2006.2.20
オープン・リサーチ・センター整備事業
「アジア諸国の産業発展と中小企業」
2005年度
事業報告
専修大学大学院社会知性開発研究センター
中小企業研究センター長 小口 登良
1. 本 ORC では研究者を次の5つのグループに分け、それぞれ異なったテーマから中 小企業を多角的に分析している。以下にそれらのグループ①実態調査、②金融、③計量、 ④生産性、⑤環境、毎に活動の概要をまとめる。
① 実態調査グループ 研究活動の概要
( 1) 2004年度に行った実地調査についてのまとめ。
( 2) 2005年度の主たる研究対象国は昨年から続けての日本、台湾、韓国、中国 と新たにベトナムを加えた。
( 3) 実態調査(インタビュー調査)
日本国内延べ 4 回、海外延べ・・10 回の実地調査を行った。 ( 4) アンケート調査
マレーシア、中国、韓国についてアンケート調査を行った。 ( 5) 研究成果の公表(報告書や学会発表など)
黒瀬3編、駒形5編、学会発表1回、陳1編、荒井2編、湯2編
② 金融グループ
( 1) 金融グループは主として中国における中小企業金融を研究した。 ( 2) 実地調査を延べ・・・3 回
( 3) 研究成果の公表(報告書や学会発表など) ディスカッションペーパー1編
③ 計量グループ
( 1) データベースの整備を継続して行った。新たに28のデータファイルを追加し た。
( 3) 研究成果の公表(報告書や学会発表など) ディスカッションペーパー2編
④ 生産性グループ
( 1) マレーシア製造業3桁分類の各部門について、確率的フロンティアモデルの追 加 推 計 を 行 っ た 。 韓 国 に つ い て 韓 国 情 報 サ ー ビ ス ( Kor ean I nf or mat i on Ser vi ce) のデータバンクにある1985年から2003年までの製造業20 業種、大企業、中小企業別各年平均2500社、総計48037個のデータを 得て、確率的フロンティアモデルの推計を行った。日本については「大企業の 活動の国際化が中小企業の収益性、生産性、撤退行動に与える影響」の分析の ため、CRDのデータを入手し、予備的な分析を行った。また5つの国際化指 標を作成した。
( 2) 海外調査1回
( 3) 研究成果の公表(報告書や学会発表など) ディスカッションペーパー1編
⑤ 環境グループ
( 1) 国内企業500社についてアンケート調査を行った。その結果を分析し論文に まとめた。
( 2) 研究成果の公表(報告書や学会発表など) 論文2編、学会発表2回
⑥ 助手
任期制助手は PD 一人、RA3人の合計4人体制になった。研究分担者の研究活動の 補助と同時に、独自の研究活動も行った。
( 1) 中国、台湾を中心に、機械、繊維、機械部品等の中小企業の歴史的変遷と、市 場経済の発展とグローバル化の浸透に伴う対応や変化を研究している。 ( 2) 実地調査を研究分担者との同行と独自のものを合わせてのべ、国内3回、海外
13回行った。
3. 年度初めから任期制助手がすべてそろい、研究体制も整って研究活動は順調に行 われた。また研究分担者として年度初めから生産性分析と計量モデルグループに経済学 部の伊藤講師が加わった。金融グループについては新たに商学部の瀬下教授が10月1 日より研究分担者として、東京理科大学の鈴木講師が学外協力者として加わった。これ により研究体制が充実したものとなった。
4. オープンリサーチの活動の効果もあり、大学院への受験生が増加してきた。
補足資料1. 2005 年度 中小企業センター研究会・打ち合わせ会記録
日時 場所 内容
1 4/ 19 - 14: 40∼16: 00 生田情報科学センター グループウエアー説明会 2 4/ 27 - 12: 00∼17: 00 社会知性開発研究センター 運営についての打ち合わせ
3 5/ 17 - 18: 00∼20: 00 社会知性開発研究センター 研究会、黒瀬、報告 4 6/ 25 - 14: 00∼16: 00 神田 784教室 研究会、根岸、報告 5 7/ 23 - 10: 40∼12: 30 社会知性開発研究センター データベース説明会 6 7/ 23 - 10: 00∼12: 00 神田 771教室 研究会、張、報告
7 10/ 14- 10: 40∼12: 30 社会知性開発研究センター データベース説明会 8 10/ 25- 18: 00∼20: 00 社会知性開発研究センター 研究会、在間、報告 7 11/ 8 - 12: 15∼14: 00 社会知性開発研究センター データベース説明会 9 11/ 15- 12: 15∼14: 00 社会知性開発研究センター データベース説明会 10 11/ 25- 16: 00∼17: 00 社会知性開発研究センター 予算についての打ち合わせ 11 11/ 29- 15: 00∼17: 00 生田 611教室 研究会、大倉、報告
12 12/ 3 - 10: 00∼12: 00 神田 772教室 パネリスト講演、李、周、報告 13 12/ 3 - 14: 00∼17: 00 神田 6号館5階会議室 国際シンポジウム、周、李、蘇、報告 14 12/ 10- 10: 00∼12: 00 神田 772教室 研究会、鈴木、報告
