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翌 “
モデ リングの技 : ゴ ルフスイングの
解 析 を例 として
赤池 弘 次
百
1. 「 技」 とイメ ー ジ
1 . 1 モ デ ル とイ メージの 関係
モ デ リングづ議 論 を進 め るに は, ま ず モ デル とは何 か を明 らか にす る必 要 が あ る。 これ につ い て は, 「 モ デ ル は イメ
ー
ジの具 体 的表 現 で あ る」 とい うの が, 筆 者 の見 方 で あ る。
この 見 方 に従 えば, ます イ メージ とは何 か が 問題 に な る。 わ れ わ れ は, あ る物 事 あ るい は問題 に道 遇 す る
と, こ れ につ い て何 らか の イ メ ー
ジが 自然 に心 の 中 に 発生 した り,あ るい は意 識 的 に イメ
ー
ジ を作 り上 げ た り して,こ れ に基 づいて 自分 の 行 動 を選 択 し決 定す る. この事 実 か ら見 れ ば, イ メ
ー
ジ とは, 当 面 の 対 象 に関 す る知識 や経 験 に基 づ き,心 の 中で対 象 を表 現 す る も の, と い うこ とに な る。
心 と言 う と, 主観 的 で捉 え難い もの の よ うに聞 こえ るが , イ メージの構 成 は人 間 の 主要 な生 理 的 な活 動 で, これ が な くて は人 間 ら し く生 きるこ とが で きない。脳 の活 動 の生 理 学 的 な側 面 か らの 研 究 で苦 名 な神 経 学 者 Ant oni o R. Da ma s l oの 言 葉 を借りれ ば, 「 イ メ
ー ジ は我 々の心 の通 貨 」 と して, 知 的 活動 を支 えてい るの で あ る [ 1] .
こ こ で 重 要 な 点 は, 我 々の 心 ( 複数 ) の 通 貨 ( t he c ur r e nc y of our mi nds ) とい う表 現 で, 異 な る人 の 間 で共 通 に利 用 され役 に立つ とい うこ とで あ る。 これ は, イ メ
ー
ジの捉 え方 は それ ぞ れ の 人 に依 存 す る主税 的 な もの で あ るが,イ メージが伝 え る もの は誰 で も利 用 可 能 で あ る とい う, イ メージの 間主規 性 ( i nt e r s ub_ j e c t i v i t y ) を示 してい る。
当面 の 対 象 につ い て の イ メージが な くて は, 新 しい モ デ ル の構 築 は不 可 能 で あ る. 既 存 の モ デル を機 械 的 に利 用 す る場 合 に も, 適 用 結 果 の 解 釈 に は対 象 とす る 問題 の 全体 像 と しての イメージが 要 求 され る。特 定 の あかいけ ひろつ ぐ
統計数理研究所 名誉教授 2 0 0 5 年8 月 号
問題 あ るい は対 象 につ いて も, 無 限 に 多 くの イ メ ー
ジ が 可 能 で あ る。 結 局, あ る対 象 に働 きか け る 目的 意識 とイ メージ を構 成 す る素材 とが, じヽの 中 にな くて は, イ メージ を回 め るこ とはで きな い。
モデ ル とイ メージの 間 の大 きな違 い は, モ デ ル の形 を取 った イ メ
ー
ジは誰 に も使 え る とい うこ とで あ る。 モ デル は, 人 と人 との 間 で, 心 の 通 貨 と しての イ メー ジの機 能 を確 立 す る もの と言 え よ う。
1. 2 モ デ リング と目的 意識
モデル の構 築 は, ま ず対 象 について の イ メージか ら 出 発 す る。 イメ
ー
ジ を構 成 す る素材 と して は, 視 党 や 聴 党 な どのいわ ゆ る五 感 や , さ らに状 況 を直感 す る第 六 感 な ど と と もに, 体 の動 きの感 党 ( 体制感 覚 ) が あ
る。 イメ ー
ジは, こ れ らの素材 の利 用 を通 して構 成 さ オL る.
