4
借り手企業の破綻法制と銀行危機
田中亘
要 旨
1
はじめに
バブル崩壊後のデフレ期には,企業の破綻も増大し(図表 4 1・図表 4 2), それにともなって,破綻処理に関する法制度の整備・改正の必要性も増大し た.本稿は,90 年代終わりから 2000 年代前半にかけて行われた,企業の破 綻法制の改革について説明するとともに,その意義と問題点を論じることに する1)2).
以下では,まず第 2 節で,破綻や破綻法制,あるいは私的整理と法的整理 といった,本稿が用いるキーワードについてその意味を説明するとともに, 本稿の検討範囲を画定する.続いて第 3 節では,法的整理に関する制度改正 について,2000 年 4 月に施行された民事再生法を中心に,その意義と問題 点について述べる.第 4 節では,私的整理に関係する法改正として,とくに, 債務の株式化(DES)に関係する制度改正について議論する.第 5 節では, 私的整理ガイドラインのような,国の制定する法制度以外の,破綻処理に関 係する規範について説明する.第 6 節では,破綻処理に関係する税制の改正 について述べる.第 7 節では,破綻法制の改正についての評価を述べるとと もに,これらの制度改正の多くが,長銀破綻等の銀行危機が顕在化した後ま で行われなかったのはなぜか,という問題を提起する.そして,効率的な破 綻処理を進めるうえでは,本稿が検討している「借り手」側の破綻法制の整 備だけでは十分でなく,たとえば金融機関の不良債権のディスクロージャー 等,「貸し手」側のインセンティブを改善するための制度改革と組み合わせ て行う必要があるのではないかという意見を述べて,結びとする.
1) 本稿では,法令名として次のような略称を用いる.民事再生法=民再,会社更生法=会更,破
産法=破産,会社法=会社,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律=独禁,法人税法 =法税.
300,000
負債総額(億円) 件数
(億円) (件数)
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0 250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
1988 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07(年)
図表 4 1 倒産企業件数・金額
出所) 東京商工リサーチ『倒産白書』各年版.
図表 4 2 形態別倒産件数
暦年 法的整理 銀行取引停止処分 (内整理)その他 合計
会社更生 会社整理 和議 民事再生 破産 特別清算
1990 6 4 46 ― 389 4 5,781 238 6,468
1991 13 17 112 ― 670 8 9,662 241 10,723
1992 27 18 172 ― 961 28 12,594 269 14,069
1993 33 19 222 ― 1,064 28 12,790 408 14,564
1994 10 17 157 ― 1,146 37 12,282 412 14,061
1995 23 24 162 ― 1,260 64 13,194 381 15,108
1996 11 19 153 ― 1,448 45 12,784 374 14,834
1997 23 14 199 ― 1,864 68 13,808 488 16,464
1998 51 20 301 ― 2,580 111 15,346 579 18,988
1999 32 10 167 ― 2,221 221 12,087 614 15,352
2000 23 4 40 551 2,924 199 14,094 934 18,769
2001 27 2 ― 906 4,027 245 12,802 1,155 19,164
2002 61 3 ― 878 5,418 246 11,199 1,282 19,087
2003 46 0 ― 819 5,436 228 8,595 1,131 16,255
2004 38 0 ― 588 5,349 258 6,470 976 13,679
2005 20 2 ― 560 6,191 320 5,014 891 12,998
2
破綻法制の意義および統計
2.1 本稿における用語の定義
分析に先立って,まず本稿で用いる用語を定義するとともに,本稿の検討 範囲を画定する.まず,本稿で「企業の破綻」というときは,企業3)が支 払い不能もしくは債務超過にあるか,もしくはそのおそれがある場合,また は,企業が弁済期にある債務を弁済することとすれば,その事業の継続に著 しい支障を来すおそれがある場合を指すものとする(この定義は,現行法にお ける,再建型の法的破綻処理手続を申し立てるための要件にほぼ対応する4)).
次に,「企業の破綻処理」とは,上記の意味での破綻状態にある企業の資 産や債務を整理するために,企業の利害関係者(債権者,株主あるいは経営 者等)が行う行為をいう.大まかには,破綻処理の方法は,清算型と再建型 に分けられる(山本ほか[2006], p. 20).清算型の破綻処理とは,破綻企業の 保有資産を換価・処分して,債権者に対する弁済にあてることである.再建 型の破綻処理とは,破綻企業の債務を圧縮する一方で,その事業内容を改善 することによって,事業の再建を図ることである.もっとも,再建型の破綻 処理においても,再建の過程で,企業の保有事業の一部を清算することは当 然ありうることであるから,ある破綻処理を清算型か再建型かに整然と区別 できるわけではない.その意味でこの分類は,多分に便宜的なものといえる5).
破綻処理はまた,裁判手続のなかで行われる法的破綻処理(法的整理)と, 裁判手続外で,利害関係者の個別的な同意を通じて行う私的破綻処理(私的 整理)とに区分することもできる.本稿の検討対象である「破綻法制」とは,
3) 企業は,自然人の場合もあれば法人の場合もありうるが,本稿ではとくに断りがないかぎり, 法人,それも株式会社である企業を想定して議論する.また,株式会社に固有の問題を扱う際に は,概念を明確にするため,企業に代えて,会社という言葉を用いる.
4) 民再 21 条 1 項,会更 17 条 1 項参照.
法的整理と私的整理とを問わず,広く破綻処理に関係する法制度を指すもの とする.なお,ここでいう「法」制度とは,必ずしも,国が制定した法規範 (ハード・ロー)には限定されず,国以外の団体の作った規範であるが,国 がそれに対して一定のサポート(たとえば税制上の優遇措置)をしている等 の事情により,利害関係者によって一定の尊重を受けている規範(いわゆる ソフト・ロー)も含むものとする(第 5 節で説明する私的整理ガイドライン はその例である).
2.2 破綻という用語についてのコメント
なお,2.1 で示したような破綻の定義は,一般的に使われる「破綻」とい う言葉よりは広いものになっているだろう.一般には,企業の「破綻」とは, 当該企業が法的整理に入るか,さもなければ,もはや再建の見通しがない状 況に陥っていることを指していうことが多いと思われる6).企業が弁済期に ある債務を弁済すると事業の継続に著しい支障を来す状態にあるが,しかし 再建の見込みはあるため,債権者との交渉によって債権の一部放棄や期限の 猶予を受けること(再建型の私的整理.図表 4 3 に見られるような,90 年 代末から 2000 年代前半に行われた大規模な私的整理がその例である)は, 一般には,破綻ないし破綻処理とはいわれていないように見受けられる.し かし,本稿は,そのような私的整理に関する法制度の検討も目的にしている ので,これが破綻処理でないという理由で本稿の検討対象にならないという のは不都合である.私的整理と法的整理の双方を含み,かつ,清算型と再建 型の双方を含むような,一般に慣用された用語があればよいのだが,現状で は適当な言葉が見あたらないので7),本稿では,破綻(あるいは破綻処理)
6) たとえば,預金系金融機関が行う資産の自己査定においては,与信先を破綻先・実質破綻先・ 破綻懸念先・要注意先および正常先に分類するが,ここにいう「破綻先」とは,「法的・形式的 な経営破綻の事実が発生している債務者」をいうものとされ,具体的には,法的整理に入ってい る場合のほか,手形交換所の取引停止処分を受けた場合があげられている.また,「実質破綻先」 とは,「法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの,深刻な経営難の状態にあり, 再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者」をいう とされる.金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」資産査定管理態勢の確認検査用 チェックリスト・自己査定(別表 1)参照.
