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高橋 広雅

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講義内容(予定)

1. イントロダクション 2. 貨幣(復習)

3. 国民経済計算(復習) 4. 資本市場(復習) 5. IS–LM モデル 6. AD–AS モデル 7. 国際経済

参考書 武隈慎一『マクロ経済学の基礎理論』新世社、1998年

オイコノミア NHK 水曜午後1000分∼午後1045分 オイコノミア「みんな満足!分け前の ルール」

評価について 課題+発言・質問

1 イントロダクション

1.1 合成の誤謬

マクロ経済学とは何か

ミクロ経済学: ミクロ=微視的な。個別の経済主体(家計、企業、政府)の行動や、その行動 の結果、財の価格や取引量がどのように決定されるかを分析。

マクロ経済学: マクロ=巨視的な。経済全体の状態を表す GDPや経済成長率、インフレ 率、利子率、失業率といった経済変数がどのように決まり、互いにどのような関係が あるのかを分析する。

しかし近年、マクロ経済学はその分析過程においてミクロ的な基礎付けを重視する傾向にあり、 分析手法という点からみると両者の違いはあまり明確ではないかもしれない。

講義ノートは、http://sites.google.com/site/htakahome/Homeからダウンロードして下さい。

htaka@intl.hiroshima-cu.ac.jp

(2)

http://sites.google.com/site/htakahome/Home

合成の誤謬 特定の一部分に当てはまることが 全体に当てはまる、と間違って仮定すること。 主体間の相互作用を無視すると、合成の誤謬が生じる。

1.1 ビル火災での非難時に走ること、映画館で立ち上がって鑑賞すること 経済全体のことを分析する際は合成の誤謬が生じないように注意する必要がある。

1.2 雇用救済策

1.2 マクロ経済学の展開

近代経済学(古典派経済学)の誕生 A.スミス『国富論』(1776)、D.リカード

新古典派経済学と限界革命 L.ワルラス(1834-1910)、A.マーシャル(1842-1924

マクロ経済学の誕生 J.M.ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936)← 大恐慌

1929

時期 経済環境、経済政策 マクロ経済分析のフレーム・ワーク 分析対象 1920 大恐慌(29)

マクロ経済学の誕生 1930 ニューディール政策(33) (ケインズ経済学の誕生)

J.M.ケインズ 1940 第二次世界大戦(39–45)

ブレトンウッズ体制(44–71) ケインズ経済学が中心 (短期の事象) 1950 固定為替相場 IS-LMモデルJ.R.ヒックス)  失業

1960  総需要管理政策 AD-ASモデルP.A.サミュエルソン)  インフレ

 資本市場への制限  (新古典派総合)

1970 インフレの進行 ケインズ経済学からの離脱と模索 ニクソンショック(71)  マネタリストM.フリードマン)

オイルショック(73, 78)  合理的期待R.E.ルーカス)

1980 世界的な資本市場自由化の進行 新しいマクロ経済学 ’80中頃∼ 以降 (金融ビッグバン)  新古典派成長理論 (長期の事象)

英でサッチャー政権(79–90)  均衡マクロ動学、内生的成長理論  経済成長 米でレーガン政権(81–89)  ニューケインジアン  政策の長期

日本で中曽根政権(82–87)  的効果

(3)

マクロ経済学における古典派とケインジアン ケインズ経済学と古典派の違いは表1.1のよう にまとめられる。

ケインズ経済学 古典派

経済主体の合 理性

必ずしも合理的ではない 合理的

市場の有効性 価格は硬直的 価格は迅速に動く 経済政策に対

する態度

積極的に関与すべき 出来るだけ 市場に任せるべき 重視する側面 需要(有効需要管理政策) 供給(セイの法則、サプライサ イドエコノミクス、所得政策) マクロ経済の

分析対象

短期(景気循環) 長期(経済成長)

1.1: ケインズ経済学と古典派の比較

新しいマクロ経済学

 新古典派: マクロ経済モデルの動学化、ミクロ経済学的基礎づけ(均衡マクロ動学)  ニューケインジアン: ミクロ経済学的基礎に基ずく市場の不完全性の説明

本講義でやること

本講義でできないこと 均衡マクロ動学、内生的成長理論、ニュー・ケインジアン

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2 貨幣

2.1 貨幣とは何か

2.1.1 貨幣の定義

抽象的な定義 貨幣は、「交換手段(決済手段)、価値尺度、価値保蔵の三つの機能を持つ財」 と定義される。

価値尺度機能: 貨幣のない社会では全ての二つの財の交換比率が決まっていなければ、即時 に自由な交換ができない。つまり取引が成立するまでに交渉の時間がかかる。例えば、PC と教育サービスの交換を考えると・・・。貨幣は財の価値を表す基準となり、財と財の交換 を行うための交渉を容易にする。

