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BGC Okayama 2016 Program

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Academic year: 2018

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(1)

2016

年度

生物地球化学研究会現地セッション

in

岡山

日程:

11

19

日(土)

(現地見学会)

20

日(日)

(研究会)

場所:

(現地見学会)備前市日生地区・伊部地区,岡山市南区

(研究会)岡山大学環境理工学部

4

大会議室

共催

岡山大学 沿岸域の水・栄養塩循環に係る研究連携体

岡山大学 児島湖流域研究会

日生町漁業共同組合

広島大学 陸域環境研究会

連絡先:2016年度 現地セッション実行委員会

齋藤光代

TEL: 086-251-8840

(2)

11

19

日(土)現地見学会スケジュール

8:40:岡山大学(環境理工学部棟前)をバスにて出発

9:00:岡山駅西口(*場所は下記参照)にて参加者の方々をピックアップ

10:30:日生漁協(備前市日生町日生801-4)到着,大会受付

【基調講演 天倉辰己 専務

日生漁協によるアマモ場造成の取り組みについて】

11:30:五味の市で自由時間

12:00:秀吉(備前市日生町日生639-72)で昼食

13:00:備前�日生大橋→鹿久居島の米子湾,頭島大橋付近で概要説明

13:30:備州窯(備前市伊部302-2)到着・見学後,伊部駅周辺を自由散策

15:00:児島湖へ向けて出発

16:00:児島湖干拓資料室到着,見学・概要説明

17:50:岡山駅西口到着

18:00:懇親会(岡山駅西口 飛鳥 吉備亭)

注意事項:バスのスペースに余裕がないため、大変恐れ入りますが、荷物はな るべく少なく(駅のコインロッカーに預けるなどして)お願いいたします。

(3)

1.

岡山駅西口

日生・

鹿久居島

5.

備州窯

6.

児島湖

干拓資料室

倉敷川

笹ヶ

瀬川

2.

日生漁協

五味の市

3.

秀吉(

昼食)

4.

備前

日生大橋

鹿久居島

頭島

19

日 現地見学会マッ

児島湾

2km

2.

日生漁協

五味の市

N

(4)
(5)

11

20

日(日)研究会スケジュール

会場:岡山大学津島キャンパス 環境理工学部棟4階 大会議室(*下記参照)

9:00:開場,ポスター掲示

9:25:開会挨拶(実行委員長 大久保賢治)

9:30~10:15:基調講演 松田 治 先生(広島大学名誉教授)

「大きく変わる瀬戸内海の環境管理~豊かな里海をめざして~」

10:15~11:15:個別研究発表(O1~3;次頁参照)

11:15~12:00:総会

12:00~13:00:【昼休み】

13:00〜13:50:ポスターセッション(1)(コアタイムA1~7;次頁参照)

13:50〜14:00:【休憩】

14:00~14:50:ポスターセッション(2)(コアタイムB1~7;次頁参照)

14:50~15:00:閉会挨拶(齋藤光代),ポスター撤収後,解散

岡山大学津島キャンパス

JR岡山駅から岡山大学までのアクセス(バス):

(1) 岡山駅西口22番乗り場発【47番線:岡山駅西口~岡山大学~岡山理科大学線】

で「岡大西門」下車(バス乗車時間約10分)

(2) 岡山駅東口13番乗り場発【17番・67番線:岡山駅~天満屋~三野・妙善寺・理大

東門線】で「保育所前」下車(バス乗車時間約20分)

↑至 バス停:

岡大西門

環境理工学部棟 4階 大会議室

(6)

【個別研究発表O1~O3】

10:15~10:30:O1「藻場の分布する沿岸域における海底湧水の評価-瀬戸内海

島嶼部に着目して-」 齋藤光代(岡山大)他

10:30~10:45:O2「植生タイプが異なるモンゴル草原生態系において放牧家畜

による被食が土壌の窒素無機化速度の空間的不均質性におよ

ぼす影響」 廣部 宗 (岡山大)他

10:45~11:15:O3「’生物地球化学’から解くCO2問題」楊 宗興(東京農工大)

【ポスターセッション(1)13:00〜13:50(コアタイム:A1~A7)】

A1「河川-地下水交流の定量化-岡山県旭川の例-」 小野寺真一(広島大)他

A2「淡水生態系における新たな好気的メタン生成経路」岩田智也(山梨大)他

A3「SWATを用いた児島湖への栄養塩負荷量の長期変動解析」

清水裕太(農研機構・西日本農研)他

A4「Nutrient and biogenic silica accumulation in Sediment from Kojima Bay, Seto Inland

Sea」 Guangzhe Jin (Hiroshima Univ.) 他

A5「沖積平野における地下水の水位、水質及び環境同位体の長期変動から推定

される地下水流動特性」 友澤裕介(広島大)他

A6「A SWAT Model Analysis for The Ota River Water Discharge」

Fandy Tri Admajaya (Hiroshima Univ.) 他

A7「水素・酸素 安定同位体比等を用いた岡山県旭川流域における水循環特性

の解明」 河野友介(広島大)他

【ポスターセッション(2)14:00~14:50(コアタイム:B1~B7)】

B1「高知県の標高の異なるヒノキ林における窒素利用様式」

稲垣義之(森林総研)他

B2「鉱物組成が異なる土壌の微小な有機物集積集合体の比較」

浅野眞希(筑波大)他

B3「冷温帯林の細根動態:積雪量変化の影響」 福澤加里部(北海道大)他

B4「北海道北部の針広混交林における林冠葉に含まれる窒素の空間分布」

井上華央(北海道大)他

B5「八朗湖流入河川の源流域における硫黄脱窒の解明」

太田仁志(秋田県立大)他

B6「異なる土地利用下の土壌における亜酸化窒素発生および硝酸溶脱に対する

栄養塩添加の影響」 長根美和子(北海道大)他

B7「藻場造成工区を対象とした海水中の拡散対流過程に基づく海底湧水の

(7)

基調講演要旨

「大きく変わる瀬戸内海の環境管理~豊かな里海をめざして~」

松田 治

広島大名誉教授

【戦後の大きな変化】

日本最大の閉鎖性海域である瀬戸内海は、古くから世界にも類まれな風光明

媚で自然豊かな内海として定評があり、昭和初期には日本で初めての国立公園

の一つにも指定された。しかし、その環境は、第2次大戦後の高度経済成長期に

激変し、急激な地域開発、経済発展と引き換えに各種の公害、著しい富栄養化と

水質汚染の場となった。一例として、1972 年に播磨灘を中心に発生した大規模

赤潮は、養殖ハマチ1400万尾の斃死と71億円の漁業被害をもたらした。

このような「瀕死の海」に様々な対策が講じられたが、特筆すべきは、当時ま

れであった議員立法により1973年に瀬戸内海環境保全臨時措置法(「瀬戸内法」)

