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Academic year: 2018

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(1)

講義ノート

12

微分方程式の流れの解析は 、ポアン カレ 写像の反復合成の解析に還元できます。これは 、元の連

続時間力学系から一つ次元の低い離散時間力学系への単純化となっています。今回は 、そのような

離散時間力学系に 生じ る現象について学び ます。

1

次元離散時間力学系

ここでは 、実関数f : R→Rで 記述され る1次元離散時間力学系xn+1=f(xn)を 扱う。ここ で 、nは 離散時間を表す。初期値x0∈Rが 与えられたとき 、

x0, x1=f(x0), x2=f2(x0) =f(f(x0)) =f(x1), . . . , xn=fn(x0), . . .

をx0の軌道と呼ぶ 。このとき 、fnはf のn回反復を表す。

微分方程式の平衡解と同様に 、離散時間力学系においては 、不動点と呼ばれ るx¯=f(¯x)を満た

す点x¯は 重要な役割をもつ 。明らかに 、不動点は 一定の軌道

x0= ¯x, x1= ¯x, . . . , xn= ¯x

である。

さて 、微分方程式の閉軌道に 相当するのが 、離散時間力学系に おけ る周期点である 。周期点と

は 、あるk >0でfk(x0) =x0となるよ うなx0であり、その軌道は

x0, x1, x2, . . . , xk−1

| {z }

=k点

, x0, x1, x2, . . . , xk−1, x0, x1, . . .

で表され る。ここで 、fk(x0) =x0となるような最小の整数kを周期点の周期と呼び 、そのときの

x0をk周期点と呼ぶ 。

不動点と周期点の例

1. xn+1=f(xn) =x3nを考える。f(¯x) = ¯xを解くことによりx¯= 0, ±1となる。し たがって 、

不動点¯x= 0, ±1をもつ 。

2. xn+1=g(xn) =−x3nを考える。f(¯x) = ¯xを解くことによりx¯(1 + ¯x 2) = 0

となる。し たがっ

て 、不動点x¯= 0をもつ。また 、g(1) =−1, g(−1) = 1であるので 、¯x=±1は 、それぞれ 、

(2)

グ ラフ 反復法

離散時間力学系の軌道を 可視化する方法とし て 、グ ラフ 反復法が ある 。その手順は 次の通りで

ある。

1. xn-yn平面上にyn=f(xn)と対角線yn =xnを描く。

2. 対角線上の点(x0, y0)からfのグ ラフまで 垂線を引き 、(x0, f(x0)) = (x0, x1)に 到達する。

3. (x0, x1)から 対角線まで 水平線を引き 、(x1, x1)に 至る。

4. (x1, x1)を初期値とし て2.と3.を繰り返す。

上図は 、xn+1=f(x) =x3nの軌道をグ ラフ反復法を用いて描いた結果である。x0を初期値とす る軌道が 、f の反復により不動点x¯= 0に 近づ くことが 示されている。

不動点の安定性

微分方程式の平衡点には 、安定な沈点と不安定な源点があった 。離散時間力学系においても同様

に 、安定な不動点と不安定な不動点が 存在する。今 、x¯をfの不動点とする。xn+1 =f(xn)に 対 し てn→ ∞のときfn(xn)→x¯となるx¯を吸引的不動点( 安定な不動点 )と呼ぶ 。

不動点¯xはf(xn)のxnによる微分を用いて 、次のよ うに 分類できる。

1. df

dxn

(¯x)

<1ならばx¯は吸引的不動点( 安定な不動点 )

2. df

dxn

(¯x)

>1ならばx¯は反発的不動点( 不安定な不動点 )

3. df

dxn

(¯x)

= 1ならば 、x¯は 中立的である。

(3)

k

周期点と

k

階反復写像の不動点

離散時間力学系xn+1=f(xn) =x2n−1はf(¯x) = ¯xを満たす不動点は 反発的( 不安定 )である 一方 、0と−1で 与えられ る2周期点をもつ 。

df2

dxn

(0)

= 0<1、

df2

dxn

(−1)

= 0<1であるので 、周期点は 安定である。下図では 、xn+1=

f(xn) =x2n−1の軌道をグ ラフ 反復法を 用いて 描いた 結果に2回反復写像f 2

(xn)を 重ねて 描い

た 。0と−1で 与えられた周期点はf 2

(xn)の吸引的不動点であることがわか る。

1

次元離散時間力学系に生じ る分岐

微分方程式の解がパラ メータ変化により分岐を生じ たのと同様に 、離散時間力学系においても分

岐が 発生する。ここでは 、1次元離散時間力学系に 生じ る分岐について説明する。

• サド ル・ ノード 分岐

cをパラ メータとする1次元離散時間力学系xn+1=fc(xn) =x2n+cを考える。この系の不

動点は 、方程式x¯= ¯x2+cを解くことにより、

¯

x±=

1±√1−4c

2

となる。し たが って 、c >1/4のときは不動点は存在し ない。c= 1/4のとき 、唯一の不動点

¯

(4)

