メカニズムデザイン 宿題 8
奥村 恭平
∗†‡November 17, 2017
Case A: ui
(
ω, ωi) =
ω·
ωi−
si, Case B: ui(
ωi, ωj) =
ωj·
ωi−
si(1)
ケース A における BNE を求めよ.
コメント問題文では明記されていませんが,symmetricなBNEを求めます.Symmetric BNEを求めるときの常 套手段は,
1. symmetric equilibrium strategy βがincreasing, differentiableだと推測する.
2. FOC(微分方程式になる)を解いて,βの候補を求める.あくまで必要条件であることに注意.
3. βが実際に均衡戦略であること,つまり,局所的のみならず大域的にも最適な行動を与えることを 確認する.
というものです.
答
βA
(
ωi) =
1 4ωi 解)コメントで述べたように,対称な均衡戦略βAが,単調増加かつ微分可能であるとguessした上で,実 際にβAを求めていく.まず,si
∈ [
0, βA(
1)]
以外の行動は考えなくてもよいこと,βA(
0) =
0となる必 要があることを確認する.(各自確認されたし.)βAが単調増加かつ連続であることに注意すると,均衡 からの逸脱先として,「他のタイプのふりをする」ものだけを考えればよいことになる.Bidder 1に着目し,Bidder 2は均衡戦略に従うとする.真のタイプがω1なbidder 1が,タイプωf1 のふりをしたときの利得をΠ1
(
ωf1, ω1)
と表すことにすると,Π1
(
ωf1, ω1) =
Eω[
ω·
ω1−
βA(
ωf1)] ·
P(
ω2≤
ωf1)
=
(12ω1
−
βA
(
ωf 1)
) f ω1
FOCは,
∂Π1
∂ωf1
f ω1=ω1
=
0⇐⇒
dβA
dω1
(
ω1) +
1 ω1βA
(
ω 1) −
12
=
0 この微分方程式を解くと,βA(
ω1) =
ω1/4が求まる.1∗first-year master student at Graduate School of Economics, the University of Tokyo
†E-mail: [email protected]
‡誤り等見つけた場合は教えて頂ければ幸いです.質問がある場合も上のメールアドレスまでご連絡ください.
1微分方程式の解き方を知らない人は,適当な微分方程式の本を参照してください.「一階線形微分方程式」「定数変化法」な どで調べればどの本にも書いてあると思います.(例えば,金子晃(2014)『微分方程式講義』の第二章.)
1
次に,このβAが実際にBNEになっていることを確認する.
∀
ωf1∀
ω1; Π1(
ω1, ω1) −
Π1(
ωf1, ω1) ≥
0 を示せばよい.Π1
(
ω1, ω1) −
Π1(
ωf1, ω1) =
[(12ω1
−
1 4ω1) ω1
]
−
[(12ω1
−
1 4ωf1) f ω1 ]
=
14
(
ω1−
ωf1)
2
≥
0となることより,βAがBNEであることがわかる.
(2)
(2-1)各プレイヤーが(1)で求めたβAに従うときの,ケースBにおけるプレイヤーの均衡利得を求めよ.
Bidder 1に着目する.両者がβAに従うときのbidder 1の期待利得Πe1は, e
Π1
(
ω1) =
P(
ω2<
ω1) ·
E [ω2ω1
−
1 4ω1
ω2
<
ω1 ]=
ω1 (ω1
·
1 2ω1−
1 4ω1
)
=
1 4ω12
(
2ω1−
1)
(2-2)期待利得が負のタイプが存在することを確認せよ.
(2-1)の結果より,ω1
∈ (
0, 1/2)
のとき,Πe1(
ω1) <
0となることがわかる.つまり,この場合一部のタ イプのbidderは損をしており,winner’s curseが存在している.(3)
ケース B における BNE を求めよ.
答βB
(
ωi) =
1 3ω2i
解)
問題文中のヒントより,ケースBにおける均衡戦略βBがβB
(
ωi) =
Cω2i の形であることはわかってい るものとする.(このようにguessをした上で,guess and verifyをすると考える.)2Bidder 1に着目 すると,Π1
(
ωf1, ω1) =
P(
ω2<
ωf1) ·
E[ω2ω1−
Cωe12|
ω2<
ωf1]
=
ωf1 (12ωf1ω1
−
Cωe12
)
FOCは,
∂Π1
∂ωf1
f ω1=ω1
=
0⇐⇒
ω21−
3Cω12=
0 となるので,C :=
1/3が必要であることがわかる.Π1
(
ω1, ω1) −
Π1(
ωf1, ω1) =
16
(
ω1−
ωf1)
2
(
ω1
+
2fω1) ≥
0より,上で求めたβBが実際にBNEであることが確認できる.また,均衡利得は,Π1
(
ω1, ω1) =
ω13/6 であり,∀
ω1∈ [
0, 1]
; Π1(
ω1, ω1) ≥
0であることもわかる.つまり,この場合winner’s curseは起き ていない.2実は,(1)のようにFOCから導出される微分方程式を解けば,均衡戦略がヒントで与えられているような形になることが わかります.問題文では定数がβになっていますが,均衡戦略と紛らわしいのでここではCにしています.