が制定され、5年後には特別措置法として恒久化されたことである。この法律で

は、有機物、栄養塩類などの流入負荷の削減と埋立て抑制が2本柱であった。

「瀬戸内法」制定後の約40年間で、当初の極端な水質汚染と富栄養化の影響

は次第に低減し、年間の赤潮発生件数も1/3程度に減少した。TN、TP、CODの流

入負荷量の削減に伴い、海水中のTN、TP濃度も低減傾向にある。一方、「埋立

ての原則禁止」は、相応の抑制効果はもたらしたものの、全面禁止ではなかった

ために、埋立て累計面積は次第に拡大し、これに並行して、生物生息環境や物質

循環の場として重要な浅海域、特に藻場や干潟が大幅に減少した。

都市域周辺では自然の浜辺が大幅に消滅し、自然浄化や生物生産などの物質

循環に関わる海浜の機能のみならず、人々が海と接する場と機会も失われた。養

殖を含まない漁業生産量は、1980年代中頃をピークに 1/2以下に低下し、二枚

貝の激減など漁獲物組成にも大きな変化が生じた。ノリ養殖業では海水中の栄

養塩不足によるノリの「色落ち」が頻発するようになった。

【管理方針の大転換】

長い歴史のある瀬戸内海の環境管理制度は、現在、格別に重要な転換期を迎え

ている。すなわち、2015年 2月末に国の瀬戸内海環境保全基本計画の大幅改定

が閣議決定されると、これを裏づける形で同年 9 月末には国会で「改正瀬戸内

法」が成立した。法律と基本計画のこれまでにない大幅な改定がセットでなされ

たことになる。これらの大幅な制度改変を受けて、2016 年秋には、これらを具

(8)

今回の改定の趣旨を一言でいえば、「きれいな海」から「豊かな海」への目指

すべき方向の大転換である。公害、富栄養化時代の「瀬戸内法」制定以来、政策

的には長年にわたって汚れた海をきれいにすることに注力した結果、水質的に

「きれいな海」はかなりの程度に実現された。近年、大阪湾を除く瀬戸内海では、

TN、TPの環境基準達成率はほぼ100%に達している。一方で、自然の海岸線や藻

場・干潟は減少し漁獲量も減少して、瀬戸内海の本来の豊かさは失われ、「貧栄

養化」の影響が新たな課題となってきた。そこで、今回の改定では、従来の規制

型の水質保全中心からより積極的な水産資源の確保や環境の保全・再生などに

大きく軸足が移され、瀬戸内海を「多面的価値及び機能が最大限に発揮された豊

かな海とする」ことが改正法の基本理念にも明記された。生態系と物質循環を重

視する里海の考え方が大幅に導入されたといえる。

【豊かな里海をめざして】

国の基本計画の大幅改定は、従来の2本柱から4本柱への変化と表現でき

る。すなわち、改定前には、①「水質の保全」と②「自然景観の保全」が2本

柱であった。これに対し、改定後は、①「水質の保全及び管理」、②「自然景

観及び文化的景観の保全」、③「沿岸域の環境の保全、再生及び創出」、④

「水産資源の持続的な利用の確保」が新たな4本柱となった。新制度では、

「瀬戸内法」の“守備範囲”が大幅に拡大し、分野・省庁横断的な取り組みの

重要性が格段に増している。さらに、改定後には、全体として「湾・灘ご

と」、「季節ごと」の状況に応じた方策が重視され、地域における里海づくり

とともに科学的データの蓄積や順応的管理など新たな方策が導入された。

今回の方向転換は、瀬戸内海が東京湾や伊勢湾にも先駆けて「ポスト総量負荷

削減時代」に入ったことを意味している。しかし、新たな方向性は定まったもの

の、目指すべき山は高く大きい。「豊かな里海」を目指す新たな目標は単に過去

の時代に戻ることではない。多面的な「海の恵み」(生態系サービス)の総体を、

今までになかったレベルで最大化することである。

湾・灘協議会の運営、湾・灘ごとの「豊かな里海」の指標の設定や順応的管理

のためのモニタリングだけでも実際には容易ではない。「豊かな里海」の実現に

は、栄養塩の供給、基礎生産から高次生産に至る生物生産力を担う健全な物質循

環と、その「場」に当たる多様な生物生息環境の確保が必要である。ここ数年は、

専門家や行政のみならずあらゆる立場の人が、力を結集して多様な連携と工夫

をする価値が大いにある時期である。多くの方々の立場に応じた多様な連携と

参画を通じて瀬戸内海全域に「豊かな里海」を実現したい。

(9)

O1

「藻場の分布する沿岸域における海底湧水の評価

-瀬戸内海島嶼部に着目してー」

○齋藤光代1・小野寺真一2・大久保賢治1・朱 愛萍2

金 広哲2・友澤裕介2・清水裕太3

1

岡山大・院、2広島大・院、3(国研)農研機構西日本農研センター

【背景と目的】

海底湧水(Submarine Groundwater Discharge: SGD)は、従来から河川水と並び海域

への物質(栄養塩など)供給経路の一つであることが指摘されてきた。しかしながら、

SGD が流出先の環境や生態系にどの程度・どのように影響しているかという定量的

な評価は必ずしも十分ではなく、沿岸域における複雑な物質循環の解明にとって重要

な課題といえる。そこで本発表では、海草類の藻場が形成された瀬戸内海沿岸域を対

象に海底湧水の評価を実施し、藻場の分布との関連について考察を行った。

【対象地域と方法】

2014 年7 月~2016年7 月の期間に、広島県の生口島(尾道市瀬戸田町)および岡

山県の鹿久居島(備前市日生町)の沿岸域を対象に島の周囲の海水の塩分、水温の空

間分布および時系列変化を測定するとともに、生口島では地下水のトレーサーとして

有用なラドン(222Rn)濃度の測定も行った。また、沿岸域に分布するアマモ(Zostera

marina)を主体とする藻場の分布面積・密度の調査および既存情報の収集を行った。

【結果と考察】

SGD の空間的な分布は陸域の地形勾配に大きく依存し、一方で潮位変化にともな

いSGDも顕著に変動することが確認された。また、島スケール(周囲数十km)では、

SGD が大きい領域と藻場の分布域とは概ね対応する傾向を示したが、海岸スケール

(数十~数百m)では底質の違いなどが強く影響し、明瞭な対応関係は確認できなか

った。今後は、SGDが藻場の生育環境(栄養塩、水温、塩分など)に及ぼす影響を明

らかにするとともに、詳細なマスバランスを評価していくことが課題である。

(10)

