分子デザインによる熱物性制御を目指した基礎研究
金子 敏宏1,2
1 東京理科大学 理工学部 機械工学科
2 東京理科大学 総合研究機構 マイクロ・ナノ界面熱流体力学国際研究部門
近年の材料科学やナノテクノロジーの進歩によってナノ多孔質体やナノ粒子を作成する ことが可能となった.このようなナノ構造体は巨大な表面積をもっており,この表面に流 体を接触させることで熱工学的に望ましい物性をもつ流体がつくられつつある.例えば, 熱交換器の作動流体にナノ粒子を添加することで優れた伝熱特性をもたせたり,カーボン ナノチューブのような多孔質体に流体を含浸させることで融点を調整したり,界面を利用 した熱物性制御は熱工学的に注目を集めている.
ところで界面の影響を無視できるバルクな物質であれば凝集力や排除体積などをもとに van der Waals 状態方程式などを通して,分子間相互作用と物質の状態を結びつけることが できる.一方で,界面近傍では分子そのものの形状や配向の影響が顕著となるため,巨大 な界面を持つナノ構造体を含む系で熱物性が決定される分子論的な機構は十分に理解され ていない.そこで,ひとつひとつの分子の形状を自由に設定することができ,それらの空 間座標の時系列データを取得することができる研究手法である分子動力学シミュレーショ ンに注目した.この手法により,界面を含む系で熱物性値が決定される機構解明を目指し た研究を遂行している.そのなかから,ナノ多孔質体に閉じ込めたれた流体の融点の研究 [1,2],高級アルコール水溶液の表面張力温度依存性の研究[3],分子間相互作用が固液界面 スリップ距離に与える影響の研究[4],について紹介させていただく.
[1] T. Kaneko, T. Mima and K. Yasuoka, Chem. Phys. Lett., 490, 165-171 (2010).
[2] T. Kaneko, J. Bai, K. Yasuoka, A. Mitsutake and X. C. Zeng, J. Chem. Theory Comput., 9, 3299-3310 (2013).
[3] Y. Sakaguchi, T. Kaneko and I. Ueno, (in preparation). [4] E. Naganuma, T. Kaneko and I. Ueno, (in preparation).