交換手段(決済手段): 全ての二つの財の交換比率が決まっていたとしても、やはり物々交換 は不便。

価値保蔵機能: 現在だけでなく将来においても貨幣が交換手段としての機能を有するのであ れば、貨幣を保存しておくことによって将来、財が必要になったときのため備えることが 出来る。貨幣は価値尺度の機能も持っているから、このことは価値を保存している、とい うこともできる。PCでは価値を保存することは難しい(かも)。

貨幣は、それ自体には価値はないが、制度によってこれらの機能が保証され、そのことによっ て初めて価値を持つ特殊な財である。ただ貨幣を発行してもそれがこれらの機能を無条件に有 する訳ではない。これらの機能が維持、保証されるためには貨幣に対する信用が大切である。 具体的には、全員が「当該貨幣が、現在はもちろん将来においてもこれら三つの機能を持つ」 と信じること。さらにある人がこれを信じるためには、「自分以外の全員が当該貨幣が、現在 はもちろん将来においてもこれら三つの機能を持つ、と信じている」と信じることが必要であ る。信用がない場合、貨幣は無価値なただの紙切れでしかなく、だれもそれを欲しがらない。

例 2.1 The Economic Organisation of a P.O.W. Camp

統計上の定義 しかし現実の経済状況を分析する際、貨幣の流通量(マネーサプライ、Money Stock、貨幣供給量)を統計的に測る必要があり、抽象的な定義では不十分である。実際に貨幣 流通量を測るのに適した定義がいくつかある。

M1=現金通貨+預金通貨(要求払預金) 要求払預金とは普通預金や当座預金などの預金で、 小切手、クレジットカードといった方法によって決済手段の機能を持つ預金である

1

。 M2M1+準通貨(定期性預金)

M3M2+郵便貯金、信託銀行への金銭信託など

M2CDM3CD CDcertificate of deposit)とは「譲渡性預金」のことで、通常の預 金と異なり途中解約が出来ないが、契約期間中であっても第三者に売ることが出来る。

1金融機関も現金通貨や(日本銀行に)預金をもっているがこれらはM1には入らない。

(5)

2.1.2 誰が貨幣をつくっているのか

現金通貨を発行するのは、中央銀行。(日本では日本銀行。)しかし民間の銀行も貨幣の流 通と密接に関係している。

銀行のはじまり 17世紀イギリスのゴールドスミス(金匠:金細工師)といわれている。金匠 は貴金属を保管しておく安全な場所つまり金庫が必要。それが完成すると他の人もそこに預け た。金匠は受領証を発行し、他人の金も保管した。やがて受領証は流通し始めた。金匠は全て の人が同時に金の返還を要求することはないということを学ぶ。そこで、預かっている金の一 部を残して貸し出すようななる。例えば、100Kgの金を預かっていたとして、10Kgを残して貸 し出したとする。この場合、金100Kg分の受領証と金90Kgが同時に流通することになる。も ともとあるのは100Kgの金だけだが、これが金190Kg分の価値を流通させている。

支払い準備率 銀行は預金の一部を準備するだけで良い。

預金額に対してその支払いのために準備しておく現金(準備額)の割合を支払い準備率とい う。多くの国で支払い準備率は、その国の中央銀行が定める。通常は、準備額を上回るだけ預 金の引き出しを要求されることはない。銀行は、預金額のうち支払い準備のための部分を除い た残りを貸し出して利鞘を稼ぐ。しかし「銀行が倒産するかもしれない」という予測が広まる と、取り付け騒ぎが起き、準備額を上回るだけ預金の引き出しを要求される。そして銀行は倒 産する。(ペイオフ)準備預金制度における準備率 は0.11.3%

