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PDFファイル 5OS07b オーガナイズドセッション「OS7 言語と音楽の木構造表現から認知的リアリティの計算理論へ 」

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The 28th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence

2014

- 1 -

和声学に基づく自動作曲システム

”CMY”

“CMY”: an Automated Composition System using the Harmonic Theory of Classical Music

エバンズ

ベンジャミン

ルカ

棟方

小野

哲雄

Benjamin Luke Evans Nagisa Munekata Tetsuo Ono

北海道大学

大学院情報科学研究科

Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University.

With the goal of creating an automated music composition system which uses sheet music (or data to its equivalent) as the input, we, in our previous research, created “CMY” (Composing Music for You), a system which answers basic textbook

harmonization tasks. In this paper, we discuss how we have renewed the internal structure of the system so that it now can

answer much longer pieces of music in real time. Our new system can now take music of parts other than the bass part as input and still create four-part chorale music which follows basic rules found in the harmonic theory of classical music.

1.

はじめに

音 楽 が身 近 な も のと な る中 で ,自 ら楽 曲 の創 作 を行 な うユ ー ザ が 増 えて い る. 有 名 な ア ー テ ィ ス ト や 他 のユ ー ザ が 作 成 し た 楽曲を独自に再収録したり,それをもとに二次制作をしたりする ことが特に人気を集めている中,楽曲構造や作曲技術に関する 専門的な知識を持たないユーザの作曲活動を支援する技術が 今注目を寄せている.

作曲支援システムや自動作曲システムは,ある「規則」に従っ て動作する.その「規則」は,既存データの学習か ら得 られる音 列 の パ タ ー ン な どで あ った り , 音 の 生 成 に関 す る 何 か し ら の 確 率 モデル であっ たり ,また システム 設計 者 が手 動的 に設定 す る ル ー ル ベ ー ス で あっ た り す る . 著 者 らは , 作 曲 者 があ る 種 のル ールベースに基づいて作曲を行なっているというモデルに基づ き , 和 声 学 を ル ー ル ベ ー ス と し て 実 装 し た 自 動 作 曲 シ ス テ ム”CMY”を構築してきた[Evans 2013][エバンズ 2013].

本 稿 で は ,GTTM[Lerdahl 1983]な どに代 表 さ れ る 様 々 な 音 楽 理 論で使 われて いる, 音楽 の階 層 構造 理解 か らヒン トを得 て, 自動作曲システム CMYの内部構造を改め,木構造のアルゴリ ズムで実装し直したことを説明する.内部構造を改めた結果,シ ステムは従来手法では実時間内に実現できなかったより長い楽 曲の作曲も行なえるようになり,拡張されたルールベースも扱え るよ うにな った .ま た, バス 譜以外 の任 意 のパー ト譜 も入 力 で き るよ うに改 善 し, 和 声 と いう骨 組み を崩 さ ず によ り柔 軟 な 作曲 を 可能にした.

また本稿では,和声を実装したルールベースシステムが一般 的な作曲システムにどのように貢献できるかを議論す る.特に, 一 般 に難 しいと さ れ て いる作 曲 シ ス テム や その出 力 楽 曲 の「 評 価」に和声学の知見がどのように利用できるかを提示し,一般的 な作曲現場における本システムの利用例を提案する.

2.

提案手法

2.1 和声に基づく作曲

音 楽 は , メ ロ デ ィ ー ・ ハー モ ニ ー ・ リ ズ ム な ど複 数 の要 素 か ら 成り立っていると考えることができる.作曲とは,それら要素の特 徴や依存関係を考慮しながら, 時系列上に音を配置することで

あ る と 言 え る. 作 曲 者 は 何 か しら の 規 則 群 に 従 っ て 音 を並 べ , 独自が持っている様々な制約を満たすように楽曲を構築してい く. 計 算 機 によ る 自 動 作 曲 も , 具 体 的 な 実 装 手 法 は 異 な るも の の,ある規則群を実装していると言う点ではどれも同じである.

我々は計算機に実装する規則群として,『芸大和声』とも知ら れ る, 島 岡 らがま と めた 和 声 学[池 内 1964]を選 ん だ.『 芸 大 和 声 』 は 日 本 の多 く の作 曲 者 が その 基 礎 教 育 の中 で 共 通 して 学 習していることが知 られて いる[江村 2011].和声学とは和音の 協和・不協和や,和音の連結に関する規則を述べ たものだが, 『芸大和声』では特に禁 則の学 習に重点 を置 いている.禁 則に 反さない限り,楽曲は基本的に良いとされる.