7) 法学者は,2.1 で定義したような破綻と同じ意味で,「倒産」という言葉を用いることが多い (山本[2008],山本ほか[2006]).しかし,「倒産」という用語も,日常的には,再建の見通しの
という言葉を 2.1 のように広く定義したうえで,用いることにする.
2.3 企業の破綻に関する統計
わが国では,(2.1 で定義したような意味での)企業の破綻ないし破綻処 理につき,網羅的に集計した統計資料は存在しない8).この点に関し,わが 国では従来,民間調査機関が公表している企業の「倒産」に関する統計が広
図表 4 3 主な私的整理の事例
実施年(合意ベース) 債権放棄(百万円) 債務の株式化(百万円)
藤和不動産 1999 290,000 0
殖産住宅相互 1999 65,600 0
フジタ 1999 120,000 0
青木建設 1999 204,900 0
東京シティファイナンス 1999 210,000 0
佐藤工業 1999 119,000 0
長谷工コーポレーション 1999 354,600 0
兼松 1999 155,000 0
トーメン 2000 200,000 0
大末建設 2000 63,000 0
ハザマ 2000 105,000 0
熊谷組 2001 430,000 0
三井建設 2001 142,000 0
ダイエー 2002 170,000 230,000
アプラス 2002 99,900 0
新井組 2002 64,000 0
三井住友建設 2002 30,000 30,000
長谷工コーポレーション 2002 0 150,000
大京 2002 410,000 60,000
藤和不動産 2002 200,000 30,000
いすゞ自動車 2002 0 100,000
雪印乳業 2002 30,000 20,000
西武百貨店 2003 220,000 9,800
トーメン 2003 110,000 0
日産ディーゼル 2003 0 106,000
熊谷組 2003 268,400 30,000
ダイア建設 2004 91,080 39,999
三菱自動車工業 2004 0 130,000
双日ホールディングス 2004 0 340,000
カネボウグループ 2004 99,500 0
注) 1999 2004 年に行われた私的整理で,金融支援(債権放棄+債務の株式化[DES])の額の合計が 500 億円以上の事例.
く参照されているけれども9),そこにいう「倒産」とは,①法的整理に入っ た場合,② 6 カ月以内に 2 回の手形・小切手の不渡りを出したことにより手 形交換所の銀行取引停止処分を受けた場合,③その他の場合が含まれる10). しかし②は,手形交換所の参加銀行が,当該企業との間で 2 年間は当座取引 および貸出取引をしないということにすぎず,そうした処分を受けた企業に ついて破綻処理が行われたのか,行われたとしてどういう処理が行われたか は明らかでない11).また,③は内整理(大口債権者との話合い等により, 内々に債務を処理すること)などが含まれるとされるが,これは,企業がそ の事業をやめて資産を処分する場合(清算型の私的整理)を指している12). したがって,図表 4 3 に挙げられるような,債権者による債権放棄等の支援 を受けて事業の再建を目指す,再建型の私的整理は,基本的に倒産の統計に 含まれていない.
こうした点に注意しつつ,東京商工リサーチによる倒産企業集計を図示す れば,図表 4 1 のとおりである(形態別の倒産件数として,図表 4 2 も参照). 1990 年代を通じ,倒産の件数・負債総額ともおおむね増加傾向にあったが, 2001 年以後は,負債総額ベースで減少に転じたことがわかる(2003 年以後 は件数ベースでも減少).
3
法的整理に関する法制度
3.1 法的整理に関する制度の概観
従来,わが国における法的破綻処理(法的整理)の手続としては,まず再
8) 公式の統計としては,最高裁判所事務総局が編集している『司法統計年報』があるが,法的整 理に関する統計に限られる.
9) ㈱帝国データバンクの『全国倒産集計』,および㈱東京商工リサーチの『倒産月報』『倒産白 書』がそれである.
10) 東京商工リサーチ HP(http://www.tsr-net.co.jp/useful/definition/index.html).ただし,帝 国データバンクは,2005 年 4 月期以後は,法的整理の金額・件数のみを公表するようになって いる(http://www.tsr-net.co.jp/useful/definition/index.html).
11) 「手形不渡りを出しても法的整理はもとより,私的整理も何もしないで,うやむやのまま放置 されている件数が一番多いのではないかと思われる.いわゆる 夜逃げ などである」との指摘 もある(高木[2006], p. 173).
建型の手続として,会社更生手続,和議手続,会社整理の 3 つ,また清算型 の手続として,破産手続および特別清算手続の 2 つ,合計で 5 つの手続が存
在した(図表 4 4).しかしこれらの手続は,たとえば和議手続・破産手続に
ついては 1922 年,会社更生手続については 1952 年の施行以来,抜本的な改 正は行われておらず,制度の現代化・合理化が望まれていた.
1990 年代末から 2000 年代前半にかけ,法的整理に関する法制度は大きな 変革を受けた.第 1 に,80 年近い歴史をもつ和議法が廃止され,新たな再 建型手続の一般法である,民事再生法が成立した(2000 年 4 月施行).第 2 に,株式会社のみが利用できる大規模な再建手続である会社更生法が全面改 正された(2003 年 4 月施行).第 3 に,清算手続の一般法である破産法が全 面改正された(2005 年 1 月施行).第 4 に,従来,商法第 2 編として規律さ れていた会社に関する法制度が,会社法(2006 年 5 月施行)という単行法 として独立したのにともない,従来あまり使われていなかった会社整理の手 続が廃止されるとともに,特別清算手続(株式会社のみを対象とする,清算 型の破綻処理手続)も改正を受けた(図表 4 4).
以下,本節では,まず法的整理の経済的機能について論じた後(3.2),法 的整理の問題点ないし課題について触れる(3.3).続いて,法的整理に関す る制度改正としてもっとも重要と思われる,民事再生手続の創設について, 同手続の主な特徴と,ありうる問題点について検討する(3.4).最後に,法 的整理のパフォーマンスに関する実証研究を紹介・検討する(3.5).
3.2 法的整理の経済的機能
本節では,法的整理の経済的機能,すなわち,国が法的整理という制度を 図表 4 4 法的整理の手続・制度改正の概要
再建型手続
和議手続(和議法) → 廃止( 2000 年 4 月)
民事再生手続(民事再生法制定,00 年 4 月 ) 会社更生手続(会社更生法)→ 会社更生手続(全面改正,03 年 4 月 ) 会社整理(旧商法) → 廃止( 06 年 5 月)
清算型手続
破産手続(破産法) → 破産手続(全面改正,05 年 1 月 )
あえてもうける意義はどこにあるのか,という問題について論じる.借り手 企業が債務を弁済しない場合,仮に法的整理という制度がないとしても,債 権者は,民事執行一般に関する法のルールに則り,確定判決等の債務名義を 得て,債務者企業の財産に強制執行をかけたり,担保権者(担保付き債権 者)であれば担保権を実行したりして,自己の債権を回収することができる. また,企業が事業の再建を目指すのであれば,債権者と個別に交渉し,債権 の一部放棄や期限の猶予等を求めることもありうる.以上のような選択肢に 加えて,国が法的整理という特別の制度をも設けることは,社会にとってど ういう利点があるのだろうか.大まかにいえば,その利点は,①債権者によ る個別的権利を制限することにより,囚人のジレンマ的状況を回避すること, ②多数決による権利の変更を認めることにより,個々の債権者あるいは株主 によるフリーライドの問題を回避すること,があげられる.以下,順に説明 する.
