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第 13 章
AD-AS モデルの含意
13.1 インフレ、デフレ、スタグフレーション
景気過熱:Y1> YF
不況:Y1< YF
スタグフレーション(不況とインフレの同時進行):1970年代の石油危機など
• YF が突然下がった(長期のASが左へシフト、Y1F →Y2F)
明海大学マクロ経済学:影山純二(学生用)
物価変動の理由: インフレやデフレなどが起こる理由
•市場(価格メカニズム) の現れ:経済規模が適切な水準に調整される際の必要な動き
•景気は自然に調整される→マクロ経済政策は必要ではない?
13.2 自然調節 vs マクロ経済政策
自然調節(市場、価格メカニズム): 副作用なく景気が調節される
•一方、時間がかかる
適切なマクロ経済政策(財政政策・金融政策): 景気をすばやく適切な水準へと調節できる
•一方、マクロ経済政策がいつも「適切」だとは限らない(例:無駄な公共事業) 新古典派とケインジアン: 価格メカニズム(市場)と経済政策(政府)のどちらを信頼するか
•新古典派(合理的期待形成学派など古典派の流れを組む流派):市場を信頼(経済政策は多くの場合は有害)
•ケインジアン:政府を信頼(We are all dead in the long run.)
13.3 流動性の罠の特殊性
短期(1)何らかの理由でISとADが左へシフト
•利子率が0%まで下がり、流動性の罠に陥る 長期(2)均衡GDPが潜在GDPを下回るため、物価が下落
•物価下落により実質マネーサプライが増加しLMが右シフトするが、利子率が下がらないため均衡GDPは増加しない –物価が下落しても均衡GDPが増加しない
•結果、ADが図のように曲がってASと交わらなくなり、景気回復なき物価下落が続く
流動性の罠の特殊性: 市場(価格メカニズム)が機能しない→自然に景気を回復しない→何らかの政策が必要
IS
R LM
Y P
Y AS (長期)
AD YF
Y1
Y2
E1
E2
Y2
E1
E2
(1)
(1) (2)
(2)
13.4 課題
(A4、上部に課題番号、学籍番号と氏名、計算過程も記入、読みにくい場合は減点)1. インフレとは、経済がどのような状態の時に起きる現象か述べよ。
2. 流動性の罠に陥ると、市場の自然調整メカニズムは機能しない。どうして景気は自然に調整されなくなるのか説明せよ。
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