担当:鹿野(大阪府立大学)
2014 年度前期
はじめに
前回の復習
二次元データの散布図:正の相関、負の相関。
共分散と相関係数、共分散と散布図の対応関係。
今回学ぶこと
確率論とは何か?
事象。
確率。
テキスト該当箇所:4.1∼4.3章。
1 確率論とは何か?
1.1
確率論: 「偶然」を制御する
例:コイントス。何が出るか、事前に分からない。しかし次の二点は、事前に確定。
1. コインを投げたら表と裏、どちらかが出る。 2. 歪みななければ、表の出る確率= 1
2、裏の出る確率= 1 2。
例:サイコロ。何が出るか、事前に分からない。しかし次の二点は、事前に確定。
1. サイコロを投げたら1 ∼ 6のどれかが出る。 2. 歪みななければ、1 ∼ 6の各目が出る確率は全て1
6。
Remark:上記二つの例の共通点。
1. 前もって「 」を全て列挙できる。(∴「ナニが起こるか分からな い」のではなく、「ドレが起こるか分からない」状態。)
2. 「起こりうること」それぞれに、数量で「 」を与える・測ることが できる。
1
確率論の基本概念:試行・事象・確率
⊲ 試行:偶然に左右され、事前に結果が分からない行動を、 (確率的試行)と 呼ぶ。例:「サイコロを振る。」
⊲ 事象:試行の結果として起こり得る事柄を、 と呼ぶ。例:「サイコロを振っ て1が出る。」
⊲ 確率:事象それぞれの起こりやすさを測った数量を、 と呼ぶ。例:「サイコ ロを振って1が出る確率は1
6。」
確率論:事象を列挙してその全てに確率を与え、偶然の背後にある秩序・規則性を整理す る手法を、 と呼ぶ。
⊲ ∴確率論=「偶然」を制御し、人間の管理下に置く技術。
⊲ 統計的推測(講義ノート#01)と確率論:標本から母集団の性質を推測する際に発生 する、分析結果の偏りや誤差→確率論を使えば、「限られたサンプル数で、どうす れば偏り・誤差を小さくできるか」を議論できる。
2 事象
2.1
標本空間・標本点と事象
標本空間:起こりうる結果を全て並べた集合を と呼び、Ω(大文字のオメ ガ)で表す。
⊲ 例:コイントスの標本空間はΩ = {裏,表}。
⊲ 例:サイコロの標本空間はΩ = {1, 2, 3, 4, 5, 6}。
⊲ ∴Ωは、分析している試行に応じて変わる。
標本点:標本空間の要素を と呼び、任意の標本点をω(小文字のオメガ)で表 す。ω∈ Ω。
⊲ 例:コイントスのΩは、2つの標本点(ω=裏,表)から成る。
⊲ 例:サイコロのΩは、6つの標本点(ω= 1, 2, . . . , 6)から成る。
事象:標本点ωを組み合わせて出来る集合を と呼び、Aで表す。(複数ある場合 はA, Bなど。)∴事象は標本空間の部分集合。A ⊂ Ω。
⊲ 例:サイコロの標本空間Ω = {1, 2, 3, 4, 5, 6}で、事象「奇数」はA = {1, 3, 5}。事象
「3より大きい」はA = {4, 5, 6}。事象「2」はA = {2}。
⊲ ∴標本点ωを、「事象Aを作るための最小単位」と考えれば良い。
Remark: による表記法⇒事象を統一的に扱う。
⊲ はじめに標本空間Ωありき:まずΩ(大枠)を設定し、その部分集合として任意の 事象A ⊂ Ωを表現。
#㧦A ߣ B ߪឃ
ǡ
&㧦A ߩ⽎ A
Cǡ
A B
%㧦Ⓧ⽎ AъB
ǡ
A B
$㧦⽎ AыB
ǡ
A B
A
A
C図1:事象の図示(ベン図)
2.2
事象の演算
排反(図1A):標本空間Ω上の二つの事象AとBについて、AとBが同時に起こりえな い場合、AとBは互いに であるという。
⊲ Aに含まれる標本点ω∈Aと、Bに含まれる標本点ω∈Bに、共通部分が 。
⊲ 例:サイコロ投げΩ = {1, 2, 3, 4, 5, 6}に関する二つの事象、「奇数」B = {1, 3, 5}と「2」 A = {2}は、互いに排反。
和事象(図1B):Ω上の二つの事象AとBについて、「AとBのうち、少なくとも一方が 成立(⇔A B)」という事象を と呼び、次のように表記。
A ∪ B. (1)
⊲ ∪は「カップ」と読む。AとBを全てカップの中に入れるイメージ。
⊲ 例:Ω = {1, 2, 3, 4, 5, 6}(サイコロ)上の事象、「4より大きい」A = {5, 6}と「奇数」 B = {1, 3, 5}の和事象は
A ∪ B = (4より大きいか、または奇数). (2)
積事象(図1C):Ω上の二つの事象AとBについて、「AとBの双方が成立(⇔A B)」 という事象を と呼び、次のように表記。
A ∩ B. (3)
⊲ ∩は「キャップ」と読む。AとBの共通部分をキャップ=帽子で上から抑えるイメージ。
⊲ 例:Ω = {1, 2, 3, 4, 5, 6}上の二つの事象、「4より大きい」A = {5, 6}と「奇数」B = {1, 3, 5}の積事象は
A ∩ B = (4より大きく、かつ奇数). (4)
Remark:Web検索で言えば、単体の事象AやBは「 検索」、和事象A ∪ B