2
(4) Winner’s curse
とはどのようなことか,上の結果を元に論評せよ.
Winner’s curseという言葉は,「現実のオークションにおいて,しばしば勝者が支払い過多になり,結果
的に損をする(呪いにかかる)ような状況」を指して一般に用いられる.プレイヤー全員が合理的である ならば均衡において各プレイヤーは損をしないはずだが,現実では人間は限定合理的であるために合理 的な場合の均衡戦略(この場合BNE)をとることができず,結果として損をしてしまうことがある.
勝者の呪いが起こるメカニズム(つまり,人々がどういう意味で「限定合理的」であるが故に勝者の呪 いが起こるのか)については色々と考えられるかもしれないが,一つの有力な候補として,「プレイヤー が財の価値を予測する過程で間違いを犯している」というものが考えられる.3問題(1),(2),(3)は,その ように,「財の価値を正しく予測することに失敗した結果,winner’s curseが起きてしまう」例になって いると考えられる.以下,より詳しくみていく.
Interdependent valuesの場合,財の価値Vは,自分のタイプのみならず他人のタイプにも依存し てV
(
ω1, ω2)
のように表される.4このため,例えばタイプがω1 :=
ω1であるbidder 1に着目すると, interdependent valuesの設定におけるbidder 1の期待利得は,(
E[
V(
ω1, ω2) |
ω2<
ω1] −
[amount of bid]) ·
P(
ω2<
ω1)
(1) となる.一方,independent private valuesの場合は,財の価値V0は自身のタイプにのみ依存してV0(
ω1)
と表せる.5IPVの設定におけるbidder 1の期待利得は,
(
E[
V0(
ω1)] −
[amount of bid]) ·
P(
ω2<
ω1)
(2) となる.いま,interdependent valuesの場合の財の価値の期待値E[
V(
ω1, ω2)]
がω1, ω2について増加だとする.このとき,
E
[
V(
ω1, ω2) |
ω1=
ω1, ω2<
ω1] ≤
E[
V(
ω1, ω2) |
ω1=
ω1] (⋆)
となることがわかる.6つまり,interdependent valuesの場合,「自分が勝つという条件下での財の価 値の期待値」は「自分のタイプのみがわかっているときの財の価値の条件付期待値」より小さい.完全 に合理的なプレイヤーは, 「自分がオークションに勝って財を得られるということは,相手のタイプが 自分より低かったということであり,それは,勝ったときに得られる財の価値の期待値が低いことを示 唆している」 というような推論を行い,自身の期待利得が式(1)のような形をしていることに気づく. その結果,自身のタイプのみから推測される財の価値より,実際に勝った場合に得られる財の価値の期 待値が低いことに気づき,十分に低い値を均衡においてbidできる.
一方,限定合理的なプレイヤーはこのような推論を行うことができない.問(2)では各プレイヤーが このような推論を行うことができず,あたかも自身の期待利得が式(2)のような形をしているように考え て(i.e.自身のタイプで条件付けた財の価値の期待値をもとに,Case Aと同様に考えて)自身の戦略を決 めている.結果,指値を十分に低く抑えることに失敗しwinner’s curseにかかった,と解釈できる.7
3その他にも,例えば,「財の価値はうまく予測できているが,均衡戦略がうまく計算できない」といった限定合理性も考え られると思う.
4Case Bの場合,V(ω
1, ω2) =ω1·ω2となっている. 5Case Aの場合,V
0(ω1) =ω·ω1となっている. 6この問題の設定では,E[V(ω
1, ω2) |ω1=ω1] =E[V0(ω1)])であり,
E[V(ω1, ω2) |ω1=ω1, ω2<ω1] =1 2ω1
2≤ 1
2ω1=E[V(ω1, ω2) |ω1=ω1]
一般に,affiliated signals(タイプの分布が独立の場合はaffiliated signalsの特殊ケースとみなせる)の場合は, Vが各ωiについて増加 =⇒ (⋆)
が言える.Krishna(2009) Appendix D参照.
7以上の議論から,IPVの場合は,ここでいうようなwinner’s curseは起きないこともわかる.
3