担当:鹿野(大阪府立大学)
2013 年度後期
はじめに
前回の復習
二次関数(交差項)モデル。
対数線形モデル⇒弾力性の推定。
今回学ぶこと
回帰分析でダミー変数を利用。
ダミー変数の高度な使い方。
テキスト該当箇所 :5.2章。
1 回帰モデルとダミー変数
1.1 ダミー変数とは?
Remark:データ(変数)は、必ずしも数量で記録されるわけではない。
⊲ 例:性別。アンケートの回答者iが男or女。
⊲ 例:産業。企業iが製造業or非製造業。
⊲ 「個体iが、どちらに属するか」(属性・状態)⇒量的ではなく な情報。
ダミー変数:個体iが、ある属性・状態に該当しなければ0、該当すれば1となる変数 Di=
⎧⎪
⎪⎨
⎪⎪
⎩
0 if iが○ ○ に該当しない,
1 if iが○ ○ に該当する, i = 1, 2, . . . , n, (1)
を、 と呼ぶ。
⊲ iがどちらのグループに入るかを区別する 「ラベル」。
⊲ 質的な情報(男or女など)を、分析者が機械的に数量 (0 or 1)に置き換え。
例:学生n = 24人の身長と性別のデータ。
⊲ 身長は数量だが、 性別は質的情報。⇒女性ダミーに置き換え。 1
⊲ 学生iが女性ならばDi = 1、そうでなければ(男性ならば)Di = 0。
Di =
⎧⎪
⎪⎨
⎪⎪
⎩
0 if iが男性,
1 if iが女性. (2)
具体的には、Excel上で以下の置き換え。 番号 身長 性別
1 180 男
2 170 男
... ... ...
21 155 女
22 165 女
23 160 女
24 175 男
⇒
番号 身長 女性ダミー
1 180 0
2 170 0
... ... ...
21 155 1
22 165 1
23 160 1
24 175 0
レファレンスグループ :ダミーの値にDi = 0と割り当てられた方のグループ (上の例で は男性)を、 と呼ぶ。(reference=参照、参考。)
⊲ ダミー変数を使う際は、 どちらのグループをレファレンスに置いても良い。
⊲ ただし、どちらのグループがレファレンスなのか必ず明記。(例:「女ならDi = 1、そ うでないならDi= 0」と明記。)
例:(講義ノート#12のマンションのデータ) 中古マンション価格、 最寄駅所要時間、 築 年数、面積を、ワンルームダミー (間取りが1Kなら1、それ以外なら0)でグループ分 け⇒平均を比べてみる。
ワンルーム
Yes No 差
価格 1528.10 4289.20 -2761.10 最寄駅時間 6.14 9.66 -3.52
築年数 13.19 15.41 -2.22
面積 20.14 61.40 -41.27
n 37 157
⊲ 平均的に、ワンルームはレファレンス(ワンルーム以外の間取り)より約2761万円
。ワンルームは価値が低い ?
⊲ 価格以外も両グループで顕著な差が。...ワンルームは 。
⊲ ∴差額2761万円は、純粋に「部屋がワンルームであること」の市場評価を測ってい るとは言い難い。⇒重回帰分析で、部屋の間取り以外の要素を (講 義ノート#12)。
1.2 ダミー説明変数
ダミー変数Diを説明変数とする回帰モデル
Yi = α + + ui, Di= 0, 1. (3)
を考える。古典的仮定CR1∼CR5(講義ノート#08・#11)は成り立つとする。
⊲ YiもDiも数値⇒OLSでα, βの推定は可能。
⊲ Diの回帰係数βは、どんな意味がある ?(何を測っている?)
Diの係数βの意味:CR1よりDiは非確率、CR2よりE(ui) = 0 →(3)式の期待値は
E(Yi) = α + βDi. (4)
⊲ Di= 0の場合の期待値をE(Yi)Di=0(「Di = 0グループ」の平均)、Di = 1の場合の期
待値をE(Yi)D
i=1(「Di = 1グループ」の平均)と置けば、
Di = 0 ⇒ E(Yi)Di=0= α + β · 0 = , (5) Di = 1 ⇒ E(Yi)D
i=1= α + β · 1 = . (6)
⊲ E(Yi)Di=0とE(Yi)Di=0の差は
E(Yi)Di=1−E(Yi)Di=0
グループ平均の差
= β
係数
. (7)
∴YiをDiに回帰した(3)式の回帰係数βは、 に相当。
Remark:(7)式より
E(Yi)Di=1−E(Yi)Di=0= 0 ⇔ β = 0. (8)
∴(3)式の係数βの有意性検定H0: β = 0は、 に等しい。
⊲ グループ平均の差の検定⇒東大出版会(1991、p242∼244)を参照。二標本t検定。
⊲ 回帰分析の利点は ?:他の説明変数(例えばXi)を併用した重回帰モデル
Yi= α + β1Di+ β2Xi+ ui (9) のβ1は、「 、Diの違いでYiにどれだけ差が出るか」(偏回帰 係数、講義ノート#12)。∴β1は、単なるグループ平均の差ではない。
例:中古マンションの価格を、 ワンルームダミーおよびそれ以外の変数に重回帰。 モデル1 モデル2
係数 t値 係数 t値
定数項 4289.17 26.46 1896.26 10.03
ワンルームD -2761.06 -13.21 -544.81 -3.38 最寄駅時間 -36.79 -3.68
築年数 -61.30 -13.35
面積 60.14 27.19
¯
R2 0.25 0.89
n 194 194
⊲ モデル1:価格をワンルームDだけに 。ちょうど定数項がレファレ ンスの平均価格、 係数が二つのグループの平均価格差と同値に !
