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南方遺跡と弥生時代の「貝の道」 岡山市埋蔵文化財センター平成23年度企画展|岡山市|学び・生涯学習|遺跡・埋蔵文化財

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岡山市埋蔵文化財センター特別講座 2011.10.15. 13:30

南方遺跡と弥生時代の『貝の道』

熊本大学文学部 木下尚子

はなしの要点

1.弥生時代、瀬戸内海「貝の道」は大陸・半島文化流入のバイパスだった

2.南方遺跡には韓半島と共通する貝製品が存在した

3.南方遺跡には独自の貝文化(貝殻を好んで利用した文化)があった

南方遺跡

旭川西岸平野のほぼ中央(南方1∼2丁目、国体町)の遺跡群の総称 発掘調査:1992年∼2009年

遺跡の時期:弥生時代・古墳時代・古代・中世・近世

弥生時代中期には東西1.2km、南北1kmの広がりをもつ大集落

1.瀬戸内海「貝の道」は文化のバイパスだった

貝の道:北部九州の農耕社会の人々が大型巻貝を消費するために、弥生時代前期に開拓した、福岡平 野と沖縄諸島を結ぶ全長1200kmの海上遠距離交易路。

大型巻貝:ゴホウラ・イモガイ・オオツタノハ

消費目的:腕輪を作るため⇒これら大型巻貝でつくった腕輪を南海産貝輪とよぶ。

瀬戸内地域の南海産貝輪

遺跡名 所在地 ゴホウラ イモガイ オオツタノハ 出土状況

1 朝田 山口市 1 墓

2 中山貝塚 広島市 2 1 貝塚

3 丸子山遺跡 広島市 1 墓

4 門田貝塚 瀬戸内市 1 貝塚

5 南方遺跡 岡山市 1+? 1 包含層

6 祝谷6丁目遺跡 松山市 2 墓か

7 片山遺跡 今治市 1 包含層

8 紫雲出山 三豊市 1 包含層

9 夢野遺跡 神戸市 18+? 壺内

南方遺跡のゴホウラの特徴

腕輪がでずに、破片ばかりがでる(5破片)

水管溝付近の破片があること、破片の大きさからみて、貝殻そのものをもとにしている可能性が高い。

(2)

2

・ 南九州の土器:入来式(弥生中期前半) 、東九州の土器:下城式(弥生前期末)

注目すべきこと2:他地域の貝殻の存在

・ 小型イモガイ、マガキガイ製品の存在:黒潮の通る外海に面した海岸に生息する ○以上からわかること:

・南方遺跡のゴホウラは、貝殻のまま、南九州から東九州経由で運ばれたのかもしない。 ・瀬戸内には、必ずしも北部九州を仲介せずに南海産大型巻貝が流通していた可能性がある。

弥生時代終末期の九州東まわり貝の道の始まりか?

*中期後半∼後期中頃、瀬戸内系土器がさかんに南九州に入り始めることが知られる。

2.南方遺跡には韓半島と共通する貝文化が存在した

① 二枚貝製の貝珠

韓国大坪里遺跡に類例あり。

二枚貝製貝珠の出土地(弥生時代 西日本)

遺跡名 所在地 時期 出土数

1 松原遺跡 佐世保市 前期 66

2 土井ケ浜遺跡 下関市 前期∼中期 3042

3 中ノ浜遺跡 下関市 前期∼中期 562

4 綾羅木郷遺跡 下関市 前期∼中期 4

5 古浦遺跡 松江市 前期∼中期 2760

7 西川津遺跡 松江市 前期∼中期 48

6 南方遺跡 岡山市 中期 95

・弥生時代の二枚貝製貝珠としては初めての例 ・貝珠の直径が他遺跡例に比べて小さい ・サルボオで作られているらしい

② 指輪

指輪の分類

分類 形の特徴

縄文

タイプ

Ⅰ 飾りなし 帯状環

Ⅱ 飾りあり 髷状突起 竪孔

弥生

タイプ

Ⅰ 飾りなし 紐状環

Ⅱ 飾りあり 三角突起 透かし

弥生タイプ指輪の系譜

中原の文化⇒樂浪⇒日本列島(三角の装飾は日本化か?) 南方遺跡の指輪の特徴

・ ハイガイ製指輪未成品が44個

・ マガキガイを輸入して使用し、鹿角を使っていない。 ⇒貝製の白い指輪が好きだった?

縄文タイプ

(3)

3

弥生タイプの指輪(西日本 弥生時代)

遺跡名 所在地 時期

指輪素材 出

出土状況

貝殻 鹿

角 金

巻貝 二枚貝

1 大浜遺跡 五島市 中期 ○ 1 着装

2 浜郷遺跡 五島市 前期∼中期 ○ 6 着装

3 中ノ浜遺跡 下関市 前期∼中期 ○ 1 たぶん着装

4 土井ケ浜遺跡 下関市 前期∼中期 ○ 15 着装

5 西川津遺跡 松江市 前期∼中期 ○ ○ 6 包含層

6 新保遺跡 松江市 前期∼中期 ○ 6 着装

7 南方遺跡 岡山市 中期 ○ ○ 5 包含層

8 惣座遺跡 佐賀市 後期初頭 銀 3 たぶん着装

③ マツバガイ製品

土井ケ浜、済州島郭支貝塚(紀元前4∼3世紀)に類例あり *韓半島の土器:松菊里式、南方釜田遺跡で出土

⇒北部九州を通らないで(定着しないで)各地に届いた大陸・半島系文化があった。 ・ 西北九州∼響灘沿岸∼山陰 : 対馬海流グループ

・ 瀬戸内海(西→東) : 川中・瀬戸内グループ

3.南方遺跡には独自の貝文化があった

① テングニシ:軸部を使用した製品、腕輪? ② サルボオ:杓子、貝珠素材、腕輪素材、漁網錘? ③ ハイガイ:指輪素材、小児用腕輪、漁網錘? ④ アカニシ:腕輪?

⑤ イタヤガイ・オキシジミ:杓子

貝製品製作技術:土井ケ浜と似ているが、製作技術はきわめて縄文的。擦り切ることはない。

まとめ

南方遺跡の貝製品を通してわかったこと

1.瀬戸内地域には、弥生時代の前半から、北部九州を介さない琉球列島産貝殻も流通した

2.瀬戸内地域には、北部九州を介さない、大陸・韓半島系の物流ルートが通じていた

3.吉備の弥生時代に独自の貝文化が存在した。

*南方遺跡という一つの遺跡からこれだけのことがわかったのは、すごいことです。出土した貝殻の層をすべて持ち帰り、

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