O2

「植生タイプが異なるモンゴル草原生態系において放牧家畜による被食が

土壌の窒素無機化速度の空間的不均質性におよぼす影響」

廣部 宗1,近藤順治1,A. Enkhbaatar2, N. Amartuvshin2,

藤田 昇3,坂本圭児1,吉川 賢1, K. Kielland4

1

岡山大学大学院環境生命科学研究科・2モンゴル科学アカデミー

3

総合地球環境学研究所・4アラスカ大学フェアバンクス校

【背景と目的】

小空間規模において植物の成長制限となる養分元素の土壌における空間的不均質

性は,地表での物理的再分配といった物理的過程に比べリター供給といった生物過程

の影響をより強く受ける。一方,大型ほ乳類による被食は,排泄物による再分配(直

接的な影響)とともに,被食による植生構造の変化(間接的な影響)から土壌の空間

的不均質性を変化させる可能性がある。しかし,植生構造の違いと被食前後の土壌の

空間的不均質性変化の関係についてはよくわかっていない。本研究では,植生タイプ

が異なるモンゴル草原生態系において,放牧家畜による被食が土壌の窒素無機化速度

の空間的不均質性におよぼす影響明らかにすることを目的とした。

【対象地域および方法】

モンゴル国の植生タイプが異なる3つの草原生態系(乾燥程度の弱い順に森林ステ

ップ,潅木ステップ,砂漠ステップ)を対象とし,被食防護柵の内外合計576地点か

ら表層土壌を採取した。実験室培養により純窒素無機化速度・純硝化速度を測定し,

セミバリオグラムにより空間的不均質性を定量化した。

【結果と考察】

純窒素無機化速度・純硝化速度は乾燥程度が強い草原生態系ほど低下し,また,同

じ草原生態系では被食があると低下した。一方,純窒素無機化速度・純硝化速度の空

間的不均質性は被食が無い状態では概ね植生構造に由来する空間的不均質性を示し

たが,被食がある状態では元の植生構造に関わらず空間構造が失われた。

(11)

O3

生物地球化学研究会2016.Nov

『こんな授業やってます:』

’生物地球化学’から解くCO2問題

楊宗興 (東京農工大学)

CO2等の温室効果ガスによる地球温暖化の問題は、近年、世界的にも認識されてきている。IPCC(気候変

動に関する政府間パネル)第5 次報告書によりその科学的真実はかなりの確かさで明らかにされ、その根拠 に基づく形で、化石燃料依存社会から脱却するための新たな世界的枠組みとしてのパリ協定も2015年度の末 に採択されるに至った。しかしながら、その問題性や真実性が広く認識されているといえる状況には、まだ ほど遠いようである。この問題に関してわが国では、政府を含めて’対岸の火事’といった受け止め方が大勢の ように見えるし、米国大統領候補トランプ氏は「気候変動は”でっち上げ”」と言い、共和党もパリ協定のアジ ェンダを拒絶するとの姿勢である。このような多様な考え方の存在は、それぞれの価値観のためでもあろう が、化石燃料のCO2が地球の気候果たす因果関係について、まだ曖昧さが残っている、あるいはrobustに理 解されていないことが一つの理由と思われる。

そこで、’生物地球化学’から見るとこのCO2問題は、こうはっきりするのですよ、という講義を試みている ので、この研究会という比較的時間の余裕のある機会を使って紹介し、議論の種にしてみたい。

いくつかの切り口で行っている。

(1)惑星地球の特異性と進化

地球とはどのような星か。一言で言えば、「異常な星」ということになる。何故なら、このような星は宇宙で どこにもないからである。同じ地球型惑星の金星や火星とも大気組成がまったく違う。これは地球の進化の 過程でCO2が別の形でストックされるようになったからである。地球表層のCの大部分は炭酸塩とケロジェ ンとして存在する。後者は光合成による有機物である。しかし有機物は従属栄養生物により分解され、正味 の炭素の貯蔵や酸素放出は基本起こりえない。これが生じたのは埋没という過程による。これによって化石 燃料を含む有機態炭素が貯蔵され、同時にその表裏の関係として正味の酸素放出(大気酸素の起源)が生じ た。なお、大量の炭酸塩、有機物としての貯蔵は、地殻の更新がない大陸が存在したからこそ可能になった。

(2)CO2クイズ

a) 煮炊きに使っていた木材、これが燃えると CO2は増えるか増えないか。b) 生き物の呼気は大気よりCO2

が高い。このような呼吸により大気の二酸化炭素は増えるか増えないか。c) 光合成では酸素と有機物が作り 出され、従属栄養生物はその有機物を食べ、酸素を消費して生きているので、両者間で物質的なバランスが とれている、と考えることができる。ならば完全に密閉した空間において、何も餌をやらない状態で生き物 を飼うことができるとも考えられるが、これはできるかできないか。というクイズに答えてもらっている。 (実際に「ガラス玉の生態系」が市販。地球は宇宙から見たらガラス玉の生態系であり、その中では上記の バランスしたモノの動きが生じている。実際に閉鎖系での生存を試そうとしたBiosphere2もあった)

(3)炭素の動きを書き表してみよう

ガラス玉の中の地球で生じている炭素の動きは、単純には左のように表せる。これ に対し、a) 草食動物が現れた場合、b)さらに肉食動物が現れた場合、c)さらに人類 (狩猟採集時代)が現れた場合、d)農業(1万年前)が始まった時代、e)産業革命が 始まった時代、についてそれぞれ描いてもらう。e)の産業革命以降の時代における化 石燃料の使用をどう表現するかがポイントで、結論として、d)までは閉鎖系で炭素が 回っていたのに、e)では閉鎖系の外部から(ちょうどBiosphere2のドーム中に外部 から燃料を持ち込んで焚くように)炭素を持ち込んで新たなCO2を作り出す、という構 図になることになる。化石燃料を使用し続けている現代文明はまさにこのような状況に あり、大気のCO2が増加するのは当然、原因は化石燃料なのは明白ということになる。

(結論として)

かつては、自然のサイクルの中で同じ炭素が大気 CO2と土壌および生物相(有機炭素)の間を行き来するだ けだったのに対し、現在は、循環から外れていたCを取り出しCO2にしている。これにより、循環系に新た な炭素が追加される。太古は確かに CO2が高かった。しかしその時は、今より太陽が暗かった。化石燃料を 燃やすことは、過去の大気組成に戻ること。それは、現在では高すぎるCO2になる。IPCCの第5次報告書 で、これまでの「気温の増加」と「産業革命以降の CO2累積排出量」との比例関係が示されているのは、こ のことに他ならないと考えることができる。

大気CO2

(12)