補足資料2. 2005年度実地調査記録
期間 用務地 出張者 用務先
4 中国(上海、太倉) 計 聡 太倉市人民政府、金融報社、上海図書館
大橋英夫 黒瀬直宏 陳 振雄 荒井久夫 顧 懿
6 マレーシア(クアラルンプール)小口登良 国家生産性公社
7 中国(アモイ) 計 聡 アモイ国家会計学院、工商銀行 他
8 韓国(ソウル) 根岸秀行 アパレル産業集積(東大門市場) 他 大橋英夫
駒形哲哉 雷 新軍 顧 懿 林 松国 湯 進
中国(上海) 顧 懿 大西勝明 李 尹俌 顧 懿 林 松国 瀬下博之 手嶋宣之 鈴木健嗣
雷 新軍 顧 懿
17 福井県(福井市) 根岸秀行
陳 振雄 荒井久夫 顧 懿
ベトナム(ホーチミン)
16 3/ 5(日)∼10(金) ベトナム(ハノイ) 大西勝明
DONGJ I N VI ETNAM、VI NA PLASTI C、 DOOLI M VI NA 他
蘇州国家高新区管理委員会、呉江経済 開発区管理委員会、蘇州住金電子有限 公司、蘇州神視電子有限公司 他
J ETRO、VI NAPPRO、MTEX社 他
まいでに店、㈱スズキ 他
香港証券取引所、東京三菱銀行香港支店 ( 財) 資訊工業策進会、致伸科技、 COMPUTEX TAI PEI 2005 他
㈱平野製作所、㈱谷村製作所、和銅産 業㈱、( 有) サワ 他
リコー光学㈱、サンポット㈱、城南樹 脂工業㈱ 他
合豊工廠、安拓実業、春雨工廠、晉禾 企業、慶益工業 他
6/ 1(水)∼4(土) 台湾(台北)
8/ 15(月)∼20(土) 台湾(高雄) 6/ 22(水)∼25(土)
7/ 19(火)∼21(木)
湯 進
蘇州国家高新区民営経済発展拠、蘇州 科達科技有限公司 他
繊維産業関連企業
台北ナット協会、高雄ボルト・ナット 産業
J ETRO、VARI SME、ベトナム日系企業 他
福井県繊維協会 他
12/ 13( 火)∼18(日)
2/ 25(土)∼3/ 4(土)
3/ 6(月)∼11(土) 3/ 5(日)∼7(火) 9/ 11(日)∼17(土)
ベトナム(ホーチミン) 中国(香港)
福島県(白河市、郡山市) ベトナム(ホーチミン)
12/ 11(日)∼16(金) 10/ 24(月)∼27(木) 9/ 11(日)∼15(木)
10/ 6(木)∼7(金)
中国(上海、蘇州) 8/ 29(月)∼9/ 2(金)
9/ 1(木)∼9(金)
荒井久夫
吉見隆一
吉見隆一
岩手県(北上市、花巻市、 盛岡市)
岩手県(北上市、花巻市)
8/ 25(木)∼9/ 2(金) 8/ 6(土)∼15(月)
8/ 21(日)∼25(木)
李 尹俌
15 11
12
13
14
中国(紹興、上海) 中国(蘇州)
1 5 9 10 2 3
補足資料3. 12月3日(土曜日)開催、国際シンポジウムの概要
大学院社会知性開発研究センター/中小企業研究センター主催の国際シンポジウム「東ア ジアの産業発展と中小企業」が、12月3日(土)神田校舎6号館5階会議室で開催された。 定員80名をはるかに超える参加者が駆けつけ盛況のうちにシンポジウムは開催された。
中小企業研究センターは、「アジア諸国の産業発展と中小企業」を研究テーマとして昨年 度発足した。経済発展段階の異なるアジア諸国の中小企業を総合的に研究・調査し、中小 企業の役割と問題点、それらの共通性と特殊性を明らかにして、アジア中小企業論の構築 と各国中小企業政策の発展に寄与することを目的としている。研究活動の一環として、シ ンポジウムを開催しているが、発足2年目の今年は、この 2年間の研究の中心であった中 国、韓国、台湾から中小企業研究者を招いて国際シンポジウムを開催した。
当日は、主催者を代表して研究代表者の小口登良商学部教授(中小企業研究センター長) による挨拶及び趣旨説明の後、黒瀬直宏商学部教授の司会のもとにパネリストの講演が行 われた。最初に、中国・南開大学経済学院院長の周立群教授が「中国では、中小企業の発 展が雇用と地域経済に貢献し、地域間格差の縮小に寄与している」と、述べた。次に、韓 国・建国大学校経営大学の李尹俌教授は「韓国では大企業中心の発展政策がとられていた が、現在は中小企業に比重が移りつつある」と、指摘した。最後に、台湾・中華経済研究 院国際経済研究所員の 蘇顯揚博士が「台湾では、政策介入の程度が低かったことが中小企 業の発展に寄与した」と述べ、「1997年から台湾の総輸出に占める中小企業の比率が急減し たのは、実測値を採用したからであり、それ以前の数字は、当時の担当者の推測に基づく ものにすぎない」との注目すべきちょうさけっかのほうこくもあった。
各パネリストの講演後、パネルディスカッションに入り、フロアとの質疑に移った。特 に、韓国・建国大学校の 李教授が講演の中で「韓国では大学卒業者はあまり中小企業に行 かない」との発言に対して、フロアから闊達な意見も飛びだし議論が白熱した。
また、中国・南開大学 の周教授の見解として「中国に進出した韓国、台湾、日本の企業を 比較すると、韓国は大企業中心の集積であり、台湾は中小企業が寄り集まって商工会的な 集積を形成し、日本はその中間に位置する」と、指摘した。終了時間間際の 5 時近くまで 熱心な質疑が行われ、盛会のうちにシンポジウムは終了した。