海外の経済成長の取り込
み
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(1)
企業活動のグローバル化と所得分配
海外売上高比率が高まって需要の期待成長率が改善すれば、輸出や海外投資からの収益 を先取りする形で国内での支出や賃金等への 支払いが増加する可能性もでてくる。
企業の需要見通しの改善には海外売上高比率の上昇が鍵
リーマンショック後の持ち直し局面において、設備
投資や雇用の回復が力強さが背景の一つとして、企業 の中期的な成長期待の低さが挙げられる。
中期的な成長期待の低さは、成長実績の低さの影響 を受けている面もあるが、加えて、将来的な人口の減 少による内需へのマイナス効果が指摘されることが多 い。
「業界の需要見通
し」と「経済見通し」
を比べると、
2000
年
代においては、一貫し
て需要見通しが経済見
通しを下回っている。
要因
回答企業には、非製造業、卸 売小売、不動産など内需に影響され やすい業種が社数ベースで多いこと が考えられる。実際、非製造業では 製造業と比べて需要見通しが経済見 通しを大幅に下回っている。
加工型、素材型
海外売上高比率の引き上げは大
きな影響を持っており、1年後の想 定為替レートが採算為替レート対比 で10円円高になると、需要見通し が0.15%程度低下する関係も明ら かになった。
企業活動のグローバル化は従業員への利益配
分を抑制
ここからは、海外売上高比率、資金調達な
いしコーポレートガバナンス面での指標とし て外国人持株比率を取り上げる。
海外売上高比率は、 2000 年代を通じてほ ぼ単調に上昇してきている。
大企業では、内部留保
、設備投資、株主への還 元が 5 割以上となってお り、従業員への還元は 2
割強である。一方、製造 業が 2008 年から、急速に
企業活動のグローバル化は労働分配率を押し下げ るが賃金にはプラスの効果
2000 年代前半は、予想された ように分配率の押し上げに寄与す るのに対し、後半は、海外売上高 比率の効果が検出されない。
海外売上高比率等の賃金への影
響を分析すると、前半については 、海外売上高比率、外国人持株比 率の両方、後半については、外国 人持株比率のみが賃金の押し上げ に寄与している。
(2)
海外投資収益の還流
日本
の投資収益については、
他
の先
進
国と比べて収益率が低いのではない
か、
得
られた収益は、
現地
での
再
投資
に回され、国内に
還流
していないので
日本の投資収益のシェアはアメリカやユーロ圏と 比較した場合には低い水準
第一に欧米諸国、第二に中国、そ の他の新興国が存在感を増している。 欧米諸国は、受取、支払を両建て
で膨張させたが、リーマンショック後 は大幅な縮小を経験した。
中国では、受取、その他の新興国 では支払が増加し、リーマンショック 後の落ち込みも小さかった。
2010 年時点でも、 15 兆
円程度の水準であるのは、
米国債等の証券投資から得
られる収益により、 2007 年までの投資収益の拡大の
主たる要因もその増加であ る。 2010 年時点では、直
接投資収益が受取収益全体
直接投資収益の動きの 背景には、 2005 ~ 2007 年にかけての円安進行、
対外直接投資の残高増加
があるが、中国などのア ジア向け投資の増加が必 要である。
北米
、
欧州
、
アジア
以
外の
「
その
他」
の
割合
が高まっており
、資
源
国への投資が
収益を上げつつある
直接投資比率を高めることで投資収益
率の改善が可能
対外投資においては
、直
接
投資のリスクが
相
対的に高いと考えら
れる。長期
間
で
平均
す
ると、直
接
投資は
証券
投資残高に占める直接投資の比率
をリスクの指標として収益率との関 係を分析すると、右上がりの関係が 検出され、カナダやスウェーデンな どの直接投資の多い国の収益率が高 くなっている。
日本は、低い割には、良好な収益 率を得ているため、今後は、適切な
配当として国内に還流される割合は上
昇
2000 年代において直接投資収益 は大きく増加している。もともと は、配当金の割合が高かったが、 2 008 年には両者がほぼ半分ずつを占 めるようになっている。 2009 年に は、直接投資収益全体が減少する なかで、配当金の割合が高まって いる。
直接投資収益に対する配当性
向金を 2003 ~ 2007 年の平均、世 界的に景気が悪化し投資機会が
縮小した 2008 ~ 2009 年の平均に 分けて調べてみると、日本は、 6 割程度であり、配当性向が高め のグループに属することが分か る。したがって、少なくとも直