産業組織論
第一回小テスト解説
TA 松村 悠里
matsumura-yuri354@g.ecc.u-tokyo.ac.jp :Office Hour , Wed 13:30-14:30
• 完全競争市場の例:コメなどの穀物や魚の市場(ブランド品は
除く)
•
価格はすでに決まっている中で生産,購入.参入退出は自由.ブランド品でなければ 同質財.調べれば誰が生産しているかわかる• 不完全市場の例:インフラ系(price takerではない) タク
シー などなど (色々ありますね)
• 第三種価格差別の例:TOEIC・TOEFL(国によって値段が違
う),映画館や美術館などの入場料金(年齢),マッチングアプ
リ(性別),東京スカイツリーの外国人向けFast Track(国籍)
問題1 完全競争市場・独占企業・価格差別
問題2 参入阻止ゲーム
問題2 参入阻止ゲーム
(a)ゲームを戦略型で表現し,ナッシュ均衡を求めよ.
均衡での参入企業の戦略を , 既存企業の戦略を とする
と,ナッシュ均衡 (NE) は
s ∗
s ∗ I
E
• (Out,L) は参入企業が「参入せず,低価格を選ぶ」という戦略を表しています
E \ I H L (Out,H) 3,6 3,6
(Out,L) 3,6 3,6 (In,H) 5,5 1,6 (In,L) 6,1 2,2
•
授業でも習った手順に従うと,展開形ゲームは上のような標準形ゲー ムに書き換えられます•
おなじみの手順を踏むと○で囲んである部分がナッシュ均衡であるこ とがわかります問題2 参入阻止ゲーム
• ((Out,H),L)の均衡が空脅しを含んだ均衡になっていることに注意してくださ
い
• なぜなら,既存企業は必ずLを選択するので,もし参入企業はInした場合
に,戦略をHからLに変えることで利得を上げることができ,Hが最適では
なくなるからです
• 解答として戦略の組みを書くのではなく,均衡で達成される利得の(3,6)を書
いてしまう人がちらほらいましたが,スライドにも書かれている通り,ナッ
シュ均衡は戦略を用いて表現されるものなので,利得の組みを書かないよう
に気をつけてください
問題2 参入阻止ゲーム
•
左のような標準形で解答した人もいるのではないでしょう か?実はこの書き方もありといえばありです•
Outを選択した時に参入企業はHでもLでも利得が同じなの で,Out={(Out,L),(Out,H)}としてまとめてしまい,Outを 新しい戦略として定義し直しているのであれば問題はあり ません•
これはReduced Strategic Formと呼ばれる表現の仕方 に該当し,NEも(Out,L)と書けます•
しかし,このことに言及していなければ,この標準形とNE の解答では展開形を標準形に直したものとしては誤答とし か判定できません•
なので,できるだけ解説の方法に沿って解答してくださいReduced Strategic FormについてはOsborn&Rubinstein A Course in Game Theory のp94前後を確認してください
E \ I H L Out 3,6 3,6 (In,H) 5,5 1,6 (In,L) 6,1 2,2
解答:NEは(Out,L)
Remark
部分ゲーム完全均衡 (SPNE) は
問題2 参入阻止ゲーム
(b) バックワード・インダクションを用いて部分ゲー
ム完全均衡を求めよ.
• 今回は,NEで空脅しになっていた((Out,H),L)が排除されている事に注目しま
しょう
• まず,今回の問題における部分ゲームは何かを考えましょう
• 今回は二つの部分ゲームからなるゲームになっています
1. ゲーム全体
2. 参入企業が参入を決めた後に登場する価格をHにするかLにするかを決
定するゲーム
• 部分ゲーム完全均衡はそれぞれの部分ゲームにおいて各プレイヤーのNEとな
る戦略の組み合わせであることを忘れないでください
• この事を念頭に置けば,2番目の部分ゲームでどう考えるかがわかります
問題2 参入阻止ゲーム
•
バックワードインダクションを用いてSPNEを求めるために,まず価格を決めるゲーム から考えます•
注目すべきは,既存企業の情報集合が繋がっているという点です•
もし繋がっていないなら,既存企業は参入企業がLを選んだ時はLを,Hを選んだ時は Hを選べば問題ありません•
しかし繋がってしまっているので,既存企業は参入企業がLを選んだのかHを選んだの かわかりません•
こういう場合,まず,展開形ではなく標準形に直してみましょう問題2 参入阻止ゲーム
既存企業
•
標準形に直すと先ほどの部分ゲームは上の表のようになります•
これは囚人のジレンマと同じ構造になっていることに注目してください•
(L,L)がNEになることがわかります•
なので,価格を決める部分ゲームで(L,L)の均衡が選ばれることを考慮して参入企業は参入 の意思決定をします•
ここで,なぜ空脅しのNEが排除されるかがわかります.既存企業にとってはHを選択する ことはこの部分ゲームでは最適な選択ではないので,Hはここでの均衡戦略となり得ません問題2 参入阻止ゲーム
E \ I H L
H 5,5 1,6
L 6,1 2,2
•
Inを選んだ場合の部分ゲームで達成される利得は (2,2)であるので,全体のゲー ムは上のようになり,参入企業はOutを選びます•
結果としてバックワードインダクションを用いるとSPNEは解答のようになりま す•
おそらくバックワードインダクションを使う展開形ゲームを扱った問題で,情報 集合が繋がっている問題を解いたことがない人が多かったのか,ぱっと見,正答 率は高くはなさそうでした•
この参入阻止ゲームは今後の授業で非常に重要なモデルなので,よく復習してお いてください問題2 参入阻止ゲーム
(2,2) (3,6)
In Out
•
同じく第二種価格差別の「制約条件の置き換え」と「問題の再定式化」と書か れたスライドについて…•
「制約条件の∼」の最初に という条件(単調性条件)がありますが,「問題の∼」の条件式の中には含まれていません.