生活習慣と病気の関係を探る

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生活習慣と病気の関係を探る

大学院医学研究科 教授

た ま

こ し

暁子

あきこ

(医学部医学科)

専門分野 : 公衆衛生学,疫学

研究のキーワード : コホート研究,生活習慣病,栄養,身体活動,フィールド

HP アドレス : http://publichealth.med.hokudai.ac.jp/

公衆衛生学とはどのような学問ですか?

公衆衛生は英語ではPublic Healthと呼ばれています。Publicとは人々(集団)を、Health

は健康、保健を意味します。したがって、公衆衛生学とは、胎児・新生児から高齢者まで、

健康な人も病気を抱えている人も社会で生活するすべての人々を対象としており、その身

体的・精神的健康を守り増進することを目的とした実践活動であり学問分野です。とても

幅が広い…?と思われたでしょうが、この懐の深さがまさに公衆衛生です。私たちはその

中でも病気や活動性・意欲の低下などにつながる生活習慣や心理状態、職業要因などにつ

いて研究しており、その成果を人々がよりよい生活を送るための仕組みづくりに役立てた

いと考えています。

どのような方法で研究しているのですか?

早食いは太りやすいとか、寝不足だけでなく寝すぎも健康に悪いとか、聞いたことはあ

りませんか?実際に生体内でどのような反応が起きているのか、詳しいメカニズムはわ

かっていない場合でも、私たちは新聞や雑誌でいろいろな病気の原因や長寿のヒントを目

にします。こうした結果は、人々を対象として行われる疫学研究と呼ばれる研究の成果で

す。疫学研究にもいろいろな手法がありますが、その一つであるコホート研究では、多く

の人にご協力いただき、はじめに生活習慣や心理状態、社会との関わり、既往歴などの情

報を入手します。そしてその方たちを長期にわたり追跡し、生死やがんなど罹った病気の

情報を得て、元の情報と合わせます。このデータセットを様々な観点から解析し、ある生

活習慣のある人とない人の予後を比較する(例えば、たばこを吸う人と吸わない人で、そ

の後の肺がんの発生率を比べます)ことで、

どのような生活習慣が病気に関係している

のかを統計学的に検討します。健康な方た

ちに協力をお願いして長い時間をかけて病

気の発生を確認する、とても根気のいる研

究です。ただ、初めにいろいろな情報を(最

近では生体試料も)いただいておき、調べ

る病気も複数設定できますので、一つのコ

ホート研究からいろいろな結果を得ること

が可能です。

出身高校:愛知県立旭丘高校 最終学歴:名古屋大学大学院医学研究科

くらしと健康

コホート研究の流れ

時間 たばこを吸う人々

たばこを吸わない人々

肺がんになった人

ど ち ら に ど れ く ら い 肺 が ん 患 者 が 多 く 出 る か を 比 較 す る

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今までにどんなことがわかっていますか?

1980年代後半から約11万人の方に協

力 い た だ い て 、20年 追 跡 し た JACC Studyというコホート研究の結果から一

つご紹介します。

数年前からメタボ健診が開始されてい

ますが、聞いたことはありますか?生活

習慣病の一因に肥満があることから、対

策として内臓脂肪を減らすことが重要と

して開始されたものです。結果として、

私たちは知らず知らずのうちに肥満は悪

い、と思いこんでいます。しかし、本当

にそうでしょうか?65~79歳の方たちを追跡したところ、次のような結果が得られました。

対象者をBMI(肥満の指標の一つで体重(kg)/身長(m)2で計算します)別に分け、その後の

死亡リスクを観察すると、BMI 20.0~22.9の方たち(身長150cmなら49kg、170cmなら

63kgくらい)と比べて、肥満者のリスクが上がったのは女性のBMI30以上(150cmで

67.5kg以上)と相当高いグループの方たちだけでした。一方で、痩せている方たちの死亡

リスクは高く、BMIが20未満の場合はどのグループでも有意にリスクが上昇し、痩せてい

るほど強いリスクとなりました。高齢者では太っているより痩せている方が死亡しやすい

のです。高齢で痩せている方では、栄養分の貯蔵が少なく、感染症に弱い可能性が考えら

れます。したがって、高齢になってからメタボを心配して頑張って痩せる必要はなさそう

です(痩せている場合に無理して太る方がよいかどうかはこの結果からはわかりません)。

この他にも栄養や身体活動といろいろな部位のがん、循環器疾患などとの関係を中心に検

討し、その成果は他の地区のコホート研究の結果と合わせて、健康日本21(第2次)や日

本人のためのがん予防法(国立がん研究センター)などに生かされています。

これから何を目指しますか?

私は2012年4月に北海道大学に着任しました。疫学研究を行うには、協力してくださる

フィールド、人々が必要です。そのため、これから道内の市町村、企業などと協力関係を

築き、情報を収集していくところから始めます。北海道は国土の22%を占めていますが、

人口は552万人(4.3%)と人口密度が最も低いのが特徴です。そのため、医療機関の所在

地が偏り、医療過疎問題が指摘されています。人々の生活では、日本全体と比べて喫煙率

が高いこと、冬場に活動量が減ること、などが知られています。一方で、カロリーベース

でみた食料自給率は全国1位、おいしい野菜や魚介類に恵まれた地域でもあります。その

ような地域、社会環境や生活習慣の特徴が人々の健康状態にどう影響しているのか、よい

面、悪い面を検討しながら、一つずつ結果を出し、社会全体の健康づくりに役立つ情報発

信をしていきたいと考えています。

一緒に研究を行いたいと考える皆さんの参加を心より歓迎いたします。

65-79 歳の人の BMI 別その後の死亡リスク(JACC Study から)

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参照

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