A1

河川

-

地下水交流の定量化‐岡山県旭川の例‐

○小野寺真一1・齋藤光代2・丸山豊3・安田香穂3・友澤裕介1

1

広島大学・2岡山大学・3広島大学修了・卒業生

【背景と目的】

河川-地下水交流が活発である局所的な流動場を含む交流フラックスやその

滞留時間の推定は,水質形成特に栄養塩供給にとって重要であるが難しい。本

研究では,サイトスケールで温度トレーサー変動を利用した地下水フラックス

推定モデルを使用して推定するとともに,流域スケールでラドントレーサーを

用いてその交流場の分布を見積もった。

【対象地域および方法】

本研究では岡山県の旭川を対象とした。旭川は朝鍋鷲ヶ山を源流に発し、岡

山市児島湾へと流入する全長約140㎞の一級河川である。サイトスケールでは、

最下流の蛇行域において観測及び解析を行うとともに、流域スケールでは、上

流から下流まで50か所でラドントレーサー(222Rn)を計測して、交流強度の空

間分布を推定した。

【結果と考察】

1)岡山県の旭川下流域の氾濫原に対して2010年~2012年までの河川水温と地

下水温の観測値に1次元熱輸送式の解析解を適用した結果,地下水フラックス

は2.9~6.5 m/dと推定された。このパラメーターを用いて温度の水平分布を推定

すると,80~1500 mの範囲であればフラックスの決定が可能であることが示さ

れた。酸素安定同位体比と塩化物イオンを用いたマルチトレーサーによる検証

により流動経路を4ゾーンに分類した。氾濫原の交流量は河川流量の5%であっ

たが栄養塩の変動はさらに大きく、最下流にもかかわらず栄養塩輸送にとって

河川水の1割に影響を与える河川及び沿岸生態系に対して重要な場であること

が明らかになった,

2)上流から下流にかけての交流量の分布については、大きな氾濫原のある盆

地エリアで大きいことが確認できた。また、栄養塩輸送については、氾濫原で

大きな供給があることは上記の原位置での観測結果と調和的であり、一方、貯

水池での栄養塩消失の傾向も確認できた。特に、最下流の氾濫原の交流量と栄

養塩供給量は大きい傾向を示した

(13)

A2

淡水生態系における新たな好気的メタン生成経路

KHATUN Santona 1・小島久弥2・○岩田智也1

1

山梨大学・2北海道大学

【背景と目的】

メタンは強力な温室効果気体であり、その発生源の究明が大気中のメタン濃度の動

態を予測する上で重要である。淡水生態系は、大気メタンの主要な自然発生源である

ことが知られており、とくに堆積物中の嫌気環境が主なメタン生成プロセスの場であ

ると考えられてきた。しかし、近年になって湖表水層の好気環境においてもメタン生

成が生じていることが明らかとなってきた。海洋表層では、浮遊性微生物がメチルホ

スホン酸(MPn)をP源として利用し、その分解産物として好気的にメタンが生成す

ることが報告されている。しかし、湖表層の好気的メタン生成に関わる微生物と生成

プロセスについては十分に明らかにされていない。そこで本研究では、淡水生態系に

おける新たな好気的メタン生成経路を明らかにすることを目的とした。

【方法】

浮遊性微生物(真核藻類10株)の無菌培養を行い、好気的メタン生成を測定した。

実験1では、リン飢餓状態とした藻類株に無機リン(Pi)およびMPnを添加し、メタ

ン生成速度を比較した。実験2では、様々なホスホン酸(MPn、EPn、2-AEPn、DMMPn)

を培養瓶に添加して生成気体を測定した。実験3では、無機窒素、PiおよびMPnの

組み合わせを変えて添加し、栄養塩バランスがメタン生成に及ぼす影響を検証した。

【結果と考察】

実験1では、培養をおこなった全ての藻類株でMPn添加区から好気的にメタンが

生成した。このことから、多くの浮遊性真核藻類がリン飢餓状態でMPnを代謝しメ

タンを生成することが明らかとなった。また、実験2の分析結果から、ホスホン酸の

C-P結合の開裂により気体が生成していることが明らかとなった。対象株にC-Pリア

ーゼを有する種は含まれていないことから、異なる酵素がホスホン酸代謝に関与して

いるものと考えられた。実験3では、MPnに窒素を添加することでメタン生成が加速

する現象が確認された。窒素の可給量がメタン発生量を調節していると考えられた。

本研究により、淡水性藻類がリン飢餓状態でホスホン酸のC-P結合を開裂させるこ

とで好気的にメタンが生成し、さらに窒素負荷によりメタン生成量が増加することを

明らかにした。リン欠乏状態の淡水域では、好気的メタン生成は一般的な現象である

と考えられる。

(14)

SWAT

を用いた児島湖への栄養塩負荷量の長期変動解析

◦清水裕太1・小野寺真一2・金 广哲2・齋藤光代3

1農研機構・西日本農研・2広島大学・3岡山大学

【背景と目的】

閉鎖性水域での富栄養化問題の解決には、流入河川からの窒素やリンといった栄養塩負 荷量を明らかにすることが重要であるが、湖底堆積物からの間接的な栄養塩負荷も影響を 与えるケースもあることから、洪水時の流入河川からの懸濁態を含む長期的な変動解析も また重要となる。本研究では、これまで未解明であった児島湖流域からの気候変動および 土地利用変化を考慮した栄養塩負荷量の長期変動を明らかにすることを目的とし、流域モ

デルSoil and Water Assessment Tool (SWAT)を用いた解析を行った。

【対象地域および方法】

岡山県南部に位置する児島湖は、1959年に児島湾奥部を人工的に締め切って造られた

面積10.8 km2、平均水深1.8 mの淡水湖である。主な流入河川である笹ヶ瀬川(283 km2)

および倉敷川(160 km2)から流入する栄養塩負荷によって1980年代に深刻な富栄養化問

題が生じ、1985年からは湖沼水質保全特別措置法の指定湖沼になっている。本研究では、

児島湖へ流入する栄養塩負荷量をSWATを用いて1950∼2010年の推定を行った。本研究

ではSWAT version 2009.93.7bに、土地利用変化モジュールSWAT2009 LUCを組み合わせ

て5時期の土地利用データ(1976, 1987, 1991, 1997, 2006)を使用して解析した。降雨流

出量推定にSCS Daily Curve number法を採用した。パラメータのキャリブレーションは

隣接流域の公共機関による実測の流量および笹が瀬川および倉敷川流域内の公共用水域 水質測定地点におけるSS、T-N、T-P濃度を用いてSUFI2法によって行なった。キャリブ

レーション期間を2002∼2006年、ヴァリデーション期間を2007∼2009年とした。

【結果と考察】

児島湖流域からの栄養塩負荷のソースの一つは農業排水であり、降水量に応じて変化 し、湿潤年で負荷量が多く、渇水年で少ない傾向を示した。主要流入河川の負荷源の内訳 は、笹ヶ瀬川では生活排水に起因するものが60%、農業排水に起因するものが40%で