上図では 、xn-yn平面上にyn =fc(xn)と 対角線yn =xnを 描いた 。グ ラフ 反復法に より、

c >1/4であれば 、全ての軌道は∞に 発散することが 分か る。また 、c= 1/4のときの不動

点は 中立的であり、c <1/4ではx¯+とx¯−は 、それぞれ 、反発的不動点 、吸引的不動点であ ることがわか る。

このように 、パラ メータcを減少させたとき 、c= 1/4で唯一の中立的不動点が 発生し 、それ

が すぐ に 吸引的不動点と反発的不動点に 分裂する。このような分岐はサド ル・ノード 分岐と

呼ばれ る。

• 安定性交替型分岐

λをパラ メータと する1次元離散時間力学系xn+1 =fλ(xn) =λxn(1−xn)を 考え る 。す

べてのλに 対し てfλ(0) = 0、すなわ ち 、xn = 0はパラ メータによらず 常に 不動点となる。

xn = 0以外の不動点は 、方程式x¯=λ(1−x¯)を解くことにより、x¯=

λ−1

λ で 与えられ る。

ここで 、

dfλ

dxn

(0) =λであるので 、λ= 1に おいて分岐が 発生する。

上図では 、xn-yn平面上にyn =fλ(xn)と対角線yn=xnを描いた 。この不動点はλ <1の とき負であり、λ >1のとき正である。一方 、λ= 1のときはxn= 0の不動点と融合し 、不 動点は 唯一となる。不動点の安定性を計算すると 、1< λ <3のとき 、xn= 0は 反発的不動 点であり、x¯= (λ−1)/λは 吸引的不動点であり、λ <1であれば その逆である。分岐点を

(5)

• D型分枝

µをパラ メータとする1次元離散時間力学系xn+1=fµ(xn) =µxn+x3nを考える。すべての

µに 対し てfµ(0) = 0、すなわち 、xn = 0はパラ メータによらず 常に 不動点である。xn = 0

以外の不動点は 、方程式1 =µ+ ¯x2を 解くことにより、x¯=±

1−µで 与えられ る。ここ

で 、

dfµ

dxn

(0) =µであるので 、µ= 1に おいて分岐が 発生する。

上図では 、xn-yn平面上にyn=fµ(xn)と 対角線yn =xnを描いた 。µ <1のときは3つの 不動点が あるが 、µ≥1のときには 不動点は 唯一となる。この分岐は 、連続力学系に 生じ る

( 亜臨界 )ピ ッチフォーク分岐に 相当し ており、( 亜臨界 )D型分枝と呼ばれ る。

• 周期倍分岐

再び 、cをパラ メータとする1次元離散時間力学系xn+1=fc(xn) =x2n+cを考える。ここ では 、パラ メータcが−0.75の近くで 生じ る不動点

¯

x−=

1−√1−4c

2

に 注目する。下図では 、xn-yn平面上にyn=fc(xn)と対角線yn=xnを描いた 。

グ ラフ反復法により軌道を描くと 、不動点x¯−はc >−0.75のとき吸引的であり、c <−0.75 のときは 反発的であることがわか る。さらに 、c <−0.75の場合 、反発的不動点のまわりに

(6)

カオス

周期倍分岐の発生後 、さらに パラ メータを 増加させると 、周期倍分岐が 連鎖的に 発生し 、カオ

ス軌道が 発生する 。これは 、周期倍分岐ル ート と 呼ば れ るカオ ス発生の道筋の一つである 。この

他に 、サド ル・ノード 分岐によってもカオスが 発生する場合がある。この道筋は イン ターミッテン

シールート と呼ばれ 、このとき発生するカオスは 間欠性カオスと呼ばれ る。

カオス軌道が 発生し ている系では 、初期値のご く僅かな違いがその軌道の振舞いに劇的な変化を

引き起こす。これは 、初期値鋭敏性と呼ばれ る 、カオスの特質の一つである。

演習問題

次式はロジ ステ ィック写像と呼ばれ る1次元写像である。

xn+1=λxn(1−xn)

ここで 、λはパラ メータであり、0≤λ≤4とする。また 、0≤xn ≤1とする。以下の問に答えよ。

(1)λ= 3で 生じ る分岐を答えよ 。

(2)λ= 3.2のときの不動点( 周期点 )を全て求め 、分類せよ 。

(3)数値シ ミュレ ーションを用いて 、λ= 4のときの軌道をグ ラフ反復法を用いて可視化せよ 。

参照

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