微分
xについてのある関数 y = f(x) の導関数(derivative)は,xがわずかに変化したとき,yがどの程度変化す るかを表している.x
考え方.
xの変化を⊿xとして,それに対するyの変化を考える.
=傾き
の変化量
の変化量
x
y
)
(
)
(
'
'
'
'
x
x
f
x
x
f
x
y
となる.このとき,⊿xを0に近づける.つまり,⊿x→0とすると.
x
x
f
x
x
x f
dx f
dy
x
'
'
o '
)
(
)
lim (
)
(
'
0となる.これが微分の定義である.点xでのf(x)の接線の傾きをあらわしている.
例. f(x) = 5 x であれば,導関数は
5
dx
dy
である.
微分のルール.
y=Axa 導関数は y’ = Aaxa-1
xの関数である,f(x)とg(x)を考える.このとき,
) (
log 1
5
) ( f(x) 1 ))
( (
) ( ) ( ) ( ) ( ) (
) ( . 4
) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( . 3
) ( )
( . 2
) ( ) ( ) ( ) ( . 1
2
対数関数の微分
=
)
(
.
考えればよい) とで3の性質を使うと
と
(
x x
x g x
g
x g x f x g x f x g
x f
x g x f x g x f x g x f
x f x f
x g x f x g x f
c
c c c
¸¸¹·
¨¨©§
c c c
c c
c c c
D
D
鎖法則
zがyの関数 z = f(y) であり,さらに yが xの関数 y = g(x) であるとき,zのxに関する微分は次のよう にして求められる.
)
(
)
( y g x
dx f
dy
dy
dz
dx
dz c c
時間の関数とは何か.
経済成長を考察する場合には,モデルに時間を明示的に導入して分析する.この場合,時間とともに変化す る変数が時間の変数として表すことになる.時間の関数とは,上の例でy=f(x)がyがxの関数であるように, たとえば資本K(t)は時間t の関数ということである.この関数を知ることで,資本ストックが時間が経つ
につれてどのように変化していくのかを問うことができる.時間の経過に対する変化は,導関数
dt
t
dK ( )
の問
題である.もし資本ストックが時間ともに増大するのであれば,
dt
t
dK ( )
>0となる.逆に減少するのであれ
ば,
dt
t
dK ( )
<0となる.時間の関数を時間で微分することに より,時間の関数の導関数を求めることがで
この時間についての微分には「ドット表記」を使うのが慣例である.
dt K
t
dK ( ) &
(K dot)
K(t+⊿t)−K(t) と
K &
との関係.dt K
dK
t
t
K
t
t
K
t
&
'
'
o '
)
(
)
lim (
0
K &
は瞬間的(instantanous)な変化をさしている.1年,あるいは四半期,1週間,1日,あるいは1時間と⊿tを短くすることで,K(t+⊿t)−K(t) は瞬間的な変化
K &
に近づくことになる.成長率
経済学では成長率として,GDPの成長率やインフレ率,人口増加率がよく使われる.もしインフレ率が3% なら,物価水準は一年に3%ずつ上昇する.
成長率の計算方法.
もし資本ストックKが10兆円から始まり,⊿t期後に10兆4000億円まで増大したならば,成長率を計算 する方法は,
04
10 0
10
4000
10
.
=
兆
兆
億−
兆
となり,4%の成長率とわかる.より一般的には
)
(
/
)}
(
)
(
{
t
K
t
t
K
t
t
K ' '
(1)
と書くことができる.
以下で検討する数学的な理由によって,経済学の大部分にあっては瞬間的な成長率について考えることが
より簡単である.(1)式を分母を瞬間的な変化である
K
dt
t
dK ( ) &
であらわして,瞬間的な成長率は
K
K
t
K
dt
t
dK
&
)
(
)
(
であらわすことができる.経済成長理論を考察する場合には,資本ストックや人口が成長することを考察す るため,
K& K 0 . 05
であれば,資本ストックが1年に5%成長していること,またL& L 0 . 01
であれば, 労働力が1年に1%成長していることを意味すると考えるのが適当である.(このコピーは,A.C.チャン 現代経済学の数学基礎 より.) 以下対数というときは自然対数をあらわすとする.