イ メ ー
ジの典 型 で あ る視党 的 な イメージにつ いて は,
「″じヽこ こ に あ らぎれ ば, 見 れ ど も見 え ず 」 の こ とわ ざ の通 り, そ こ にイ メージの 原材 料 が あ っ て も, 何 か を 見 よ う とす る 目的 意識 が な くて は利 用 可 能 な イ メ
ー ジ と して捉 え られ な い こ とが具 体 的 に確 認 され る。
モ デ リング を進 め るに は, ま ず 対 象 の イ メ ー
ジが必 要 で あ るが,視 党 の例 が示 す よ うに,イ メ
ージは 目的 意識 が な くて は得 られ ない。 結 局,モ デ ル構 築 の 第
一 歩 は,当 面 の 対 象 につ い て何 を提 え よ う とす るの か と い う, 目的意識 の 明確 化 で あ るこ とが 明 らか にな る。 この こ とは至極 当 た り前 の こ とで あ るが, モ デ リン グ とい う言 葉 の与 え る固 定観 合 に影響 され て, 無 意識 の 中 に既 存 の モデル の与 え るイメージに縛 られ る危 険 が 日常的 に発生 す る。 この 意 味 で は, 既 存 の モ デル あ るい は イ メージの生 む 固 定観 念 を打破 す る こ とが, モ デ リング を成功 させ る第
一
歩 とい うこ とに な る。 1. 3「 技」の活躍場面
視党や聴党 な どの五感や 第六感, 体 の動 きの感党 な どを利 用 してイメージを構成す る作業 は, 言 葉 による 表現以前の場面で行 われ る。 これ を上 手 く遂行す るに
か じ
519
は, 言 葉 では表現 しきれ ない 「技」 が要求 され る。名 人 と呼 ばれ る職 人が, 一 定の材料 か ら
一
つの イメージ を具 体 化 す る作 品 を生 み 出す 過程 は, ま さ し くこの
「技」の典型 を示す もので あ る。 イメ
ー
ジの間主観性 ( 「心 の通 貨」 と しての特性 ) につ いての肝要 な点 は, イ メージは利 用場面 を適切 に 制約 すれば, 客 観 的 な知識 と同様 にその利 用方法 が ほ ぼ
一
意的 に決 まる とい う点 で あ る。 この場合, 利 用場 面 の具体 的 な指 定が, モ デル あ るいはイメージの有効 性 の決 め手 とな る。
これ には, どの ような状況でイメージが使 われ るか につ いての, 知 識 と経験 が要求 され る。 それぞれの適 用場面 あ るいは対象 につ いての深 い知識や経験 が必要 で, こ こに も 「技」 あ るいは暗黙知 と呼 ばれ る ものの 必要性 が あ る。誰に も使 える ような形 で イメ
ー ジを捉 えるのが この場 合の 「技」 で あ る。
1. 4 身 体感覚の役割
アイ ンシュタイ ンは数学的発見の心理 に関連 して, 言葉 よ りは視党的 な ものや 「筋 肉的 な」 もの に よるサ イ ン ( 記号) や イメ
ー
ジを利 用す る と言 ってい る[ 2] . この例や 名工の仕事ぶ りに具体的 に見 られ るように, 体 の動 きの感覚 を鋭敏 に捉 え るこ とは, モ デ リングに 際 して 「技」 を発揮 す る上 での
一
つの要件 にな るもの と考 え られ る。
モデ リングは, 感 覚的 に捉 え られたイメージを目的 意識 に よって取捨選択 しなが ら, 有効性 と客規性 の向 上 を進 め る作業 と見 なす こ とがで きる。 この作業 を進 め る段 階 で は, 筆 者 が 「情 報 デ
ー
タ群」 ( I nf Or ma _ t i ona l Da t a S e t i I DS ) と呼ぶ, 当面の対象 につ いて の 客観的知識, 経 験的知識, 観 測データな どのすべ て が利 用 され る。 イメージは対 象についての仮説 として 提 え られ, そ の妥 当性, 有 効性 が, I DS に 解 らし合わ せ て検 討 され, 必 要 に応 して I DS 自 体 の拡 張 が進 め
られ る。
この モデ リングの過程 では, あ りとあ らゆ る思 いつ きが取 り上 げ られ, その妥 当性, 有 効性 が検討 され る。 筆者 自身の経験 に よれば, この段階では 「夜 も眠 らず 昼寝 して」 当面 の問題 の イメ
ー
ジを追求 し続 ける。 この問, 一 見 「が ら くた」 と しか見 えない思 いつ き で も, そ の有効性 を追求 しつづ け る と, 「セ レンデ ィ ピテ ィ」 ( 偶然 に幸運 な発見 をす る能 力 ; 古 代 セ イ ロ ンの王子 らのお とぎ話の題 名か らの造語) が 働 く瞬間 が訪れ る。 モデ リングに成功す る時 には, 程 度の差 こ そあれ, 常 にこの瞬 間 を経験 す るわ けであ る。
520( 4)
2 . 具 体例 と しての ゴル フスイ ング動作 の
モデ リング
ゴル フの ス イ ング動作 とは, ポ ール を打 つ ため の道 具 で あ るク ラブ を振 り,ボ
ール を打 って 目的 とす る地 点 に運 ぶ 動 作 で あ る。 標 準 的 な動 きで は, 右 利 きのゴ ル フ ァの場 合 , 準 備 動 作 と して ク ラブ を右 に振 り ( バ ックス イ ング) , ク ラブ が上 が った所 ( ト ップ ) か ら, 引 き下 ろ して ( ダウ ンス イ ング) ポ
ー
ル を左 方 向 に打 つ ( 以後 ,右 利 きの場 合 を想 定 す る) .