あったのに対し、倉敷川では前者が15%、後者が85%であった。笹ヶ瀬川および倉敷川

からの栄養塩負荷量は1950年から1980年にかけて増加した生活排水および農業排水に

よって明瞭な上昇傾向を示し、1980年頃に栄養塩負荷量のピークを迎えた後、下水道整

備等による生活排水対策の推進および農地面積の減少に伴って、両流域からの栄養塩負荷 量は低下傾向に転じた。児島湖へと流入するトータルの負荷量は、65%が生活排水起源

で35%が農業排水起源と推定され、計算期間を通して生活排水起源の割合が高い結果と

なった。下水道整備をはじめ生活排水対策が進み、それに起因する栄養塩負荷量は減少し てきているが、栄養塩負荷量の4割弱を占める農業排水対策についても、さらに進めるこ

とが今後必要である。

Key words:児島湖、栄養塩、富栄養化、長期変動、SWATモデル

(15)

A4

Nutrient and biogenic silica accumulation in Sediment from Kojima Bay,

Seto Inland Sea

○Guangzhe Jin1, Shin-ichi Onodera1, Mitsuyo Saito2, Takaharu Sato1, Mayumi Jige 3 Shimizu Yuta4 1Hiroshima University 2Okayama University 3Osaka Ohtani University 4NARO, WARC

【Background and objective】

River mouth estuaries receive large quantities of terrestrial derived nutrients via rivers and it is an

important pathway for which transported to the sea. It has significant alternations on sediment accumulated

nutrient, and recycled nutrient has bought impacts on local nutrient balance and eutrophication events. Our

objective is to clarify the nutrient distribution along the river mouth area from central Seto Inland Sea area,

clarify the possible impacts on nutrient accumulation and recirculation from recent human activities.

【Research location and methods 】

Two cores were taken by piston sampler and 27 surface sediment samples were also collected from Kojima

Bay and connected artificial Lake, samples were analyzed for nitrogen carbon phosphorus and biogenic silica

(Bsi). Sediment 210Pb and 137Cs radioactivity were analyzed to build the age model across the whole cores.

【Results and discussion】

Surface sediment shows the high level of nitrogen and carbon accumulated in brackish bay and high level

of phosphorus in the lake. In both cores, carbon and nitrogen contents decreased with depth, suggests the

decomposition and released into the overlying water. N: P molar ratio shows 4 times higher in Bay than the

connected lake. This suggests large nitrogen and organic matter resources supplied from several main rivers,

and the phosphorus is accumulated less efficiency than nitrogen and carbon in the brackish bay. Core profile

shows phosphorus contents increased after 1950s, with two peaks at 1970s and 2000s, indicates the

hypereutrophic event in 1970s and accumulation of recycled P in the surface oxide sediment. On the other

hand, core from the artificial lake shows relatively low N:P ratio of 3:1 at surface increased to 8:1 at 60cm,

suggests the phosphorus is more mobile than nitrogen in these sediment.

The Bsi shows a low content level before 1950s at 40cm and comparably higher level at from 1950s to

1990s. After 1990s, it shows a decreasing trend and remains at low level until 2009. This may infer the higher

river flow before the dam constructed may have a dilution effect on the Bsi retention in this area before the

dam of Kojima lake enclosed. After the dam enclosed, the water environment became stable and it is easier

for the biogenic stabilization. The peak of nutrient discharge and eutrophication events during the 1970s leads

to a boom of plankton, which may lead to a higher production of diatoms. After 1990s with the consumption

of silica in the lake, decreased water soluble silica content decreased the production of diatoms and resources

for biogenic silica.

(16)

A5

沖積平野における地下水の水位、水質及び環境同位体の

長期変動から推定される地下水流動特性

友澤 裕介

1

・小野寺 真一

・齋藤 光代

2

・竹内 徹

3

・北岡 豪一

4

1

広島大学・

2

岡山大学・

3

株式会社フジタ地質・

4

岡山理科大学

【背景と目的】

沿岸沖積平野の地下水は多様に利用されてきた一方、過剰使用による塩水化などの

問題も多く報告されてきた。地下水の流動を把握することは、地下水流動環境やその

平野の脆弱性を評価でき、今後の水利用の変化などに対応するためにも重要と考えら

れているが、十分に研究されている地域は少ない。

本研究では岡山平野において、地下水の水質と水位及び環境同位体の長期変動に着

目し、地下水流動及び地下水涵養過程の推定を目的とした。

【対象地域および方法】

岡山平野の観測井戸4箇所(うち2箇所は2深度)及び河川2地点を対象に水位ロ

ガー観測及び採水を行った。2015年5月に採水したサンプルの主要化学成分(栄養塩

類、HCO3-、陰イオン、ICP)分析を行い、2008年から2016年の間に採水したサンプ

ル(約16回)は環境同位体である酸素・水素同位体比の分析(WS-CRDS法Picarro

社製 L2120-i)を行った。

【結果と考察】

主要化学成分はCa-HCO3型、Na-HCO3型、Na-Cl型に分けられた。Ca-HCO3型は浅い帯

水層(深度 4~6m 程度)の地下水及び河川水であり、Na-HCO3型は深い帯水層(深度

13~18m 程度)の地下水であった。Na-Cl 型は最下流位置の深い帯水層(深度 18m程

度)の地下水及び感潮域の河川水であった。酸素・水素同位体比は概ね天水起源の特

徴を示したが、長期変動が見られ、特出して低い時期があるものを観測した。

以上のことから、対象の地下水流動は浅い層と深い層が考えられ、浅い層の地下水

は主に河川を涵養源とし、流下に伴い岩石-水相互作用による水質の進行を進めなが

ら集水、混合している。一方、深い層の地下水は、浅い層の地下水よりゆっくり流下

し、より岩石-水相互作用を受け水質が進行している。最下流地点の地下水は現代の

海水の混合により塩水化しており、その割合は約15-50%の間で変動していた。

また、酸素・水素同位対比が特出して低い時期を有した地下水については、異なる

涵養過程の水及び流動の存在の可能性が考えられるが、明らかでない。

(17)

A6

A SWAT Model Analysis for The Ota River Water Discharge

Fandy T r i Admaj aya1, Yut a Shi mi zu2, Guan gzhe J i n1, Shi n-i chi Onoder a1

1Gr aduat e School of Int egr at ed Ar t s and Sciences, Hi r oshi ma Uni ver sit y

2WARC, Nat i onal Agr i cul t ur e and Food Resear ch Or gani zat i on

1. Introduction

Watershed management is one of effort to protect and maintain water resources. Watershed characteristics can be looked as a landscape, as a hydrological system, and as an ecosystem. As hydrological systems, a watershed has some functions as a recharge area, a store area, and a discharge area.

The Ota River is the major river which flows through Hiroshima Prefecture and empties into the Seto Inland Sea. The Ota River water discharge is important for knowing a better water-land management based on a watershed. SWAT Model has been implemented for watershed hydrology research widely. (Wellen et al., 2015). The objective of this research is to estimate the Ota River water discharge using SWAT Model.