個別的権利行使の制限
法的整理の機能の 1 つとして,多数の債権者が個別的に権利行使をする場 合に生じうる非効率な結果を回避することが挙げられる.
企業が破綻状態にある場合,債権者はわれ先にと自己の債権回収に走る可 能性がある.たとえ,当該企業の継続企業価値(当該企業の事業が生み出す 期待キャッシュフローの割引現在価値)が,清算価値(事業を清算し保有資 産を売却した場合に得られる価値)を上回るため,社会にとっては企業が事 業を継続した方が有益である場合であっても,個々の債権者は,自分が債権 回収を猶予している間に他の債権者が抜け駆け的に債権回収をすることを恐 れ,債権回収に走ってしまうかもしれない.こうした問題は,債権者どうし で交渉し,一定期間は債権の回収を猶予するという合意ができれば解決する. しかし,債権者の人数が多いときなどは,交渉や合意の成立は困難かもしれ ない.その結果,個別財産に対する強制執行・担保権実行を通じて,非効率 に企業が解体清算されてしまうリスクがある(囚人のジレンマ).
は,手続によらずにその権利を行使すること(当該企業から弁済を受けたり, 強制執行をかけること)はできなくなる13).さらに,手続開始の申立てが なされた後は,手続の開始決定の前であっても,裁判所は必要に応じて個別 的な権利行使を禁じることができる14).こうして債権者の個別的権利行使 を封じたうえで,清算型の手続においては,管財人(破産手続の場合)ある いは清算人(特別清算手続の場合)が,裁判所の監督下で,なるべく高額に 売れるような形で企業の資産を処分し15),換価代金を債権者に分配する. これに対し,再建型の手続の場合は,再建計画(再生計画あるいは更生計 画)を作成し,権利者の多数決によって企業の行く末を決めることになる
(次項参照).
以上のように,無担保債権者は原則として法的整理の手続に取り込まれる のに対し,担保権者(担保付債権者)の取扱いは,手続の種類によって異な る.会社更生手続では,担保権者も当然に手続に取り込まれ,手続中の担保 権実行は禁じられる16).これに対し,その他の手続(民事再生・破産・特 別清算)では,担保権は手続外の権利(「別除権」)という扱いになり,手続 の係属中も担保権の実行は原則として禁じられない17).
多数決による権利の変更
前項で指摘した機能に加えて,とくに再建型の法的整理については,多数 決による権利変更を認めることによって,債務者企業の財務困難の解消を円 滑に行うという機能も存在する.
企業がその保有資産の額と比較して,過剰な額の債務を抱えている(財務 困難 financial distress の状態にある)場合,その企業価値は低下しがちにな ることが知られている.それは第 1 に,そうした企業は,将来債務不履行 (デフォルト)に陥る危険が大きいため,金融機関が事業に必要な資金の融
資を控えたり,取引先が取引を避けたりする傾向にあるためである.第 2 に, 13) 民再 39 条,会更 50 条,破産 42 条,会社 515 条.
14) 民再 26 条・27 条,会更 24 条・25 条,破産 24 条・25 条,会社 512 条. 15) 前述(注 5)のように,事業を包括的に譲渡するという手段もとりうる. 16) 会更 2 条 10 項 12 項・47 条 1 項・50 条 1 項・24 条 1 項 2 号・25 条 1 項.
そうした企業の投資判断は非効率になりがちである18).株主は有限責任で あるから(会社 104 条),企業(会社)が債務超過になれば超過額がいくら であろうと株主のリターンに影響しない一方,資産超過となれば超過分はす べて株主のものである.そのため,企業が株主によりコントロールされてい るかぎり,ハイリスクの投資はたとえ非効率であっても行う誘因がある一方, ローリスクの投資はたとえ効率的であっても(債務超過を抜け出せないた め)行う誘因は乏しくなる.企業が財務困難に陥っていることは,過去の経 営の失敗を示唆するものではあっても,必ずしも,現時点において,当該企 業の継続企業価値が清算価値を下回るため事業を継続する価値がないことを 意味するものではない.しかし,上記の要因によって企業価値の実現が妨げ られている場合には,企業は事業を継続できず清算されてしまったり,仮に 事業を継続できるとしても,本来実現できる価値よりも低い価値しか実現で きないおそれがあるわけである.
このような問題は,企業が債務の免除や債務の株式化(デット・エクイ ティ・スワップ:DES)を受けることにより,その債務の額を圧縮すること ができれば解決する.しかし,そのような債務の軽減による企業価値の増加 は,債権放棄や DES に参加した債権者以外の,債権者あるいは株主も享受 してしまう(フリーライド問題).そのため,個々の債権者は,債権の減免 や DES に応じる誘因に欠け,財務困難の解消が円滑に進まないおそれがあ る.
再建型の法的整理では,多数決による権利変更を認めることにより,フ リーライド問題への対処を図っている.まず,民事再生手続では,再生計画 案19)において,無担保債権者(担保権者については,3.4 で後述)の権利の変 更について定め,それが無担保債権者の多数決(頭数の過半数,かつ債権額 の 2 分の 1 以上)により可決され(民再 172 条の 3),かつ,一定の要件を 満たして20)裁判所の認可を得れば(同 174 条),反対者を含めたすべての無
18) Myers[1977].簡単な説明として,金本・藤田[1998], pp. 195 197 も参照.
担保債権者の権利が再生計画に従って変更される(同 177 条).このように, 民事再生手続で変更される権利は原則として無担保債権に限定されるが,債 務者企業が債務超過にあるときは,再生計画において,株主の権利の変更を も定めることができる(同 154 条 3 項・166 条 2 項).この場合,既存株主 の持ち株を無償ですべて奪うことも可能である.
会社更生手続においても,更生計画案が作成され,権利者の多数決に付さ れることになるが21),民事再生手続と異なり,無担保債権者だけでなく, 担保権者や株主の権利の変更も一般的に定めることができる.そして,権利 者はその権利内容に応じ,担保権者(更生担保権者),無担保債権者(更生 債権者),および株主の各組に分けられる(会更 168 条).更生計画案が各組 の多数決によって可決され(同 196 条),かつ,一定の要件を満たして裁判 所の認可を得ると(同 199 条),反対者を含めたすべての権利者の権利が, 更生計画に従い変更される(同 203 条)22).なお,会社が債務超過のときは, 株主は議決権を有しないため(同 166 条 2 項),たとえ更生計画で既存株主 の持ち株をゼロにすることを定めても,株主はそれに異議を唱えることはで きない.事実,上場会社が法的整理に入ったときは,既存株主は持株全部を 無償で失うのが通常である23).