ク ラブ は, 棒 ( シャ フ ト) の 先瑞 に ポ ー
ル を打 つ た め の 重量 物 ( ヘッ ド) を 着 けた もの で, ヘ ッ ドの打 撃 面 の 傾 き ( ロフ ト) に よ リポール の上 が り方力ざ決 ま る。 一
つ の ク ラブ で は, 飛 距 離 は打 撃 ( インパク ト) の 瞬
冒 宏 含 旨 去 盆 冒 唇 F 決
ま り , 飛 球 の 方 向 は ヘ ッ ド の 動
D 静
標 準 的 な状 況 で は, ヘ ッ ドの打 撃面 を 目標 方 向 に向 けて保 ちなが ら, 打 撃 時 に可 能 な限 りの運 動 量 をヘッ ドか らボール に移 す こ とを 目指 して ス イ ング動作 を実 行 す る。 地 面 の上 に静止 して い るポール を 目が けて ク ラブ を振 るだ けの
一
見 単純 な動 作 で あ るが , 多 くのプ レイヤ の長 い苦 闘 の歴 史 が示 す よ うに, こ の 動作 の 効 果 的 な実現 に は極 め て複雑 な動 きの制 御 が要 求 され る。
これ は文 字通 りの 「技 」 の世 界 で, 身 体 的 能 力 の優 れ た ゴル フ ァは経験 の横 み重 ね で見 事 な動 きを実現 す るが , 筆 者 等 の よ うな普 通 の ゴル フ ァは, ど うす れ ば 良 い結果 が得 られ るの か と大 い に迷 う。 そ こで求 め ら れ るの が ス イ ング動 作 の モデ リングで あ る。
2. 1 ス イ ング動 作 の 目的 ―
ゴル フス イ ングの標準 的 な場 面 で は, 芝 の上 に静止
を二 督所 サ 云チ │二 吾 急「量 示 尻揮 霊 暑 岳ヨ好 督 督整 D 地 点 ( ホ
ール ) ま で運 ぶ こ とが 課題 で あ るか ら, 一 つ の ク ラブ に よ るス イ ングで は, 方 向性 を確 保 して可 能 な 限 り遠 くまで ボ
ール を運 ぶ こ とが ス イ ング動作 の 目 標 に な る。 これ が基 本 的 な 目的 意識 で あ る. 本 稿 で は この標 準 的 な場 面 を想 定 して議 論 を進 め るこ とにす る。
22 ゴ ル フ ァーに よ るモ デル の利 用
体 の動 きを生 み 出す 骨格 や 筋群 な どか ら構 成 され る シス テム は, 構 成 要 素 の 数 の 多 さ と要 素 間 の緊 が りの 複雑 さか ら, 想 像 を超 え る程 の 多様 な動 きを生 み 出す。 この シス テ ム を実 時 間 的 に制 御 して 目指 す動 きを作 り 出す こ とは至難 の業 とな る。 そ こで ス イ ングの大 要 を 捉 え るため にモ デル が利 用 され る.
歓路騒鴎ぽt亀曜醇鶴!
オペ レーン ヨンズ・
まず上 手 なプ レイヤ の 動 きを外 か ら観 察 して 目指 す 動 きをイ メージの形 で提 え, こ れ に沿 って体 の動 きを 調 整 す る。
一
歩進 め れ ば, 優 れ た ゴル フ ァの 動 きを違 続 写 真 の形 に記 録した もの をモデ ル と して利 用 す る。 さ らに, ゴ ル フの 教 師 が しば しば利 用 す る よ うに, 良 い ス イ ング動 作 に共 通 す るク ラブ の動 きを観 察 して 幾何 学 的 イメ
ー
ジの形 で捉 え, こ れ をス イ ングの モ デ ル と して動 きの善 し悪 しの判 断 に利 用 す る。
いず れ の場 合 も, 本 質 的 な モデル構 築 の 努 力 は優 れ たプ レイヤ に任 せ , ゴ ル フ ァは これ を形 の上 で再 現 し よ う とす るだ けで あ る。
ゴル フ ス イ ングの場 合 に限 らず, 一 つ の新 しいモ デ ル が 開 発 され る と, そ れ を 当面 の 問題 に 当て はめ て処 理 す るこ とが流 行 す る。 当て はめ が最 重 要 の作 業 とみ C残
晟 範 │ま盆猫 曾 々 を こ 旨唇 秀 岳 告香 │モ デ リン
そ の技
2. 3 二 重振 り子 モ デル
`
外 か ら見 るス イ ングの動 きの モデ ル と して典 型 的 な もの は, 二 重振 り子 モ デル と呼 ばれ る数 式 モデ ル で あ る。 この モ デル で は, ク ラブ を握 る手 の握り ( グ リッ プ ) が , ス イ ング・セ ンタ と呼 ば れ る点 を中心 に円弧 状 に振られ, ク ラ ブ は グ リ ップ を継 ぎ手 ( ジ ョイ ン
