岡山市監査委員公表第7号
地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第1項の規定に基づき提出さ れた住民監査請求書に係る監査の結果について,別紙のとおり請求人に通知したの で,これを公表する。
平成16年3月30日
岡山市監査委員 服 部 輝 正
同 松 井 健 二
同 髙 月 由起枝
岡 監 起 第 5 6 2 号 平成16年3月30日
請 求 人 氏 名 省 略
岡山市監査委員 服 部 輝 正
同 松 井 健 二
同 髙 月 由起枝
同 安 井 聰
住民監査請求に係る監査の結果について(通知)
平成16年2月4日付けで地方自治法(昭和22年法律第67号。以下,「法」 という。)第242条第1項の規定に基づき提出された住民監査請求書について, 監査した結果を同条第4項の規定により下記のとおり通知する。
記 第1 請求の受付
1 請求人の住所氏名 省略 2 受付日
本件請求書は,平成16年2月4日に受付けた。 3 請求の要件審査
本件請求にあたっては,違法若しくは不当な財務会計行為の特定性及び違法 若しくは不当であるとする理由が判然としない面もあったが,市民の市政への 関与を可能な限り確保するため,法第242条所要の法定要件を満たしている ものと認め,監査を行うものとした。
第2 請求の要旨
請求人が提出した「住民監査請求書」(以下,「請求書」という。)及び陳述 による請求の要旨は,次のとおりである。
1 笠井山霊園に関する管理委託料が不当に高い。
3回である。便所掃除及び清掃委託料については,市内にある公衆便所と同じ サイズであるが,春・秋の彼岸の期間と夏の盆の期間以外は月1回で12回清 掃作業を行っているとのことであるが,近所の公園等の清掃作業をしている高 齢者に比べて割高である。
2 入札が適正に行われていない疑いがある。
落札金額の設定がない。入札したとされる他業者の入札時の書類の提示を求 めても書類がないとの担当者の返事であったので,その業者に問い合わせてみ たところ,当該業者は入札に参加していないとの返事であった。また,コンピ ュータ時代に金額,業者名等が手書きであり,競争入札が実態として行われて いないのではないか。入札日と契約日が同じ日とは不自然ではないか。
契約書には市長印ではなく所属部署印が押印されており,契約者双方の割印 もなされていないものもある。また,情報公開により入手した契約書の内の3 通には契約者双方の押印がなかった。市長名と金額が手書きであるものもあっ た。このような契約書は正規のものではない。
3 管理人及び管理作業人の実態がない。
作業内容については知らないが,アルバイトのような管理作業人の出勤簿が ある。出勤簿の作業日について調査したところ,日曜日・祝日・雨天の日に出 勤して作業していることになっている。管理作業人のなかには会社員もいるし, そのなかのある人に電話で問い合わせをしてみたところ,笠井山霊園には全然 行ったことがないとの返事であった。これらのことから,作業実態がないもの と考える。
4 笠井山霊園の管理が十分なされていない。
管理棟も設置せず,管理人も配置していないため,適正に管理がなされてい ない。
5 情報公開資料は資料を請求後に作成されたもので偽造資料である。 6 必要な措置を請求する。
第3 監査対象部局
保健福祉局保健部生活衛生課
第4 請求人への証拠の提出及び陳述の機会の付与
法第242条第6項の規定に基づき,平成16年3月2日請求人に対して新 たな証拠の提出及び陳述の機会を与えたところ,主として請求に関する陳述が なされた。また,新たな証拠の提出はなかった。
第5 監査の実施
なお,関係職員の陳述を行った際,法第242条第7項の規定に基づき,請 求人が立ち会った。
第6 監査の対象とした行為
請求書,事実を証する書面及び請求人の陳述並びに関係職員の陳述及び提出 された関係書類から総合的に判断し,監査対象とした行為は,次のとおりであ る。
1 平成14年度笠井山霊園除草等業務委託(委託料)
請求書にいう清掃植栽管理委託とは,笠井山霊園除草等業務委託のことであ ると解した。
2 平成14年度笠井山霊園参道側溝清掃委託(委託料)
請求書にいう参道側溝清掃委託とは,笠井山霊園参道側溝清掃委託のことで あると解した。
3 平成14年度市営墓地内ごみ処理業務委託(委託料)
請求書にいうゴミ処理委託とは,市営墓地内ごみ処理業務委託のことである と解した。
4 平成14年度笠井山霊園便所等清掃(賃金)
請求書にいう便所掃除及び清掃委託と管理作業人に関する記述は,笠井山霊 園便所等清掃における賃金の支出に関することであると解した。
5 笠井山霊園の管理を怠る事実 第7 監査の結果及び判断
監査の結果,笠井山霊園除草等業務委託,笠井山霊園参道側溝清掃委託及び市 営墓地内ごみ処理業務委託並びに笠井山霊園便所等清掃に関しては,請求人の主 張に一部理由があるものと認める。笠井山霊園に管理人及び管理棟を設置せず十 分な管理ができていないとする主張には,理由がないと認める。以下,その理由 について述べる。
1 請求人の主張の内容は,①笠井山霊園除草等業務委託,笠井山霊園参道側溝 清掃委託及び市営墓地内ごみ処理業務委託に関する入札及び契約が不適正にな されているため,委託料が不当に高いものとなっている。②便所掃除が適切に なされておらず,不当に高い賃金を支払っている。③笠井山霊園には,管理人 及び管理棟を設置せず管理を怠っている。以上の3点であると解した。
去においては管理人を置いていた時期もあったが,現在は管理人を置いていな いので,これに対する支出はないと陳述した。
