国際金融論(黒沢): 講義アウトライン
2011 年度 国際資本移動(1) テーマ:国際収支統計表の見方1. 資本移動の理論 A.貿易の自由化
リカードの比較優位説、ヘクシャー・オリーンの定理、保護貿易のマイナス面 GATT, WTO(貿易をした方が世界は豊かになる)
なぜ、貿易が発生するか
●アダム・スミス:絶対比較生産費説(ないものを輸入、余りを輸出) ●リカード:比較生産費説(2 国 2 財、1生産要素<労働>、完全競争前提) ●ヘクシャー・オリーン:要素賦存比率定理(2 国 2 財、2要素<労働・資本>) ●レオンチェフ・パラドックス:生産性を考慮(アメリカは資本集約国だが農産物
も輸出する)
●ステファン・リンダー:需要サイドから貿易が発生する
B.資本移動の自由化
アダム・スミスの資本移動理論(1776 年)
● 現実の世界では、金本位制度などのため資本移動は規制
● 貿易収支は速やかな収支均衡を求められる(資本移動は短期のみ)
● ニクソン大統領によるアメリカの金交換停止によって前提条件が変化
● アダム・スミス『諸国民の富』第 1 篇第 9 章「資材の利潤について」 アダム・スミスの資本移動理論(パワーポイント)
効率的貿易不均衡(アメリカの赤字・日本の黒字は効率的)
●収益率の高いアメリカに資本が流入し、収益率の低い日本から資本が流出する
2. マクロ経済の均衡式
経常収支=貯蓄投資バランス+財政収支:CA=(S-I)+(T-G)
● マクロ経済の均衡 総供給:Y + M 総需要:C+I+G+X
総需要=総供給 Y + M = C + I + G + X 整理すると Y – C – I – G = X - M 左辺に 税金(T)をプラス・マイナスする
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Y – T – C – I + T – G = X – M
( S -I ) + ( T – G ) = 貿易収支(経常収支) したがって、 貯蓄投資バランス+財政収支=経常収支
経常収支=長期貸借+短期貸借+外貨準備:CA=LTC+STC+RES
● 国際収支の大枠組み
経常収支 +100
資本収支 - 90 (長期貸借 -30、短期貸借 -60) 外貨準備 - 5
誤差脱漏 - 5 合 計 0
3. 日本の経常収支黒字の原因(2007 年度まで)
A.輸出超過説:日本企業の輸出競争力が強いから黒字(しかし、輸出が増えるときは 輸入が先に増えるので経常収支は赤字になるはず)
B.貯蓄超過説:( S – I )+ ( T – G ) = X – M のうちの貯蓄投資バランスが、日本 は貯蓄超過であるため黒字、アメリカは貯蓄不足と財政赤字のため赤 字
C.構造要因説:どちらが原因で、どちらが結果であるかは状況により異なり、両者が相 互に関連している。日本は構造的に黒字になりやすい(輸出企業育成 策、貯蓄奨励策など)
4. 国際収支表の見方
A.1993 年の全面改定(新IMF方式:日本は 96 年から実施) サービス貿易の拡大と、金融・資本市場の自由化
直接投資、証券投資の統計表への表れ方 B.国民経済計算体系との関係
経常収支+資本収支+外貨準備増減=0 C.日本の国際収支統計
日本の経常収支はなぜ大幅黒字なのか(2008 年度は貿易収支が 28 年ぶりに赤字) 所得収支が貿易収支を上回る
最近は資本収支も黒字
国際収支総括表(エクセル)参照
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○練習問題
西暦T年に日本の自動車会社N社が米国に50億円で自動車工場を建設した
(直接投資)。翌年(T+1年)N社は2億円の利益をあげ、うち1億円を米国内 の倉庫建設に充当し、残り1億円を日本のN社(本社)に送金した。T年、および
(T+1)年の日本の国際収支表にどのように記帳されるか示しなさい。
○解答例(教科書42~45頁参照) 1年目(T年)
資本収支のなかの投資収支勘定の[直接投資]欄に -50億円
2年目(T+1年)
経常収支のなかの所得収支勘定の
投資収収益項目の[直接投資収益]欄に 2億円
(内訳:送金1億円、再投資1億円) 資本収支のなかの投資収支勘定の[直接投資]欄に -1億円
(2億円の利益が全額日本送られそのうちの1億円を再送金したかたちになる。 実際には再投資の1億円は日本に送金されずそのまま米国で使用される。)
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