ト) と して その 回 りに円弧状 に振 られ る。
ス イ ング・セ ンタ を軸 と して振 り子状 に振 られ る腕 に, 振 り子状 に振 られ るク ラブ が グ リップ で繋 が る と ころ か ら, 二 重振 り子 モ デル と呼 ば れ るわ けで あ る。 こ の モ デ ル の 適 用 に つ い て は, 英 国ゴ ル フ 協 会 ( T he Gol f S oc i e t y of Gr e a t Br i t a i n) によ る ゴル フ・ ス イ ングの 組織 的 な研 究 の 成 果 報 告 [ 3] に詳 し く論 じ られ て い る。 物 理 学 者 に よ る同 じモデル の適 用例 の議
c 論
格 署 : 皆亀 当な位 置 に設 定 され た カ メ ラ に よ るス イ ングの 高 速 写 真像 を基 礎 の データ と して用 いて い る。 前 者 で は グ リップ ( 手の握り) の 動 きにモデル の数値 的 な 当て はめ が行 われ , パ ックス イ ング ( 準備 の ため の振 り上 げ) と ダウ ンス イ ング ( 振 り下 ろ し) に 対 し, 異 な る中心 を持 った 円弧 に よ る近 似 が得 られ て い る. 後 者 で は, ス イ ング・セ ンタに左 へ の 加速 を加 え, ダ ウ ンス イ ングの ク ラブ・ヘッ ドの 動 きに対 す る近 似 を 実 現 してい る。
いず れ の例 もイ ンパク ト直前 までの デ
ータヘ の 当て は め に止 まって い る。 ス イ ング動 作 の 目的 の
一 つ は打 球 の 方 向性 の確 保 で, こ れ には, イ ンパ ク ト付 近 でヘ ッ ドを平 坦 に近 い軌 道 で安 定 に走 らせ る必 要 が あ る。
この モデル にはこれ を実現 す る仕組みは内在 していな
い. │
3. ゴ ル フ ス イ ン グ 動 作 の 解 析
二重振 り子 モデルの適用例 は, モ デ リング以前 にス イ ング動作の実態 を知 る必要が あるこ とを示 す。有効 なモデ リング を進 め るには, ま ず対象の実態の慎 重 な 考察 と解析 が必要 で ある。
3. 1 言 葉 による解析
数式の ような客観 的 な素材 を利用 して イメージを具 体化 す るのが, 普通 に考 え られ るモデ リングで あ るが, ゴル フスイングの場合 には, 体 の動 きの構成要素の複 雑 さの ため に, 直接 骨格や筋群 の動 きを素材 と してモ デ リングを行 うこ とは不可能であ る.
特 に, 体 のパラ ンス を保 って安定 に強 力なスイ ング 動作 を実現 す るには, そのための神経系の働 きが不可 欠で, これ まで考 える と途方 に暮 れ るほ どの難 しさが あ る。
実際 にゴル フ ァは考 え過 ぎると動 けない。 ゴルフ教 師 と して著名であった Ear nes t 」ones は この事 をす旨摘 し, ひ きが え るに, どの足が どの足の先 に動 くのか, と問われ た百足 ( むかで) 力寸, 考 え込 んで溝 に転 げ落 ちた, とい う戯れ歌 を引用 して考 え過 ぎを戒 めてい る。
一
方, 二 本脚 で立 つ という動作 自体 が大 変な仕事 で あ るが, こ れ を意識 しない ゴル フ ァが 多い。筆者 は じ ば しば, 「 ゴル フ ァは宇宙 空間 を遊泳 す る地球 を足 で つかんでぶ ら下が っている」 と説明す る。 これ によ り, 日頃 自党 しない脚腰 の動 きとその効果 に対 す る感度が 高 まる。 言葉 に よる表現が, モ デ リングの状況 を明確 化す る上 で最 高の役割 を果 たす例 であ る。
「地球 によ ら下が る」 ( 地球 の上 で体 を脚 で支 えてい る) と い う意識 を明確 に持つ と, ゴ ル ファの動 きの作 り方 に対す る意識が変わ る。 この様 な表現 を見つ け る の もモデ リングの 「技 」の
一
つ と言 えよう。
個 々の動 きが無数の部分的 な動 きか ら構 成 され るた め に, ス イ ング動作のモデ リングには言葉 に よる表現 が不可欠 にな る。言葉 による表現が, 集 団の特性 を表 現す る統計 的 モデルの役割 を果 たすわけで あ る。言葉 で表現 す るこ とに よ り, 感覚 的 なイメ
ー
ジの間主規性 が確保 され, 誰で も利用可能 な もの にな る。