信用創造 支払準備率が0.1であるとして以下のような状況を考える。ある経済主体が100万 円を持って広島銀行に行き、それを預けて普通預金口座を開設したとする。経済主体Aは広島 銀行の普通口座に100万円の残高をもっている。上の定義からこの預金残高は貨幣である。広 島銀行はこの100万円をただ持っていても利益にならず、他の経済主体に貸して利息を稼ごう とする。ただし上述したように全額を貸し出すことは出来ない。この場合100万円の10%10 万円は支払い準備金として日本銀行に預けなければならず、最大で90万円まで貸すことが出来 る。そこで、広島銀行が90万円を経済主体Bに貸し出したとする。この場合、経済主体Aは 預金残高として100万円分の貨幣を使うことが出来る。経済主体Bの手元には90万円の現金 があり、使うことができる。もともとあるのは100万円の現金だけだが、これが190万円の貨 幣を流通させている。

2.2 電子マネーと信用創造

2.1.3 日本のマネーサプライ 2.1.4 貨幣(お金)の本当の価値

貨幣それ自体にはそれほど価値はない。(預金残高それ自体は無価値。)お金の価値(例え ば100円の価値)は、そのお金で買うことのできる財の価値によって決まる。貨幣の価値は上 がったり下がったりしている。

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年月 平均残高(億円) 現金通貨に対する割合(%

現金通貨 M1 M2+CD M3+CD M1 M2+CD M3+CD 1999.04 495,516 2,120,481 6,153,010 10,809,314 4.3 12.4 21.8 2001.04 564,044 2,503,670 6,478,207 11,183,552 4.4 11.5 19.8 2003.04 669,409 3,472,082 6,795,761 11,211,142 5.2 10.2 16.7 2005.04 700,690 3,782,404 7,055,578 11,425,281 5.4 10.1 16.3

2.2: 日本のマネーサプライ

2.2 貨幣と物価

物価とは ある一定の取引や財の組み合わせを購入するのに必要な金額。あるいは、「種々の商 品やサービスの価格を、ある一定の方法で総合した平均値(Wikipediaより)。」

どのような取引あるいは財の組み合わせを考えるかによっていくつもの物価を考えることが 出来る。

2.3 平均的な家計が1年間に購入する財の合計金額(消費者物価)、2010年の1年間に 日本国内において(円で決済される)全ての(経済)取引に必要な金額、2009年の1年間に国 内で新たに生産された付加価値の総額

2.4 (オリジナルお酒物価) ある人が一ヶ月に飲むお酒(ワイン0.75ℓ、ビール10ℓ、日本 酒1.8ℓ1ℓ当りの値段。ワイン1ℓ当りが1400円、ビール1ℓ当りが600円、日本酒1ℓ1200 円のとき、

お酒物価=

1400 × 0.75 + 600 × 10 + 1200 × 1.8 0.75 + 10 + 1.8 =

9210

12.55 734

物価指数 興味があるのは物価自体ではなく、物価の変動。物価の変動を測る指標が物価指数。 ある年の物価指数は、基準年からある年にかけての物価の変化率。財の組み合わせと基準年 が定まると以下の式で ある年の 物価指数が計算される。

物価指数 =

∑(ある年の財の価格×財の取引量)

∑(基準年の財の価格×財の取引量) ×100

2.5 2005年を基準にした2009年のお酒物価指数

2009年のワイン1ℓ価格×0.75 + 2009年のビール1ℓ価格×10 + 2009年の日本酒1ℓ価格×1.8 2005年のワイン1ℓ価格×0.75 + 2005年のビール1ℓ価格×10 + 2005年の日本酒1ℓ価格×1.8 ×100

消費者物価指数 主要な消費財の平均的消費者の購入量をウェイトに使った物価指数。

企業物価指数 生産者間、生産者と販売業者間の取引で重要な中間財の固定した数量をウェ イトに使った物価指数。

(7)

GDPデフレータ 物価指数が100より大きい(小さい)とき、基準年に比べて物価は上昇(低 下)したという。

以下では、「物価指数÷100」を単に「物価」と呼ぶこともある。

貨幣の価値と物価の関係 物価として「平均的な家計が1年間に購入する財の合計金額」を考 える。1990年の物価が365万円であるとする。すなわち365万円で1年間の平均的消費生活が 送れる。逆に1万円で、どれだけ平均的消費生活が送れるかというと、

1

365 年=1日である。つ

まり1万円の価値は、平均的消費生活1日分ということ。

2000年には物価が1990年の2倍の730万円になったとする。このとき1万円の価値は平均 的消費生活半日分となる。つまり貨幣の価値は半減したことになる。

貨幣の価値は物価の 逆数である。

貨幣供給量と物価水準の関係 ある国でx財とy財だけが取引される。x財の取引量をX、価 格をPxy財の取引量をY、価格をPyと書く。以下のように記号を定義する。

Q: X + Y (取引量)

