積分についての講義ノート

10 

Loading....

Loading....

Loading....

Loading....

Loading....

全文

(1)

積分の知識

学習院大学 福地純一郎

junichiro.fukuchi@gakushuin.ac.jp

(2)

1

章 積分

この講義ノートでは、大学初年度に統計学を学ぶために必要な積分の知識について説明を行う。定積 分の定義は高校の教科書に書かれている定義を用いる。微分の知識は前提とする。

1.1

不定積分

関数f(x)に対して、微分するとf(x)になる関数、すなわちF′

(x) =f(x)となる関数F(x)を、f(x)

の不定積分という。

例 1. (x2

)′

= 2xであるから、x2

は2xの不定積分である。 また、(x2

+ 10)′

= 2x、 (x2

−6)′

= 2x で

あるから、x2

+ 10や x2

−6も2xの不定積分である。

例1からわかるように、2xの不定積分は無数にあるが、その違いは定数部分だけである。関数f(x)

の不定積分を ∫

f(x)dxで表す。

✓ ✏

不定積分

F′

(x) = f(x)のとき

f(x)dx=F(x) +C, Cは定数

✒ ✑

関数f(x)の不定積分を求めることをf(x)を積分するといい,上の定数Cを積分定数という。

不定積分の性質

✓ ✏

不定積分の性質

k, ℓは定数とする。

kf(x)dx=k

f(x)dx

{f(x) +g(x)}dx=

f(x)dx+

g(x)dx

{kf(x) +ℓg(x)}dx=k

f(x)dx+ℓ

g(x)dx

✒ ✑

例 2. ∫

1dx=x+C, Cは定数

xdx=1 2x

2

+C, Cは定数

x2 dx=1

3x

3

(3)

例題 1. 0以上の実数x 0に対して定義された関数y =e−x

を考える。この関数の不定積分を求めな さい。

正解:(e−x

)′

=−e−x

であるから

e−x

dx=−e−x

+C, Cは定数

統計学では、関数y=e−1

2x2 や、それにxまたはx2を掛けた関数がよく現れる。

例題 2. すべての実数xに対して定義された関数y=xe−1

2x2を考える。この関数の不定積分を求めなさ

い。 正解:(e−1

2x2)′ =−xe−12x2である(合成関数の微分の公式を使う) から

xe−1

2x2dx=−e− 1

2x2 +C, Cは定数

1.2

定積分

関数f(x)を考える。区間[a, b]でf(x)≥0であり, fのグラフは 上の図のような連続な曲線であると

する。この曲線とx軸との間でx=aからx=bまでの部分の面積を求めたい。

いま、区間[a, b]で動く変数xをとる。y=f(x) とx軸との間でaからxまでの面積をS(x)で表すこ

ととする。まずS(x)の変化率を考えてみる。点(x,0), 点(x, f(x))をそれぞれP, Qとする。次にh >0

とし, 点(x+h,0), (x+h, f(x+h))をそれぞれ R, Sとする。このときS(x+h)−S(x)は図形PRSQ

の面積に等しい(左図)。これと等しい面積を持つ長方形PRS’Q’をとり、線分S’Q’がy =f(x)と交わ

y

=

f

(

x

)

a x x+h b

P Q

R S

S

(

x

)

S

(

x+h

)

S

(

x

)

a x t x+h

P Q

Q’ S’

R S

S

(

x

)

る点を(t, f(t))と書く(右図)。このとき

(4)

が成り立つ。したがって

S(x+h)−S(x)

h =f(t)

である。h→0のとき、t→xであるからf(t)→f(x)となり、したがって

lim

h→0

S(x+h)−S(x)

h =f(x)

が成り立つ。すなわちS′

(x) = f(x)である。つまりS(x)は関数f(x)の一つの不定積分である。

F(x)をf(x)の任意の不定積分とすると

S(x) =F(x) +C, Cは定数

と表される。x=aのときS(a) = 0であるから

0 = F(a) +C

したがってC =−F(a).結局

S(b) = F(b)−F(a)

が得られた。

一般に、関数f(x)の1つの不定積分をF(x)とするとき、2つの実数a, bに対してF(b)−F(a)をf(x)