2. Research Location and Methods

The Ota River watershed (1,542.96 km2) is located on the west of Hiroshima Prefecture. The forest is the most major land use covering 80% of the total watershed area. Average annual precipitation is 1,511 mm/year. The required input data for the SWAT model are following: 1) topographic/DEM SRTM data (30 m), 2) land use map of 2006, 3) soil map (1/500.000), and weather information. The model calibrated using the river flow rate observed at a gauging station in Asakita-ku near the outlet of the whole watershed. Evaporation was estimated by the Penman-Monteith method. Simulation period was set to be 2003-2014, including warm up period of 2003-2005, calibration period from 2006-2009 and validation period 2010-2012. Calibration for hydrological parameters was conducted by SWAT-CUP.

3. Results and Discussion

Four statistical indexes were used for evaluating the model performance. The results during the calibration period showed that R2 = 0.91, RMSE-observations standard deviation ratio (RSR) = 0.35, Nash-Sutcliffe Efficiency (NSE) = 0.87, and Percent BIAS (PBIAS) = 9.1. The validation period showed R2 = 0.86, RSR = 0.40, NSE = 0.84, PBIAS = 8.1. Both of calibrated and validated model is judged as "very good" based on the indexes according to the Moriasi's guideline (Moriasi et al., 2007) so that the model can be used for prediction the hydrological processes in the Ota River watershed. The monthly water discharge of the Ota River was ranged from 14.99 to 240.10 m3/s. Although some of the peaks are not fitted to the observed, the reproducibility of water discharge seems to be good enough. Further analysis is required to clarify the hydrological processes for the management of water resources in the Ota watershed.

(18)

A7

水素・酸素

安定同位体比等を用いた

岡山県旭川流域における水循環特性の解明

○河野友介

1

・小野寺真一

1

・友澤裕介

1

・齋藤光代

2

1

広島大学・

2

岡山大学

【背景と目的】

瀬戸内海とそれ に接す る山陽側の流域 は南北 を標高の高い四 国山地 と中程度の標高

で日本海側に稜 線を有 する中国山地に 挟まれ た特異な地理的 環境に あり、季節風等

様々な気流が交じり合うことが知られているが、詳細な検証はあまり行われていない。

そのため本研究では、水素・酸素安定同位体比等を用いて岡山県旭川流域における水

循環特性の解明を目的とした。

【対象地域および方法】

本研究では岡山県の旭川を対象とした。旭川は朝鍋鷲ヶ山を源流に発し、岡山市児

島湾へと流入する全長約140㎞の一級河川である。山頂または尾根から約1500mの距

離に位置する地点を上流から下流にかけて 50 か所設け、観測点とした。年 4回を目

途にこれまで計5回(2015/8/21-22、2015/11/17-18、2016/2/28、2016/6/19、

2016/9/26-29)の調査を行った。その際に、現地では pH 等の簡易測定を行い、さらに採水した

試料は速やかに冷凍して実験室に持ち帰り、Picarro L2130-i (Picarro Co., Ltd.)

を用いて水素・酸素安定同位体比を分析した。

【結果と考察】

酸素安定同位体比は1年を通して高緯度ほど小さくなる傾向を示した。d-excessは

北緯 35.1度以南では 1年を通して4.86~13.67 と緯度差による違いがあまり大きく

なかったのに対して、北緯 35.1 度以北では 8.14~21.84 と比較的大きな値が測定さ

れた。2015/2/28に採取した降雪のd-excessは26.67~36.02と河川水のd-excessに

比べ非常に大きな値であった。また、夏と冬ほどd-excessは大きく、秋ほどd-excess

は小さくなる傾向を示した。冬季の岡山県旭川流域では、北寄りの乾燥した季節風が

日本海上で蒸発速度の速い水蒸気を補給し、旭川源流域で降水・降雪をもたらし、残

った水蒸気が瀬戸内海からの水蒸気と混合し、旭川中流域、下流域に降水をもたらす

と考えられる。夏季は南寄りの湿潤な季節風が太平洋上で蒸発速度の遅い水蒸気を補

給するため、d-excessは小さくなると考えられている。しかし、夏季の旭川上流の河

川水中における d-excess は 1年で最も大きな値を示している。瀬戸内地形を考慮す

ると、夏季は南寄りの湿潤な季節風が四国山地で大量の降水を除去し、乾燥した空気

塊が瀬戸内海で蒸発速度の速い水蒸気を補給する。その後、水蒸気を大量に含んだ空

気塊が北上するが下流域は標高差があまりないため水蒸気が凝結せず、標高の高い上

流域に大量の降水をもたらすことでd-excessが大きくなったと考えられる。

(19)

B1

「高知県の標高の異なるヒノキ林における窒素利用様式」

○稲垣善之1・宮本和樹1・奥田史郎1・野口麻穂子1・伊藤武治1

1

森林総合研究所

【背景と目的】

ヒノキは、日本の代表的な造林樹種である。ヒノキは常緑性であり樹冠に数年分の

葉をつけている。これまでの研究でヒノキの葉寿命は年平均気温の高い地域で短い傾

向が報告されている。また、貧栄養な環境条件には常緑性の樹種が優占することが知

られており、同一の樹種についても、土壌条件に対応して葉寿命が変化し樹冠におけ

る窒素の滞留時間に影響を及ぼすことが予想される。近年、ヒノキの樹冠葉量を精度

よく推定する方法が開発され、樹冠の窒素量と落葉窒素量から窒素滞留時間を求める

ことが可能になった。本研究では、高知県の標高の異なる2地域のヒノキ林において、

土壌条件の違いに対応した窒素利用様式の変動を明らかにすることを目的とする。

【結果と考察】

高標高地域は低標高地域と比べて生葉および落葉の窒素濃度が低く、窒素の引き戻

し率が大きかった。二つの地域で樹冠葉量、落葉量、葉寿命に差は認められなかった。

二つの地域で樹冠窒素量には差が認められず、高標高地域で落葉窒素量が低く、窒素

滞留時間は大きかった。土壌のC/N比が高いほど生葉窒素濃度、落葉窒素濃度が低下

する傾向が認められた。土壌C/N比と樹冠葉量、落葉量、葉寿命には有意な関係は認

められなかった。土壌C/N比が高いほど樹冠窒素量、落葉窒素量は低下する傾向が認

められたが、窒素滞留時間との関係は有意ではなかった。以上の結果より、高標高地

域では落葉前の引き戻し率が大きいことにより窒素滞留時間が大きかった。また、地

域内の土壌条件に対応して窒素滞留時間が増大する傾向は認められず、窒素引き戻し

率は、地形による土壌条件の違いよりも気象条件に対応した窒素無機化速度の変化に

反応すると考えられた。

(20)

B2

「鉱物組成が異なる土壌の微小な有機物集積集合体の比較」

○浅野眞希

1)