P: PxX+PX+YyY(平均価格、物価水準) M: マネーサプライ、貨幣供給量

V: 貨幣の流通速度、1年間における1円の平均回転数

これらの間にはP Q= PxX+ PyY = V M という関係がある。この式を書き換えると次のフィッ シャーの交換方程式が得られる。

P = V M Q 以上から次が分かる。

貨幣供給量(M)が増える(減る)と物価は 上昇( 低下)する。

財の取引量(Q)が増える(減る)と物価は 低下( 上昇)する。

貨幣の流通速度(V)が上昇(低下)すると物価は上昇( 低下)する。

2.3 インフレーション

物価水準が継続的に上昇していくことをインフレーションという。このことは同時に貨幣 の価値が下がっていくことを意味している。

例題 2.1 2010年の米の価格が10Kg当り5千円で、2011年には1万円になったとする。米で はかった1円の価値はどうなったか。

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賃金を含むあらゆる財の価格が同じ速さで上昇していて、人々もそれを知っているならば インフレ自体は実質経済に何の影響も及ぼさない。つまり、人々の豊かさは変化しない。しか し、インフレーションの問題は、財によってその価格の上昇率が異なっていることである。例 えば、賃金上昇率を上回る速さで物価水準が上昇すれば、労働者の生活は苦しくなるであろう。 例題 2.2 (累進税制とインフレーション) 2010年、米の価格が100Kg当り5万円、Aさんの年 収は400万円、Aさんは10%の所得税をおさめるものとする。2011年、米の価格が100Kg当 り10万円、Aさんの年収は800万円となり、Aさんは20%の所得税をおさめなければならな くなった。Aさんの生活は向上したといえるか?

極端に物価上昇率が高いインフレーションは特にハイパー・インフレーションと呼ばれる。 この状態は、貨幣に対する信用が崩壊寸前であることの表れであり、貨幣を使用することによ る便益もほとんどなくなっている。

2.6 (1920年代のドイツ) (19207)1ドル=40マルク → (192311)1ドル<4 兆マルク

192310月 物価が1日で41%上昇。

2.7 ジンバブエ・ドル

中央銀行の役割の一つはそうならないように、貨幣の信用を維持するように努めること。

インフレに備える

インフレーションの原因 貨幣には本質的な価値がないため、何の要因がなくても付与された 価値が徐々に低下していく可能性が高い。(世代重複モデルで貨幣を扱うと示せる。)しかし、 以下の要因でそれ以上にインフレが起こる。一つは、実質的な要因であり、もう一つは貨幣的 な要因である。例えば、戦争や災害は財の需要を増加させ供給を減少させる。その結果物価が 上昇する。また、供給サイド(オイルショックなど)で問題が発生すると財の供給が減り、物 価が上昇する。これが実質的な要因である。

貨幣的な要因1 貨幣供給量の増加による物価上昇。(Mの上昇)

隠れた税金 政府が貨幣供給量を増加させ、その大部分を政府が使う場合を考えてみる。貨幣 供給量の増加によりインフレが生じ、貨幣価値が低下するということは、人々の実質的な貯蓄 が減ることに等しい。政府が保有する貨幣の価値も低下することになるが、新たに発行された 貨幣で低下分以上に補填されれば政府が保有する貨幣の総価値は上昇する。人々の貯蓄は低下 し、政府の貯蓄は増加していることになる。すなわち貨幣供給量を増加させることは税金を課 すのと同様の効果を持つ。

例題 2.3 ある国の実物資産は米100Kgだけであるとする。この国の貨幣供給量は10万円、米 の価格は10Kg1万円で、政府は貨幣を1万円保有している。つまり、政府の資産は米にして

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10Kg、民間部門が保有する資産は米にして90Kgである。政府が新たに10万円分の貨幣を発行 し、このうち5万円を政府のものとする場合を考える。米の価格が2倍になったとすると、民 間部門が保有する資産はどれだけか。

非民主的な政治体制下の統治者に限らず、民主政治下の政府もお金を欲しがる傾向がある。 彼らが予算を大きくするためには3つの手段がある。

一つは、税 負担を重くすること。 二つ目は、 公債を発行すること。

三つ目は、貨幣発行量を増やして自分で使うことである。

増税は、民衆の不満をかいやすく、借金は返さなければならない。これに対して、貨幣発行 量の増加は、民衆の不満が少なく、またお金を返す必要もない。このため統治者、政府は使え る予算を増やすためにしばしばインフレを利用してきた。ときにはハイパー・インフレーショ ンを引き起こすことさえあった。