は「 検索」、積事象A ∩ Bは「 検索」。
⊲ ベン図から明らかな通り、 。∴ A ∩ Bは、A ∪ Bよりキツイ条件。
⊲ 例:「英語ができて(A)、かつ日本語ができる(B)」は、「英語か、または日本語が できる」よりもキツイ条件。
空事象:標本点を一つも含まない事象を と呼び、 と表記。
⊲ 普通の数で言えば、ゼロに該当する概念。
⊲ 積事象∩と空事象∅を使えば、「AとBが排反」とは 。
補事象(図1D):Ω上の事象Aについて、「Aが起こらない(⇔A の事象が起こ る)」という事象を (余事象)と呼び、ACと表記。
⊲ 標本空間Ω上で、ACはAの残り。空事象で表せば、ACとは A ∩ AC = ∅
カブらない
, A ∪ AC = Ω
足してちょうど全体に
. (5)
⊲ 例:サイコロ投げに関する事象A = {1, 3, 5}(奇数)の補事象は、
AC = (偶数). (6)
3 確率
3.1
確率の公理
確率:標本空間Ω上の事象Aの起こりやすさを定量的に示した数字を と呼び、
Pr(A) (7)
と表記する。(確率probabilityの頭文字。)
⊲ Pr(A)が確率であるために必要な条件は?⇒確率の公理。
確率の公理系:以下の性質が成立するならば、Pr(A)をΩ上の事象Aの確率として扱う。 これを (コルモゴロフの公理)と呼ぶ。
1. 全ての事象A ⊂ Ωについて 。
2. 。
3. 互いに排反な事象A, Bについて
Pr(A ∪ B) = . (8)
Remark:日常で使う確率概念は、確率の公理系に合致。
1. 確率は、 の間に入るもの。(最小値0、最大値1と規格化。)
2. サイコロで「1か2か3か4か5か6が出る」確率は?⇒Pr(1 ∪ 2 ∪ 3 ∪ 4 ∪ 5 ∪ 6) = 。 3. サイコロで1、2、3は互いに排反(同時に成立しない)。ところで1か2か3が出る
確率は?⇒Pr(1 ∪ 2 ∪ 3) = 16+ 16 +16 = 。
3.2
ラプラスによる確率
ラプラスによる確率の定義:標本空間ΩにはN個の標本点ωがあり、それらは同様に確 からしいとする。このうち、事象Aに相当する標本点がR個あれば、Aの確率は
Pr(A) = R N =
Aの該当部分
Ω全体 (9)
これを と呼ぶ。いわゆる割合。
⊲ 多くの場合、このやり方で、確率の公理に矛盾せずに確率を割り振ることができる。
例:サイコロを振り、5より小さい目が出る確率は?
⊲ 標本空間Ω = {1, 2, 3, 4, 5, 6}。∴標本点の数 。
⊲ 事象「5より小さい目」はA = {1, 2, 3, 4}。∴事象Aと整合的な標本点の数 。
⊲ 以上から
Pr(A) = 4
6 = . (10)
Remark:ラプラスの定義の長所と短所
⊲ 長所:日常的に使われる確率の計算法。 (=標本点の数)に基づくため、 順列や組み合わせの数の公式が適用できる。
⊲ 短所1:確率を定義する前から「同様に確からしい」(∴等確率)を仮定しているた め、トートロジー。数学の定義として破綻している。
⊲ 短所2:「同様に確からしい」という仮定は本当か?
まとめと復習問題
今回のまとめ
確率論:事象と確率を基に、「偶然」を制御する技術。
事象と確率。
復習問題
出席確認用紙に解答し(用紙裏面を用いても良い)、退出時に提出せよ。
1. サイコロを二つ投げる試行の標本空間Ωと、そこで定義される事象を考える。(ヒント: 以下は標本空間の一部。)
Ω =
⎧⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎨
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎩
(1, 1) (1, 2) (1, 3) (1, 4) (1, 5) (1, 6) (2, 1) (2, 2) (2, 3) (2, 4) (2, 5) (2, 6) (3, 1) (3, 2)
(4, 1) (4, 2) (5, 1) (5, 2) (6, 1) (6, 2)
⎫⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎬
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎪
⎪⎭
. (11)
例えば事象「二つの目が等しい」はA = {(1, 1), (2, 2), (3, 3), (4, 4), (5, 5), (6, 6)}。 (a) 事象「二つの目の合計が4より小さい(目の合計<4)」はB =__。
(b) 事象「二つの目が等しいか、またはその合計が4より小さい」は(ウ)A ∪ B =__。 (c) 事象「二つの目が等しく、かつその合計が4より小さい」は(エ)A ∩ B =__。
A ∩ B ⊂ A ∪ Bであることが確認できる。
2. ラプラスの定義に従って確率を求めると、Pr(A ∪ B) =__、Pr(A ∩ B) =__。