⊲ モデル2:その他の要素を でコントロールすると、 ワンルームの市 場評価は−544万円程度。∴同一のスペックで比較したとき、純粋に間取りの違いだ けで発生する差額がコレ。 単なる「グループ平均の比較」 ではできない分析。
2 ダミー変数の高度な使い方
2.1 係数ダミー
係数ダミー:通常の変数Xiとダミー変数Diとの交差項を説明変数に持つ回帰モデル Yi = α + β1Di+ β2Xi+ + ui (10) を考える。これを と呼ぶ。
⊲ 古典的仮定の下で上式の期待値をとり、Xiで微分すると E(Yi) = α + β1Di+ β2Xi+ β3DiXi
Xiで微分
−−−−−−−→
dE(Yi)
dXi = β2+ . (11)
⊲ Di= 0、Di = 1それぞれの場合について、 上の導関数は Di= 0 ⇒
dE(Yi)
dXi = β2+ β3·0 = , (12)
Di= 1 ⇒
dE(Yi)
dXi = β2+ β3·1 = . (13)
∴ Di= 0 or 1で、Xiの導関数が だけ異なる。グループ毎にXiのE(Yi)への影 響が異なる状況をモデル化する際、 便利。
⊲ 通常の変数同士の交差項モデル (講義ノート#13) と、意味はだいたい同じ。
2.2 被説明変数がダミー変数
分析の目的によっては、 がダミーの場合もあり得る。
⊲ 例:Di =既婚ダミー(未婚なら0、結婚していれば1)、Xi =年収。⇒年収Xiが、 Di= 1(結婚)となる確率に与える影響を推定したい。
⊲ 例:Di =倒産ダミー(企業が存続なら0、倒産すれば1)、X1i, X2i, . . . , XKi =企業i
の前年度の財務変数。⇒財務状況から、Di= 1(倒産)となる原因を解明したい。
線形確率モデル:ダミー変数Diを被説明変数とする回帰モデル
= α + βXi+ u. (14)
を、 と呼ぶ。(複数の説明変数による重回帰でも良い。)
⊲ βは、Xiの変化で「Di= 1となる確率Pr(Di= 1)」がどれだけ変化するかを近似。
線形確率モデルの問題点 :線形確率モデルのOLS予測値 ˆ
Di = ˆα + ˆβXi (15)
は、必ずしも を満たさない。∴「確率」を予測するモデルとして、不適当。
⊲ この場合、線形確率モデルの代わりに、「0 ≤予測値≤ 1」を満たす別のモデル (プ ロビットなど)を使う。詳しくはこの講義の終盤で。
2.3 二つ以上のグループ分け
標本が、二つ以上の属性・状態にグループ分けされる場合もある。
⊲ 例:学歴。中卒・高卒・大卒の三つ。
⊲ 例:四季。春・夏・秋・冬の四つ。
複数の属性・状態も、ダミー変数を上手く使って数値化できる。
⊲ 回帰モデルに取り入れることも可能。⇒宿題#03参照。
⊲ テキストp137∼139も参照。
まとめと復習問題
今回のまとめ
説明変数としてのダミー変数。
ダミーの高度な使い方 :係数ダミー、線形確率モデル、 複数のグループのダミー。
復習問題
出席確認用紙に解答し (用紙裏面を用いても良い)、 退出時に提出せよ。
1. サラリーマンの年収incomei、勤続年数careeri、女性ダミーDi(男→0、女→1)のデー タがある。
(a) 性別をコントロールした上で、 勤続年数が年収に与える影響を分析するには、 どの ような回帰モデルを設定すれば良いか ?
(b) 勤続年数が年収に与える影響の男女差を分析するには、 どのような回帰モデルを設 定すれば良いか?