3. 2 先 入観念 の妨 げ
モデ リングの成功 を妨げ る最大の要因は, 先 入観 念 である. 筆 者は以前, 統 計的な解析 を進め るにはまず データを見 よ, とい う教 えに対抗 して, 「目玉 は信 用
2005年 8月号 ( 5) 521
で きない」 と指摘 した こ とが あ る。先入親 念が あ る と, 色眼鏡 でデ
ータを見 るこ とにな る。 その危険 はスイ ン グ解析 の場合 には特 に大 きい。 │
ゴル フスイ ングの場合, ク ラブ は円周状 に振 られ る もの とい う基本的 な イメ
ー
ジが あ る. 多 くの ゴル フの 書物 を見 て も, 基 本的 な動 きの表現 と して 「背骨 を軸 に円周状 に振 る」, 「左右対称に丸 く振 る」, 「体の回転 で振 る」 な どの表現が用い られてい る。二重振 り子モ デルの場合 に も, ク ラブ・ヘ ッ ドの観 測データが示す 円周状 の動 きの再現 に関心が集 中 してい る。
ス イ ングの モデ リングの成功への第一歩 は, こ の先 入概 念の打破 であ る。 そ こで, 次 にこれ につ いての筆 者 自身の経験 を書 くこ とにす る。
3. 3 セ レンデ ィビテ ィの発現
筆 者 自身 は, 体 の動 きの基礎的な知識 を書物か ら拾 い集め, ス イ ングの動 きの作 り方 についての書物の説 明や, 自身 あ るいは友人の経験 を参考 に し, さ らに実 際の打球 の飛 び方 を観 察 してスイングの イメ
ー ジを固 め るこ とを試みて きた。 これ は典型的 な 「情報 デ
ー タ 群 」 ( I DS) の 利 用f 711であ る。 しか し, 多 年 にわ た る 努 力 に もかかわ らず, 決 定的 なイメ
ー
ジには到達で き なか った。
ところが, 病 気の ため に閉 じこめ られ たベ ッ ドで, 奇妙 な経験 をす る。上 を向いて左手 を右 に振 り, こ れ
を左 に振 る という動 きで は, 右 に振 る時 に左肘が体 の 前 に振 り出 され, 次 いで左の外側 に振 り出 され る. こ の動 きの左 手 に右手 を軽 く添 えてみ る と, まず右肘が 後 ろに引 き込 まれ次いで引 き出 され る。一言 で言 えば, 左】宛は左右, 右腕 は前後 の動 きにな る。 │
左 手 にクラブ を握 り, 大 き く右 に左 に と振 れば, こ の左院 の動 きはご く自然 に発生す な。これ に右手 を添 えてみ る と, 両 院 の動 きは確 かに左右 対称 で はない。 ここか ら, 左 手 に右手 を添 えて左腕 を右の遠 くへ直 線的 に仲 ば し, 次 いで左 の遠 くへ限度
一
杯 に振 る, と い う動 きの イメージが得 られ る。 これは, 取 るに足 ら ない思 いつ きの ように見 えるが, こ れ程 明快 にスイ ン グ動作 の非対称性 を示す説 明は, こ れ まで見 た り聞い た りしたこ とがない。 そ こで, そ の役割 を明示 す るた め に, こ れ を「革命的 イメ
ー
ジ」 と呼ぶ こ とに した。 この イメージ自体 は, 一 見 「が ら くた」風 に見 える。 しか しその具体化 を追求 す る と, 次 に見 るようにス イ ングを確定す る基本的な手懸か りとなる体の動 きが見 出 され る。 セ レンデ ィビテ ィ発現 の
一つの具体例であ る。
522( 6)
3. 4 肩 と腕 の 「魔法の動 き」
「革命的 イメ ー
ジ」 を具体化 す る形 にクラブ を振 り, ポール を打 ってみ る と, か な り良い シ ヨッ ト ( 打球 ) が得 られ る。 イメージに忠実 に従 って動 きを大 き くす る と, 左 手の背 中が地面 の方 を向 き, これ を覆 って右 手の平が地面の方 を向 く形 の体勢で腕 が右の遠 くへ振
られ, そ こか ら左へ引 き抜 かれ る。
この右へ の動 きを さ らにグ リップ ( 手の握 り) が 上 に引かれ る所 まで実行す ると, 肩 と腕 の動 きの形 が よ
り明確 にな る. 左 肩 は肩 甲骨が前 に引 き出 され なが ら 上流 が 外側 に回 り ( 外旋) , 右肩 は肩 甲骨 が背 骨 の 方 に引かれ なが ら上】元が 内側 に回 る ( 内旋) 。 この動 き とともに, 左 前腕 は外側 に回 り( 回外) , 右前腕 は内 側 に回 る ( 回内) .