2.8 (貨幣の改鋳) 1695年 元禄の改鋳(慶長小判(8487%)→元禄小判(約57%))

インフレを抑える工夫 中央銀行による貨幣発行、金本位制、固定相場制

貨幣的な要因2 貨幣の流通速度V の上昇もインフレを引き起こす。流通速度が上昇する原 因は、人々の将来に対する予想によると考えられている。すなわち、今後インフレが起こると いう予想である。(将来の貨幣に対する信用の低下)インフレを予想した人は、手に入れたお金 を出来るだけ早く使おうとする。(明日には、貨幣の価値は今より低下してしまう or明日には モノの値段が上がってしまう、かもしれない)このとき、物価上昇率は貨幣供給量の増加率を 上回る。極端な場合、ハイパー・インフレーションとなる。

2.4 デフレーション

物価水準が継続的に下落することをデフレーションという。このことは同時に貨幣の価値 が上 がっていくことを意味している。賃金を含むあらゆる財の価格が同じ速さで下落してい て、人々もそれを知っているならばデフレ自体は実質経済に何の影響も及ぼさない。つまり、 人々の豊かさは変化しない。しかしインフレーションと同様、デフレーションにおいても、財 によってその価格の下落率は異なる。例えば、住宅ローンの返済額やオフィスビルの賃貸料、 多くの労働者の賃金は名目値でその支払額が決まっている。デフレーション下ではこれらの額 が、実質的には上昇していっていることに等しい。従って、住宅ローンの返済やオフィスビル の賃貸料の支払いの負担は、相対的に重くなっていく。逆に、賃金は上昇しているから、その 分労働者の生活は豊かになるのかもしれない。しかし、賃金を支払っている事業者が倒産すれ ば、賃金はもらえなくなり生活は苦しくなる。極端な場合、企業の倒産が続き、失業者が増加 することになる。このような状況は不況と呼ばれる。

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デフレーションの原因 二つの要因がある。一つは、実質的な要因であり、もう一つは貨幣的 な要因である。全ての財についてその生産能力が拡大し、供給量が増加すれば、物価水準は低 下する。これが実質的な要因である。このような場合には、ほとんど全ての経済主体は経済的 に豊かになり、特に問題はない。(このような状況はデフレーションと言われないであろう。)

貨幣的な要因1 貨幣供給量の減少による物価下落。(Mの低下)

貨幣供給量の減少 日銀の金融引き締め政策、信用創造の減退(貸し渋り)

貨幣的な要因2 貨幣の流通速度V の低下もデフレーションを引き起こす。流通速度が低下 する原因は、人々の将来に対する予想によると考えられている。すなわち、今後デフレーショ ンが起こるという予想である。デフレを予想した人は、手に入れたお金をすぐには使わなくな ると。(明日には、貨幣の価値は今より上昇している or 明日にはモノの値段が下がっている)

2.5 命とお金のはなし

「世の中カネ」か「世の中カネじゃない」のか まず、「お金の本当の価値」に注意せよ。 その上で、言葉が曖昧であることに注意せよ。

⃝1「世の中=カネ」

⃝2「人間は、(価値のある)お金を際限なく使うことが出来れば、出来ないことはない」

⃝3「この世に存在するモノや事象は貨幣価値で評価できる」

⃝3は、評価の方法や定義に依存する。

命の価値 「人の命はお金では測れない」といわれる。まず、死んだ人は誰にいくらお金を支 払っても生き返らないし、どれだけお金をもらっても遺族の悲しみが癒えない場合がある。こ の意味で「人の命はお金では測れない」は正しい。(つまり2は間違い。)また、人命を貨幣価 値で測ろうとすること自体、不謹慎であるとされる場合も多い。しかし、状況によっては人の 命に関わる金銭的な評価をしなければならないときがある。

2.9 交通事故死における損害賠償金額の算定

例題 2.4 (確率的生命価値) あるエアバックを装着すると、自動車で1km走ったときに交通事 故で死亡する確率が5,000万分の1から5億分の1に低下する。このエアバックの耐用年数は5 年である。ある個人はこのエアバックを9万円で購入した。この個人は5年間に自動車で5万 km走る。

1. この個人は、自分自身の(5年間の)確率的生命価値をいくらと見積もっているといえ るか。

参照

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