のaからbまでの定積分といい、記号

∫ b

a

f(x)dxで表す。またF(b)−F(a)を記号[F(x)]

b

aで表す。

✓ ✏

定積分

関数f(x)の不定積分の1つをF(x)とするとき

∫ b

a

f(x)dx=[F(x)]

b a=

F(b)−F(a)

✒ ✑

この定積分求めることをf(x)をaからbまで積分するという。定積分の定義で、f(x)は負の値をとっ

てもよい。

例題 3. 以下の定積分を求めなさい。

(1)

∫ 1

0

1dx (2)

∫ 1

0

xdx (3)

∫ 1

0

x2dx.

正解

(1)

∫ 1

0

1dx=[x] 1

0 = 1−0 = 1

(2)

∫ 1

0

xdx=[1 2x

2] 1

0 =

1

2 −0 = 1 2

(3)

∫ 1

0

x2dx=[1 3x

3]1 0 =

1 3−0 =

(5)

例題 4. 以下の定積分を求めなさい。

∫ 2

1

(3x2−4x)dx

正解:

∫ 2

1

(3x2−4x)dx=[x3−2x2] 2

1 = (8−8)−(1−2) = 1

例題 5. a >0を定数とする。以下の定積分を求めなさい。

∫ a

0 xe−1

2x2dx

正解:

∫ a

0 xe−1

2x2dx= [

−e−1

2x2 ]a

0 =− e−1

2a2 + 1

関数の定数倍や和の定積分については, 以下の等式が成り立つ。

✓ ✏

定積分の性質

k, ℓは定数とする。

∫ b

a

kf(x)dx=k

∫ b

a

f(x)dx

∫ b

a

{f(x) +g(x)}dx=

∫ b

a

f(x)dx+

∫ b

a

g(x)dx

∫ b

a

{kf(x) +ℓg(x)}dx=k

∫ b

a

f(x)dx+ℓ

∫ b

a

g(x)dx

(6)

1.3

関数の極限

1.3.1

x

a

のときの関数の極限

1

関数f(x) =x2

において、xが2と異なる値をとりながら2に限りなく近づくとき、f(x)は 4に限り

なく近づく。

y =x2

x

2

y

4

O

一般に、関数f(x)において、変数xがaと異なる値をとりながらaに限りなく近づくとき、f(x)が

一定の値 αに限りなく近づく場合

lim

x→af(x) = α

または

x→a のときf(x)→α

と書き、この値αを x → aのときのf(x)の極限値という。また、このとき、f(x)はαに収束すると

いう。

例題 6. 以下の極限を求めなさい。

(1) lim

x→0x 2

(2) lim

x→2

1 1 +x

正解:(1) lim

x→0x 2

= 0.

(2)

lim

x→2

1 1 +x =

1 3.

(7)

1.3.2

極限が有限な値でない場合

関数f(x)において、変数xがaと異なる値をとりながらaに限りなく近づくとき、f(x)の値が限り

なく大きくなるならば

x→a のときf(x)は(正の)無限大に発散する

といい、

lim

x→af(x) = ∞

または

x→a のとき f(x)→ ∞

と書き表す。

1.3.3

x

→ ∞

のときの関数の極限

変数xが限りなく大きくなることを x→ ∞と表す。また、xが負で絶対値が限りなく大きくなるこ

とを x→ −∞で表す。このようなときの関数の極限を考える。

関数f(x) = 1

xにおいて, x→ ∞のときf(x)は0に限りなく近づく。また、x→ −∞のときもf(x)

は0に限りなく近づく。

y=1 x

x y

O

一般にx → ∞のときf(x)が一定の値αに限りなく近づくとき、この値αをx → ∞のときのf(x)

の極限値あるいは極限といい、lim

x→∞

f(x) = αと書き表す。x → −∞のときも同様である。この記号を

用いると上の関数については

lim

x→∞

1

x = 0, x→−∞lim

1

x = 0

と書き表される。また

lim

x→∞f(x)→ ∞, x→−∞lim f(x)→ ∞

(8)