3.3 法的整理の問題点
前節で述べたような利点の一方で,法的整理はいくつかの問題点ないし課 題を抱えてもいる.まず,法的整理が(3.2 で説明したとおり)債権者の個
20) 当該一定の要件のなかには,とりわけ,権利の変更の内容が,債権者間で平等でなくてはな らないという要請が含まれる(民再 155 条 1 項).ただし,この要請は例外をまったく許さない ものではなく,たとえば,少額債権については有利な取扱いをすることは許容されている(同項 ただし書.なお,3.3 も参照).
21) 会社更生手続では,裁判所によって選任された管財人が更生会社の事業・財産を管理し,更 生計画案の提出義務も負う(会更 184 条 1 項).また,更生会社やその債権者,株主も更生計画 案を提出できる(同 2 項).
22) 一部の権利者の組が不同意のときにもなお裁判所が更生計画案を認可できるための要件(会 更 200 条参照)など,更生計画に関するルールの詳細については,山本ほか[2006], pp. 463 471 (中西正執筆)参照.
別的な権利行使を制約する結果として,非効率な事業が清算されることなく 存続したり,あるいは交代さられるべき経営陣がその地位を維持するといっ た問題が生じる可能性がある.この問題は,とくに民事再生手続に関連して, すでに経済学者が指摘している問題であるから,3.4 で改めて論じることに する.
もっとも,破綻処理を専門とする弁護士や倒産法学者が,法的整理の問題 点としてしばしば指摘するのは,前段落で述べた問題が実際にあるかどうか にかかわらず,そもそも企業が法的整理に入ることそれ自体によって,企業 価値が毀損するということである24).その理由として指摘されているのは, 通常は金融機関(金融債権者)だけが債権放棄等の負担をする私的整理とは 異なり,法的整理はそれ以外の債権 201 者,とりわけ取引債権者をも巻き込 むため,企業の信用がより多く損なわれる,ということがあげられる25). もっとも,法的整理においては,少額債権については裁判所の許可を得て随 時弁済をすることが認められており(民再 85 条 5 項,会更 47 条 5 項)26), これによって,多数の取引債権者を不利に扱わないことが可能である(山本
[2005], p. 91).もちろん,大口の取引債権についてはこの規定は適用できな
いが,破綻処理の費用を金融債権者だけが負担する場合と,金融債権者と大 口の取引債権者が債権額に応じて平等に負担する場合とで,後者の方がより 企業の信用が損なわれる理由はあまりはっきりしないように思われる.
実際には,法的整理が企業価値を損なうのは,むしろ心理的な要因による
24) たとえば,多比羅[2005], p. 91,山本[2005], p. 91 参照.もっとも,法的整理による企業価値 の毀損は小さいという認識を示すものもあり(事業再生研究機構税務問題委員会[2007], p. 20 〔岡正晶執筆〕),実務家の間でも意見は分かれるようである.1 つのケース・スタディーとして, 日本海工の事業再建においては,当初,メインバンクの主導で私的整理ガイドラインによる再建 を目指したが,一部金融機関の反対で不調に終わり,民事再生手続に移行した.この事例では, 私的整理計画では,金融機関の弁済率 38%,商取引債権者に対しては 100%弁済を予定していた が,民事再生手続では,一般再生債権(金融再建・商取引債権に共通)の弁済率は 5%になった (奥・伊東[2005]).もとより,弁済率は予定にすぎず,私的整理では法的整理よりも楽観的な見 通しのもとに計画が立てられただけである可能性があるから,法的整理に入ったことが原因で企 業の弁済能力が低下したとは直ちにはいえないであろう(奥・伊東[2005]).しかし,この事例 については,法的整理が企業価値を毀損したと事例と見る向きもある(事業再生研究機構税務問 題委員会[2007], p. 82〔三森仁執筆〕).
25) 多比羅[2005], p. 91 参照.
ところが大きいという指摘もある(山本[2005]).これは,取引先や顧客が, 法的整理に入った企業に対してネガティブ・イメージを抱くということであ ろう.そうしたイメージには客観的な根拠はないのかもしれないが,取引先 や顧客がそうしたイメージに沿って企業との取引を避けるなら,企業価値は 実際に損なわれてしまうわけである.こうした問題については,法的整理を 経て事業が再建されたという「成功例」が積み重なることによって,ネガ ティブ・イメージが徐々に払拭されていくことが望まれる.
3.4 民事再生手続 概要――和議から民事再生へ
本節では,デフレ期に行われた法的整理に関する法改正でもっとも重要な ものと思われる,民事再生手続の創設について説明する.また,同手続の主 要な特徴について,問題点とともに検討したい.
2000 年 4 月の民事再生法の施行以前は,再建型の手続として,和議法に よる和議手続が存在した.1922 年の施行以来,約 80 年の歴史をもつ同手続 は,どのようなタイプの債務者も(自然人であるか,会社その他の法人であ るかを問わず)利用できる,一般的な再建型手続であった.しかし,和議手 続については,①手続開始原因が厳格なこと(手続開始の時点で破産手続開 始原因が存在する必要がある一方で,和議成立の見込みがあることも要件と されていた),②担保権の制約が存在しないこと(手続中,担保権者は自由 に担保権実行ができた),③和議の認可要件が過度に厳格なこと(債権者の 4 分の 3 以上の賛成が必要),といった問題が存在した.とりわけ①につい ては,法令の規定以上に運用上の問題が指摘されていた.裁判所が,いった ん開始した手続が不成立に終わることによって和議手続の信用が損なわれる ことを過度に恐れ,和議成立の見込みを厳格に要求して門戸を閉ざしてし まったということである(高木[2006], p. 174,山本ほか[2006], pp. 366 367). 結果として,90 年代の景気後退期においても,和議手続の利用は全般に低 調であった27).
1999 年に,和議手続に代わる新たな再建型手続の一般法として,民事再
生法が成立し,翌年 4 月に施行された(これにともない和議法は廃止され た).同手続の特徴として,①手続開始原因を緩和し,債務者のために法的 整理の門戸を開放したこと,②部分的に担保権の制約も取り入れていること, ③裁判所や監督委員の監督のもとで,債務者自身が事業を継続する DIP (debtor-in-possession)手続であること,④和議時代よりも再建計画(再生 計画)の可決要件が緩和されたこと,を指摘できる.このように,債務者企 業にとっての手続の利用しやすさを追求した結果,2000 年 4 月の施行後, 和議手続と比べ利用件数は大きく増加した(3.5参照).
以下では,民事再生手続でとくに重要な特徴と思われる,DIP 手続と担 保権の制約について詳しく検討する(なお,民事再生と和議,および会社更 生の 3 種類の再建型手続の特徴を簡単に比較すると,図表 4 5 のようにな る).
DIP 手続
概要 民事再生手続においては,原則として,手続開始後も,債務者が 事業・財産の管理を継続する(DIP 手続.民再 38 条 1 項).これは,債務 者企業が自然人でなく法人(とくに会社)であるときは,債務者企業の従前 の経営陣(取締役会)が,その地位を維持することを意味する.もう 1 つの 再建型手続である会社更生手続では,裁判所が選任する管財人に事業・財産 の管理権が専属する(会更 42 条 1 項・72 条 1 項)のとは対照的である.な お,裁判所は,債務者(の経営陣)を監督させるため,弁護士のなかから監
図表 4 5 各種再建型手続の比較 会社更生手続
(1952 年 )*
和議法上の和議手続
(1922 2000 年) 民事再生手続(2000 年 )
利用できる主体 株式会社のみ すべての債務者 すべての債務者
手続中に事業・財産を
管理する主体 裁判所により選任される管財人 債務者自身(債務者企業の現経営陣) 債務者自身(債務者企業の現経営陣)
手続の対象となる権利 すべての種類の債権株式 + 無担保債権 原則,無担保債権
担保権に対する制約 あり(手続中は担保権実行停止+多数決によ る権利変更)
なし(担保権者は手続 中も権利行使可能)
部分的にあり (担保権実行中止命令
+担保権消滅請求手 続)
督委員を選任することが通常である28).また,債務者(の経営陣)の財産 管理・処分が失当であるなど,債務者の事業の再生のためにとくに必要があ ると認めるときは,裁判所は,管財人を選任し,事業・財産を管理させるこ ともある(民再 64 条).