3 まず,笠井山霊園除草等業務委託,笠井山霊園参道側溝清掃委託及び市営墓 地内ごみ処理業務委託に関する財務会計行為について述べる。
( 1) 笠井山霊園除草等業務委託,笠井山霊園参道側溝清掃委託及び市営墓地内 ごみ処理業務委託は,霊園を清浄な状態にし,参拝者に気持ちよく墓参して もらうことを目的としている。
( 2) このような目的をもって入札を行い契約をしたとされるものであるが,そ の入札から検査に至る過程の内,入札の段階において入札が行われたとする だけの実績がなく,実際には,落札業者が他の指名業者の入札書まで持参し ており,指名競争入札に期待される競争性が失われている。全指名業者が一 堂に会し入札を行ったならば形成されたであろう指名業者間の公正な競争を 前提とする価格よりも高額な金額で委託契約を締結した可能性が極めて高い といわざるを得ず,その高額の契約金額の支払いをすることによって両者の 差額相当分の損害を本市が被ったと認めるのが相当である。
法第234条第2項によると,一般競争入札が原則的方法であるとされて いるが,それは,地方自治法施行令(以下,「政令」という。)第167条 の4等により,一定の資格を備えている限り広く誰でもが契約の相手方とな りうることを保障していること,地方公共団体にとってもできる限り有利な 相手方を選択できることなどの長所があるからである。しかし,一般競争入 札によると特別な資格を問題とせず,誰でもが入札に参加できるということ から,契約の履行が確実に期待できる等の契約条件に相応しく信頼できる者 が必ずしも落札するとは限らないという欠点もあるため,政令第167条で 指名競争入札によることができる場合が定められている。そして,同条に規 定する要件は非常に抽象的であり,どのような場合がこの要件に該当するか という認定を行う裁量権が執行機関に与えられているものと解される。また, 入札事務の執行に関しては,ある程度の裁量権が与えられている。しかしな がら,この与えられた裁量権は,適正に行使されなければならず,本件にお けるように,指名競争入札によることと決定された契約方法を上記のように 指名競争入札に期待される競争性が失われるような方法により執行するまで の裁量権の行使は,その範囲を超えたものとして違法といわざるを得ない。 4 次に,笠井山霊園便所等清掃に関する賃金の支出について述べる。
( 1) 本業務は,笠井山霊園に2箇所ある便所を毎月1回程度掃除することを目 的としている。
されるものであるが,その実態においては請負契約であり,当該契約の締結に 際して取り決められた事項は,①毎月1回程度の清掃作業及びトイレットペー パーの補充等を行うこと,②年間20万円の報酬を支払うことであった。しか しながら,年間20万円とする積算根拠はなく,また形式上は請負契約とする こともなく,事務処理の簡便性を追求するため,年度末の2月にまとめて出勤 簿に押印をさせたうえで1年分の賃金の支出により処理している。しかも,契 約どおりに毎月1回程度行われていたものかどうかの確認も確実に行われてお らず,不当な予算の執行といわざるを得ない。
5 続いて,笠井山霊園に管理人も管理棟も設置せず,十分な管理ができていな いとする主張について判断する。
笠井山霊園に管理人及び管理棟がないことから十分な管理ができておらず, 法第242条第1項に規定する財産の管理を怠る事実があるものとする主張で あるが,同法同条同項に規定する財産の管理を怠る事実とは,普通財産を権原 なく占有する者があるにもかかわらず,是正のための措置を何ら講じない場合, 時効消滅寸前の債権の放置などが該当するものであり,本件主張はこれに該当 せず住民監査請求になじまないものと判断した。
第8 勧告及び意見
本件請求について,岡山市長に対し1のとおり法第242条第4項の規定に 基づく勧告を行うとともに,2のとおり意見を付する。
1 勧告
( 1) 笠井山霊園除草等業務委託,笠井山霊園参道側溝清掃委託及び市営墓地内 ごみ処理業務委託に関する委託料については,上記のとおり指名競争入札が 適正に行われていれば,指名業者間の公正な競争により形成されたであろう 価格と現実の契約金額との差額相当額の損害があったものとするのが相当で あるが,指名競争入札においては,委託業務の規模,種類や特殊性のほか指 名業者の数,各業者の事業規模,さらに入札当時の社会経済情勢など様々な 要因が複雑に影響し合って落札価格が形成され,それぞれの影響力を公式化 することができず,具体的な損害額を算定することは極めて困難といわざる を得ない。当局において損害額を確定し,補てんを行われたい。
( 2) 笠井山霊園便所等清掃に関する賃金の支出については,実態と異なる契約 により予算の執行をしているが,積算根拠もなく損害が出ているのかどうか の判断はできないので,当局において改めて積算し直し,損害があればその 補てんを行われたい。
2 意見
( 1) 笠井山霊園除草等業務委託,笠井山霊園参道側溝清掃委託及び市営墓地内 ごみ処理業務委託に関する入札事務について,適正とはいえない方法が採ら れていたにもかかわらず,適切な管理監督が行われていなかったことに鑑み, チェック体制の強化を図られたい。
また,このようなことが行われた背景には,業者選定に関しては前例によ ってさえいればよいとする考え方があったということは否定できない。
なお,契約に関して,法は一般競争入札を原則とし,その例外として指名 競争入札,随意契約等を定めている趣旨を十分理解し,今後適切な契約事務 を執行するよう努められたい。