・和穎朗太

2)

・山口紀子

2)

・武市泰男

3)

・平舘俊太郎

2)

菅 大暉

4)

・小野寛太

3)

・高橋嘉夫

5)

1

筑波大、

2

農研機構、

3)KEK

4)

広大,

5)東大

【背景と目的】

土壌有機物(SOM)が土壌中に長期間蓄積される要因として、無機物との相互作用

(化学的収着、物理的隔離等)の寄与が重要であることが認識されつつある。しかし

ながら、異なる鉱物組成の土壌における微小な有機無機集合体が担う有機物集積作用

の実態は不明である。本研究は、有機無機集合体の有機物保持量、炭素の滞留時間の

違いや、有機物と無機物の空間分布を明らかにすることにより、SOM 集積作用は、

鉱物組成の違いを反映してSOMを集積している主要な有機無機集合体は異なるとい

う仮説の検証を行った。

【試料・方法】

鉱物組成が異なる4つの土壌としてallophanic Andisol (AND1),non-allophanic

Andisol (AND2),Mollisol (MOL), Ultisol (ULT)のA層試料を用い、超音波を用いた

最大分散処理による粒径サイズ別分画を行った。各画分のTOC、TN含量、選択溶解

法による可溶性 Fe,Al,Si 含量、放射性炭素同位体(pMC)、窒素安定同位体比(δ

15N)の測定を行った。さらに、最も TOC 含量が高い粒径画分中の官能基組成別の

有機炭素空間分布を走査型透過軟 X 線顕微鏡(STXM)を用いた-X線吸収微細構造

(NEXAFS)分析によって比較した。

【結果】

いずれの土壌タイプでも、<2μm画分で最も高いTOC、TNの分配率を示し(45

~73%)、粒径サイズが小さい画分ほど、C/N比は低く、pMC、δ15N値は上昇する

傾向を示すことが明らかとなった。AND1 および 2では、<0.2μm 画分の TOC 濃

度が最も高い値を示し、ピロリン酸塩および酸性シュウ酸塩溶液可溶の Al と高い正

の相関を示した。さらに、STXM-NEXAFS分析から、有機物と鉱物の微小領域での

空間的相互関係を解析し、SOM集積作用について考察を行った。

(21)

B3

「冷温帯林の細根動態:積雪量変化の影響」

○福澤加里部1・舘野隆之輔2・鵜川信3・渡辺恒大1,2・細川奈々枝4・

今田省吾2,5・柴田英昭1

1

北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・2京都大学フィールド科学教育研究

センター・3鹿児島大学農学部・4北海道大学大学院環境科学院 ・ 5公益財団法人

環境科学技術研究所

【背景と目的】

細根生産は森林の純一次生産の3-4割を占めると報告されており、枯死根供給は

土壌への主要な養分ソースである。また細根は養分吸収を通じて養分シンクとしても

機能する。したがって森林の炭素・養分動態を理解する上で細根動態を把握すること

は重要である。一方、近年の地球温暖化による積雪量の減少が土壌凍結を加速させ、

窒素動態を変化させることが懸念され、そのメカニズムを解明する必要がある。本研

究は、積雪量が減少したときの細根動態の変化を明らかにすることを目的とした。

【対象地域および方法】

北海道東部の標茶町に位置する京都大学北海道研究林内の林床がミヤコザサで覆

われるミズナラ林にて行った。除雪区と対照区を設け、除雪区では2014-2015年の冬

季に数回除雪処理を行った。ミズナラ樹冠下に根箱を設置し、スキャナー法により

2014年4月~2015年11月まで定期的に根箱の土壌断面の画像を撮影した。表層10

㎝の画像を解析し、観測日毎の根長および細根生産・枯死速度を算出した。

【結果と考察】

平均の細根生産速度は7-8月に最大になる一山型の季節変化パターンを示したが、

ミズナラの展葉が開始する6月上旬には細根生産を開始しており、その大部分がミズ

ナラの根であった。生産開始のタイミングはミズナラの方がササよりも早いことが明

らかになった。一方、細根枯死は生育期には低く、秋から翌年春までの休眠期に高ま

る傾向があった。しかし除雪処理が細根生産・枯死のタイミングに及ぼす影響は明確

ではなかった。土壌凍結が起こりやすい寡雪地域では、積雪量の変動に対して細根動

態は比較的安定である可能性がある。

(22)

「北海道北部の針広混交林における林冠葉に含まれる窒素の空間分布」

〇井上華央

1

・柴田英昭

・吉田俊也

・中路達郎

・小花和宏之

2

・加藤顕

2

1

北海道大学,

2

千葉大学

【背景・目的】

天然性針広混交林の樹種や林冠構造は空間的に不均一に分布しており、窒素循環

の空間分布を理解するためには、林冠葉に含まれる窒素が空間的にどのように分布

しているかを評価することは重要である。本研究では、北海道北部天然性針広混交

林の集水域において、林冠葉の窒素の空間分布を明らかにすることを目的とした。

【方法】

研究対象とした集水域(3ha)は常緑針葉樹が70%以上を占める天然性針広混交林

であり、2002年より5年に1度毎木調査が行われている。春~秋にかけて優占樹種

(針葉樹2種、広葉樹6種)及び下層を優占するササの葉を採取し、写真撮影による葉

の色データ(RGB値)、SPAD値、葉面積、全窒素濃度を測定した。同時に、小型の

無人航空機を集水域内で飛行させ、上空から連続撮影により、合計700枚程度の高

解像度デジタル写真(約2cm/ピクセル)を得た。画像データから立体構造を計算でき

るSfM解析ソフトを用い、集水域内の三次元形状を得た。その三次元情報と、葉の

色情報、全窒素濃度データを用いて、林冠葉の窒素の空間分布を地図化した。

【結果と考察】

葉の面積当たり窒素量とRGB値を用いた指標間には、針葉樹と広葉樹において有

意な相関が認められた。森林構造の三次元データを用いて林冠表面と地表面の標高

差から、樹木と下層植生を区分し、さらに夏季と冬季(落葉後)の画像データの差分か

ら針葉樹と広葉樹を分けることができた。また、分類結果を用い抽出したオルソ画

像に、窒素とRGB値の関係式をそれぞれ適用することで、集水域スケール内での林

冠葉に含まれる窒素濃度の空間分布を明らかにすることができた。

Key words: 窒素循環、空間分布、RGB、SfM解析、UAV

(23)

