• 検索結果がありません。

Japan Medicine MONTHLY

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "Japan Medicine MONTHLY"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

10

2012 年 1 月 25 日(水)

 独立行政法人医薬基盤研究所とバイオベンチャーのリプロセル社は、ヒト多能性幹細胞(iPS細胞)か ら肝細胞を分化誘導し、製品化することに世界で初めて成功した。今年4月からリプロセル社を通して、 iPS細胞由来の肝細胞「ReproHepato」(リプロヘパト)の販売を開始する。ヒトiPS細胞由来の肝細胞 は、創薬の際に欠かせない毒性試験に利用することが期待されている。

医薬基盤研とリプロセル

 製品化のもととなった技術は、 2008年に採択されたスーパー特区の 研究課題として採択された「ヒト iPS細胞を用いた新規in vitro毒 性評価系の構築」(代表者=水口裕 之氏・医薬基盤研究所幹細胞制御プ ロジェクトチーフプロジェクトリー ダー、大阪大薬学研究科教授併任) での研究成果。リプロセル社が製品 化した。同製品の価格は、96穴プレー トでの試験1回分で20 ~ 30万円を 予定。すでに1月からサンプルの出 荷を開始している。

肝毒性試験

安定的な供給と再現性確保が課題に  多くの薬物は肝臓で代謝される が、その際に大きな役割を果たすの が薬物代謝酵素だ。薬物代謝酵素は、 種差があるため、ヒトの細胞で肝毒

性を評価する必要がある。ただ、 ヒト肝細胞は国内では入手できない ため、海外から輸入に頼るしかなく、 高価である点や安定的な供給ルート の確保が課題となっていた。また、 ドナー間で細胞の性質が異なること が多く、再現性の高い毒性試験デー タを得ることが難しいことがネック になっている。新薬開発の過程では、 肝毒性が原因で開発を中止する薬剤 が少なくないため、創薬過程の早期 で、効率良く肝毒性を評価すること が求められてきた。

効率良い分化誘導方法を開発  こうした中、水口氏らは、独自に 開発した改良型アデノウイルスベク ターを用いることで、iPS細胞か ら肝細胞を効率良く分化させる方法 を確立した。染色体に取り込まれな

iPS細胞由来の肝細胞で世界初の製品化

毒性試験での利用に高いニーズ

い改良型アデノウイルスベクターを 用い、発生の各段階で必須の遺伝子

(SOX17、HEX、HNF4α)を発現さ せることで、肝細胞への分化効率を 大きく上げることに成功。1~3割 程度だった分化誘導効率が8~9割 まで上がった。

 ヒトiPS細胞から分化誘導させ

iPS 細胞ヒト 中内胚葉 内胚葉 肝幹前駆細胞 肝細胞 3days

i i i i P S

3days 3days 9-11days

SOX17 HEX HNF4α

ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分化誘導

 われわれのグループは、以前から、アデノウイルスベクター の改良研究を進めていました。今回の手法は、開発した改 良型アデノウイルスベクターを用い、発生の各段階で必要 な転写因子を発現させる点が従来法と異なっています。ま た、従来の報告では免疫染色やmRNAが発現していること を提示することが多かったですが、私たちは毒性試験に欠かせない薬物代 謝酵素の活性レベルで分化能を評価しており、意義は大きいと思います。  今後の課題ですが、われわれの作成した肝細胞がどれくらい毒性試験 で利用できるかを評価していただく必要があります。また、遺伝子発現 レベルでは初代培養と同等ですが、活性レベルではまだ少し解離があり ますので、分化誘導方法を改良したいと思います。そのためには、製薬 メーカーと共同研究し、使用感などをフィードバックしていただくこと が欠かせません。

 厚生労働省は来年度から肝炎研究10カ年戦略をスタートさせる。戦略は、同省の肝炎治療戦略会議が年末 にまとめたもので、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変、肝がんに関する2022年度での治療成績目標を明記。B 型肝炎のVR率を約40%、C型肝炎(1b型の高ウイルス量症例)のSVR率を約80%まで改善させる方針を 打ち出した。さらに進行肝がんの5年生存率を現状の約25%から約40%まで高めることを目指す。

厚労省

 具体的な研究課題としては、B型 肝炎では、①逆転写酵素阻害剤およ びインターフェロン製剤投与による 治療の最適化に関する研究②多剤薬 剤耐性ウイルスのため難治化したB 型肝炎における病態解明と新規逆転 写酵素阻害剤による治療に関する研 究③免疫抑制薬、抗悪性腫瘍薬によ るB型肝炎ウイルス再活性化の実態 解明と対策法の確立および長期経過 症例の検討に関する研究―を挙げ

た。C型肝炎では、インターフェロ ン難治例(無効例、再燃例)を対象 にした治療方法に関する研究や、肝 移植後のC型肝炎再発に対する治療 方法に関する研究を位置付けた。  一方、肝硬変では、発がん予防を 念頭に置いた治療法として、がんワ クチンや免疫細胞導入などの免疫賦 活療法に関する研究を明記。肝がん では、ジェノミクス解析を用いた肝 がん再発因子(遺伝的素因、がん遺

伝子異常)の同定による分子標的治 療薬の新規開発など、肝がんの再発 抑制に関する研究が求められるとし た。放射線治療や免疫療法を、従来 の化学療法と組み合わせた集学的治 療法に関する研究も課題に挙げた。

進行肝がん5年生生存率 40%に目標設定

 10カ年戦略では、肝疾患に関する

B型のVR率40%、C型のSVR率80%を目標に

新肝炎研究10カ年戦略を来年度スタート

10年後の治療成績目標も盛り込んで いる。インターフェロン製剤投与に よるB型肝炎のVR率を現在の約20

~ 30%から約40%まで、C型肝炎(1 b型の高ウイルス量症例)のSVR率 を現在の約50%から約80%まで改善 させる方針を明記。非代償性肝硬変

(Child-PughC)での5年生存率を現 状の約25%から、B型肝炎由来では 約50 %まで、C型 肝 炎 由 来 で は 約 35%まで改善させることを目指す。 進行肝がんでは5年生存率を現在の 約25%から約40%まで高める方針も 打ち出した。

た肝細胞は、2つの核を持つなど、 初代培養肝細胞に特徴的な形態を示 したほか、代表的な薬物代謝酵素

「CYP3A4」の遺伝子発現レベルが、 初代培養ヒト肝細胞と同じであるこ とを確認した。

 iPS細胞由来の肝細胞を肝毒性 評価試験に利用できるようになるこ とで、同じ機能を持つ肝細胞を安定 的に大量に、比較的安価に供給する ことが可能になる。

医薬基盤研究所幹細胞制御プロジェクト

チーフプロジェクトリーダー(大阪大薬学研究科教授併任)

水口裕之

製薬メーカーと共同でさらなる改良を予定

参照

関連したドキュメント

厳密にいえば博物館法に定められた博物館ですらな

ともわからず,この世のものともあの世のものとも鼠り知れないwitchesの出

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

前回パンダ基地を訪れた時と変わらず、パンダの可愛らしい姿、ありのままの姿に癒されまし

創業当時、日本では機械のオイル漏れを 防ぐために革製パッキンが使われていま

❸今年も『エコノフォーラム 21』第 23 号が発行されました。つまり 23 年 間の長きにわって、みなさん方の多く

あった︒しかし︑それは︑すでに職業 9

 毛髪の表面像に関しては,法医学的見地から進めら れた研究が多い.本邦においては,鈴木 i1930)が考