手 尻 阜 猛 予 秀 喬 暑 景 上 是 枕 揚 紀 啓 岳 き た と 写 桝 勤 言 晶
' D
体 の動 きに直 結 し, 体 の動 きで クラブ を振 る体 勢 が 出 来上 が る。 この 肩 と腕 の動 きが ス イ ング動 作 に大 き く 影 響 す る こ とか ら, こ れ を 「魔法 の動 き」 と呼ぶ こ と
と した。
ゴル フの 文献 に は, しば しば魔 法 の動 き と呼 ば れ る もの が登 場 す るが , 肩 か ら手 に繋 が る院 を回 め る ( 関 節 を固 定 筋 で固 定 す る) 構 造 を明確 に指 摘 した もの は, 筆 者 の 知 る限 りで は存在しな い。
出 発点 の モデ ル と して 自由度の高 い構 造 を採 用 し, これ を観 測 データに 当て はめ なが ら自由度 を減 少 させ るこ とで予 測性 を確 保 す るの は, 統 計 的 モ デル の決 定 で
一
般 的 に利 用 され る手法 で あ る。ス イ ングで は, 自 由 に動 き過 ぎる腕 や 脚腰の動 きか ら, 不 要 な動 きを取
り去 る こ とに よって動 きの再 現性 が確 保 され る。
「魔 法 の動 き」 は, 腕 や 手 の動 きに合 まれ る曖 味 さ コ
六 を限度
一杯 に除去 す る。 肩 と腕の動 きが 回 まれ ば, そ ヤ の後 は手 の動 きに比べ て 自由度の低 い脚腰 背骨 の動 き の検 討 に集 中で きる。 この意 味 で, 肩 と腕 の 「魔 法 の 動 き」 の確 定 は, ス イ ング動 作 の モ デ リング を組織 的
に進 め る上 での 貴 重 な第 一
歩 で あ つた。
この 「魔法 の 動 き」 に は さ らに驚くべ き秘 密 が 隠 さ れ て い る。 これ は モ デ リングの最 終 段 階 で 明 らか にな る。
4. 実 用 的 な ス イ ング の 構 成
ここでは, 使えそうな ものは何で も試す ことになる。 4. 1「 直線打法」の導入
スイング動作の円周イメージか らの脱却の第 一
歩 と オペ レーシ ョンズヽリサーチ
して, 「直線打法 」 と称 す る打法 を導 入 した。 これ は パックスイ ングで クラブ を右 に直線的 に振 り, そ こか
ら左へ直線的 に引 き抜 くもので あ る.
頭 を安定 に保 って この打法 を実行す る と, バ ヽ
ンクで は肩が右 に回 り, ダ ウ ンで は体の左側 が緊張 して, 腕 が グ リップ ( 手の握 り) を 左へ引 き抜 く。
短 いクラブ で この動 きを実行す る と, 簡単 に安定 し た シ ョッ トが実現す る。バ ヽンクの ス タ
ー
トで 「魔法 の 動 き」 を実行 し, ダ ウ ンでは両院 を体 の前 を通 して左 へ 引 き抜 く意識 で グ リップ を引 いてボール を打 てば よ い.
この動 きに慣 れ た所 で, バ ヽ/ ク ス イ ングの動 きを さ らに大 き くす る と, ク ラブ が上 が り始 め る。 この 過程 で 常 に肩 と腕 の 「魔法 の動 き」 を維 持 す る と, グ リッ プ がトップ ( 頂点 ) に 上 が って止 ま る。 この位 置 か ら ク ラブ を引 き戻 して左へ引 き抜 くよ うに ダウ ンス イ ン グ を実 行 す る。 これ で か な り実 用 的 な シ ョッ トが 実現 す る。 これ が 「直線 打 法 」 で あ る。
この打 法 の ダ ウ ンス イ ングの特 性 を会 得 す るに は, 右 腫 を浮 かせ て右 脚 をつ ま先 で支 え, 左 脚
一
本 で ス イ ング を実 行 す る。 これ で体 の安 定 を保 って ス イ ング動 作 を実現 す る体 の動 きの 感 覚 が 得 られ る。 ダウンで胸 は左 に回転 せ ず, 前 向 きに保 たれ る。
4. 2「 超 直線 打 法 」 の 完成
「直線 打 法 」 の 動 きは, 「 革 命 的 イメ ー
ジ」 をその ま ま実 用化 しよ う と して得 られ た もの で あ る。 ところが ,
「革 命 的 イ メ ー
ジ」 はベ ッ ドで上 を向 い て横 た わ る状 態 の 中 で着 想 され た もの で, 生 まれ た状 況 の影 が現 れ て い る。 この場 合 , 背 骨 の大 きな動 きはベ ッ ドに妨 げ
られ て不 可能 で あ った。
の視点か らは極めて幸運な状況で, 実 用的な形に仕上 げるのが容易にな り,「直線打法」が得 られたのであ る。
しか し, 可 能 な限 り遠くヘ ポール を運 ぶ とい うス イ ング動 作 の 目的 の実現 に必 要 な, 大 きな動 きの 可 能性 が 排 除 され て い る。 体 の大 きな動 きを安 定 に発生 させ , 強 力 な腕 振 りの仕 組 み を作 り上 げ るこ とが 次 の課題 と な る。
こ こで 「地 球 を足 でつ か ん で ぶ ら下 が る」 とい うゴ ル フ ァの イメ千 ジが具 体 的 に働 き始 め る。 地 球 を足 で つ か ん で振 り回せ ば, そ の反 作 用 に よって腕 とク ラブ が振 られ るはず で あ る. こ の動 きで は, 立 って体 を安
2005年 8月 号 ―
定 に保 つ 動 きを背 骨 が 実現 し, 必 然 的 に強 力 な脚 腰 の 筋群 が働 く.
