統計力学演習 (Wednesday February 8th, 2017) 期末試験 1
• 解答用紙は縦長に用い,左上に綴る余白を空け,表だけに書く。
• β = (kT )−1であり,温度T の関数と逆温度 βの関数は同意語とする。
• スターリングの公式 N! ≃ (N/e)N または log N! ≃ N(log N − 1)を用いて良い。
問題1.次の小問に答えよ。 (30点)
1-1. ある系におけるミクロカノニカル分布の熱力学的重率をW (U, δU)とする。系のエネルギー固有値Ei に属する 固有状態iに与えられる確率p(MC)i をW (U, δU)を用いて表わせ。
1-2. ある物理量 fˆに対して,統計力学で計算した期待値⟨ ˆf ⟩とそのゆらぎσ[ ˆf ]との間にσ[ ˆf ] ≪ ˆf が成り立つと き,⟨ ˆf ⟩についてどんなことが言えるか。
1-3. カノニカル分布の分配関数Z(β)から,エネルギーの期待値 ⟨ ˆH ⟩ 及びヘルムホルツの自由エネルギーF(β)を 導くための関係式を書け。
問題2. N個の独立な調和振動子の全エネルギーは (40点)
E(M, N) = N 2
ℏω + Mℏω
と書ける。ここで量子数 M は,非負整数(0, 1, 2, . . . )である。この系の熱力学的重率W (M, N)は W (M, N) = (M + N − 1)!
M! (N − 1)! と計算できる。以下,N ≫ 1とする。
2-1.系のエントロピーSを求めよ。仮定が必要なら,理由を述べた上で用いて良い。 2-2.系の全エネルギーE を温度T の関数で求め,グラフで表わせ。
2-3.熱容量C(T ) = ∂E(T, N)
∂T を計算せよ。
問題3.一様な磁場H の中に固定された互いに独立なN 個のスピン系のエネルギーは (40点)
E(σ1, σ2, ..., σN) =
N
∑
j=1
(−µHσj)
と書ける。σj は j番目のスピン変数σˆj の固有値で,上向きなら+1を,下向きなら−1を取る。各スピンは固定さ れているので,スピン同士の入れ換えは考えなくて良い。
3-1.上の式から分かるように,この系ではスピン1つあたり−µHσ のエネルギーを持つ。1つのスピンからなる系 の分配関数 Z(β, H, 1)を求めよ。
3-2.スピン1つの期待値⟨ ˆσ⟩を計算せよ。
3-3.互いに独立な N 個のスピンからなる系の分配関数Z(β, H, N)を計算せよ。
3-4.磁化m :=ˆ 1 N
N
∑
j=1
µ ˆσj の期待値 ⟨ ˆm⟩を計算しせよ。
3-5.磁化率 χ(β) := ∂ ⟨ ˆm⟩
∂H H =0
を計算せよ。磁化し易いのは,低温と高温のどちらか?