DIP のメリットとデメリット DIP 手続のメリットとして,債務者の経営 状況を知悉している従前の経営陣に経営を継続させることで,経営者交代に ともなうコストを節約できることや,経営陣に早期に手続開始の申立てをす るインセンティブを与える(Berkovitch and Israel[1999])ことが挙げられる.
しかしその半面,「窮境企業を立ち直らせるには経営者の首をすげかえる のが一番の早道である」(高木[2006], p. 100)との指摘もあり,DIP のメリッ トはそれほど明確とはいえない.事業の再建のためには経営陣の交代が有益 であるにもかかわらず,DIP 手続のもとでそれが容易に行えないとすれば, それ自体で非効率であるだけでなく,事前的にも,破綻しても地位を失わな いことから経営陣の努力のインセンティブが過小になるとか,資金提供者の 期待リターンが低下するため,当初から資金提供がなされなくなって,社会 的に有益な事業が行われなくなる危険があるといった問題があることが指摘 されている(柳川・広瀬・秋吉[2007]).
民事再生手続の問題点 現行の民事再生法の問題点としては,たとえ債 権者が経営陣の交代を望んでいるときでも,それを直截に実現する権利が与 えられていないことをあげることができるかもしれない.民事再生手続に 入った企業の多くは債務超過かそれに近い状態であり,株主よりはむしろ債 権者が,当該企業の残余権者に近い立場にいる.残余権者は企業価値が高ま ればその分自らのリターンも増加するため,企業価値を高める決定をするイ ンセンティブを有しているはずである.そのことからすれば,債権者に経営 陣を交代させる権利を与えることで,効率的な経営陣の交代を実現できる可 能性が高いといえそうである.
ところが,現行の民事再生法では,会社が再生手続に入った後も,その会 社の取締役を選任するのは,あくまで株主である(会社法の規定に従い,株 主総会で取締役を選任・解任する).けれども,再生手続では株主はリター
ンをあまり期待できないため29),たとえ現任の取締役から構成される経営 陣が非効率であってもこれを交代させるインセンティブに乏しい.この状況 を打破する方法としては,再生計画によって既存株主の持ち分をすべて奪い, 債権者が新たな株主となって,取締役(ひいては経営陣)を交代させること が考えられる.既述のように,債務者会社が債務超過の場合,再生計画に よって既存株主の株式をすべて無償で奪うことができる(3.2 参照).しかし, 同時に新株式の発行をすることは,債務者――すなわち,債務者会社の取締 役――が提出する再生計画案のなかでしか定めることができず(民再 166 条
の 2 第 1 項),債権者がそのような再生計画案を提出することはできない.
このように,取締役の関与が必要とされる理由としては,倒産法学者からは, 債務者の自主的判断を尊重するということが指摘されている(伊藤[2007], p. 774).しかし,債務者会社の取締役は債務者自身ではないのだから,その意 思に独立の価値を見出すことは難しい.
債権者の決定によって経営陣を交代することが直接には難しいとすると, 現経営陣に不満な債権者が取れる手段としては,①裁判所に管財人の選任を 申し立てる(民再 64 条),②会社更生手続の開始申立てをする30),③経営陣 を交代しなければ再生計画案を承認しないという「脅し」により,経営陣の 自主的な交代を迫る,といった方法がありうる.しかし①の申立てが認めら れるための要件は限定的であるのに加えて31),管財人は,主として弁護士 のなかから裁判所が選任するものであり(伊藤[2007], p. 602),その者が債権 者の希望どおりに再建手続を進めてくれる保障はない.むしろ,破綻企業や その従業員の利益を守るため,債権者に対してより多くの譲歩を迫るかもし れない.②については,会社更生手続では,裁判所が選任する管財人が事 業・財産の管理を行うため(会更 42 条 1 項・72 条),①と同様の問題がある. ③についていうと,経営陣が交代しなければ再生計画案を承認しない(否決
29) とりわけ上場会社の再生手続では,既存株主の持ち分はほとんど無償で消却されることにつ き,前掲注 23)参照.
30) 債務者が株式会社の場合,会社更生法が民事再生法に優先して適用されるため,会社更生手 続の開始決定がなされれば,再生手続は中止する(会更 24 条 1 項 1 号・50 条 1 項・208 条.伊 藤[2007], p. 906 参照).
する)という債権者の脅しが,どれだけ信憑性のあるものとして受け取られ るかが問題となる.再生計画案が否決された場合,裁判所は手続廃止を決定
する(民再 191 条 3 号).この場合,事後処理として手続は破産手続に移行す
ることが予定されている(同 248 条以下).ただそうなると,破産手続のもと で事業が清算されてしまう可能性が高い.もしも現経営陣のもとでは,(債 権者が望んでいる)新経営陣のもとで経営されるよりも事業は非効率となる が,それでも事業を清算するよりは高い価値を上げられているとすれば,再 生計画案を否決し手続を廃止することは債権者にとって不利になるおそれが ある.このような場合,③のような脅しに信憑性がなく,DIP 手続のもと での現経営陣の居座りを許してしまう可能性がある.
手続の現状 もっとも,債権者のなかでもとりわけ金融債権者(金融機 関)は,同じように再生手続に入っている多くの債務者企業を抱えるリピー ト・プレーヤーであるから,現経営陣が債権者の不支持にもかかわらず居座 りを決め込む場合には,たとえ債権の回収額が低くなるとしても,再生計画 案を否決し事業を清算に追い込む方が(タフな交渉者であるという評判を確 立できるため)長期的に有利だと考えるかもしれない.その場合,③の脅し は信憑性をもち,現経営陣を自発的退任に追い込むことが可能である32). 3.5 で説明するように,少なくとも現在の実務では,民事再生手続の進行は かなりスピーディーであり,債務者は,手続の開始から半年程度で再生計画 案の提出を求められる.また,担保権者は再生手続中に担保権の実行をする ことも原則として可能である.したがって,債権者の支持を得ていない現経 営陣が,手続の引き延ばしを図ることにより自己の地位を維持しようとする 余地は相当に制限されている.事実,Xu[2007]の実証研究によれば,1997 年から 2002 年に再生手続を申し立てた上場企業中,89%の事例で「非通常 的」な社長交代(社長の退任後,会長に就任しないものをいう)を経験して いる.法制がどうなっていようと,破綻に責任のある経営者は責任を取らさ
れるというのが実状かもしれない(Xu[2007], p. 195).