この こ とか ら, 脚 腰 と背 骨 の動 きを適 切 に構 成 し, これ に よ る体 の動 きで腕 とク ラブ を振 る, と い うモデ リングの指 針 が 得 られ る。 基 本 的 な もの は背 骨 の動 き に よって得 られ る体 の動 きの構 造 で あ る。
背 骨 ( 脊柱 ) は 腰 権 , 胸 椎 , 項 椎 の二 部 分 か らな り, 腰 椎 は前 , 胸 椎 は後 ろ, 項 椎 は前 に張 り出す よ うに轡 曲 してい る。 それ ぞれの部分 は脊 椎 の積 み重 ね で構 成 され, こ れ らの脊 椎 が わず かず つ 偏 心 しな が ら回転 す る動 きの 合 成 で背 骨 の動 きが生 まれ る。
ス イ ングの 背 骨 の 動 きで は, 背 骨 に沿 って走 る筋群 の左 右 の緊 張 の差 に よ り各部 の警 曲 が左 あ るい は右 に 引 か れ るが, 脊 椎 の 回転 的 な動 きが替 曲 の 向 き と逆 方 向 に発生 して頭 は安 定 に保 たれ る. 面 倒 な仕 組 み の動
きで あ る。
4。21 バ ックス イ ングの構 成
背 骨 の動 きの仕 組 み は面倒 で も, 誰 で もこれ を使 っ て体 を動 か して い る。 問題 は意識 的 に動 きを作 る こ と で あ るが , こ れ は容 易 で あ る。棚 の上 の物 を取 ろ う と 手 を仲 ばせ ば, 脚 腰 や 背 骨 は 自然 に動 く. 腕 の動 きで 背 骨 の動 きを導 き出せ ば よい。
そ こで基 本 とな る右 腕 の 「魔法 の動 き」 を確 認 す る。 脚 腰 を 自然 の状 態 に して置い て, 右 上腕 の 内旋 ( 内側 回 し) を 実 行 す る と, 右 グ リ ップ が 右 に振 られ て 腰 ( 腰権 ) の 高 さに振 られ る. こ こで さ らに 内旋 の 動 き を強 め る と胸 ( 胸椎 ) の 高 さ まで上 が る。 さ らに動 き を強 め る と首 ( 頸椎 ) の 高 さ まで上 が る。 この 問, 脚 腰 は 自然 に動 い て動 きを支 え る。 この動 きを利 用 す る。
まず 両 脚 の構 え を決 め, 両 院 で ク ラブ を水 平 に構 え た体 勢 か ら, ポ ール の位 置 にヘ ッ ドが 下 りる まで腰 か ら上 を前傾 させ , ク ラブ に対 応 す る体 勢 ( ア ドレス) を作 る。 こ こか ら右 腕 の 「魔法 の動 き」 を実行 す れ ば, グ リップ が腰 の水 準 に上 が り, 胸 の水 準 に上 昇 し, さ
らに首 の 水 準 に まで上 が る. こ れ で深 い トップ の体 勢 に入 る。 当然 左腕 の 「魔法 の動 き」 も併 せ て実 行 す る。
深い トップ の位 置 にグ リップ が上 が る と胸 筋 と背 筋 が 引 き仲 ば され, 脚 腰 を含 め て緊 張 が 発生 しノヾ、ンクス イ ングが 完 成 す る。
4. 2. 2 ダ ウ ンス イ ング の実行 ‐
ダウ ンス イ ングで は, 頭 を安 定 に保 ち なが らグ リッ プ を引 き下 ろ して左へ振 る。 右 肘 が体 側 に沿 って 引 き 下 ろ され, 引 き出 され て右 グ リップ を左へ振 る。 ま さ
し く「革 命 的 イ メ ー
ジ」 の右 院 の 動 きの拡 張 版 で あ る。
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この動 きでは, パ ックスイ ングで変形 した背骨 を元 の形 に引 き戻す。背骨 を安定 に保持 す る深 層の筋群 は 腰 を通 じて脚 に繋 が るか ら, そ の動 きを効果的 に利用 す るため に 「地球 を足 でつかんで振 り回す」体勢 を作 る.
これ には, 肩 と腕 の 「魔法 の動 き」 におけ る肘の回 定 に対応 す る「膝 の回定」 を利 用す る。膝 の固定 と同 時 に脚 が回 ま り, 体 が瞬 間的 に押 し上 げ られ, そ の反 作用で足 が強 力に地面 を押 し, 地球 をつかむ.
同時 に「腹 を引 き締 め る」動 きを加 える と, 背骨 を 固め る動 きが発生 し, 体 と負荷 を安 定な位 置 に導 く. この動 きで, 胸 の正面 を保 った まま, 腕 とクラブが強 力 にイ ンパク ト圏 を引 き抜 かれ, 「超 直線打法 」が完 成す る.
しか し, モ デ リングの立場 か らは 「魔法 の動 き」の 秘 密の解 明が残 る。神 は細部 に宿 るのであ る。 .