B5

「八朗湖流入河川の源流域における硫黄脱窒の解明」

○太田仁志・早川敦・浅野亮樹・村野宏達・石川祐一・高橋正

秋田県立大学 生物資源科学部

【背景】

脱窒は、人間活動の活性化により増大した窒素を除去する重要なプロセスである。

一般的に脱窒は、従属栄養細菌が担っているが、独立栄養細菌の硫黄酸化細菌が担

う硫黄脱窒というプロセスもある。硫黄脱窒は、嫌気的条件下で硫黄酸化細菌が還

元型の硫黄を電子供与体としてNO3

-をN2ガスに還元するプロセスである。秋田県西

部は元々海の底であり、現在の八朗潟干拓地だけでなく、八朗湖の流入河川源流域

にも海水中のSO4

2-を起源とした還元型の硫黄が豊富に存在すると考えられ、硫黄脱

窒が起こっているかもしれない。本研究では、八朗湖流入河川の源流域において河

川脇露頭の堆積物を採取し、堆積物中における硫黄脱窒の確証を得ることを目的と

した。

【研究地域・方法】

調査地は、八朗湖流入河川である馬場目川支流G地点とした。既往の試験で硫黄含

量が多いとされた層(G-7)とその直上の層(G-6)を用いて培養試験を行った。培

養試験では、イオン交換水(IEW)、硝酸カリウム(N区)、硝酸カリウム+チオ硫酸

ナトリウム(N+S区)を設け(KNO3-N:8mg/L、S2O3-S:20mg/L)、40日間培養し、1、

3、6、10、14、26、30、40日目に溶液と気相ガスを採取した。0.45µmメンブレンフ

ィルターでろ過した試料中のNO3

-、NO2

-、SO4

2-、S2O3

2-をイオンクロマトグラフ、NH4

+

を水質自動分析計で分析した。気相ガスは、NOx計でNOを、ECD検出器付きのガス

クロマトグラフィーでN2Oを分析した。

【結果・考察】

G-7層N区では、10日目にかけてNO3

-が8.17mg/Lから7.63mg/Lに低下し、SO4

2-は

2.55mg/Lから4.16mg/Lに上昇した。このNO3

-濃度の低下に伴うSO4

2-濃度の上昇

は、硫黄脱窒による還元型硫黄の酸化と考えられた。同時にNO2

-が蓄積し、それ以

降NO、N2O濃度が上昇し、脱窒の進行を確認した。N+S区においてもSO4

2-の上昇に

伴う顕著なNO2

-の蓄積があり、硫黄脱窒はNO3

-のNO2

-への還元を優先的に行ってい

たと考えられた。一方10日目以降はNO3

-とSO4

2-の対応関係は見られず、NO3

-は

7.63mg/Lから1.13mg/Lへと低下したが、SO4

2-は4.16mg/Lから3.64mg/Lへと低下し

た。このNO3

-濃度の低下は、硫黄酸化細菌だけでなく、従属栄養性の脱窒菌による

可能性があり、SO4

2-の低下は、SO4

2-の還元と推察された。G-6層N区では、NO3

-の低

下、SO4

2-の上昇ともにG-7層に比べ、著しい変化は確認されず、ガス分析の結果、

脱窒反応をほとんど示さなかった。以上より、G-7層では、NO3

-からNO2

-への還元に

硫黄脱窒の関与が示唆された。今後は、微生物の動態なども調べる予定である。

(24)

B6

「異なる土地利用下の土壌における亜酸化窒素発生

および硝酸溶脱に対する栄養塩添加の影響」

長根美和子1・柴田英昭2・内田義崇3

1

北海道大学環境科学院・2北海道大学北方生物圏フィールド科学センター

・3北海道大学農学院

【背景と目的】

亜酸化窒素は、硝化と脱窒によって発生する気体であり、陸域生態系の窒素循環に

おいて大きな役割を担う。亜酸化窒素の生成には基質となる栄養塩の量や、土壌水分

率、酸素条件などが影響する。特に、硝酸イオンは硝化の生成物であり、脱窒の基質

でもある。また、栄養塩を添加すると、土壌からの亜酸化窒素・二酸化炭素ガスの放

出量が変化することも知られている。これまでの亜酸化窒素を扱った研究では、硝化

と脱窒のどちらかに着目したものが多く、亜酸化窒素発生に対して両過程がそれぞれ、

どの程度寄与しているのかはよく分かっていない。また、硝酸の溶脱は亜酸化窒素の

発生と関係があると考えられるが、硝酸溶脱と亜酸化窒素の発生の関係は十分に理解

されていない。そこで本研究では、異なる土地利用下の土壌を用いて、栄養塩添加に

対する亜酸化窒素発生と硝酸溶脱の変化を追う。

【対象地域および方法】

北海道東部のベカンベウシ川流域に位置する森林、湿地、農地(牧草地)より、ラ

イナー採土器を用いて未攪乱土壌を採取し、ライナーチューブ内にて室内培養をする。

培養は、培養温度30℃で5日間、さらに水を加えて5日間、その後栄養塩(PO4-P、

NO3-N、NH4-N)を添加し、さらに14日間行う。期間内に計19回、ガスを採取して

亜酸化窒素濃度を測定する。また、培養期間中、降雨を想定した操作として、チュー

ブ上部から水を流し、下部から出てきた水を溶脱水として回収する。回収した溶脱水

と培養前後の土壌の各種分析を行う予定である。

(25)

B7

「藻場造成工区を対象とした海水中の拡散対流過程に基づく海底湧水の評価」

川下勝也1・土居鯨太2・齋藤光代2・大本茂之3・後藤真樹4・大久保賢治2

1

岡山大学・2岡山大・院・3(株)エイト日本技術開発・4岡山県農林水産部

【背景と目的】

海底地下水湧出については、従来から海への重要な栄養塩供給経路の一つである

と指摘されているが、その輸送量や流出後の挙動は十分に明らかにされていない。

そのため本研究では、比較的静穏な海域である藻場造成工区を対象に、海水中の

拡散対流過程の領域区分図から海底湧水の挙動を推定することを目的とした。

【対象地域および方法】

本研究では、岡山県備前市日生町鹿久居島南部のアマモ場造成工区の一つである

水の浦工区を対象とした。鹿久居島の基盤地質は主に流紋岩であり、水の浦の底質

は砂泥である。水深は干満によっておよそ1 m~2.5 mとなる。

2016年6/25~7/18の期間に、海底部と約1m上部の2点においてCTDセンサーに

よる海水の電気伝導度(EC)および水温の連続測定を10分間隔で行った。また、鉛

直2点間の温度差や塩分差を用いてレイリー数や安定密度比などの諸量を求め、降

雨や潮位変化に対するそれぞれの応答を確認した。

【結果と考察】

大量の降雨後は塩分の強い逆転(ΔS<0)がある程度続く傾向を示した。一方で、

降雨中は水温が逆転(ΔT>0)し、塩分が安定化する傾向があった。温度の逆転は干

潮時にも若干起こる傾向が見られたが、潮位との関係は不明瞭であった。以上のこ

とから、降雨に応答する海底湧水が水の浦における塩分逆転の主な要因であると考

えられる。

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