ありうる制度改正の方向 このように,現行の法制が深刻な問題を生じ させているという証拠は必ずしもないが(なお,3.5 の実証研究も参照),何 らかの理由から,債権者と現経営陣の交渉による退任のプロセスがうまく機 能しない場合に備えて,法制度が非効率な経営陣を交代するメカニズムを用 意しておくことは有益だと思われる.具体的には,現行法が要求する,債務 者会社が株式の発行をする際には取締役の関与を要するものとしている規制 を改め,債権者の提出した再生計画案においても,既存株主の持ち株を奪う ことと新株式の発行とを同時に定めることができるものとすべきだろう.ま た,債務者会社が債務超過のときは,直截に,再生手続中は債権者に取締役 の選任・解任権を与え,債権者は随時,多数決によって経営陣を交代できる ものとする仕組みも考えられるだろう33).
担保権者の取扱い
問題の所在 法的整理において,担保権者(担保付債権者)をどう取り 扱うかは,難しい問題である.一般に,破綻企業の担保権者のインセンティ ブは,社会的に望ましいインセンティブとは乖離しやすく,効率的な事業の 再建を妨げる恐れがある.具体的にいえば,担保権者は,担保権を実行する ――通常は,担保権の目的物(担保物)を差し押さえて処分・換価するとい う方法をとる34)――ことにより,担保物の処分代金から他の債権者に優先
33) 現行法の法的整理が,本文に述べたような問題を抱えているとすると,もっとシンプルに, 債務者企業がデフォルト(債務不履行)をすれば,直ちに現在の株式は全部無償で償却され,債 権者が債権額に応じて新たな株式を取得する,という制度を採用すればよいのではないか,とい う疑問が生じうる.事実,米国にはそのような主張もある(Bradley and Rosenzweig[1992]). しかし,こうした提案に対しては強い反論がなされており,今日に至るまで,こうした提案がア カデミックな議論を越えて現実的な法改正のアジェンダに載せられたことはないといえよう.主 な反論を 1 つだけ紹介すると,取引費用や情報非対称のため,企業の資金調達に制約のある現実 世界では,たとえ(事業の生み出す将来収益の現在価値が負債額を上回るという意味で)資産超 過の会社であっても,弁済期に資金調達ができずデフォルトを起こすことがありうる.債権者が 資産超過会社の株式取得(いわば「乗っ取り」)を狙って,戦略的にデフォルトを誘発する(た とえば,従前行ってきた債務者へのリファイナンスをある日突然停止するなど)可能性も考えれ ば,これは深刻な問題になろう.このような場合,既存株主は,本来は価値のある株式を無償で 奪われることになる.こうしたリスクがあることは,事前的には,株式の資本コストを高める (その他の批判として,Skeel[1993], pp. 483 491 参照).
して弁済を受けることができる.その半面,担保権を実行しないかぎり,債 務者の事業からあがる収益に対して当然に優先権を主張できるわけではな い35).このため,担保権者は,たとえそれが事業の非効率な清算に結びつ くとしても,担保権を実行するインセンティブがある.たとえば,債務者の 事業の継続に不可欠な工場用地に抵当権が設定されている場合,もしも抵当 権を実行すれば,債務者の事業は清算を余儀なくされ,債務者の所有する据 付け機械(汎用性が乏しいため売却困難である)や在庫品(事業を継続しな がら売らないと価値が低くなり勝ちである),あるいはブランドや従業員組 織が有するノウハウといった無形資産のほとんどは無価値になるとしよう. その場合にも,担保権者は,自己の債権の優先的な回収を目的として,担保 物(工場用地)を処分してしまうかもしれない.
以上のような問題は,当事者間で何らの障碍もなく取引ができるとすれば, 解決する.いま,担保物を処分したときに得られると予想される価値(担保 物の処分価値)をLとし,担保物を債務者の事業に利用した場合に得られ る価値(担保物の継続企業価値)をGとしよう36).また,融資は(おそら くは担保物の価値が融資後に下落したため)オーバーローンになっており, 被担保債権額Fは,LとGのいずれよりも大きいとしよう.民法の一般原 則では,担保権は,担保権が実行されない間は,債務者が被担保債権全額を 弁済しないかぎり消滅しない(これを,「担保権の不可分性」という).その ため,L<G<Fのときには,担保物の処分を回避することが望ましいけれ ども,財務困難に陥った債務者はFを支払えないために,担保権の実行を 阻止できないことがありうる.しかしその場合にも,担保権者と債務者が何 らの障碍もなく取引ができるなら,L<p<Gとなるような額pを支払う (あるいは分割弁済を約す)のと引き換えに,担保権者は担保権を放棄する
35) 民法上,担保権者には物上代位権と呼ばれる権利が認められており,債務者が担保物を第三 者に売却あるいは賃貸した場合には,担保権者は,売却代金や賃貸料が支払われる前にこれを差 し押さえることにより,被担保債権の優先弁済に当てることができる(民法 304 条・350 条・ 372 条).しかし,こうした物上代位権の及ぶ範囲は限定的であり,たとえば,債務者が担保物 である不動産を事務所や工場にして自ら収益を上げている場合,担保権者がその収益に対して優 先権を主張できるわけではない.
36) Gは,担保物がある場合に債務者企業が生み出す価値(期待キャッシュフローの割引現在価
(あるいは少なくとも,その実行を猶予する)という合意が可能であろう. このような合意は実務上も行われており,担保権協定,弁済協定あるいは別 除権協定と呼ばれている37).もっとも,現実世界では,取引にかかるさま ざまな障碍(交渉に要する費用や情報の非対称)が存在するため,こうした 合意は容易に成立しないかもしれない.担保権者が,担保権の放棄あるいは 実行の猶予と引き換えに,できるだけ多額のpを要求するため,合意の成立 が遅延するとか,最悪の場合には交渉が決裂し,非効率な担保権実行を招く 危険がある.この危険は,同一の担保物に複数の担保権が設定されているた め,債務者が複数の担保権者と交渉しなくてはならない場合は,より深刻に なろう.
実証研究においても,法的整理に入った企業は,私的整理によって破綻処 理を行った企業と比較して,債務総額に占める担保付債務の額が大きいとい う結果が出ている(Xu[2007], p. 187).これは,私的整理によって債務者が 担保権者の同意を取り付けることは,無担保債権者と比較して困難であるた め,担保権付の債務が多い企業では,私的整理による再建が難しいことによ るものと解釈することができる.
以上の問題からは,法的整理においては無担保債権だけでなく,担保権を も制限するという議論もありうるところである.現に,米国の連邦倒産法第 11 章による再建手続(11 章手続)では,手続開始の申立てと同時に,担保 権の実行も自動的に停止(automatic stay)されるし,再建計画によって担 保付債権の内容をも変更することも可能である38).しかし,DIP 手続のも とで担保権をも制限すると,現経営陣の利益のために手続が濫用される危険 が大きくなる.無担保債権であれ担保権であれ,手続の係属中は原則的に権 利の実行ができないため,債権者は,債権の大幅カットなどの譲歩を余儀な くされ,その結果,本来は清算した方が望ましい事業も現経営陣のもとで存 続するといった非効率が生じる恐れがある39).
民事再生法における担保権の取扱い 民事再生法は,以上に述べたような
37) 山本ほか[2006], pp. 131 132(沖野眞巳執筆),田中[2004], pp. 35 36 参照.
