生物行動をコンピュータ内で進化させる

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全文

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生物行動をコンピュータ内で進化させる

大学院情報科学研究科 准教授

山本

や ま も と

雅人

ま さ ひ と

(工学部情報エレクトロニクス学科情報工学コース)

専門分野 : 複雑系工学

研究のキーワード : 複雑系,人工知能,人工生命,最適化

HP アドレス : http://www.gammon.jp/masahito

何を目指しているのですか?

ヒトなどの生物がもつ知性をコンピュータの中に実現することを目指しています。ヒト などの高度な生物はもちろん、動物や昆虫、微生物でも、手足を動かして歩いたり走った り、周りの環境を認識しながら餌を食べたりして生活しています。この何気ない行動です ら、高性能なコンピュータを内蔵したロボットでさえも実現するのは非常に困難なのです。 このように生物が行動するしくみを人工的に実現することができれば、賢く振る舞うロ ボットやヒトの代わりにいろいろな仕事を効率良くこなしてくれるコンピュータが作れる でしょう。

具体的にはどのような研究をしているのですか?

コンピュータ内に知性を創りだすためには、大きく分けて2つの方法が考えられます。 1つは、人工知能と呼ばれるコンピュータにとって得意な方法(実際の生物とは異なる方 法)によって知性を創りだそうとするものです。もう1つは、人工生命の研究で見られる ヒトなどの生物が実際に行なっているような脳のしくみを利用するものです。私たちは後 者の方法によって生物がもつ知性を創りだすことに挑戦しています。生物は一般に、感覚 器から受け取った情報を脳内で処理し、運動神経への出力として信号を伝達することで行 動します。そのような脳内の情報処理を複雑系の技術を用いて模倣することができれば、 知性を人工的に創りだすことができると考えるのです。

私たちはそのために、重力や地面との摩擦、物体同士の衝突、空気抵抗や水の抵抗など の現実世界の現象を高速にシミュレートできる仮想的な環境をコンピュータ内に用意し、 図1のような生物を模し

た仮想ロボットをモデル 化(デザイン)します。 その際、動かせる関節の 位置や可動域なども指定 し、環境を知覚するセン サがつけられます。

そして、各関節をどの ように動かすかを行動コ ントローラ(人間の脳の

出身高校:北海道札幌旭丘高校 最終学歴:北海道大学大学院工学研究科

情報

図1 コガネムシを模した仮想ロボット

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しくみを真似たニューラルネットワーク)によって決定し、実際に仮想環境内で行動をし てみます。はじめは行動コントローラがランダムに与えられるため、手足をバタバタさせ るようなランダムな行動をしますが、「より遠くに移動するような行動コントローラには良 い評価を与える」、ということを数百、数千回のシミュレーションを通して行う進化型計算 と呼ばれる方法を用いることにより、より遠くにうまく移動することのできる行動コント ローラが自動的に進化していきます。これは、まさにヒトが赤ちゃんから成長していくに したがって、歩いたり手足を自由に動かしたりすることができる成長過程に似ています。 結果的に得られる行動コントローラは、環境の状態を認識し、適切な行動をするものと なります。その様子は、生物が実際に行動しているものと錯覚するほどのものです。驚く べきことは、実際に手足をどのように動かせばよいか、を私たちが教えてあげなくても、 仮想ロボットは、コンピュータ内の膨大な数のシミュレーションの結果によって、自分で 進化していくのです。この方法を発展させていくことで、外敵から身を守りつつ餌を探す、 といったもっと複雑な行動も自動的に進化させることができると考えて研究を行なってい ます。

実際の生物そっくりの行動が 自動的に作成できると、リアル なCGアニメーションも簡単に 作ることができます。図2はア ゲハチョウを草原で飛ばしたと き の 様 子 を 示 し た ス ナ ッ プ ショットです。実際の映像を見 ると、本物のアゲハチョウが飛 んでいるように思うかもしれま せん。映画のワンシーンにも応 用できることは容易に想像がで きるでしょう。

研究のモットーは何ですか?

研究はとても楽しいものです。「いつも夢をもって楽しく研究をする」ことをモットーに しています。夢に向かって努力した結果、ときには失敗や挫折をすることがあるかもしれ ません。でも、そういった試行錯誤の過程を通して、「今まで知らなかったことを知った」、 「今までできなかったことができた」、ときのワクワクするような知的興奮を味わえること があります。このような感覚を味わうことができるのは、新しいことに挑戦していく「研 究」ならではだと思います。皆さんも私たちと一緒にその興奮を味わってみませんか?

参考書

(1) 古川正志,山本雅人,他共著,『メタヒューリスティクスとナチュラルコンピューティ

ング』,コロナ社(2012)

図2 アゲハチョウが草原を飛んでいる様子

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参照

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