『 芸 大 和声 』 には ,学 生 が学 習した 内 容 を確 認 す るた めの演 習問題 として ,バス 課題 やソプ ラノ課 題が掲載さ れて いる.これ らは , 与 え られ た 旋 律 ( バス や ソ プ ラノ単 独 の楽 譜 ) に, 学 習 者 が適切な和音進行を割り振り,それに基づいて4声体和声の残 り の声 部 を追 記 して い くと いうも ので ある. 本 研 究 で は , ル ー ル ベースとして記述しやすい規則群を持っていること,また実装を 確かめることに利用できるテストデータ(バス課題など)とその解 答例も取得できることなどの理由から,自動作曲システム実現に 向 けた 一 歩目 と して『 芸 大和 声』の和 声 学 を実 装 す ること と した.

2.2 システム説明

著 者 らは 先 行 研 究 で , 『 芸 大 和 声 』 の規 則 を一 部 実 装 し, バ ス 課 題 を 解 く こ と の で き る シ ス テ ム”Composing Music for You

(:CMY)”を 紹 介 して き た .CMY は 与 え ら れ た 楽 譜 に 対 す る 許

容 解 を探 索 し, 禁則 に反 しな い解 のみ を複 数 出 力す る. 『芸 大 和 声』 に記 載され て いる, 和音の転 回系 を含まな いバス 課題 に ついては,既に全て正確に回答することができていた.また,禁 則 で は な い も の の, 初 修 者 が体 得 す べ きと さ れ て い る「 標 準 配 置の法則」や「推奨則」などを実装することにより,探索領域を大 連絡先:北海道大学大学院情報科学研究科複合情報学専攻

{benjamin, munekata, tono} @ complex.ist.hokudai.ac.jp

1K5-OS-07b-3

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幅 に削 減 す るこ と に成 功 して いた . しか し, ア ルゴ リズ ム の構 造 が冗長的で,教 科書の課 題より も長いバス譜(30音程度以上) に対する解答の探索に数分から数十分以上要していたという問 題もある.

そこで本稿では,音楽の階層的構造からヒントを得て,システ ム内部では 楽曲 を木 構造で 表 現す るよ うにシステム を改 善した . 入 力 さ れ た 楽 譜 の 各 音 に対 し て シ ス テ ム は 設 定 可 能 な 和 音 を 列挙し,そのそれぞれに対して4声を定めた和音をノードとして 揃える.その中から和声の禁則に反するノードを除いた後,各ノ ードから隣接する音のノードへのリンクをすべて調べ,禁則に反 しないリンクのみを残す.また,入力に設けていた制限を緩和し, どの パ ー ト の 楽 譜 を入 力 して も , そこ か ら 派 生 す る四 声 体 の楽 譜を出力できるようになった.

なお,システムに和声学の規則が正しく実装されていることを 確かめるために,『芸大和声』に記載されているバス課題を入力 として与え,その出力結果に『芸大和声』の模範解答がふくまれ ていることを確認した.また,バス課題の回答からバス以外のパ ー トを抜 き取 り入 力と して 与 えた時 のシステム 動作 を確 認 した . システムは Javaで構築され,入出力の楽譜は全て MusicXML 形式とした.実装を確認するために入力として与えたバス課題も, 事前にMusicXMLデータとして用意したものを利用した.

3.

議論とまとめ

3.1 自動作曲研究の現状

自 動 作曲 システム は,事 例 ベースシス テム, 確 率モデル シス テ ム , ル ー ル ベ ー ス シ ス テ ム の 3 種 類 に 大 別 さ れ る[松 原

2013]. 事 例 ベ ー ス シ ス テ ム は , 収 集 さ れ た 既 存 の楽 曲 の 断 片

などを部分的に利用し,過去の作品の作風を模倣するシステム な どに利 用さ れ る.確 率 モデ ルベ ー ス のシス テム は, 楽 曲 に関 する知識を確率モデルで表現し,既存の楽曲を用いてシステム パラメ ータの学習 を行な い,最 適化問題な どと して作曲 を扱 う. ル ー ル ベ ー ス シ ス テ ム は , 既 存 の 楽 曲 か ら 直 接 作 曲 規 則 を 構 築す ることは せず, 楽曲 を観 察 した 人間 がまと めた理 解や解釈 をルールの形で実装し,制約充足問題として作曲を行なう.

実装の形は違うにせよ,これらシステムが作曲という創作行為 の中で担っている役割は概ね同じである.Shneiderman は作曲 を ,(1)既 存 の 楽 曲 か ら知 識 を貯 蓄 し(Collect) ,(2)その 知 識 を 分析・解釈し(Relate),(3)それを元に独自の演奏表現を探求し (Create),(4)その表現 を楽 譜や 演奏と して外 在化 し, 評価 する (Donate)4つの段階で議論している[Shneiderman 2000].自動 作曲システムは主にRelateと Createのプロセスを行ない,最初 の知識 の貯蓄はシステム 設計 者 に,最 終的な 成果 物の評価は ユーザに任されている場合が多い.