38) 連邦倒産法制における担保権者の取扱いについては,Tanaka[2006], pp. 457 466 参照. 39) とくに 80 年代の米国では,11 章手続の遅延についてこの種の批判が多くなされた.たとえ
担保権の制限の便益と費用との間のバランスをとろうとしている.すなわち, 前述のように(3.2),再生手続においては,担保権者は別除権とされ,権利 の実行は原則として禁じられないし,再生計画によって担保権者の権利まで が変更されることもない.しかしその一方で,再生手続中は,担保権に対し て次のような制限が課されうる.第 1 に,債権者一般の利益に適合し,かつ, 担保権者に不当な損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に,裁判所が, 相当期間に限って担保権の実行の中止を命じる制度がある(民再 31 条)40). この間に,債務者は担保権者との間で前述の担保権協定の締結を試みたり, あるいは,次に述べる担保権消滅請求に必要な資金の調達を試みることが期 待されている.
第 2 は,担保権消滅請求制度である.これは,担保物が債務者の事業に欠 くことができない場合に,債務者が担保権者に対して,担保物の処分価値を 支払うことによって,担保権を消滅させることができるという制度である
(民再 148 条以下).担保物の処分価値について争いがあるときは,裁判所の
選任する評価人の評価に基づいて,裁判所が決する.たとえば,担保物の処 分価値が 1,500 万円と評価され,そして被担保債権の価値が 2,000 万円のと きは,債務者は担保権者に 1,500 万円のみを支払って,担保権を消滅させる ことができる(残額 500 万円は無担保債権になり,再生手続を通じて権利行 使されることになる).これは,前述した「担保権の不可分性」という民法 の原則を修正するものである.別の例として,A・B・C という 3 人の債権 者が,それぞれ 1,000 万円ずつの債権を有しており,同債権の担保として, 同一の担保物(処分価値 1,500 万円)に対して,それぞれ,一番抵当,二番 抵当および三番抵当を有していたとしよう.この場合,債務者は,A に対 して 1,000 万円,B に対して 500 万円,そして C に対しては 0 円の支払い によって,A・B・C すべての抵当権を消滅させることができる.
本制度は,担保物の継続企業価値Gが,処分価値Lを上回る場合に,担 保権者が,GとLの差額に対するより多くの分け前(より高いp)を要求す る結果として取引が紛糾することを回避し,円滑な事業再建に資する効果が あると考えられる.担保権者が債務者との交渉において,Lを大きく上回る
取り分を要求するときは,債務者が本制度を利用してLのみの支払いに よって担保権を消滅させてしまうため,担保権者は過度な要求によって交渉 を長引かせることはできなくなるわけである41).再生手続では,担保権消 滅請求が実際に利用されることは少ない42).しかし,この制度が背景にあ るために,債務者と担保権者との担保権協定の締結が,より円滑に行われる と期待できる43).
3.5 法的整理のパフォーマンスに関する実証研究
手続の利用状況
本節では,新設の民事再生法を中心に,法的整理のパフォーマンスに関す るデータを紹介・検討する.
申立件数・負債額 民事再生法の施行による変化として,法的整理の利 用が急増したことがまずあげられる.東京商工リサーチの調査によれば, 1991 年から 99 年の 9 年間における和議手続の申請件数が年平均 183 件で あったのに対し,2000 年から 2005 年の 6 年間における民事再生手続の利用 は,年平均 717 件(4 月からの施行である 2000 年を含めない場合,年平均 750 件)と増加している(図表 4 2).これらの数字は,倒産件数全体(図表 4 1)に占める比率としてはごく小さいように見えるが,民事再生手続の利 用者は相対的に規模の大きい企業であり,破綻処理における民事再生手続の
41) もしも担保権消滅請求制度が何の費用もかけずに行えるなら,担保権者は,債務者との交渉
において,Lを少しでも上回る金額を要求することはできない.もしもそうした要求をすれば,
債務者は直ちに本制度を利用し,担保権を消滅させてしまうからである.もっとも現実には,担 保権消滅請求には種々の費用がかかる(裁判所に申し立てる費用,担保物の評価に争いがあると
きの評価費用,および,債務者はLを一括弁済しなくてはならないことからその調達費用など).
担保権者と債務者が合意すれば,本制度を利用する費用が節約できるため,担保権者は債務者と
の交渉(担保権協定)において,Lをいくらかは上回る金額を引き出せるであろう.
42) 民事再生法施行後 2 年間の調査では,調査対象となった再生事件件数 1225 件のうち,裁判所 による担保権消滅許可決定がなされたのは 5 件であった.小菅・堤[2002], p. 8.
重要性は,件数が示す以上に大きいはずである.事実,民事再生手続申立企 業の負債総額の倒産企業負債総額に占める比率は,25%から 40%程度に達 する(図表 4 6).
認可率と認可までのスピード 次に,手続がどのような経過を辿ったかを 見ると,帝国データバンクの調査によれば,施行から 2006 年 12 月までに民 事再生手続を申し立てた 5,279 件中,調査時(2007 年 1 月)までに,再生 計画の認可を受けた件数は,3,566 件(67.6%)であり,取下げ・棄却・廃 止により,計画の認可を得る前に手続が終了した件数は,776 件(14.7%) であった(残り 937 件は,調査時点で結果未判明〔図表 4 7〕).これは,過 去の実証研究による和議手続の認可率に比べて高い数字であるだけでな く44),米国の 11 章手続の認可率(1989 95 年の 7 年間の申立てに関する全 数調査で,認可率 26%.Bermant and Flynn[1998])と比較しても,相当に 高い.また,認可を受けた事件について,申立てから認可に至るまでの期間 は,254.4 日(8.3 カ月)であった(帝国データバンク[2007], p. 3).これも, 和議手続45)や米国の 11 章手続(Bermant and Flynn[1998]では,429 日
44) 和議法研究会(座長・青山善充東京大学教授[当時])が,1982 年と 87 年における和議事件 を対象に行った調査では,調査時点で結果の判明している事件 347 件中,和議計画の認可を受け た事件の比率は 54.2%であった(青山[1998], p. 334).
2000 01 02 03 04 05(年)
5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0
0.0 0
1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000
負債額(億円) 倒産企業負債総額 に占める割合
(%) (億円)
図表 4 6 民事再生企業の負債総額・倒産企業負債総額に占める割合
〔14.3 カ月〕であった)と比較すると,早いスピードである.
認可後の計画遂行状況 再生計画が認可された場合,もしも監督委員が 選任されていなければ,裁判所は手続の終結決定をする.しかし前述のよう
に(3.4 参照),実務では監督委員が選任されていることが常態であり,その
場合,裁判所は,債務者による再生計画の遂行を監督委員に監督させるため, 手続を維持する.そして,再生計画が遂行されたとき,または認可決定の確 定後 3 年が経過した場合には,裁判所は再生手続の終結決定をする(民再 188 条 2 項.3 年間無事に計画を遂行できれば,その後も遂行できる可能性 が比較的高いので,これ以上手続を維持する必要性を小さい,という考え方 に基づいている).これに対し,認可決定確定後に,再生計画が遂行される 見込みがないことが明らかになった場合は,裁判所は,再生手続廃止の決定
をする(認可後廃止.民再 194 条)46).前述した帝国データバンクの調査では,
再生計画の認可を受けた 3,566 件中,調査時までに終結決定を受けたのが 1,990 件であり,逆に,すでに認可後廃止となった事件は 415 件である(図
表 4 7).この数字から,直ちに再生計画の遂行率を判定することはできない
が(終結決定に至るか否かが未決定の事件が 3 分の 1 近くあること,および
45) 前掲注 44)の実証研究では,82 年における和議事件では,申立てから認可までの平均日数は 214 日,87 年の和議事件のそれは 271 日であり,長期化する傾向を示していた(青山[1998], p. 63).