例題 7. 以下の極限を求めなさい。

(1) lim

x→∞

100

x (2) xlim→∞

1

2 +x2 (3) xlim→∞5 +e

−x2

正解:(1) lim

x→∞

100

x = 0

(2) lim

x→∞

1

2 +x2 = 0

(3) lim

x→∞5 +e −x2

= 5

1.4

広義積分

u >1とする。関数f(x) = 1

x2 の1からuまでの定積分を求めると

∫ u

1

1

x2dx=

[

−1

x

]u

1 =−

1

u + 1 = 1−

1

u

である。この値は、左図の斜線部分の面積を表している。

y= 1 x2

x y

1 u

O

y= 1 x2

x y

1 O

次に、u→ ∞のときの

∫ u

1

1

x2dxの極限は1であることがわかる。これは、y =

1

x2 の曲線とx軸で囲

まれx= 1から右側の部分すべて(右図の斜線部分)の面積が1であることを意味している。

一般に、関数f(x)のaからuまでの定積分

∫ u

a

f(x)dx がu→ ∞のとき一定の値に収束するとき、こ

の値をf(x)の[a,∞) 上の広義積分といい、

∫ ∞

a

f(x)dx

で表す。つまり、lim

u→∞

∫ u

a

f(x)dxが有限のとき

∫ ∞

a

f(x)dx= lim

u→∞

∫ u

a

(9)

である。

上の例については以下のように書ける。

∫ ∞

1

1

x2 dx= 1

例題 8. 以下の広義積分の値を求めなさい。

(1)

∫ ∞

2

1

x2 dx (2)

∫ ∞

0 e−x

dx (3)

∫ ∞

0

xe−1

2x2dx

正解:(1) まずu >2に対して

∫ u

2

1

x2 dxを求める。

∫ u

2

1

x2dx=

[

−1

x

]u

2 =−

1

u +

1 2

したがって

∫ ∞

2

1

x2 dx= limu→∞

∫ u

2

1

x2dx= limu→∞

( −1 u+ 1 2 ) = 1 2.

(2) まずu >0に対して

∫ u

0 e−x

dxを求める。

∫ u

0 e−x

dx=[−e−x]u

0 =− e−u

+ 1

したがって

∫ ∞

0 e−x

dx= lim

u→∞

∫ u

0 e−x

dx= lim

u→∞

(

−e−u

+ 1)

= 1.

(3) まずu >0に対して

∫ u

0 xe−1

2x2dxを求める。

∫ u

0 xe−1

2x2dx= [

−e−1

2x2 ]u

0 =− e−1

2u2 + 1

したがって

∫ ∞

0

xe−1

2x2 dx= lim

u→∞

∫ u

0 xe−1

2x2dx= lim

u→∞

(

−e−1

2u2 + 1 )

(10)

(−∞,∞)上の広義積分

統計学では、(−∞,∞)上の広義積分もよくあらわれる。関数fは(−∞,∞)上で連続2

であるとする。

u→ ∞のとき

∫ u

a

f(x)dxが有限の値に収束し、かつu→ −∞のとき

∫ a

u

f(x)dxが有限の値に収束す

るとき

∫ ∞

−∞

f(x)dx=

∫ a

−∞

f(x)dx+

∫ ∞

a

f(x)dx= lim

u→−∞

∫ a

u

f(x)dx+ lim

u→∞

∫ u

a

f(x)dx

と定義する。

例題 9. 以下の広義積分の値を求めなさい。

(1)

∫ ∞

−∞

xe−1

2x2dx

正解:まずu >0に対して

∫ 0

u

xe−1

2x2dxを求める。

∫ 0

u

xe−1

2x2dx= [

−e−1

2x2 ]0

u =−1 +

e−1

2u2

したがって

∫ 0

−∞

xe−1

2x2 dx = lim

u→−∞

∫ 0

u

xe−1

2x2dx= lim

u→−∞

(

−1 +e−1

2u2 )

=−1. (1.2)

ゆえに

(1.2)と(1.3)式から、

∫ ∞

−∞

xe−1

2x2dx= ∫ ∞

0

xe−1

2x2 dx+ ∫ 0

−∞

xe−1

2x2 dx= 1−1 = 0

を得る。

Updating...

参照

Updating...

関連した話題 :