自 動 作 曲 シス テム の研 究は , 作曲 過 程 にお け る担 当 領域 が 似ているにもかかわらず,入力の元となるデータが異なっていた り,生成される楽曲の統一的な評価手法がなかったりし,それぞ れの研究を客観的に比較・検証することが難しいと知られている

[江村 2011].近年は,RWC[Goto 2002]などといった学術用著

作権フリーな楽曲データベースなどが構築され,入力を一部統 制 す ること が可能と なって きた.しか し出力 の評 価 に至 っては , 統一的な評価基準はまだ提案されていない.

3.2 研究評価における和声評価の提案

和 声 ( 特 に日 本 の『 芸 大 和 声』 )は , ある和 音 の配 置 ・ 連 結 が 認 め ら れ な い こ と を 示 す 禁 則 は 豊 富 に 持 つ が , 認 め ら れ る 配 置 ・連 結 の中で どれ がよ り 優れて いるか を示 す 指針 には 乏 しい. こえを逆に捉えるならば,和声は,何もない所から楽曲を作り上

げる作曲よりも,一度作成した楽曲がどれだけ「良くない」かを示 す評価により 向いて いると言える.実際本研究でも,システムが 一度全ての可能な和音 を並べ た後に,適 切な組み 合わせを決 定し残すために利用した.和声のこの「評価的」な特質を生かし て,どんな自動作曲システムにも応用できる客観 的な評価機構 を作成できるのではないかと考える.

自動作曲システムによって生成された楽曲を和声評価システ ムに通すことにより,その楽曲に対する「和声違反度」ともいうべ き評価値が得られる.古典的クラシック音楽に限らず,現代の多 くのポピュラー音 楽もある程度の和声学知見に基 づいて作曲さ れて いる以上 ,こ の評 価値 がより 低 い方が望ま しいで あろ う. そ れと同時に,芸術は規則を逸脱する中から新たな発見を見いだ す と 言 うよ うな 考 え方 に基 づ く作 曲 シ ス テ ム に対 して も , その生 成された楽曲を同じ和声評価システムに通すことにより,どれだ け ( 和 声 ) 規 則 か ら 逸 脱 して い るか が 分 か る. ま た 和 声 と い う 概 念のな い中で 創作され る音 楽に対しても ,和声 評価システムは ひとまず和声という統一的な軸にのった客観的な一指標を与え ることが可能であろう.結局のところ,和声に基づく評価システム は,作曲システム間で比較可能な一側面を定義し,研究間にお けるより具体的な知見の共有を実現させられるのではないか? 3.3 まとめ

本稿では,著者 らが作成 して きた,和声 に基づ く自 動作曲シ ステ ム CMYに施した実 装 の拡張 と実 行性 能の向 上につ いて 報 告 した . ま た , 自 動 作 曲 研 究 の現 状 か ら, 各 研 究 を ま た ぐ統 一的な評価機構がないことを指摘し,その点における和声に基 づく評価システムの有用性について提案した.

今後は転調や借用和音,予備などに関する和声規則を実装 し,システムの拡張を図 る.また ,統一的な和声評 価システムを 他 の作曲 システム の評 価 にも 利用 した場 合 の論 理的 可 能性 や, その際に起こり得る課題などについて探求していく.

参考文献

[Evans 2013] Benjamin Evans,東条敏,棟方渚,小野哲雄:

Composing Music for You:ユーザの嗜好を取り入れた和声

学に基づく合唱譜自動作成システム,情報処理学会, 2013.

[エバンズ 2013] エバンズ ベンジャミン ルカ,棟方 渚,小野

哲 雄: 和 声学 に基 づ く合 唱 譜自動 作 成システム”CMY”-転 回系の実装と評 価-,情報処理 学会研究報告,日 本情報処 理学会,2013.

[Lerdahl 1983] Lerdahl, F., Jackendoff, R.: A generative

theory of tonal music, Cambridge MA, The MIT Press.,

1983

[池内 1964] 池内友次郎, 島岡譲ら: 和声理論と実習I,II,

III,別巻,音楽之友社,1964.

[江村 2011] 江村伯夫, 三浦 雅展: 情報技術に基づく作編

曲の現状,音響学会誌, 2011.

[松原 2013] 松原正樹,深山覚ら: 創作過程の分類に基づく

自 動 音 楽 生 成 研 究 の サ ー ベ イ, コ ン ピ ュ ー タ ソ フ ト ウ ェア ,

2013.

[Shneiderman 2000] Shneiderman, B.: Creating Creativity:

User Interfaces for Supporting Innovatio,ACM Transactions

on Computer-Human Interaction (ToCHI), 2000

[Goto 2002] Goto, M., Hashiguchi. H., et. al.: RWC Music

Database: Popular, Classical, and Jazz Music Databases,

図  1 :バス課題の実施例( [ 池内  1964]  第Ⅰ巻 p.41 課題 9-1 )

参照

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