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第 14 章
財政と国債
14.1 財政
財政とは?: 政府の資金のやりくり 歳入: 政府の収入。主に税収
歳出: 政府の支出。社会保障費、公共事業費、国防費など
財政赤字: 歳出のうち税収で賄えない部分。国債(借用証書)を発行して資金を借りる
14.2 日本の財政
『日本の財政関係資料』: 財務省が発行するパンフレット(HP上で入手可能)
•景気と財政の間にはトレードオフ(二律背反)があるので、財政のコントロールがむずかしい
14.3 財政の 3 大機能:景気の安定・所得の再分配・社会資本の供給
景気の安定: 景気の波を小さくすること
•財政政策(狭義の財政政策、フィスカルポリシー)
–景気の安定のために政府が意識的に財政支出や税収を変更し、乗数効果を通じて景気に影響を与えること –拡張的財政政策:政府支出↑、税金↓ → 景気刺激
–緊縮的財政政策:政府支出↓、税金↑ → 景気抑制
•ビルトインスタビライザー(自動安定化装置)
–景気の波を小さくするように、財政に自然と組み込まれている機能 –不況時には自然と税収が減少し、政府支出が増加して景気の下支えをする –誰かが意識的に何かを変更するわけではない
所得の再分配: 貧富の格差が好ましくない水準まで拡大しないようにする
•累進課税制度(所得税や個人住民税):所得が高いほど、所得にかかる税率が高くなる –最低15%、最高50%
•相続税:貧富の格差が世代を超えて継承されないようにする
•教育の公費負担:貧富の格差が世代を超えて継承されないようにする 社会資本の供給(資源配分の是正): 市場では供給できない財・サービスの提供
•一般道路、近所の公園、警察、外交など
明海大学マクロ経済学:影山純二(学生用)
14.4 財政の問題点
政府(財政) vs市場: 下記の問題があるため、政府は何もせずに市場に任せた方が良い場合もある 恣意的な運用: 政治家によって財政を恣意的に運用される
•選挙を意識した過剰な財政出動
政府の能力的限界: 政府がわかる情報には限界がある。さらに情報把握や政策実行に時間のラグ(遅れ)がある 資源配分の歪曲: 市場ほど効率的に資源(お金)を使えない
将来世代への負担転嫁: 将来世代が現在世代のツケ(借金)を払うことになる
クラウディング・アウト(押しのける): 政府支出の増加が投資(と輸出)を減少させてしまう
•クラウディング・アウトが生じる理由:政府支出↑→ 利子率↑→ 投資↓
IS
R LM
Y a b
国債の中立命題: 人が合理的に将来を予想すると、拡張的財政政策は効果ない
•将来の増税を予想しない場合(人々は将来を予想しない)
政府 民間 全体
現在 景気
将来 景気
–結論:
•将来の増税を予想した場合(将来の増税に備え現在の貯蓄を増やし現在の消費を減らす)
政府 民間 全体
現在 景気
将来 景気
–結論:
•現実:国債の中立命題は完全には成立していない –流動性制約?
–高い世代間割引率?
14.5 課題
(A4、上部に課題番号、学籍番号と氏名、計算過程も記入、読みにくい場合は減点)1. 日本の財政の問題点を1つ取り上げ論ぜよ。
2. 国債の中立命題によると財政政策は効果がない。どうして効果がないのか説明せよ。
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