46) この場合,事後処理として破産手続に移行することが予定されている(民再 248 条以下). 申立て
5,279 件
再生計画認可
3,566 件(67.6%)
終結(※)
1,990 件(37.7%)
取下げ・棄却・廃止
776 件(14.7%)
認可後廃止
415 件(7.9%) 図表 4 7 民事再生手続のパフォーマンス
終結決定を受けてもその後に再生が挫折する可能性もあるため),かなり高 い遂行率であると推測しうる47).
上場企業の場合 また,Xu[2007]は,1997 年から 2002 年 8 月までに, 法的整理(民事再生手続だけでなく会社更生手続も含む)を申し立てた上場 企業 51 社についての調査を行い,申立てから認可までの期間は,平均 1.2 年であったと報告している(Xu[2007], p. 200).とくに,民事再生法施行後 の申立てに限ると,0.71 年と短縮している.これも,同期間の米国の公開 企業の 11 章手続と比較して,遜色のない数字といえる48).
「事前」の影響について
以上のように,民事再生法の施行以後,再建型の法的整理はより多く利用 され,より高い確率で,かつ迅速に再建を実現しているように見受けられる. もっともこのことは,法的整理が債務者(あるいは,債務者会社の経営陣) にとって使い勝手がよくなったことを示すものではあっても,社会的に望ま しい再建が行われていることを示すものとはいいきれない.もしも 3.4 でそ の可能性を指摘したように,DIP 手続のもとで債権者が経営陣を容易に交 代できないため,現経営陣のもとでの事業の継続に同意せざるを得なくなる とすれば,たしかに債権者は再生計画の認可は取りやすくなるだろうし,ま た,その過程で債権者が大幅な譲歩を強いられているとすれば,再生計画の 認可後は債務者の負債額は大きく軽減されているため,たとえ事業が非効率 であったとしても,再生手続の終結決定までこぎつけることができるであろう.
このように,民事再生手続の一見したパフォーマンスのよさは,手続の効 率性を示すものではなく,制度の運用上,債権者が大幅な譲歩を迫られてい る結果にすぎない可能性もある.もしも再生手続において,効率的な事業再
47) 米国には,11 章手続における計画の遂行率(履行率)についての豊富なデータはないが, Baldiga[1996]によるアンケート調査では,認可計画 43 件中,「遂行が確実(definitely consum-mated)」との回答を得た事件が 15 件(37.2%),「遂行の可能性が高い(likely consummated)」 との回答を得た事件が 8 件(18.6%)だった.
建に役立たないにもかかわらず債権者が譲歩を強いられているとすれば,事 前的には,融資の期待リターンが低下するため,債権者が貸出に消極的にな り,有益な事業が行われないといった非効率が生じる可能性がある.
以上の問題の検証の試みとして,柳川・広瀬・秋吉[2007]は,法人企業統 計年報の年次データから,金融機関借入金・負債比率を算出し,その年度間 の変化を見ている.それによれば,民事再生法が施行された 2000 年度にお ける金融機関借入金・負債比率は,中小企業で平均 1.7%,大企業で平均 2%低下した.著者たちは,IT 景気の山であったこの時期における金融機関 借入の減少は,民事再生法が金融機関の貸出姿勢にマイナスの影響をもたら した結果だと解釈している(柳川・広瀬・秋吉[2007], p. 246).
しかしこれについては,慎重な検討が必要だと思われる.まず,ストック の数字である借入金の額は,新規貸出の減少だけでなく,返済や債権流動化 等による既存債権の消滅によっても減少するから,金融機関借入・負債比率 の低下が,直ちに新規貸出の減少を意味するとはいえない.加えて,もしも 企業の資金調達に対する金融機関借入の比率が低下しているとしても,それ は,企業側が資金調達手段を多様化させたことによるものであり,必ずしも, 金融機関が貸出を抑制したことによるものではないかもしれない.実際,日 本銀行の全国短観における,金融機関貸出の態度判断 DI(「緩い」―「厳し い」,全産業・全規模合計,実績値)は,99 年から 2000 年にかけて回復基 調にあり,とくに民事再生法施行(2000 年 4 月)直後の 2000 年 6 月期以後 はプラスに転じている(図表 4 8).また,国内銀行による設備資金新規貸出 の四半期ごとのデータを見ると49),2000 年 6 月期の設備資金新規貸出は, 前年同四半期(1999 年 6 月期)から 7.9%の減少であるものの,2000 年 9 月期,12 月期は,前年同四半期からそれぞれ 6.8%,8.1%の増加に転じて
いる(図表 4 8).これらの数字からは,民事再生法の施行が企業の金融機関
借入を困難にさせたという事実はとくにうかがえない.
もともと,金融機関の貸出態度は法制度以外のさまざまな要因によって変
化するため,法制度の創設・改正による影響を抽出するのは容易な作業では ない.重回帰分析により法制度以外の要因を取り除くなど,より洗練された 実証研究の蓄積が望まれる.ただ,これまでのところ,債務者にとっての使 いやすさを追求した民事再生法の施行が,効率的な事業再建よりはむしろ貸 出の抑制による非効率を生み出したという明確な証拠は,現れていないと思 われる.
4
私的整理のための法規制の柔軟化
――デット・エクイティ・スワップ(DES)について
4.1 DES に関する商法(会社法)上の問題
――とくに現物出資規制との関係について
これまでは,法的整理に関する法制度を検討してきたが,デフレ期におけ
15.0
設
備
資
金
新
規
貸
出︵
対
前
年
同
四
半
期
変
化
率
︶
金
融
機
関
の
貸
出
態
度
15 10 5 0 −5 −10 −15 −20 −25 10.0 5.0 0.0 −5.0 −10.0 −15.0 98
年
3
月
98
年
6
月
98
年
9
月
98
年
12
月
99
年
3
月
99
年
6
月
99
年
9
月
99
年
12
月
00
年
3
月
00
年
6
月
00
年
9
月
00
年
12
月
01
年
3
月
01
年
6
月
01
年
9
月
01
年
12
月
02
年
3
月
02
年
6
月
02
年
9
月
02
年
12
月
03
年
3
月
03
年
6
月
03
年
9
月
03
年
12
月
04
年
9
月
04
年
6
月
04
年
9
月
04
年
12
月
金融機関貸出態度
設備資金新規貸出(対前年同四半期変化率) (%)
図表 4 8 設備資金新規貸出および金融機関の貸出態度
注) 設備資金新規貸出(対前年同四半期変化率)は,日本銀行の四半期統計「貸出先別貸出金(設備資 金新規貸出〈主要〉)⑴国内銀行」より作成.金融機関の貸出態度は,日本銀行の全国短観の「金融機 関の貸出態度」.判断 DI(「緩い」―「厳しい」,全産業,全規模合計,実績値).