4. 2. 3 イ ンパ ク ト日の動 きの微細 構造
ス タートで は, 「魔法 の動 き」 で左腕 は上 腕 を外旋 す る。 これ とともに左 前腕 も回外 し, 手 の平 が内側 に 巻 き込 まれ て小指側 に引かれ, 腕 とグ リップが回 まっ て左 肩が引 き出 され, ヘ ッ ドが直線的 に右 に引かれ る。
対応 す る右腕 の動 きで は, 上腕 が内旋 して肘が体側 に引 きつ け られ る。 これ とと もに右前腕 の回内が発生 して右手の平が背 中側 に反 り, 小寸旨側 が前 に引 き出 さ れて右 グ リップが回 ま り, ヘ ッ ドが右 に直線的 に引か ヤL る.
この ように, 「魔法 の動 き」 は打球 の動 きの反 対 方 向 にヘッ ドを引 く. パ ックの 各段 階 で の 「魔 法 の 動
き」 は, ヘ ッ ドを トップ に向 けて振 るわけであ る。 ダウ ンでは, 背骨 を引 き戻 す. こ こで腹 を引 き締 め る と, 背 骨が固定 されて腕 が強 力に左へ振 られ る。 こ の間の背骨の動 きに よ り, ダ ウ ンとイ ンパク トで 「魔 法 の動 き」 力寸発生す る,
これ はボールか ら遠 ざか る向 きにヘ ッ ドを振 る不利 な動 きの ように見 えるが, こ れ に よ リヘッ ドが 目標線 の 内側 に保 たれ ると同時 に, 流 を振 る筋 ( 広背筋) が 引 き仲 ば され て緊張 し, 強 力なイ ンパク トを実現 す る。
イ ンパク トの 「魔法 の動 き」 では, 左腕 は上腕 の外 旋 で クラブ を振 り, 右腕 は上】元の内旋 で肘 が体側 に引 き付 け られ, 前流 の 回内 ( 手首の返 し) で クラブ を振 る。左腕 と右前腕 が, そ れぞれ二重振 り子 モデルの腕 の働 きでクラブ を振 る。
左】宛とクラブの二 重振 り子 は, 左脇前の最低 点で腕 とクラブが直線的 にな る形 の動 きでヘッ ドを円弧状 に
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振 り, 右 前腕 とク ラブ は, 右 脇 前 の最 低 点で 直線 的 に な る形 の動 きでヘッ ドを円弧状 に振 る。 左 腕の動 きは ポール を 目標 線 の右 に打 ち出 し, 右 前腕 の動 きは左 に 打 つ.
単純 な二 重振 り子 が カオ ス を生 む こ とか ら推 測 され る よ うに, 一 方 の腕 だ けで は イ ンパク トの 安 定性 確 保 は難 しいが, 二 つ の腕 の動 きが ク ラブ の グ リップ ( 握 り) を 通 して合 成 され る こ とで 自由度 が減 少 し, イ ン パク ト国 で は平 坦 かつ 直線 的 な動 きが 安 定 に実 現 す る。
これ が 「魔 法 の動 き」 の最 高 の秘 密 の 実 態 で あ る。 イ ンパク トの動 きの モデ リング は これ で 完 結 す る。 そ の 有 効性 は実験 的 に確 認 で きる。 ス イ ングの ク ラ イマ ックス で あ るイ ンパク トの動 きを, こ の よ うに構 造 的 に捉 えた例 は, 筆 者 の 知 る限 りで は他 に ない。
こ う して, ス イ ング動 作 の最 終 的 な モ デ ル は, “ 一 貫 して 「魔 法 の 動 き」 を実 行 してトップ に 入 れ, 「地 球 をつ か ん で」 弓│ き下 ろ し,「腹 を締 め て」振り抜 く
" とい う, 筒 明 な記 述 で与 え られ るこ と とな っ た.
5. 終 わり に
本稿 で は, 実 際 問題 の モデ リング に際 して要 求 され る 「技 」 に対 す る理 解 の広 ま りを願い, 煩 雑 さを恐 れ なが ら も, 筆 者 の体験 をその ま まに記 述 した。
モ デル の 実 用 に は, グ リップ を合 め て ア ドレスの体 勢 を適 切 に決 め , 「魔 法の 動 き」 を実 現 しや す い物 理 的特 性 の ク ラブ を使 うこ とが 必 要 で あ る。 これ は ク ラ ブ の選 択 や デザ イ ンに繋 が る話題 で あ る. :
ゴル フ ス イ ングの解析 につ い て は, 多 年 にわ た る臼 井 支朗 氏 との議 論 , な らび に森正樹 氏 , 駒 沢 勉 氏 に よ る実証 的検 討 の 結 果 に負 う ところが大 で あ る。 本稿 は 池 上 教 子 氏 の適 切 な示 唆 に基づい て構 成 され た。 この 機 会 に, こ れ らの 方 々 に心 か らの感 謝 を申 し上 げ る。 追記 : 本 報 告 の 完 成後 , さ らに実 用性 が 高 い モ デル に到 達 したが, こ れ につ いて は別 の機 会 に報 告 す る。
参考文献
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