数である。

−∞

f(p)δ(p−p′)dp= f(p′). (6.9)

デルタ関数だけを積分すると下の通りになる。 ∫

D

δ(p−p′)dp= 

1 (p′がDに含まれる)

0 (p′がDに含まれない) (6.10)

問題47.運動量の固有関数up(x) を(6.8)を使って規格化すると

up(x) = 1

2πℏe i p x/ℏ

(6.11)

となることを確かめよ。ここで次のデルタ関数の公式を使ってよい。

∫ ∞

−∞

eiq xdx=2πδ(q), δ(ax)= 1

(23)

6 井戸型ポテンシャル 22

6.4

ポテンシャル障壁とトンネル効果

ポテンシャルの壁が有限の厚さの場合、古典的には進入が禁止されている壁を粒子が透過する現象としてトン ネル効果が現れる。

問題48.質量mの粒子をx軸の負の側から斥力ポテンシャル場V(x)

V(x) =

V0 −a < x < a

0 |x|> a (6.13)

に入射する。このポテンシャルによって、粒子が反射・透過する状態を考える。

ここでは、束縛条件を考えているわけではないので、波動関数ψ(x,t)は無限遠で0になる必要はない。 48-1.定常状態ψ(x,t) =u(x)e−i E t/ℏに対するシュレーディンガー方程式

[

−ℏ

2

2m d2

dx2 +V(x) ]

u(x) = Eu(x) (6.14)

を領域ごとに分けて書け。ここでEはエネルギー固有値とする。 48-2.E <V0の場合を考える。波動関数ψ(x,t)を下の形で求めよ。

ψ(x,t) =e−iωt  

eik x+Re−ik x (x < −a) Aeαx +Be−αx (−a < x < a) T eik x (a< x)

(6.15)

各項はどんな状態の波動を表すか?また全領域で角振動数ωを一致させているのはなぜか?

48-3. 2つの境界x =±aでの接続条件(波動関数が滑らかにつながる)を書け。 48-4.上の接続条件より、T とRを求めよ。

48-5.ポテンシャルの外側における確率密度の流束 j(x,t)

j(x,t) =

2mi [

ψ∗dψ

dx − dψ∗

dx ψ ]

(6.16)

を求めよ。

48-6.透過率T = 透過する流束

入射する流束 および反射率R =

反射する流束

(24)

参考文献 23

参考文献

[1] 江沢洋. 量子力学I. 裳華房, 2002.

[2] 江沢洋. 量子力学(基礎演習シリーズ).裳華房, 2002.

[3] Walter Greiner. グライナー量子力学. シュプリンガー・フェアラーク東京, 1991. 伊東伸秦 早野龍五 監訳. [4] 原康夫. 量子力学. 岩波基礎物理シリーズ.岩波書店, 1994.

[5] 原田勲,杉山忠男. 量子力学. 講談社基礎物理学シリーズ.講談社, 2009. [6] 猪木慶治,川合光. 量子力学. 講談社, 1994.

[7] 小出昭一郎,水野幸夫.量子力学演習. 基礎物理学選書17.裳華房, 1978. [8] 前野昌弘. よくわかる量子力学. 東京図書, 2011.

[9] 小野寺嘉孝. 演習で学ぶ 量子力学. 裳華房フィジックスライブラリ.裳華房, 2002. [10] Leonard I. Schiff. 量子力学. 物理学叢書2.吉岡書店, 1970. 井上健 訳.

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参照

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