成長率と対数
なぜ成長率を対数を用いてあらわすと便利かの数学的な理由は,対数のいくつかの性質を考えると理解さ れる.
1. If z = x y , then ln z = ln x + ln y 2. If z = x/y , then ln z = ln x – ln y 3. If z = xβ , then ln z = βln x
4. If y = f(x) = ln x , then dy/dx = 1/x (対数関数の微分) 5. If If y(t) = ln x(t) , then
x
x x
x
dt
dx
dx
dy
dt
dy &
&
1
(対数関数と時間の関数の合成微分になっている.)第1の性質は,2変数(あるいはそれ以上)の積の対数は,変数の対数の和であるというもの. 第2の性質は,2変数の商の対数は,変数の対数の差となるというもの.
第3の性質は,べき数の対数である.
第4の性質は,ある変数xの対数を微分すると,1/x になることを示している.
第5の性質が,ここでのポイントである.ある時間に依存する変数の対数を時間について微分すると,その 変数の成長率が求められる.たとえば時間の関数である資本ストックK(t)の成長率は,
K
K
dt
K
d ln &
によって計算することができる.
「対数をとり微分する」とは.
以上でみた対数の性質は,以下の時に便利である. 単純なコブ=ダグラス型生産関数を考える.
D D
( )
1)
(
)
(
)
( t A t K t L t
Y
Y,A,K,Lのどれも時間の関数である. 両辺に対数をとると,第1の性質より,
D
D
ln ( ) ln ( )
1)
(
ln
)
(
ln Y t A t K t L t
さらに,第3の性質によって,
)
(
ln
)
1
(
)
(
ln
)
(
ln
)
(
ln Y t A t D K t D L t
となる.この両辺を時間について微分すると,産出Yの成長率と技術の成長率と資本の成長率,労働の成長 率の関連を導出できる.
dt
t
L
d
dt
t
K
d
dt
t
A
d
dt
t
Y
d ln ( )
)
1
) (
(
ln
)
(
ln
)
(
ln D D
つまり,第5の性質から,
L
L
K
K
A
A
Y
Y & & & &
)
1
( D
D
とあらわされる.
A
A &
は技術水準Aの成長率であるから技術進歩率である.
比率と成長率
成長率に関するもうひとつの便利な応用は,2変数の割合が一定であるときに生じる.はじめに,もし変数 が一定ならばその成長率はゼロであるといことに注意が必要である.
今,z = x/y で,xとyとの比率zが一定であるとする.つまり
z& 0
である. この式の対数をとり,時間で微分すると,y
y
x
x
y
y
x
x
z
z & & & & &
0
よって,2変数の比率が一定であれば,2変数の成長率は同じでなければならない.
対数の差分 対パーセント変化
変数が指数的に増加していると想定すると,
e
gty
t
y ( )
この関数型において,成長率はgとなる.なぜならば,両辺に自然対数をとると,
gt
y
e
gt
y
t
y ( ) ln
0ln ln
0ln
(*)ただし ln e = 1であることに注意.これを時間で微分すると
y g
y &
実際のデータが次のように与えられたとき,成長率の計算方法を上の式を用いて考えてみる. yをたとえば一国経済の一人当りGDPとすると,各年のデータは,
y0,y(1),y(2),・・・,y(t),y(t+1),・・・
のように離散( discrete time )で与えられる.これと先の式(*)との関係を考えると,成長率は次のように 計算できる.(*)より
log ( ) log 0
1 y t y
g t
と計算できる.あるいは,t時点とt−1時点の間の成長率を計算すると,
)
(
log
)
1
(
log
)
(
log y t y t y t
g { '
と計算できる.つまり成長率は,対数をとり,階差をもとめることによっても求めることができる.
参考文献 チャールズ・ジョーンズ 「経済成長理論入門」 A.C.チャン 「現代経済学の数学基礎」 CAP出版